ありふれた凡骨は決闘者の高みを目指す   作:生徒会長月光

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お待たせしました!

ハジメ豹変回になります。

それではどうぞごゆっくり


奈落の底での変異…闇を照らす一筋の光

城之内たちがベビードラゴンに乗り奈落を下降する前

 

ハジメが奈落へと落ちた時まで遡る。

 

ハジメは奈落へと落ちたが奇跡的に生きていた。

 

彼が気付くと川に下半身が浸かり、上半身が浮き出た岩に乗り上げていた。

 

それは落下途中の崖の壁に穴があいており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。ちょっとした滝であった。そのような滝が無数にあり、ハジメは何度もその滝に吹き飛ばされながら次第に壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴からウォータースライダーの如く流されたのである。とてつもない奇跡だ。

 

もっとも、横穴に吹き飛ばされた時、体を強打し意識を飛ばしていたのでハジメ自身は、その身に起きた奇跡を理解していないが。

 

まずは服を乾かさなければと錬成で魔方陣を刻み火種をの魔法を使う。

 

そうして服を乾かす間、

 

「城之内君は大丈夫かな?あの後無事に皆と合流できたのかな。……早く地上に出て、城之内君に会いたいな。」

 

そうして服も乾き出口を探すために道を進むハジメ。

 

巨大な通路になっている洞窟は複雑で障害物だらけでも通路の幅は優に二十メートルはある。狭い所でも十メートルはあるのだから相当な大きさだ。歩き難くはあるが、隠れる場所も豊富にあり、ハジメは物陰から物陰に隠れながら進んでいった。

 

そして4方向へ伸びる道へと差し掛かり気配を潜ませる。

 

そっと顔だけ出して様子を窺うと、ハジメのいる通路から直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのがわかった。長い耳もある。見た目はまんまウサギだった。

 

ただし、大きさが中型犬くらいあり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。物凄く不気味である。

 

明らかにヤバそうな魔物なので、直進は避けて右か左の道に進もうと決める。ウサギの位置からして右の通路に入るほうが見つかりにくそうだ。

 

ハジメは息を潜めてタイミングを見計らう。そして、ウサギが後ろを向き地面に鼻を付けてフンフンと嗅ぎ出したところで、今だ! と飛び出そうとした。

 

その瞬間、ウサギがピクッと反応したかと思うとスッと背筋を伸ばし立ち上がった。警戒するように耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

(やばい! み、見つかった? だ、大丈夫だよね?)

 

岩陰に張り付くように身を潜めながらバクバクと脈打つ心臓を必死に抑える。あの鋭敏そうな耳に自分の鼓動が聞かれそうな気がして、ハジメは冷や汗を流す。

 

しかしウサギが見つけたのはハジメではなく大きな狼のような魔物であった。

 

ハジメは狼のほうが強いと思っていたがウサギは素早く空中を蹴るように移動し雷を放出しながら蹴り狼を仕留めた。

 

そして

 

カラン

 

とハジメは音をたててしまい、ウサギに気付かれてしまう。

 

そしてハジメは本能にしたがいその場を横っ飛びで退避する。

 

直後、一瞬前までハジメのいた場所に砲弾のような蹴りが突き刺ささり、地面が爆発したように抉られた。硬い地面をゴロゴロと転がりながら、尻餅をつく形で停止するハジメ。陥没した地面に青褪めながら後退る。

 

(どうする!?錬成で地面に触れて落とし穴を作ろうにもさっきの空中での動きを見ても簡単に抜けられる。それにそんな猶予を与えてくれるようには…いや相手が油断さえしてくれれば!)

