ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
折れるなよ?
言ったでしょ?
『辛い今を乗り越えて明るい今を迎えましょう』
って
着いて来れるか?(SWB)
「ふふふふ……良い気分だ……イレギュラー。現界したのは一体、いつぶりだろうか……」
士郎の声で別の何かが、喋っている。
恵里の身体を貫いたのは彼女の血で染まっている奴の左手だ。
そして身体の調子を確認しているのか、手を握ったり、首を回したりしている。
「ふむ……我が魂の完全な定着には至っていないが……この程度、なんの問題もない」
恵里達なんて眼中にないのか、ただ辺りを見渡している。
その不意を突こうとシアが星砕きを振り下ろす。
「シア!ダメッ!!」
「エヒトの名において命ずる『動くな』」
「ッ……あぅッ……」
シアだけに向けられた言葉が彼女の行動を止めてしまった。
力なく崩れ落ちるシアの首をその右手で握る。
「シアを離しなさいッ!」
雫が奴の右手に刀を振り下ろすものの──
ガキンッ!
指先一つで止められてしまう。
そのまま弾き、シアを投げつける。
「雫ちゃん!シアちゃん!」
「この野郎ッ!これでも喰らえ!」
ハジメが弾丸を放つが、悠然と佇む奴の手前の空間でピタリと止まり、触れることすら叶わなかった。
だが止められることすら想定した動きで、一瞬で背後に周り込み、『剛脚』で首を狙ったが。
「エヒトの名において命ずる、『止まれ』。消し飛ぶがいい『覇王の咆哮』」
蹴りを放つ瞬間に身体が固まったハジメを魔力の塊で攻撃する。
「ウワァァァァアッ!」
「「ハジメくん!/ハジメッ!」」
香織とユエの2人が駆け寄る。
魔力の塊だったのか、よかったのか悪かったのかわからないが、大きなダメージを受けただけにとどまった。
「奴は……何をしやがった……」
呆然とその光景を見ていた幸利は、理解しようと必死だった。
指すら構えることなく、言葉を発するだけで仲間が倒れていく。
『その男の肉体は、貴様のような邪神が身勝手に扱って良いものでは無いわ!!』
黒竜に身を変えたティオが強烈な黒炎ブレスを放とうと、口に炎を溜めている。
がしかし、
「『破摧する火焔』」
エヒトの声により、銃が暴発したように、ティオの口内で溜められた黒炎が爆発する。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!』
自身の炎で喉が焼き尽くされ、悲鳴が響く。
さしものティオも自身の炎で焼き尽くされるのは耐えられなかった。
「ティオ!?」
「テメェ……ッ!」
解析を諦めた幸利がブラックロッドを回し魔力を溜める。優花はそれの妨害を防ぐために苦無を、槍を短刀を投げる。
「『消える黒鉄』」
しかし、それは全て塵となって消え去る。それに行動
割いていることを利用して優花は次々と物を投げる。
それに合わせて、香織が銃を撃つ。
「無駄な足掻きをする……『虚空の炎害』」
投擲物と弾丸は焼き尽くされ、それと同時に2人の身体から凶々しい紫の炎が発生し、焼き尽くし始める。
「うあ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛ッ!?」
「きゃあぁぁぁぁ!」
そんな犠牲の元、幸利の魔法が発動する。
「まずはテメェの魂を灰にしてやる……『冥界龍』!喰らい尽くせッ!」
回るブラックロッドの中心から黒く紫色に発光し、鋭い牙を生やし、ありとあらゆる物を飲み込んでしまいそうなほど恐ろしい姿の龍がエヒトに向けて襲いかかる。
「ほう……良い魔法だ……よく魔力も練られている、この世界に招かれて、数ヶ月でこれほどの魔法を使うとは……だが我の前では無意味だ。『溶かし堕とす獅子王』」
床が盛り上がり、紅蓮の炎の立髪を持つ獅子が現れる。立髪から放たれる熱気だけでなく、身体からも発せられる熱気だけでも、身体焼き焦げそうなほどだ。床がドロリと融解しているのを見れば誰も触れようと思わないだろうが、直接、身体に触れれば、一瞬で灰になるだろう。
自身が顕現させた龍があの獅子に通じるのか不安になる。だが諦めればゲームオーバーになってしまう。
そんな思いの中、龍の牙が獅子の顔に突き刺さるが、ボロボロと牙がボロ炭のように崩れ落ち、危険を感じた龍が離れた瞬間、獅子の牙が首に突き刺さり、龍の身体が燃え尽きる。
「クソッ……!」
更に魔法を発動しようと、全身に魔力を回す。黒い魔力の本流とイナヅマが彼の周囲の塵を吹き飛ばしている。
「エヒトの名において命ずる『鎮まれ』。そして『平伏せよ』」
