連載だけど実質短編のおみかんさん。
評判良かったら続ける。
織斑一夏は頭を抱えた。
それはもう、どうしようも無いほどに頭を抱えた。
目の前の少女、シャルロットは顔を青ざめさせた。
たった一度の過ちが原因でこうなるとは、予測がつかなかったのだ。
IS学園の部屋は完全防音。
中からの声は外には聴こえない。たとえそれが喘ぎ声だったとしても変わらない。
一夏の机に置かれた一つの試験薬。
ピンク色の棒状のそれが指し示す一本の赤い線は、本来であれば喜ぶべき代物の筈なのだ。
「一夏……どうしよう……」
「どうするも何も……すまねえ……」
青少年達は、人生の岐路に立たされた。
◆◆◆
世界初の男性IS操縦者、織斑一夏と。デュノア社の隠し子、シャルロット・デュノアは恋人どうしである。
事のきっかけは福音事件が起きた翌日。彼女の勇気を出した本命ドストレート朴念仁貫通愛の大告白だった。
「異性として、恋愛感情的に、友情は関係なく。僕は貴方が好きです」
惚けることもままならない本気の告白は、彼の純情ハートをこれでもかと言うほどに撃ち抜いた。
ここまでの気持ちを突きつけられてしまっては、幾ら朴念仁マスターワンサマーとて勘違いをすることは無い。
彼は彼女の想いに応え、晴れて二人は恋人と相なったのである。
さて、ここまでは普通の青少年達の甘酸っぱいハイスピードラブコメディの別世界線的なエンディング。
途中途中でハンカチを噛み締める少女達の姿が見えることもあったが、最終的には己が弱かったと認め、彼女達は和解に至っている。
冒頭の場面の話をしよう。
彼ら彼女らはカップルである。それも付き合いたてホヤホヤ、ラブラブ注入アイウォンチュー。
となれば当然、男女の関係にも自然となってくる。
ましてや彼らは思春期真っ盛りの青少年。性に興味があって何が悪い。
「偶然」寮に人が居らず、「偶然」長い間時間が空いてしまい、「丁度いいところに」中々熱烈なラブシーンがあることで有名な映画のディスクが転がっている。
「そういう事」になったとしても、容易に責められるものでは無かった。
一夜の過ち、
30%の確率は、彼らに笑顔を向けてやってきたのだ。
時を戻そう。
「一夏ぁ……僕たち……これからどうしたら……」
「ええと……その……わからねえ……
俺が情けないって事しかわからねえ……」
「そんな!? 悪いのは一夏だけじゃ無いよ!?
僕もあの時しっかり意識をしていたら……」
本来はめでたい筈である授かりも、未成年である彼らからしてみれば不安の対象この上ない。
ひとまず、過ぎた事を考えても仕方が無いと彼らは考え、相談先を誰にするかを話し合った。
……とは言っても、信頼できる対象は一人しか思い浮かばなかったのだが。
「千冬姉に、話そう」
「い、一夏。大丈夫……? 」
「なあに、お前を残して死ねるかよ。……逝くぞ」
にこやかに笑顔を浮かべる彼ではあったが、膝は震え、言葉も辿々しかった。
元より、付き合っている事もまだ報告できていなかったのだ。
そんな状態で「ブリュンヒルデ」とまでに呼称される強く気高い姉にこの事を報告してみよう。
……彼には恐怖しか無かった。
しかしこれは元より己の落ち度。
一夏は死すら受け入れる心持ちで寮長室に入った。
「ち、千冬姉」
「どうした? 学校では織斑先生と……話してみろ」
織斑千冬は何処か普通では無い弟の姿を見て微笑ましく笑い、彼に話を促した。
大方、自分とシャルロットが付き合っている事を報告に来たと考えたのだろう。
彼女と言う存在からすれば、彼らの変化など一目瞭然であり、気づいていない訳が無かったのだが、それを報告しようとする弟の姿が何処か愛おしく感じてしまったのだろう。
実際、彼女の予想は反分正解であり、半分が不正解である。それも、自分の胃をキツく締め上げるほどの要件になるとは、未だ千冬も想像していなかった。
当然、勘違いされている事は一夏も理解している。彼の緊張は、姉の笑顔だけでは収まらなかった。
「大方、デュノアと付き合っている事を報告に来たのだろう?
今更過ぎて、少し笑ってしまったぞ」
「いや、それも……そうなんだけど……その……」
弟の煮え切らない様子をみて、彼女は疑念を抱く。
普通であればここで安心して打ち解けた家族間の会話を楽しめる筈だったのだが……どうもそうでは無いらしい。
付き合う、カップル、青ざめた表情、未成年、一つ屋根の下。
千冬の中で、パズルのピースがつながっていく。
「おい、お前まさか……!? 」
聞きたくは無かった。そんな胃痛の種、ただでさえ諸国の対応に押され胃薬や頭痛薬を手放せなくなった彼女は聞きたくも無かった。
しかし現実は非常である。
「シャルが妊娠した。俺の……子供だ」
苦しい表情をして、弟が話す。
取り返しのつかない失敗をした自覚がある分、罪悪感の気持ちが強い事は目に見えてわかる。
後ろの彼女も、同じ様子だった。
困惑、喜び、疲労、怒り。
ありとあらゆる感情が彼女の完璧な胸中を行き来し、最終的に言葉を……
「ちょっとまって」
出せなかった。
誰か続きを書いてもええのんやで?