ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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最後の神代魔法

天之河が自身の虚像を両断し、聖剣を腰の鞘に納める。

 

『……ああ、くそっ俺の負けかよ』

 

「そうだな。お前は俺に負けたんだ」

 

『先に進めばいいさ。勝ったんだからな』

 

そう言って、虚像は解けて消えていった。

 

「お疲れさん光輝」

 

「龍太郎、清水……本当に助かった。ありがとう」

 

「クリア出来たならいい。先に進むぞ」

 

幸利へそう言って先に進む。

天之河の試練を見届けていた仲間達もそれに追付いして先に進む。

氷の通路を抜けるとそこには、既に合流していた士郎達とハジメ達がいた。

 

「みんなクリア出来たんだね」

 

「まぁな。ここもクリアしなきゃ帰れねぇからな」

 

「これで全部だよね。これで帰れる物が作れれば良いけど……」

 

「使えるようにならないとそれはわからないからなぁ……」

 

「流石に期待せざるを得ないがな……」

 

3人で会話していると、天之河が歩み寄り、士郎の前に立つ。

 

「先輩、南雲……地球やオルクスで迷惑をかけて、本当に申し訳ない…っ!」

 

士郎とハジメに頭を下げた。

 

「許されるとは思ってません……これはケジメです」

 

それに対して士郎は

 

「……まぁいいよ。許す許さないはともかく、これから何もしなければいいし」

 

そう言って士郎は先に進むのだった。

 

「優花さん、ティオさん。あの勇者に何があったんですか?」

 

シアが耳打ちで2人に聞くのだが、天之河の精神世界に入ってないので、わからない。

 

「まぁ、あまり詮索するようなことでもないですね」

 

そう言ってピョコピョコ歩きながら士郎の所まで戻っていった。

 

「しかしまぁ、ここはほんと精神的に追い詰めるものが多いわ……二度とやりたくないわ」

 

「雫ちゃん……それは全員が同じ事思ってるよ……」

 

雫が周囲を見ると、全員が同意の視線を送っていた。

 

「まぁそのお陰で僕はこうしてお兄ちゃんにベッタリ甘えられるんだけどネ」

 

そう言いながら士郎の腕に抱きつき、指を絡ませる恵里。

それなりに膨らんでいる胸を押し付ける。ふにふにと柔らかな温もりが右腕に伝わる。

それを見た雫も恵里とは逆の腕に抱きつく。当然、豊満な胸が押しつけられ、ムニュムニュと押し返されるような感触が伝わる。

 

「ああ!お二人ともいつの間に!腕が空いてない……なら……えいっ!」

 

そう言ったシアは士郎の背中に抱きつく。雫にも引けを取らない胸が背中に押し当てられ、さらにおんぶされるように、しがみつく。

士郎の身体には柔らかいメロンが4つ、林檎が2つくっついている。それで動じる様子がないのは、自身を制御しているからなのか。

彼の視線の向こうではハジメの両隣に香織とユエがピッタリとくっついていた。

そうこうしているうちに、行き止まりに到着した。その行き止まりの氷壁には七角形の頂点に各大迷宮の紋章があしらわれた魔法陣が刻まれており、士郎達が近付くと淡く輝き始めた。そして、壁全体が光の膜のようなもので覆われていく。大迷路の出口とよく似た現象だ。

その光の膜に触れると、水面に石を投げれるたように波紋が広がる。

全員が膜の中に入った。

 

─────────────────────────

 

「……分断はされなかったみたいだね」

 

「みたいだね。それにあそこ」

 

「ようやく着いたようじゃのう」

 

「綺麗な神殿ね……」

 

広い空間に出た。

この迷宮ではほとんど見ることのなかった水もあり、防寒具を脱いでも問題ないことから、ここが最深部であることがわかった。

 

「士郎、向こうに魔法陣あるみたい」

 

羅針盤を持つハジメが先導して解放者の住処の中を進む。

中は全てが芸術的な装飾が施されており、相当拘ったのだろう。

そして魔法陣の上に立ち、最後の神代魔法、『変成魔法』を会得したその時だった。

 

「がっ!?ぐあああぁ!?」

 

「う、うああああぁっ!」

 

「い、いぎゃぁぁぁっ」

 

