「……35点。その…大変言い辛いですが以前より悪くなってます」
「うげっ!?マジかよ!?」
「はい、前回が38点でした」
「……や、ヤベぇ…少し心が折れそうだ……!」
「………厳しい事を言いますがここで折れたら今年も温泉旅行は諦める他ありません」
「っ!……そう…だな!よし、もう一回頼むぜ!」
「はい、次は此処です。」
「………やっとるなぁ………。」
「………脳筋なのは知ってたけど流石にここまで来たら脳に異常もあるかも知れないんじゃないかい…?病院に行くことも考えた方が……」
「……酷くないかお前……?」
あれから数週間後のとある日……蒼鬼が籠鉄の勉強を見ている姿を見た翔がそう言うと響輝がそう言い出す為に真司蛇がツッコミを入れた……。一方他のメンバーも教室にて勉強をしていた。
………もう直始まる期末試験に備えて………
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……時間は数週間に遡り翔が詠に大食い大会の付き添いをさせられた数日後の話だ。
蒼鬼は黒板に大きく『温泉旅行』の文字を書きつつ説明をしていた。
「今日は此方、年に一度の温泉旅行についての説明になります。」
「ふぇっ?蛇女には旅行があるの?」
「そっか……未来は知らなかったんだよね。……私も噂程度でしか知らなかったけど……」
他のメンバーは知っている様子だが未来だけは知らなかった事に唯依はそう言う。当然と言えば当然でありこの話は毎年していて現在のメンバーは未来と唯依以外は経験しており、唯依も中等部時代から知っていたが噂程度でしか知らなかった様子であった。
「はい。…と言ってもあくまでそれは選抜メンバーだけの特権なので他の生徒の皆さんは温泉旅行目当てで選抜メンバーの座を狙う人もいます」
「えぇ………」
蒼鬼の説明に未来は苦労して選抜メンバーの座を掴んだのだがそんな理由で選抜メンバーの座を狙っている者がいる事にそんな表情になった。
「まぁ狙う理由はそれぞれですし『蛇女の修行は厳しいから癒しを求めて旅行に行きたい』と言って向かってくる人もいましたから…」
「ああ、そういう……何か納得出来た気がする…」
「その分翔くんは良いわよねぇ~。だって誰も掛かってくる子居ないんだから。」
「ふん、根性無し共め…」
「いや、そう言うモンなのかよ……」
蒼鬼の説明に未来は納得した。…尤も選抜メンバーの修行内容は基本的に一般生徒よりも上であり、癒しを求めてそれ以上の過酷な環境に辿り着こうとしているというのは、些か矛盾した話なのかもしれないが…。
その際に春花はわざとらしく翔にそう言う。そう、噂の1年前の大事件の話でありそれ以降蛇女の生徒は翔に対しては下剋上攻撃を仕掛ける者は居なかったのだ。春花の茶化しに翔はつまらなさそうに言う為に籠鉄はツッコミを入れた。翔自身、喧嘩上等である為に余程の卑怯な真似でない限り下剋上攻撃は受けて立つとの事であった。
「コホンッ……少し話が脱線してしまいましたがこの温泉旅行に行くにはどうしても越えないとならない壁があります」
「壁?」
「別にそう難しい事じゃない。よく考えてみろ、幾ら忍とはいえ俺達の年齢的な職業は一体何だ?」
「年齢的な職業?学生だけどそれが……あ、もしかして壁って……」
話が脱線してしまった為に蒼鬼は咳払いをしつつ話を再開した。その話に未来は「?」を浮かべるが真司蛇の促す様な言い回しに気付いた為に蒼鬼の方を見た。
「はい、旅行前の期末試験です。試験の内容は大きく分けて二種類、座学と実技になります」
「じゃあ戦いもあるの?」
「勿論です。座学は純粋に筆記試験のテストをするだけですが実技は人によって内容が異なります」
「個別テストって事?」
「その通りです。例えば、傀儡を制限時間内に何れだけ倒せるか、制限時間内に無傷でいられるか、と様々な視点で見られ、結果によってはこれで選抜クラスやその候補のクラスに入る人もいます」
「まぁ確かに座学だけじゃ忍はやってけないよね」
「ええ、ただそれは逆も然りです。頭を使わない者は忍の世界で生きていけない…だから知識も絶対に必要になってくるのです。」
「……ははっ……そう…だな……」
「「?」」
蒼鬼の説明に未来は納得する。その際に何故か籠鉄は冷や汗を流しつつ作り笑いをしていた。その様子に唯依と未来は疑問を感じ首を傾げつつ尋ねようとするも春花が首を横に振った為に事情は分からないが聞かない事にした。
「未来さん、唯依、ここまでで気になる事はありますか?」
「うーん……そう言えば、試験は誰が見るの?」
「鈴音先生や鎧威先生を初めとした教師の方々ですが、私も試験官になります」
「あれ?蒼鬼姉は試験を受けないの?」
「いえ、私も試験は受けますよ。私も生徒の一人である事に変わりはありませんから」