その圧倒的な魔力ですらたった一言で消え失せる。
そして背後を向き、天之河達に指を刺し。
「『捕える悪夢の顕現』」
「ひっ……!」
「うぁ……」
「ぁ……ぁ……」
天之河達は顔面蒼白となりながら転倒してしまった。そして、まるで自分の首が繋がっていることを確かめるように首筋を撫でたり、足があるのを見て震える手で感触を確かめたりし始める。だが、感覚がないようで青褪めた顔は元に戻らない。立ち上がることも出来そうになかった。
「我に牙を向く者共よ『跪け』」
そしてこの一言で、全員が跪いてしまった。
しかし、閃光のよう動いた者がいた。
「……『五天龍』!」
ユエだ、エヒトの声によって跪くことなく魔法を行使して攻撃したのだ。五属性の龍がエヒトに向けてブレスの構えをとる。
「ほう……神言を跳ね除けた訳で……ないな……?まぁよい、その美しい魔法に免じて、相手をしてやろう。確か『大地龍』だったな。では我が改めて名を与えよう『地より来たる命を喰らう龍』」
五天龍に対してエヒトは士郎がかつて、商人達の護衛の時に使った龍に新しく名を与えた龍を呼び出した。
前の姿よりも凶悪な牙を剥き出しにし、禍々しい黒い瞳孔がユエを見抜く。
ユエの龍がそれぞれの属性のブレスを吐き出す。
それに対して、エヒトの龍は強烈な咆哮だけでそのブレスを霧散させる。そしてそのまま牙でユエの龍を喰らい始める。
喰われるものかとユエの龍が噛みつき返すのだが、自由に形を変える龍が身体から棘を生やし、内側から貫き、五天龍を消滅させる。
「……だったらッ!」
ユエが次なる魔法を放とうとしたのだが、背後から金色の鎖が何もない空間から現れ、彼女を背中から貫いた。
「……ガフッ……!?な……にが……?」
「クククッ……貴様の魔法は気品に溢れているな……この身体は貴様等が神代魔法と呼ぶもの……つまり我が扱う『理法術』の適性が素晴らしいのだがなぁ……一つ惜しい点がある。それは魔法への適性がないのだ。このままでは我の魔法の格が下がってしまう……だが貴様の適性さえ写し入れてしまえは完璧だ……」
ズブシャァ……!
そう言ってユエの身体を縛り、その肉体を素手で貫く。
ユエの身体に金色の線が発光する。
「ガハッ!ぐっぐぅぅうッ!」
必死に拘束から抜け出そうと身じろぎするのだが、抜け出せない。
「……ふむ。これで貴様も用済みだ」
エヒトはユエから手を抜き、そのまま鎖を解き、地面に落とす。
発光していた金色の線はなくなっていた。
「ユエッ…!動けッこの身体ッ……」
ハジメユエに駆け寄ろうとするのだが、エヒトに身動きを取ることを封じられ何もできない。
「では、ここで幕引きとしよう……」
エヒトからあり得ないほどの魔力が溢れる。
誰も阻止することが出来ないことをわかっているエヒトはゆっくりと絶望感を与えるためにわざとじっくり溜める。
ギンッ!
突然、エヒトの後ろに何者かが、剣を振るう。
「何?まだ動けるイレギュラーがいたのか?」
剣を振ったのは恵里だった。
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恵里side
エヒトに貫かれた身体は治ったのにも関わらず、僕の身体は動かない。
痛みで動かないのか、恐怖で動かないのか、全くわからない。
次々と仲間が傷つき倒れていく。
圧倒的な力の前になす術なく、落ちていく。段々と諦めの空気感が伝わってくる。
奴の言葉により全員の身動きが封じられ、何もできなくなってしまった。
(このまま何しないでやられてたまるか……動け僕の身体ッ……動け……動け動け動け動け……動け動け動け動け動け!)
僕は必死に身体を動かそうと力を込めていくがビクともしない。
歯軋りが聞こえそうなほど力を込めても動かない。その時だった。
右手の近くに落ちているデュランダルの刀身が輝き始めた。
パキ……パキ……パキパキ……
パリィン……
僕の身体の表面を覆っていたナニカがコーティングされていた飴細工が破れるように崩れ落ちる。
「うご…ける……?……ならっ!」
僕は全身に魔力回して、奴の背後に跳ぶ。
「喰らえッ!」
バルムンクを振り下ろした。
しかしそれは簡単に防がれてしまった。
「何?まだ動けるイレギュラーがいたのか?」
正直なんで動けるのかわからない。でも動けるのなら僕は必死に足掻く。
お兄ちゃんが助けられるのなら、
「ハァァァァァァァァァア!」
剣を振り、翼の魔弾を撃ち、炎の氷の、風の、土の、水の、雷の魔法を使い奴に攻撃する。
全て相殺されているが、そんなの百も承知だ。そう易々、通じるなんて思ってない。
それでも何か一つ掴めるのなら……掴めるのならっ!
