ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
ベヒモスが現れる。団長は絶望した表情を一瞬作るのだが、すぐに立て直し指示を出す。とにかく階段の所に向かえと、しかし階段側には骸骨兵がわんさか湧く。さながらモンスターハウスだ。
最初はベヒモスに向かって士郎達はハジメから貰った銃でベヒモスを撃ったのだが、強固な皮膚に阻まれダメージすら与えることが出来なかった。無駄だと分かった途端すぐに逃げる。
しかしだ、天之河がメルド団長を捨てて逃げれないと叫ぶ。その団長は自分達騎士が相手を務めると言う。そしてベヒモスが雄叫びを上げ、突撃しようとする。
「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず──『聖絶』!!」」」
騎士達が全力の障壁を貼る。その障壁にぶつかり部屋全体が大きく揺れる。逃走中の生徒達から悲鳴が聞こえ、その揺れにより転倒する者も相次ぐ。骸骨兵──トラウムソルジャーが剣を振りかぶろうとするも優花が持っている銃で射撃してトラウムソルジャーを怯ませる。その隙にハジメが『地形錬成』でトラウムソルジャーの一団を奈落に突き落とす。
ほとんどの生徒が恐慌、パニック状態に陥り、我先にと階段へ走る。 騎士の一人アランが声を上げて指示するものの生徒達には聞こえもしない。
ここで必要になってくるのは突破力とカリスマ性を合わせ持つ人物だ。
残念ながら士郎にカリスマ性はないし突破力もない。あるのは手数だけである。
「皆、トラウムソルジャーの相手お願い!僕は天之河君を呼んでくる!」
ハジメはそう言うとベヒモスの所まで走る。そう、この場には天之河光輝の存在が必要なのだ。
士郎達はその声に応えるために、トラウムソルジャーの相手を務める。白と黒の剣を使いトラウムソルジャーの攻撃をいなし隙をを作っては仲間の攻撃でダメージを与える。雫も同じように刀で攻撃を弾いて流れるように攻撃を当てる。
何度も打ち合っているとついに剣が砕け散る。それを見たトラウムソルジャーは剣を勢いよく振り下ろす。
士郎の両手には新たな剣が握られ、トラウムソルジャーの剣を受け止める。何が起きたのか理解出来ず「ガッ!?」とマヌケな声が漏れる。その隙に士郎は攻撃をしてトラウムソルジャーを倒す。
すると後ろから一人の声が聞こえて来た。
「──『天翔閃』!」
極光が迸り、トラウムソルジャー集団が吹き飛ぶ。
「皆!諦めるな!道は俺が切り開く!」
そんな声にと共に再び『天翔閃』が敵を吹き飛ばす。
「お前達!今まで何をやってきた!訓練を思い出せ!連携をさっさととらんか!」
団長の一撃で再び敵が吹き飛ぶ。
そこで士郎は疑問に思った。ベヒモスはどうなっているかと。振り向いたらハジメが一人でベヒモスを抑えていた。流石にハジメ一人では危険だと思ったのか、士郎は反射的にハジメの所まで飛び出した。
それに釣られるように、はたまた自分で動いたのかわからないが幸利もハジメの所まで走り出す。
「ハジメェ!」
そう叫びながら士郎は3対6刀投影した剣をベヒモスに投げつける。深くとは行かなかったもののベヒモスの硬い皮膚に刺さる。そして指を『パチン!』と鳴らす。それに共鳴するように白と黒の剣が爆散してベヒモスに僅かだかダメージを与える。
「士郎!?」
「俺もいるぞ!ここに暗撃を望む!『暗球』!」
死角から放たれた幸利の暗黒の塊がベヒモスを怯ませる。
彼等は手に持つ銃を駆使してベヒモスの足止めを続ける。その時後ろから火属性の魔法が放たれベヒモスに当たる。だが、一つの火球がハジメの方に曲がる。
それにいち早く反応したのは幸利だった。彼はハジメの前に出て彼を庇う。しかし、衝撃に耐えきれずハジメと共に戦闘によって出来た大穴に落ちる。その時だった、士郎の横をものすごい速さで走ってくる人影が二つ、香織と優花だ。香織はハジメを優花が幸利の手を掴み落ちるのを止める。
「大丈夫?ハジメくん!」
「幸利!捕まってなさいよ!」
