ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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綾鷹でした。

なんて冗談はさておき、今回エヒトに選ばれてしまったのは……


選ばれたのは……

「そうだ、私だよ。アレーティア。驚いているようだね……無理もない。だが、そんな姿も懐かしく愛らしい。三百年前から変わっていないね」

 

「アルヴ様?」

 

能面のような表情で、しかし、疑問の呼びかけとわかる抑揚で魔王の名を呼ぶアハト。その様子からすると、まるでユエに対する魔王の態度が予想外の事態であるように見える。それは、使徒だけでなく、フリードも同様らしく僅かに訝しむ表情になっていた。

するとアルヴがアハトに手を向ける、その方向にはフリードもいる。

次の瞬間、ユエに似た金色の魔力光が閃光手榴弾の如く爆ぜ、一瞬、光で全てを塗り潰した。その光が、逆再生でもしているかのようにディンリードの手に吸い込まれて消えた後には、まるで電源が切れた機械のように崩れ落ちている使徒達の姿があった

いきなりの状況に全員が唖然としている。

さらにアハトたちに向けた手を上に掲げると、ドーム状の魔力が広がる。

 

「ああ、安心して欲しい。盗聴と監視を誤魔化すための結界だよ。私が用意した別の声と光景を見せるというものだ。これで、外にいる使徒達は、ここで起きていることには気がつかないだろう」

 

「……なんのつもりだ」

 

まるで使徒と敵対している者であるような言動に、ハジメがスっと目を細めながら問い質した。

 

「南雲ハジメ君、といったね。君の警戒心はもっともだ。だから、回りくどいのは無しにして、単刀直入に言おう。私、ガーランド魔王国の現魔王にして、元吸血鬼の国アヴァタール王国の宰相――ディンリード・ガルディア・ウェスペリティリオ・アヴァタールは……神に反逆する者だ」

 

魔王としての威厳を以て発せられた言葉が、広大な謁見の間に凛と響く。その言葉は、その場にいる者達へ本気で言っていると思わせるだけの力を持っていた。

 

「うそ……そんなはずはないっ。ディン叔父様は普通の吸血鬼だった!確かに、突出して強かったけれど、私のような先祖返りじゃなかったっ!叔父様が、ディンリードが生きているはずがない!」

 

「アレーティア……動揺しているのだねそれも……当然か。必要なことだったとは言え、私は君に酷いことをしてしまった。そんな相手がいきなり目の前に現れれば、動揺しない方がおかしい」

 

「私をアレーティアと呼ぶなっ!」

 

ユエが叫びながら、雷龍を放った。それに紛れてハジメと香織の二人もレールガンを打っていたが障壁に無効化されてしまった。

しかし、ボクは叫ぶ理由がわからないが、何故叫んでいるフリをしてるのかはわかる。

なんせ、既にディンリードの真実を知っている。

だが、彼を乗っ取っているのなら、その真実をも知っているはずだ。それをどこに入れたのかも。いや、知っていてもボク達がが知る為に必要なものがあって、それをこっちは裏技で知ってしまったのなら、向こうが知っている事を知らないことがわかる。

そしてディンリードの話が始まる。

彼が魔物使いだったこと、先祖返りではないのに何故ここまで生きているのか、自分の正体がディンリードでありアルヴだということ、自身が神に反逆する存在だということ、ユエがエヒトに狙われる理由、ユエが封印される前の王城での話だった。

 

「……人質は?貴方が本当にディン叔父様なら……私を裏切っていなかったというのなら、どうして」

 

「こうでもしないと会うことすらしてもらえないと思ってね。それに、いざというときのために彼等を保護するという目的もあった。怪我に関しては許して欲しい。迎えに行ったのが使徒だったことと、彼女達の手前癒して上げることが出来なくてね。一応、死なせないようにと命じてはいたんだ。これからアレーティア共々、仲間になるかもしれないのだしね」

 

「仲間……だと?」

 

「アレーティア。どうか信じて欲しい。私は、今も昔も、君を愛している。再び見まみえるこの日をどれだけ待ち侘びたか。この三百年、君を忘れた日はなかったよ」

 

「……おじ、さま……」

 