 

そうして隙を探すハジメであったがそれは唐突に現れた。

 

よく観察をしていると蹴りウサギがふるふると震えているのだ。

 

(な、何?何を震えて……これじゃまるで怯えているみたいな……)

 

まるでではなく、事実、蹴りウサギは怯えていた。

 

ハジメが逃げようとしていた右の通路から現れた新たな魔物の存在に。

 

その魔物は巨体だった。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら熊だった。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えている。

 

そして蹴りウサギは全力で逃げるため空中を何度も蹴り移動をするがその爪熊は鋭い爪を振りかぶると次の瞬間蹴りウサギは八つ裂きにされていた。

 

その光景を見ていたハジメは恐怖のあまり動けなかった。

 

爪熊が蹴りウサギを食してその鋭い眼光をハジメに向けた。

 

「うわぁああーー!!」

 

ハジメは恐怖に襲われながらも必死に逃走を図る。

 

しかし先程の自らよりも強い蹴りウサギが、逃げきれなかった相手にハジメが逃げきれるはずもなく、爪熊から放たれた風がハジメの左側面を襲う。

 

「がはっ!」

 

肺の空気が衝撃により抜け、咳き込みながら壁をズルズルと滑り崩れ落ちるハジメ。衝撃に揺れる視界でどうにか爪熊の方を見ると、爪熊は何かを咀嚼していた。

 

だが、一体何を咀嚼しているのだろう。蹴りウサギはさっき食べきったはずである。それにどうして、食はんでいるその腕は見覚えがあるのだろう。

 

ハジメは理解できない事態に混乱しながら、何故かスッと軽くなった左腕を見た。正確には左腕のあった場所を……

 

「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

ハジメの腕を咀嚼し終わった爪熊が悠然とハジメに歩み寄る。その目には蹴りウサギのような見下しの色はなく、ただひたすら食料という認識しかないように見えた。

 

左腕を失った絶望と間近に迫る死にハジメは無我夢中で

 

「あ、あ、ぐぅうう、れ、錬成ぇ!」

 

右腕で背後の壁を錬成すると人1人分入れるスペースが出来、ハジメはその中へと転がり込む!

 

目の前で獲物を逃したことに怒りをあらわにする爪熊。

 

「グゥルアアア!!」

 

咆哮を上げながら固有魔法を発動し、ハジメが潜り込んだ穴目掛けて爪を振るう。凄まじい破壊音を響かせながら壁がガリガリと削られていく。

 

「うあああぁぁぁぁぁ。錬成!錬成!錬成!」

 

爪熊の咆哮と壁が削られる破壊音に半ばパニックになりながら少しでもあの化け物から離れようと連続して錬成を行い、どんどん奥へ進んでいく。

 

尚も壁を削る爪熊。

 

しかし、爪熊を次の瞬間襲ったのは鋭い斬撃であった。

 

爪熊は苛立ちながらみるとそこには鋼の鎧を身に纏う鋼鉄の戦士が静かに佇むようにしていた。

 

その無言のプレッシャーに爪熊は怯む

 

その隙にもう一撃爪熊へと斬撃を放つ!

 

ザシュッ!

 

「グォォォォ」

 

その一撃は爪熊の左目を抉りたまらず爪熊は撤退をする。

 

そして鋼鉄の戦士は苦しそうに身をかがめるがそれを耐えてそのまま姿を消した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ピチャン ピチャン

 

水滴が頬ほおに当たり口の中に流れ込む感触に、ハジメは意識が徐々に覚醒していくのを感じた。そのことを不思議に思いながらゆっくりと目を開く。

 

あの後限界まで錬成を行使し続けたハジメは酷い倦怠感と出血から意識を失っていた。彼自身爪熊からどうやって逃げられたのか分かっていなかった。ましてや鋼鉄の戦士がハジメの窮地を救ったことも。

 

(……生きてる? ……助かったの?)