「「ありがとう……」」
ボクは地面から鎖を2本放ちハジメ達を縛り、引っ張る。後ろから雫も走って来て、引っ張る。
するとベヒモスの咆哮が響き、こちらに向かってくる。
しかし既に脆くなった地面にベヒモスのような巨体が『ズシンズシン』と音を立てながら歩いてくるとどうなるか。
「しまった!橋が!」
そう崩れるのだ。そのまま士郎達は重力に引っ張られ、ベヒモスと共に奈落の底に消えていってしまった。
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恵里side
檜山の独断専行でトラップが発動して、僕達はどこか別の場所に転移してしまった。
そして橋の方にはベヒモスが、階段側には骸骨兵──トラウムソルジャーが現れる。パニック状態になった生徒達は我先にと階段へ走る。トラップを発動させた無能の檜山もだ。
お兄ちゃんは僕達に指示を出して的確に迎撃していく。すると突然ハジメがベヒモスの方へ駆け出す。どうやら天之河を呼びに行ったようだ。僕達は彼が天之河を連れてくる時間を稼ぐ。
そして天之河が天翔閃を使いトラウムソルジャーを倒す。お兄ちゃんがベヒモスの所に走る。幸利もだ。
そして銃声とお兄ちゃんの攻撃、幸利の魔法がベヒモスの動きをその場にとどめる。
ベヒモスが隙だらけなのでハジメ達を援護すべく魔法が放たれた。しかしそのうちの一つがハジメに向かって曲がる。僕はその火球を放った人物を最初から見ていた。その張本人を僕は偶然にも視界に捉えていた。それは檜山だった。
幸利が庇うも衝撃に耐えられずハジメと共に落ちる。それを香織と優花が掴み、お兄ちゃんと雫が鎖を使って引き上げようとする。しかしベヒモスの体重により、橋が崩れ落ちていきお兄ちゃん達も奈落の底に落ちていった。
「待って!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
僕はお兄ちゃん達が落ちた穴に向かおうとするもメルド団長に引き止められる。
「嘘……だろ……南雲達が……」
坂上くんは絶望して跪く。
「やめろ恵里!これ以上死人を出すわけにはいかん!」
「離せ!お兄ちゃんが死んじゃう!」
僕は穴の所に行くのを諦め、犯人である檜山を問い詰める。
「お前が……お前がハジメ達を落とした!」
「な、なんのことだよ!」
「とぼけるな!お前が魔法をハジメの所に曲げなければお兄ちゃん達は落ちずに済んだんだ!」
僕は息を荒くしながら杖を力いっぱい握る。
「……してやる……殺してやる!!」
僕は怒りに任せて杖を振りかぶろうとした時。僕の意識は刈り取られ、目の前が真っ暗になった。
そして僕が目を覚ましたのは5日後だった。
その5日間に何があったか、鈴と坂上くんから聞いた。
まず檜山が無罪放免となり、お兄ちゃん達が落ちたのは事故だと言うことにされた。その時に鈴と坂上くん、遠藤が反対していたのだが、覆ることはなかった。しかも檜山の無罪を主張したのは天之河だった。
その上ハジメは無能扱いを受けて、香織達を道連れにしたとまで言われるようになってしまった。天之河はそれを一度は反対したのだが。
鈴達は何も出来なくてごめんと謝って来た。彼らは悪くもないのにだ。
正直に言うと僕は怒りが込み上げて来た。犯罪者を無罪にし、錬成師として新たな道を切り開いたハジメの無能扱いを取り下げなかったりした天之河にだ。
僕はあることを思い出した。それは国から支給された杖だ。その杖を坂上くんから受け取ると、そこには青く発光する線がある杖だった。
「鈴、坂上くんお兄ちゃんは生きてる……」
「恵里?なんで分かるの?」
「だってこの線、お兄ちゃんが生きてるから光ってるんだ。前にお兄ちゃんが言ってたんだ、これはお兄ちゃんが解除するか死ぬかじゃないと解けないって」
「そうなのか……」
「だから僕、強くなる……お兄ちゃんが安心してくれるように。だから鈴、坂上くん手伝ってくれる?」
「うん!恵里がそうしたいなら鈴は手伝ってあげる!」
「俺も微力ながら協力するぜ」
「ありがとう!」