「そうだ。君のディン叔父様だよ。私の可愛いアレーティア。時は来た。どうか、君の力を貸しておくれ、全てを終わらせるために」

 

「……力を、貸す?」

 

「共に神を打倒しよう。かつて外敵と背中合わせで戦ったように。エヒト神は既に、この時代を終わらせようとしている。本当に戦わねばならないときまで君を隠しているつもりだったが……僥倖だ。君は昔より遥かに強くなり、そしてこれだけの神代魔法の使い手も揃っている。きっとエヒト神にも届くはずだ」

 

「……わ、私は……」

 

ディンリードの微笑みは益々深まり、手を差し出し、ユエを迎えるための言葉を紡ごうとした。

 

「さぁ、共に行こう、アレーティ――」

 

ドパパパパパン!ズガァァァァン!

 

ハジメ達が一斉に攻撃したのだった。

 

「よく回る口だね。いや、作った原稿でも読んでたのかな?」

 

「既に知ってるから別に話さなくても良いのに、下が肥えてるのかな?かな?」

 

「そもそも叔父様が解放者のことを信じてないなら私をオルクスに封印したりしない」

 

そう言う3人は警戒体勢を続ける。

 

「やると思ってたけど、ここでやるか……クククっやっぱり面白いよみんな」

 

ボクらも武器を構える。

真実を知らない王国に残っていた組は動揺していたが武器を構えている。

既にディンリードの真実とアルヴのことを知っているボク達からすれば無駄に時間を食ったが、問題は今のところない。念の為解析眼で確認したが、魂は一つしか見えなかった。

ユエの叔父のことを皆に軽く説明した。

 

「以上のことから、こいつは敵だ」

 

「それにこいつがかわいいアレーティアって言うのはイライラしたよ……」

 

「それを言って良いのは私たちかディンリードさん本人だけだよ?」

 

「二人は嫉妬諸々でぶっ放したのね……」

 

呆れたように雫が言うが、全員が同意したような顔をしている。

そのことにユエの顔が少し赤くなる。

 

「……二人が嫉妬……ふふっ」

 

大変、嬉しそうである。

脳天と胸をぶち抜かれ、全身を雷で焼かれたのにも関わらずディンリードは動いている。

 

「しぶといな……流石、吸血鬼と言ったところか?」

 

「肉体を改造しているお陰さ。しかし、何故この男の真実を知ってる?……いや、そんなことはどうでも良い。次善策に移らなければならないようだな……あのお方に面目が立たないだろう」

 

「死体を使ってるなんて悪趣味ですぅ」

 

「このエヒト様の眷属神たるアルヴが、死んだ後も肉体を使ってやっているのだ。選ばれたのだぞ?身に余る栄誉だと感動の一つでもしてはどうかね?全く、この男も、死ぬ前にお前を隠したときの記憶も神代魔法の知識も消してしまうとは肉体以外は使えない男よ。生きていると知っていれば、なんとしても引きずり出してやったものを」

 

「……お前が叔父様を殺したの?」

 

「ふふ、どうだろうな?」

 

「……答えろ」

 

ユエから殺気が噴き出す。紅の瞳が爛々と輝き、手元の蒼炎が煌きを増していく。その青き焔はハルツィナ樹海で見せた焔だった。選別した魂のみを焼き滅ぼすことも出来る凶悪なもの。その脅威は、標的にされている魂そのものが感じ取るはずだ。

 

「ククク……もしかしたらこの男は生きているかもだぞ?」

 

「……だとしてもそのまま殺す。叔父様はその身体を使われて、世界を滅ぼされるのを望むはずがない。なら私が終わらせる」

 

ユエの覚悟が伝わると同時に魔王城の窓、壁、天井が砕け散る。

外には魔人族と魔物、神の使徒達が戦闘体勢で現れた。

 

「この状況から逃げ延びる事ができるかな?」

 

流石にこの状況からリーニャ達を守りながらは厳しすぎる。

 

「……どうしたもんか」

 

策を何度も頭で練るものの全て失敗してしまう。敵は既に魔法もブレスも発射待機に入っている。結界で防いだところで、四方八方からの長い攻撃には流石に耐えることは不可能な上に、ユエや香織が守りを固めてボクらが攻撃したとしても、神の使徒を複数体を相手するのは正直、無理だ。ゲートキーを使ってワープしたとしよう。流石にこの状況で長距離の移動は流石にキツい上に、すぐに場所は特定されてしまう。さらに言うならここからのワープしようにも妨害結界が貼られており、ゲートキーそのものが使えない…