 

疑問に思いながらグッと体を起こそうとして低い天井にガツッと額をぶつけた。

 

「あぐっ!?」

 

自分の作った穴は縦幅が五十センチ程度しかなかったことを今更ながらに思い出し、ハジメは、錬成して縦幅を広げるために天井に手を伸ばそうとした。

 

しかし、視界に入る腕が一本しかないことに気がつき動揺をあらわにする。

 

しばらく呆然とするハジメだったが、やがて自分が左腕を失ったことを思い出し、その瞬間、無いはずの左腕に激痛を感じた。幻肢痛というやつだ。

 

そして、表情を苦悶に歪めながら反射的に左腕を押さえて気がつく。切断された断面の肉が盛り上がって傷が塞がっていることに。

 

「な、なんで? ……それに血もたくさん……」

 

暗くて見えないが明かりがあればハジメの周囲が血の海になっていることがわかっただろう。普通に考えれば絶対に助からない出血量だった。

 

ハジメが右手で周りを探れば、ヌルヌルとした感触が返ってくる。まだ辺りに流した血が乾いていないのだろう。やはり、大量出血したことは夢ではなかったようだし、血が乾いていないことから、気を失って未だそれほど時間は経っていないようである。

 

にもかかわらず傷が塞がっていることに、ハジメが疑問を感じていると再び頬や口元にぴちょんと水滴が落ちてきた。それが口に入った瞬間、ハジメは、また少し体に活力が戻った気がした。

 

「……まさか……これが?」

 

ハジメは幻肢痛と貧血による気怠さに耐えながら右手を水滴が流れる方へ突き出し錬成を行った。

 

そうやってふらつきながら再び錬成し奥へ奥へと進んで行く。

 

不思議なことに、岩の間からにじみ出るこの液体を飲むと魔力も回復するようで、いくら錬成しても魔力が尽きない。ハジメは休まず熱に浮かされたように水源を求めて錬成を繰り返した。

 

やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで、ハジメは遂に水源にたどり着いた。

 

「こ……れは……」

 

そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。

 

その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

 

ハジメは一瞬、幻肢痛も忘れて見蕩れてしまった。

 

そして縋り付くように、あるいは惹きつけられるように、その石に手を伸ばし直接口を付けた。

 

すると、体の内に感じていた鈍痛や靄がかかったようだった頭がクリアになり倦怠感も治まっていく。

 

ハジメが生き残れたのはこの石から流れる液体が原因らしい。治癒作用がある液体のようだ。幻肢痛は治まらないが、他の怪我や出血の弊害は、瞬く間に回復していく。

 

ハジメは知らないが、実はその石は〝神結晶〟と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったりする。

 

神結晶は、大地に流れる魔力が、千年という長い時をかけて偶然できた魔力溜りにより、その魔力そのものが結晶化したものだ。直径三十センチから四十センチ位の大きさで、結晶化した後、更に数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。

 

その液体を〝神水〟と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、そのため不死の霊薬とも言われている。

 

ようやく死の淵から生還したことを実感したのか、ハジメはそのままズルズルと壁にもたれながらへたり込んだ。

 

そして、死の恐怖に震える体を抱え体育座りしながら膝に顔を埋めた。既に脱出しようという気力はない。ハジメは心を折られてしまったのだ。

 

爪熊のあの目はダメだった。ハジメを餌としてしか見ていない捕食者の目。弱肉強食の頂点に立つ人間がまず向けられることのない目だ。その目に、そして実際に自分の腕を喰われたことに、ハジメの心は砕けてしまった。

 

(誰か……助けて……)

 

ここは奈落の底、ハジメの言葉は誰にも届かない…

 

そうして顔を埋めて何日たったであろうか。

ハジメは、現在、横倒しになりギュッと手足を縮めて、まるで胎児のように丸まっていた。

 

ハジメが崩れ落ちた日から既に四日が経っている。

 

その間、ハジメはほとんど動かず、滴り落ちる神水のみを口にして生きながらえていた。

 

しかし、神水は服用している間は余程のことがない限り服用者を生かし続けるものの空腹感まで消してくれるわけではなかった。死なないだけで、現在ハジメは壮絶な飢餓感と幻肢痛に苦しんでいた。

 

(どうして僕がこんな目に?)

