そして18時50分、寮に到着。
「よし、到着と。さて、行きますか。」
まほろから「19:00には着いておいて。」と連絡をもらったので、その10分前着ける
ように家を出た。道もそんなに混んでなかったので、無事に時間通りに到着。
「皆、お疲れ様。」
「あら、マネージャーさん?お疲れ様です。」
「お疲れ~マネージャー。」
「マネージャー、お疲れ様。」
「今作ってるから。」
「まほろありがとね。よっと。」
「ねぇマネージャー、もしかしてそのリュック・・・。」
「まぁこんな重い荷物持ってれば気付くかな。そ、今日出るよ。」
事前に会えなくなるのは知っていたし、ついでに少し旅に出ることにしていたし、話自体は16人皆にしていた。でもその旅に出る具体的な日は伝えていなかった。美晴の誕生日の週だとは伝えてはいたけど。
「できたよ~。」
「わ~唐揚げだー!」
「アンタの誕生日じゃないんだからね、莉子。」
「分かってるって。」
「まほろありがとう。じゃ、冷めないうちにいただきましょ。」
「そうだね。」
「ほらほら。マネージャーも一緒に。」
「えっ?マネージャーさんも一緒なんですか?」
「サプライズみたいな感じだけどね。誕生日会終わってから、出かける予定だからさ。」
「そうなんですか....」
「さ、こんなところで寂しくなってちゃ始まらないし、はやく始めよ。」
「そうだね。」
『いただきます。』
「うん、やっぱりおいしい。」
「いい感じにできたかな、今日は。」
「いつもいい感じだと思うよ、まほろは。」
「そう?ぞんなことないと思うけど。」
「そうだよ。もっと自信もっていいって。」
「は、はぁ。」
「そうだ美晴、先週買い物に行ってた時ってアクセサリー買ったの?」
「その通りよ。よく分かったね絢。」
「美晴、この辺の時期でイアリング変えてるでしょ?だから。」
「確かにそんな時期ね~。」
良かった~アクセサリー買わなくて。
「あ、そうだ。え~と確かこの辺にあったような・・・。」
「ねぇ絢。」
「まほろ、どうしたの・・・?」
「マネージャーが今日出発するんだからさ、ヒソヒソヒソヒソ・・・・」
「あ・・・それ、いいね。」
「でしょ?片付け終わってから決行ってことで。」
「うん。分かった。」
「あったあった。」
「どうしたの?マネージャー。」
「美晴、誕生日おめでとう。」
「いいんですか?ありがとうございます、マネージャーさん。開けてもいいですか?」
「もちろん。喜んでくれるといいんだけど・・・」
「これ・・・。」
「あ、もう持ってるやつだったかな?アクセサリーとかは先週買いに行ってるかもなぁと思って。ほら、美晴ってピアノ弾くのが趣味だし、ジャズ系の曲弾き始めたって絢から聞いてね。だから、暇なときとかにちょっと弾いてみてよ。」
プレゼントしたのはピアノの楽譜集。内容はジャズ。
「ちょうど欲しかったんです。ありがとうございます、マネージャーさん。」
「どうしたしまして。というか、みんなはプレゼントとかは?」
「もうもらったんです。」
「あ、そうなのね。良かった~お酒飲んでなくて。」
「なんでよ、マネージャー。」
「いや、出かけるときにお酒入られちゃあ、別れのときにトンデモなこといなりそうじゃん?」
「確かに。特に美晴はね。」
「あら、私お酒に酔ったことないのよ?」
「ま~た言ってるよ。」
そのあとはAiRBLUEに来てからの思い出を語り合った。
楽しかったこと、頑張ったこと、つらかったこと・・・。
そんな楽しい会話をしていたら、時間はあっという間に過ぎる。
『ごちそうさまでした』
「莉子、美晴、マネージャー。悪いけど、洗い物やってくれない?まほろ、ちょっと絢と用事があって。」
「いいよ。こっちでやっておくから。やりたいことやっておいで。」
「ありがと。絢、行くよ。」
「うん。分かった。」
そして二人は上の階へ上がっていった。
「何するんだろね。」
「さぁ。私も何も聞いてないからなぁ。」
「そっか。じゃ、とっとと洗い物済ませちゃおう。」
「そうですね。」
―――― 一方その頃絢とまほろは・・・ ―――――
「陽菜、ちょっといい?」
「絢さんにまほろさん。どうしたんですか?」
「今日、マネージャーが旅に出ちゃうんだって。」
「今日、ですか?」
「そう、今日。で、それぞれのリーダーズの部屋で、チームのメンバー集めて窓から手を振るっていうことやろうと思ってるんだけど、やってくれる?」
「もちろんですよ。じゃ、Flowerの皆、呼んできますね。」
「よろしくね、陽菜。」
「はい。」
ってなことを悠希と利恵にも言おうとしているそうな。
―――――――――
「よし、これでおしまい。莉子はもう部屋戻っていいからね。」
「じゃあ、ちょっと美晴と話したいことあるから。」
「あいよ。」
「美晴ちょっとこっち来て。」
「はーい。あんまり長く話さないでね。マネージャーさん見送りたいんだから。」
「大丈夫。じゃあね、マネージャー。」