息切れを期待なんてできない。

 

「お兄ちゃん……」

 

「……詰みかなぁ」

 

しかし、ここからかなり離れた位置から物凄い勢いでこちらに向かってくる、大量の気配がだ。

 

「諦める必要がなくなったみたい……だね…鈴!香織!ユエ!防御障壁!」

 

ボクの叫んだ指示通り結界を張る。三重に貼られた結界はそう簡単に破られはしないが、いつまで持つかわからない。

 

「クククっ……フハハハハハッ!亀になり耐えることを選択したか!だがその甲羅がいつまで持つかな?1日?2日?或いは1週間?だとしても、無駄だがな。やれ!」

 

アルヴは嘲るように笑い、そして総攻撃を命令した。

一斉に魔法、ブレスが襲いかかる、結界がそれを阻むが、その悲鳴が響く。

ボクも熾天覆う七つの円環で強力そうな魔法、ブレスを防ぐ。

 

「そりゃ亀になるよ……だってね……仲間が来てるからね!」

 

キュアアァァァァァン!

 

聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。

 

「何ッ!?グワァ!?」

 

魔人族の悲鳴が聞こえた。それと同時に魔法、ブレス攻撃がドンドン減っていく。

その隙にボクは偽・螺旋剣を投影し、結界の発生源であるアルヴの真後ろの魔法石を破壊する。

 

「今だ!全員散開!」

 

3人が結界を解除したと同時に全員一斉にゲートキーで安全な場所まで一瞬にしてワープする。

ワープした先は魔王城から少し離れた場所だった。

 

 

「ふう……死ぬかと思ったわ……ったく遅えんだよ……ヴェアベルト!」

 

幸利が叫ぶと上空からこちらに落ちてくる一つの影が見える。

着地する前に一度浮遊して、その勢いを一度殺した。

 

「すまない。合流できた場所が、ここからかなり遠くてな。だが、フリードの奴の手下よりは数は少し少ないが、練度なら劣っているとは思ってない。とにかくそちらの非戦闘員を安全な場所まで避難させてくれ」

 

「もう鍵でハイリヒ王城の中に開いたからすぐにでも避難できるよ」

 

「よし、全員、先生とリリィ先導で入って。全員が避難したらボクらはここに残り、奴らを迎え撃つ」

 

ボクは空力を使って上空へと跳んでいく。

それ続いてハジメ達も神の使徒に向かっていく。

 

「無駄な足掻きはやめなさいイレギュラー」

 

アハト──いや全員が同じ顔なので全くわからないのでこれから木偶と呼ぼう。

木偶に斬りかかる。連中が使う分解も既に対応している。あれは魔法のようなモノだと考えている。ならばボクの持つ対魔力がそれを防ぐと考え、恵里に一度強力してもらい、実験した。

結果、防ぐことに成功したのだ。

 

「お前らの分解は既に対応済みだ!」

 

両手に投影した元の能力が霞みそうになっている干将・莫耶で奴らの大剣を破壊する。そしてその勢いのまま、木偶の頭と胸を突き刺し確実に仕留める。奴らの防御にも分解が関係しているのは初戦で把握している。

そのまま次の木偶に斬りかかる。

数が多いが、それでもやらなきゃ、ボクらの地球が狙われ、家族が危険に晒されてしまう。

それだけでもなんとかして防がねばならない。

 

─────────────────────────

 

士郎達は魔人族の相手をヴェアベルト達と天之河達に任せて、神の使徒の相手をしている。

皆の武器に分解耐性を付与しており、神の使徒の守りを破ってダメージを与えることが出来ている。

 

「ハジメ!先にアルヴを討つ!」

 

「ああ!梅雨払いは香織達に任せる!僕、ユエ、士郎で確実に仕留める!」

 