「「うりゃぁぁぁぁぁあぁ!」」
僕の声と誰かの声が重なる。
エヒトの後ろではなく僕の横から。
シアだ。ヒビの入った星砕きを振り下ろす。
「……わたしだって諦めませんよ!……士郎さんと一緒に地球に行きたいんです!」
星砕きの乱打。
それすら軽々、打ち払うエヒトの足元から斬撃が飛来する。
「……私を忘れて持っちゃ困るわよ。はぁっ……はぁっ……」
口から血を垂れ流しながらも、雫が跳んでくる。
「面白い……この身体の持ち主の為に抗う姿は実に感動的だ、泣けるぞ?──だがな、それは無意味だということだ」
エヒトはシアの星砕きを掴みそのまま握り潰し破壊。その破片を熱風で吹き飛ばす。焼夷手榴弾のようになった破片はシアの身に大量の裂傷、火傷を負わせる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
そして雫の刀を指先で受け止め、それを握る手を掴み、豆腐を握りつぶすような感覚で握りつぶす。
「───────っ!?」
僕は首根っこを掴まれ、ギリギリとゆっくり首を絞められる。
徐々酸素が取り込めなくなっていき、視界がチカチカと明滅する。
「愛する者の手で殺される……実に良い余興だ。クククッ……最後に遺言でも聞いておいてやるぞ?イレギュラー?」
「黙れ……僕は……死ぬ気なんて……1ミリもない……ガァッ……グウゥッ」
「そうかではこのまま苦しみながら、愛する者を想いながら死ぬと……ガッ……グァッ……身体が……動かない……ッ!?まさか……あり得ん……!?」
突然奴が苦しみ始めた。
『殺……させるかよ……!』
エヒトと同じ声音だけど、
僕の首を絞める手が離れる。
一気に酸素を吸い込もうとするけどうまく呼吸ができない。
「ゲホッゲホッ!」
「恵里ッ!」
ボロボロの両手になった雫が駆け寄る。その手は青黒く染まり、痛々しい。
「雫……手……それにシアは?」
「恵里さんわたしならここです……」
星砕きの柄を杖代わりにヨロヨロと歩いて来る。全身が火傷に覆われ、1番熱を浴びた所は焼け爛れており、服もボロボロだ。
「さ、再生魔法かけないと……!」
僕はシアの身体に再生魔法をかけ、火傷だけでも治す。
「ありがとうございます……ですが奴に何が……」
「お兄ちゃんが抵抗してるんだよ……エヒトに乗っ取られないようにね」
エヒトは苦しみながらも撤退していく。
「……アルヴヘイト。我は一度、神域へ戻る。お前の騙りで揺らいだ精神の隙を突いたつもりだったが……やはり開心している場合に比べれば、万全とはいかなかったようだ。我を相手に、信じられんことだが抵抗している。調整が必要だ」
「はっ……ここはこのアルヴヘイトにお任せを」
そう言って撤退しようとするエヒトの身体に黄金の鎖が巻き付く。
『このまま……ボクごと……封印する……っ!みんなは……早く逃げ……』
お兄ちゃんの声が途切れ途切れに聞こえる。
僕らに逃げるよう指示する。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんはどうするの!?」
『ボクは……どうしようかな……とにかく……みんなが……生きること優先して……!』
「おのれ……まだ抵抗するか……ぐっ……なんだこの鎖……!身動きが取れぬッ!?」
エヒトは必死に踠くのだが鎖は神を縛る力を持つ。
当然の結果である。
「フリードよ……我を運べ……解析に時間がかかりそうだ……」
「はっ主の御心のままに」
すると、その頭上から先程降り注いだのと似た光の粒子が今度は舞い上がり、謁見の間の天井の一部を円状に消し去って、直接外へと続く吹き抜けを作り出した。
光の粒子はそのまま天へと登って行き、魔王城の上空で波紋を作りながら巨大な円形のゲートを作り出した。天地を繋ぐ光の粒子で出来た強大な門──まさに神話のような光景だ。おそらく、エヒトの言う神域という場所へ行くための門なのだろう。
エヒトは、掲げた腕を下ろすとふわりと浮き上がり、天井付近から僕達を睥睨した。
「イレギュラー諸君。我は、ここで失礼させてもらおう。可愛らしい抵抗をしている魂に、身の程というものを分からせてやらねばならんのでね。それと、いずれはこの世界に花を咲かせようと思う。人で作る真っ赤な花で世界を埋め尽くす。最後の遊戯だ。その後は、是非、異世界で遊んでみようと思っている。もっとも、この場で死ぬお前達には関係のないことだがね」
そう言って神域に消えていった。
それに導かれるように残りの魔人族がその光の中に入っていく。
「お兄ちゃん……お兄ちゃぁぁぁぁぁぁあん!」
士郎くんの身体なのに総攻撃する皆さん容赦ないけど、士郎くんの身体が不滅に近いからこそゴリ押ししてエヒトを追い出す方法を模索してます。
まぁ模索できるほどの余裕なんてないんですけどね。
そして書いてて正直辛さと愉悦が混じった複雑な気分になりました。
途中適当になってしまう悪い癖……