「……うっううううううっ!?」

 

「あぐうぅぅぅっ!?」

 

「がぁぁぁあっ!?」

 

突如、士郎以外のオルクス落下組が苦しみ始めた。そして痛みが引いたのか声が聞こえなくなると同時に倒れてしまった。

 

「み、みなさん!?」

 

「と、とりあえずどこか横になれる部屋に運ばないと!」

 

「……そう、だね」

 

士郎はフラフラと羅針盤をハジメの手からとり、寝室を探し、全員を寝かせた。

 

「しかしなんで南雲達が一斉に……」

 

「……そりゃボク達は迷宮を全てクリアしたからね。概念魔法の知識を一気に詰め込められたら倒れるさ」

 

「なるほど……ん?なんで天野先輩は大丈夫なんですか?」

 

「トータスに来て一回目、グリューエンで二回目、三回目ともなれば流石に慣れる」

 

そう言ったものの、周りから見れば辛そうである。

 

「士郎さんも横になった方がいいですよ……」

 

「……そうするよ」

 

「それじゃあ僕とシアが抱き枕になってあげるね」

 

そう言って士郎は恵里とシアを抱きしめて、雫の隣で仮眠をとり始めるのだった。

柔らかい女性特有の感触といい香りに包まれて意識を手放したのだった。

 

─────────────────────────

 

士郎side

 

解放者の住処にある寝室のベッドの仮眠から目を覚ます。

 

ムニュムニュ♡

 

手のひらに柔らかいモノを感じる。

 

「柔らかい……?」

 

確認のためにもう一度触る。

確かに柔らかいモノが手のひら一杯にある。

 

「あん…♡」

 

「んっ…♡」

 

背中に冷や汗が伝う。

ボクはどういう状態で寝た?

恵里とシアを抱きしめて寝た。つまり今、触って揉んでいるのは、2人のおっ……

 

「兎に角起きないと……ん?」

 

『すぅ……すぅ……』と規則正しい寝息を漏らす2人をなんとかして起こそうと、身体を動かそうとしたのだが、動かなかった。

唯一動かせる首を動かして自分の身体を見ると、そこには恵里の隣で寝ていた雫が、ボクの身体に抱きついていた。

 

「身動きがとれん……どうしようか……」

 

このままイタズラして起こすか?

 

「いやいや……今はそんなこと……」

 

だがしかし、ボクも男である。両手にある柔らかいものを堪能したい気持ちはある。

そんな気持ちに蓋をして、腕を揺らす。

 

「みんな起きて……!」

 

するとモゾモゾと動き始め、目を覚ます。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

「士郎さんおはようございますぅ……」

 

両腕で抱き締めている2人は目を覚ます。

すると彼女達はボクの手がどこにあるか把握してしまった。

 

「ふーん……お兄ちゃんのエッチ♡」

 

「そんなにシたいなら言ってくれればいいんですよ?♡」

 

頬を染めながらジリジリと近寄ってくる。

 

「寝ぼけてたんだから許して…」

 

そう言って自由になった両手で雫も起こす。

 

「ほら雫も起きて……」

 

しかし起きる気配……いや、動く気配がない。

 

「雫?」

 

ボクは彼女の頬を摘む。

 

「い、いひゃいわ、士郎さん……」

 

「寝たふりしてないで起きる」

 

「このままシてもいいのよ?士郎さんのココも硬くなってるのだし」

 

「雫まで……どうしてこんなになってしまったんだ……」

 

「お兄ちゃんのせいだよ?ホルアドの宿とか、アンカジの宿屋で僕達にイ ロ イ ロ教え込まれちゃったんだから」

 

いやまぁ……うん……

否定できなかった。

 

「とりあえずもう起きよう。みんなも目を覚ましてるだろうし」

 

そう言って、部屋から出る。

そこには坂上くんや鈴、天之河がソワソワしながらソファに座っていた。

 

「先輩!雫!大丈夫ですか!」

 

真っ先に反応したのは坂上くんだった。

 

「うん、少し寝たら治ったよ」

 

そして別の部屋からもハジメ達が出てくる。

 

「ハジメ達も大丈夫?」

 

「うん。というか士郎が倒れなかったのは……」

 