士郎達は3人でアルヴのいる神の使徒が守る王城のてっぺんまで駆け抜ける。

その間、恵里達が神の使徒の相手をする。鈴、坂上くん、天之河、の3人は魔人族の相手をする。

恵里は神の使徒のスペックを完全に掌握はしていないが、士郎達に並ぶレベルまでは使いこなしているので苦戦はするが負けることはない。

 

「『無空』!」

 

恵里は空気を立方形に切り裂く。そこは完全に切り離される。そこから空気が失われていき、そして最後は窒息して死ぬ。生物として活動している以上空気が無くては死ぬと考え、真空の空間を作り出した。

しかし神の使徒は口パクで何かを喋ると同時にその空間を破る。

 

「まともな生き物じゃないんだね……」

 

どうやら連中、フ○ーザと同じで空気が無くとも生きれるようだ。

 

「だったら……『火柱』!『凍獄』!」

 

恵里は背中の翼から極太の火柱を放ち、使徒の周囲を黒い氷の空気で蝕む。

逃場をなくした使徒は翼で完全にその身体を覆って防御する。

その隙にバルムンクでその翼を切り裂き、デュランダルで剣を破壊、そして両手の剣で首を刎ねる。

 

「後ろッ!見えてるよッ!『血風』!『弾岩』!」

 

後ろから襲いかかる2体の神の使徒に向けて紅い風の刃とコークスクリュー回転する岩の弾丸が放たれる。岩を剣で弾き風の刃を翼で無効化する。

 

「なんだコイツ……聞いてた話より弱い?」

 

恵里は不審に思った。士郎から聞いた情報だと倒すのに確実に負傷は避けられないはずの相手がほぼ一撃によって葬られている。

周囲を見れば香織や幸利の二人なんか、3体を相手に余裕そうだ。

ブラックロッドの先端を二又に分け、神の使徒の目に突き刺し、そのまま頭を貫き、ロッドに魔力を通して使徒の頭を爆散させるというエゲツない方法で殺している。

香織は使徒の身体に回復魔法を流し、過剰回復で腐らせ、グズグズになったところをスヴェートで全身蜂の巣にする。

 

「思ったより弱い?」

 

「あと、さっきから喋らねぇのが気になる…」

 

2人も違和感を抱いているが、怪しみながらも確実に神の使徒を殺している。

 

「さっきから真っ直ぐこっちに向かってくるだけなのが余計に怪しいわ……」

 

「ふむ……何かの狙いは……おそらくユエをハジメから引き離そうとしておるのじゃろう……」

 

「ホントね……まるで時間稼ぎ……いえ、距離を離されている?」

 

「雫……?距離を離されていたとしてもユエにはお兄ちゃんのアーティファクトがあるから問題ないんじゃないの?」

 

「そうなのよ……でも士郎さんは不安なままだったわ」

 

「何が不安……なんでしょうか……っ!?」

 

突如シアのウサミミが『ビクンッ!』と直立する。未来視で何かを視たようだ。それと同時に、ブルブルと身体が震えだす。

 

「……嘘……っ!嘘ですッ!!そんな……だって……負けるなんてッ!」

 

その未来を否定するように、焦る叫び声を上げながら、空中を駆け上がって行く。

周りはシアの行動に戸惑いや驚きを隠せない。その先には誰がいるのか全員わかっているが故に、何故、向かうのかわからない。

 

「シア…!?」

 

その時だった。

ハジメのすぐ近くに眩く輝く白い太い柱が落ちてきた。

 

─────────────────────────

 

恵里side

 

「

お兄ちゃんッ!?
」

 

ハジメの隣で神の使徒と戦っていたお兄ちゃんがいきなり光の柱に呑み込まれた。

さっきのシアが視た未来はこれだったのか。

僕は目の前の神の使徒を殺し、翼を広げ、全速力で光の柱を砕きに向かう。

両手に握る剣を振り回し、魔法を放つのだが、全く効果がない。

 

「退きなさいッ!あなた達に構っててる場合じゃないのよッ!」

 

雫が乱暴に刀を振り払い、神の使徒の四肢を刎ね、身体を縦に両断し、光の柱へ斬りかかる。

 

ガキンッ!

 

「くっ……!」

 

雫の刀が柱に弾かれる。オマケに傷一つ付いていない。

 

「わたしが行きます!ドリャァァァァ!」

 

ガアァァアン!