 

ここ数日何度も頭を巡る疑問。

 

痛みと空腹で碌に眠れていない頭は神水を飲めば回復するものの、クリアになったがためにより鮮明に苦痛を感じさせる。

 

もういっそのことこのまま……と神水を飲むのをやめてしまった。

 

さらに2日過ぎると再び幻肢痛と飢餓感に襲われる。

 

この時点で既にハジメの精神は限界を超えてヒビが入り始めていた。何故自分がこんな目に…どうして助けにきてくれないのか…憎い、自分を追い詰める全てが…裏切ったクラスメイトが…友が…

自分を追い詰める物はいらない。

 

 

 

敵は殺す!コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス

 

黒い思考が全てを覆い尽くす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…直前ハジメの懐が光出す。

 

な…にが……?

 

ぼとっ ボトボト!

 

ハジメの懐が光だしその懐から缶詰めや乾パンといった物が溢れるように出現した。

 

「たべ…もの?」

 

ハジメは無意識に乾パンに手を伸ばし封を切ると口へとそのまま運ぶ

 

サクっ!

 

その乾パンは今まで食べた物より美味しく感じた。

 

ハジメの体は栄養を求めて他の缶詰めに手を伸ばす。体を起こし両足で缶詰めを挟み右腕で開ける。魚や保存された肉、とにかく体の中へと入れるように無我夢中で口へと運ぶ。

 

(おいしい 美味しい  体に力がどんどん入るみたいだ…)

 

そうして食べきれる分だけ食べたハジメは懐に手を伸ばす。先程の光がなんであったのか確認するために。

 

 

「これって………」

 

そこには二枚のカード 鋼鉄の戦士ギア・フリード 非常食のカードがあった。

 

「あぁ……城…之内くん」

 

ハジメの黒い思考が少し晴れる。

 

(そうだ。自分を友と言ってくれた人が…仲間が待ってる!なら僕は…俺は生きる!生きてここを出て友に会いたい!)

 

奈落の底で尽きかけていた精神が再び立ち上がる。

 

生きるために敵を殺す。友に会いたい。

 

そんな二つのココロに突き動かされるようにハジメはその瞳に火を灯す。

 

全ては生き残るために/友に会うために。




お待たせしました!

ハジメサイドのお話しです。

プライベートで気分が落ち込みメンタルがごりごりに削られていましたが最近少し復活したので投稿しました。

原作と同じように奈落に落ちたハジメ。

腕を失くした絶望と死の恐怖による絶望、見捨てられ1人孤独になった絶望。

まるで5D'sのアポリアのように三人に増えそうな感じですが、ハジメを救った非常食のカードと爪熊から逃れるために時間を稼いだギア・フリード。

ギア・フリードは半ば無理矢理、実体化をしたためその身体には相当の負荷が掛かったもののそれを感じさせず爪熊を追い払いハジメの安全を確認した後、実体化を解きました。

そして神水を飲んだことにより魔力が漲っていたハジメは非常食のカードを実体化させ食料をゲットしました。

自分を追い詰めた全てを憎みかけたものの、城之内の友の存在が彼を踏みとどまらせた。

ハジメの胸の内には敵を殺すこと、友に会いたいという二つのココロがあり、緩やかな豹変になりました。

城之内に会ったときは感極まって泣きつくかもしれません。ハジメの変異はまだ始まったばかり。そこはまた次回以降になります。

城之内はカードが破損しないようKCの開発した特殊なラミネートをすることにより耐水性となっているのでカードは無事でした。

感想欄でも非常食のカードは予想されていたとは思いますが残りはギア・フリードでした。

いつかネイキッド・ギア・フリードと魔人族のフリードとの対決など書けたら良いなと思います。

感想やメッセージなど忙しくて読めないときもありますが極力返すようにはしていこうと思います。

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!

次回も時間は掛かると思いますがなるべく早く出せるようにします。

遊戯王にてラスボスクラスのモンスターで相応しいものは?(シンクロ以降のものは除く)

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