「うん、また今度。」
「これでここにいるのは僕だけか。これは好都合。ちょうど誰にもバレずにメッセージ残せるな。」
壁のあんまり見つけにくいようなところにメッセージを引っかける。
「これでよし、と。ちょっとトイレ借りるか。」
トイレから戻って来たとき、美晴はすでに部屋から戻ってきていた。
「じゃあ、行くね。」
「見送りますよ、マネージャーさん。」
「ありがと。」
「マネージャーさんは、私たちに会えて良かった、ですか?」
玄関へ移動する途中に美晴がそんなことを聞いてきた。
「もちろん。声優の世界がここまで面白いとは本当に思ってなかった。あの時、足を挫いた陽菜を助けて、事務所まで行って、声優のことを知って、マネージャーとして皆と関わり始めた。あのときの陽菜との出会いがなければ、こんなに面白い世界に会うことも無かったし。陽菜には感謝しかないよ。こんなにも面白い世界のことを教えてくれてありがとうってね。」
「桐香先生や真咲さんには、今日のこと言ったんですか?」
「数日前にね。感謝の言葉と一緒に。」
「何か言われましたか?」
「『パワーアップしたマネージャーになって帰って来るのを待ってるわ』って。頑張らないとね、お互い。」
「そうですね。」
「じゃちょっと車、前に出すから。」
「はーい。」
「よし、ハザード出しておけば大丈夫かな。」
「みんなにお別れの言葉は言ったんですか?」
「言ってはおいたよ。一応ね。この寮へ来るのも、事務所へ行くのも、ひとまず今日で一区切り、かな。」
「そうですね。」
寮を見上げた時だった。
「あっ、みんな。」
「マネージャーさん?どうしたんですか?あら。」
4つの部屋の窓から、美晴以外の15人が顔を出して手を振っていた。
「あの部屋って、もしかしてリーダーの部屋かな?」
「当たりですよ。よく分かりましたね。」
「ああやってみんな集まるようなこと、リーダーの部屋でしかなさそうだしね。」
僕は当然のように手を振り返した。でも、声は出さなかった。もう夜だし、近所迷惑にもなっちゃうしね。
「じゃあ、行ってくるね。あ、美晴には言っておこうか。」
「何をですか?」
「寮でご飯食べた部屋。あそこの壁にメッセージを残しておいたから。」
「いつ残したんですか?」
「美晴がいなくなったあと。ちょうどよかったよ誰もいなくて。誰にもバレることなく残せたからね。みんながいちゃあなんか残すにも残しずらいし。」
「分かりました。戻ったら探してみますね。」
僕はもう一度視線を上にあげた。みんなは手こそ振っていないものの、まだ僕のことを見ている。どうやら、僕が寮を離れるまで待ってくれるらしい。僕はもう一度手を振った。
(みんな、頑張って。僕がいなくてもみんなならできるよ。)
そんな意味を込めて。するとみんなも振り返してくれた。
僕は車に乗り込み、シートベルトを締め、窓を開ける。
「じゃ、行ってくるね、美晴。」
「はい、行ってらっしゃい。マネージャーさん。」
「何かあったら連絡して。話は聞くからさ。」
「はい。」
「じゃ、また今度。」
僕は車をゆっくりと進める。美晴が手を振ったのが見えた。
それに何も反応しないのがなんかもどかしくて、窓から片手を出した。美晴が気付いたのかは、分からないけど。
――――――――――
高速道路で車を走らせている間、AiRBLUEの曲を聞きながらこれまでの日々を振り返っていた。
「人生は運と偶然による、か。」
あの時足を挫いた陽菜に出会ったのは、本当に偶然だと思う。そこから事務所まで行って、声優のタマゴだと知って、AiRBLUEを知って、真咲さんに会って、マネージャーとして16人と関わって、今に至る。
これまでのことを振り返ると泣きそうになって来る。そういえば美晴もあの時涙を我慢していたのかな。今あの時の美晴の顔を思い出すと、そんな風な感じがした。無理して笑っているような、そんな感じ。
現実は非情だけど、同時に受け止めなければならないもの。
「またいつか、パワーアップしたマネージャーになって、絶対に戻ってくるから。それまで待っててね、美晴、AiRBLUEのみんな。」
僕は覚悟を決めるように、自分に言い聞かせるようにそう声を出し、車を進める。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。中の人です。車の中でAiRBLUEの曲流しながら思い出を振り返るみたいなこと書いてありますが、実際にこの小説書いてるときはAiRBLUEの曲YouTubeで流しながら書いてました(笑)。やっぱり良い曲ばかりです。アルバム聞いたら吹っ飛びそうです。脱線した話を元に戻して、本来はこれで「あの日々を永遠に」シリーズは完結の予定でしたが、AiRBLUEのみんなの後日談編を書くことにしました。メッセージを見た16人の反応は?美晴と莉子は何を話したのか?みたいな話をちょこっと書きたいと思います。それではみなさん次回をお楽しみに。