 

シアが星砕きを叩きつけるも、星砕きから腕に衝撃が伝わるだけで、ヒビ一つつかなかった。

 

「まだ……まだァァァ!」

 

諦めず、今度は星砕きの突起を何度も打ち付ける。

 

ガァン!ガァン!ガァン!

 

「ぐうっ……!」

 

すると背後に神の使徒が現れる。

僕が振り向くと既にそいつは攻撃態勢に入っており、防御も間に合わない。

 

「『天しゃk「させるかぁ!」」

 

声と共に飛び蹴りを放ち、神の使徒の魔法を止めたのは、黒い魔力のオーラを放つ幸利だった。

それでも次々と現れる神の使徒達。

黒い影が現れ、黒炎を放ち、焼き尽くして行く。さらに銃弾、様々な属性を纏った投擲物が梅雨払いする。

 

「後ろはまかせろ!」

 

「お主達は士郎を!」

 

「ありがとう!2人とも同時に攻撃するよ!」

 

幸利達が湧いて出てくる神の使徒の相手をしている間に僕達は柱を破壊する為に魔力を溜める。

後ろでは激しい戦闘の音が響く。

 

「皆さん……大丈夫でしょうか?」

 

「シア……今は士郎さんを助けることに集中しなさい……」

 

「……はい」

 

「今度は僕たちが助ける番だよ……」

 

確実に僕達は魔力を溜める。漏れないよう、身体に、武器に。

 

「準備はいい?」

 

「ええ、問題ないわ」

 

「今度こそあの柱を破壊してやるですぅ…っ!」

 

魔力が溜まり切ったのを感じ取ると、3人同時に柱に向けて、全力の一撃を放つ。

 

「「「ハァァァァァァァァァア!」」」

 

ガギィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!

 

全力の一撃が柱にぶつかり、爆音が鳴り響く。

ギリギリと柱に武器がめり込んでいく。

 

(貫け……!貫け……っ!)

 

僕は祈る(・・)、攻撃しても傷一つつかない柱を破壊する為に、力を込める。

 

ピシ……ピシピシッ……!

 

柱にヒビが入り始める。

 

「「「貫けーーーーーーーーっ!」」」

 

叫び声が重なり、魔力が吹き溢れる。

遂に、柱を突き破ることに成功し、白い破片が空気に溶けるよう消える。

 

「お兄ちゃん!」

 

僕はすぐにお兄ちゃんの無事を確認する為になりふり構わず、飛びつく。

 

「大丈夫!?身体に違和感は?怪我は?」

 

その問いに対しての解答は──

 

「……ふふ、平気だ。むしろ、実に清々しい気分だ」

 

「えっ……?」

 

いつもと違う口調で、別の誰かが答えたように聞こえた。

 

「恵里さん!離れてください!そいつは……士郎さんじゃないですッ!」

 

シアが叫び声を上げて、危険だと知らせる。

だが僕にはそれを聞いて行動に移すことができなかった。

 

ズブシャァ……!

 

腹部から背中にかけて何かに貫かれ、緋い鮮血を撒き散らし、茫然としてしまった。

 

「お……にい……ちゃ……ん……?」

 

霞む意識の中、目の前の兄であろう存在は不適な笑みを浮かべていた。

 

「恵里!」

 

雫の気配が近づいてくるのがわかる。無理矢理僕の身体を貫いているモノから抜き。距離を取る。そして宝物庫から試験管を取り出し、栓を開けて、その中身を僕には飲ませる。

 

「しっかりして!神水!飲んで!早く!」

 

口の中に入ってくる、爽やかで冷たい液体をゆっくり飲み込む。するとみるみる内に身体が再生していった。

 

「雫……助かったよ……ありがとう……」

 

「ええ……でもなんで……士郎さんは……恵里を……」

 

その答えはすぐにわかる。

 

「ふふふふ……良い気分だ……イレギュラー。現界したのは一体、いつぶりだろうか……」

 




もはや士郎くんの使う干将・莫耶が形と引き合う能力とかしか原型を留めてない件について。
ええ〜エヒトに乗っ取られたのはユエさんではなく、士郎くんになりました。
え?なんで士郎が?
それはまぁ次回ということで。
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