「流石に三回目にもなれば慣れてくるよ」

 

「ああ〜……」

 

そうして全員の無事を確認すると、先程習得した変成魔法と概念魔法の説明をする。

 

「んで士郎の異様に高い、神代魔法適性はそういうことなんだな」

 

ボクの技能の殆どが神代魔法に関係が近かったりしたのだ。民の叡智、変容、強化魔術、大地感知と神代魔法を使えば応用できる物だ。

 

「なら帰還用のアーティファクトが作れるってことですか」

 

「そうだね……ニンジンを目の前にぶら下げられた馬みたいな気持ちなんだ。試さずにはいられないっ!」

 

「うん。私達も手伝うよハジメくん!」

 

「…ん。魔力の細かいコントロールは私たちがする」

 

「なら3人だけにした方が良さそうだな。オレもオレでなんか作りてぇしな」

 

ハジメ達が小部屋に入り込り、そう言った幸利はも3人が入った部屋とは別の部屋に入った。

 

「さーて……ボクもエヒト対策のアーティファクト作らないとね」

 

それと恵里を連れていく。

 

「恵里。最後の調整するから来て」

 

「最後の……?っ!わかった…」

 

そう言ってボクと恵里は個室に入り、ボクは椅子に座る。

そして恵里は服を脱ぐ。『シュルシュル』と布が擦れる音がなる。

 

「じゃ、早速変成魔法を使うよ」

 

衣類を脱いで、露わになった背中の素肌に触れ、魔力を流し込む。

 

「んっ……!」

 

─────────────────────────

 

「よし、これで終わりだね。もう服を着ていいよ」

 

「ん……」

 

服を着た恵里はこちらに向き直る。

 

「お兄ちゃん。ここって広いとこあったっけ」

 

「天之河と坂上くんが鍛錬してるみたいだし、あるんじゃないかな?」

 

「なら僕も行ってくるよ。新しい技能の練習もしないとだし。後、デュランダルとバルムンクの強化って出来る?」

 

「そうだね……まだ改造できる余地があるし」

 

「ならお願い。リクエストとかは特にないから」

 

そう言って、彼女は部屋を出る。

 

「さてと……」

 

ボクは宝物庫から神水が出し切った神結晶を手に取る。

 

「鉱物ならボクの『民の叡智』で武器とかに形を変えられるはず……」

 

そう言ってボクは魔力を込めて武器を作るのだった。

 

─────────────────────────

 

恵里side

 

僕はお兄ちゃんに剣二刀を預けて、改造が終わるまでの間、広々とした部屋で、ブランチブレードを持って刀を構える雫に斬りかかる。

 

「ふっ!」

 

「甘いっ!」

 

がむしゃらに、だけど、正確に雫の隙や防御の薄い所を突くのだが、中々攻めきれない。むしろ攻めているはずの僕が逆に追い詰められている。

魔法などを使えば僕はまだマトモに戦えるのだが、今回は魔法を使わないルールで戦っている。

つまり──

 

「せいっ!」

 

雫が刀を握っていない手で正拳を横っ腹に叩き込む。その拳を脛で受け止める。

僕は左手の剣を地面に突き刺し、ぐるりと横に回転し、蹴りを放つのだが、雫は刀を離し、僕の足を掴み、そのままグルグル回し始める。

だがこれは何度もお兄ちゃんにもされた、僕は腕の関節を一度外し、勢いよく伸ばす。

 

「んな!?」

 

流石に腕を外して刺突を放つことは予想外だったのか、咄嗟に僕の足を手放してしまう。

勢いよく飛んでいってしまう。身体をぐるりと回して体勢を直そうとしたのだが、

 

「ぐうっ……!」

 

外している関節が変に捻れて痛みが走る。それを堪えてなんとか体勢を立て直す。

 

「士郎さんも士郎さんだけど……恵里、貴女も相当な無茶するのね」

 

「あはは……でも僕はみんなと比べて、色々しないといけない。使える物はなんでも使う主義だからね」

 

外した関節をもとに戻す。

 

雫の左肩は先程刺突でつけた傷がついている。ただ、その傷は掠った程度なのでダメージなんてない物だし、すぐに治ってしまった。

 

「やっぱり、雫には勝てないなぁ……」

 

しばらく斬り合っていたので疲れてしまい、休みたかったので、両手をあげて休憩に入るのだった。

 

─────────────────────────

 

士郎side

 

ボクは対エヒト戦のアーティファクトを作り終えて、部屋を出る。それでもまだ嫌な予感がモヤモヤしている。

 

「なん……だろうなこの感覚……」

 

ユエがエヒトに狙われているのはわかっているので、それの対策アーティファクトを優先的に作り、完璧に仕上げ。他にも神性に対しての武器や防具も作ったというのに、まだ不安が拭えない。

 

「……ここでウジウジしてても仕方ない」

 

そう考えて、ボクは個室から出る。

 

「士郎。そっちはどうだった?」

 

「ひとまず、エヒト対策のアーティファクト……ユエのやつは作れた」

 

ボクは腕輪をハジメに手渡す。

 

「これをつけていればエヒトはユエの身体を乗っ取れない筈だよ」

 

「ありがと」

 

魂魄魔法と空間魔法を使い装備した者にありとあらゆる魔法的干渉を防ぐ。特に精神的な物をだ。

 

「でこれが、恵里のデュランダルとバルムンク」

 

「ありがとうお兄ちゃん!」

 

武器をもらってピョコピョコと軽く跳ねる。

かわいいのだが、武器をもらって喜んでいるのはなんというか……まぁいいか。

 

「はい、これが雫の新しい刀とこっちがシアの戦鎚」

 

雫にはオルクスから出た時に渡した銘のない刀をシアには星砕きを渡した。

 

「で雫……大分前から渡してた刀の銘なんだけど、良いのが浮かばないから、姫鶴一文字にしたよ。やっぱりボクにネーミングセンスはないからね……」

 

「ありがとう士郎さん……」

 

「これでエヒト奴をウッサウサにしてやるですぅ!」

 

「それでハジメ達は出来たの?」

 

「うん。帰還用のアーティファクトも完成したし、幸利が召喚防止用のアーティファクトを作ってくれたし」

 

「帰還準備は万端になった」

 

「少し僕たちは休ませてもらうよ……」

 

そして魔力と体力が全快し、次の戦いへの準備を整える。

 

「忘れ物とかはない?」

 

ボクが確認を取ると、全員が頷いた。

 

「ならここを出ても大丈夫そうだね」

 

そしてショートカットへと向かう。

今回のショートカットはとてもファンタジー染みている。

 

「氷の竜か……」

 

全員がそれに乗り込むと竜は羽ばたき始める。

 

「太陽の位置からすると北西に向かってるのか……どうやら、親切なことに雪原の境界まで送ってくれるらしいね」

 

「……ん。ミレディとメイルは見習うべき」

 

「わたし、解放者って女性の方が悪辣な気がします」

 

「シア、それはみんな思ってるよ」

 

その通りである。彼女達と共に生活していた男性解放者達は相当苦労していたに違いない。

 

雪原の西は魔人領であり、北は【ライセン大峡谷】、東は【ハルツィナ樹海】だ。北西に進んでいるということは、魔人領にも北大陸にも、どちらにも行きやすい場所に降ろしてくれるということなのだろう。しかも、上空の冷えた空気を余り感じないので、氷竜を媒介に簡易の結界も敷いてくれているようだ。

大迷宮を攻略したあと、極寒の雪原に放り出されるのは勘弁であるが、一部解放者の所業を思えば、「なんという気配り!」と、ボク達は少々感動してしまった。

魔人族のところに乗り込み、ユエの叔父に取り憑いている魔王に喧嘩を売りにいく予定でもある。

天之河達もボク達に付いてくるようだ。大物はともかく下っ端連中なら相手をできるので、梅雨払いをしてもらうことにした。

着陸地に近づいてきた。

 

「……っち。どうやら向こうからお出迎えのようだね」

 

着陸地点にいたのは大量の魔人族とそれを載せる飛竜や魔改造された魔物そして──

 

「やはりここに出てきたか。今度こそ貴様達を仕留めくれるわ」

 

魔人族の将軍フリード、そして本物の神の使徒達だった。

 

 




士郎くんがエルキドゥやエミヤのようなスキルを除いた、神代魔法適性は空間魔法と魂魄魔法です。
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