「ふーん……あっ…そう言えば選抜クラスで監督生の説明を聞いた時に監督生の最低条件で学園で一番の成績が要るって言ってたけど…仮に蒼鬼が満点で同じ満点の奴が居た場合はどうなるの?」
蒼鬼が未来と唯依に尋ねると未来がそう尋ねつつ唯依も尋ねると蒼鬼はそう答えた。その際に未来は思い出したかのように蒼鬼に尋ねると蒼鬼は特に顔色を変える事も無くその質問に答えた。
「その点は心配いりません。 私は皆さんと同じテストも受けますがそれとは別の個別の筆記試験を十数回行う事になっていますから」
「えっ……」
「「「「…………」」」」
「っ………!!」
「…大変だな~監督生ってのは。」
「うん」
蒼鬼は当然と言わんばかりにそれを答えるも一同は無言で未来と唯依は目を見開き籠鉄は肩が震えている。一方翔と響輝は動揺する様子もなく監督生は大変だと呟くのだった…。
「…?皆さんどうかしましたか?」
「ね、ねえ蒼鬼……まさか実技の方も十数回って事は……」
「いえ、実技は私も一度だけです。それに私の実技試験は毎回似たような物なのでそれ程劇的な変化はありません」
「そ、そう。……よ、良かった」
翔と響輝以外の一同の様子が可笑しいと感じた蒼鬼は首を傾げてそう言うと未来が質問した。しかし未来が思ったような事ではなかった為に未来は安堵した表情となった。幾ら監督生が他の生徒より優秀でなければならないとはいえ余りにも過酷過ぎるのではと思い始めていた。尤もそれでも未来からしたら十分に過酷な物なのだが…。
しかし未来のその安堵も直ぐに過ぎ去る事になる。
「待て未来…喜ぶのはまだ早い」
「え?」
「ねぇ蒼鬼ちゃん…今回の貴女の実技の内容はどんな物だったかしら?」
「…?確か今回は30分の間に教師全員の攻撃を無傷で凌ぎながら半数以上を撃破するという内容でした。それから…秘伝忍法の使用回数も制限がありましたね」
「「「「………………。」」」」
「…ほぉ………」
安堵していた未来に真司蛇がそう言う為に未来は「?」を浮かべた。そして春花が蒼鬼に今回の実技の内容を問うと蒼鬼は首を傾げつつ内容を答えた。
その内容に一同は何も言えず翔もそう呟いた。いや、言いたい事はあるのだが言葉が出て来ないというのが正確であった。
蛇女子学園の教師は教師とは名ばかりで指導に直接回る者は少ない。だが決して実力が低い訳ではなく寧ろ高いのだ。何なら選抜メンバーよりも上の者も珍しくない。特に鈴音や鎧威は教師陣でも最強で格が違うのだ。それを全員纏めて相手をするなど難易度が高いなどと言う物ではないレベルなのだ。
「えっと…蒼鬼ちゃん? 確か去年の最後の期末試験では選抜以外の全生徒を15分間無傷の状態で半数以上撃破じゃなかったかしら?それに秘伝忍法の制限も無かったと思うけど?」
「……学年が上がった分の課題だと思います」
「いや、無茶やろ」
春花が質問をすると蒼鬼も今年の難易度の上がり方に疑問を抱いた…が、少し弱々しい声でそう答えるも普段無感情の日影もそう反応した。
蒼鬼の実力の高さはメンバー全員が理解しているが教師陣全員を相手に出来る程自分達と力量が離れているとは思えない。当然、自分達が同じ事をすれば失敗するのは目に見えている物であった。
「……負担のレベルが度を越しているな。それに試験官もやるとなると負担は想像を絶するだろう。更に言えば年々その仕事量は増してきている……」
「……ねえ蒼鬼……本当に大丈夫……?」
「……心配してくれてありがとうございます。それでも必要な事ですから…」
「「「………………」」」
真司蛇もそう感じたのかそう言いつつ未来は心配しつつ蒼鬼にそう尋ねるも蒼鬼はお得意な薄い笑みでそう答える為に一同は更に心配をしてしまうのだった……。
(……こうでもしないと……・私は雅緋さんや三成君、況してや姉様の様には成れない…いや、恐らくこれでも足りていない。……だったら人の何倍も負担を背負ってでもその負担を努力で補い、経験に変える。…これが落ちこぼれである私が取れる最善の手段です……)
「………………………。」
「……お、お兄ちゃん…蒼鬼姉…大丈夫………お兄ちゃん……?」
「……ん?あぁ、ワリィ。ボーッとしてた。」
「…も、もう……蒼鬼姉が大変なことしてるって言うのに…!」
「心配すんな、自分は出来るって思ってるんだからやれるだけやらせてやれば良いさ。けど前にも言った通り途中でぶっ倒れる事があったらケツ千叩きするって忠告してるんだしよ。」
「…いや、だから千も叩いたらお尻使い物にならなくなるわよ……」
蒼鬼が心の中でそんな事を考えている中、翔は頬杖をつきながら黙り込んでいた。……それも何処か不機嫌そうな表情をしつつも…。
唯依が蒼鬼を心配しつつその事を翔に話そうとするも翔の表情に疑問を浮かべそう尋ねると翔がそう答える為に唯依は少し怒った表情でそう言った。そんな唯依に翔はそう言いつつもまるで尻を叩くように上げた手を振り下ろす為に未来は呆れつつもツッコミを入れた。
「…話が脱線し過ぎてしまいましたね。単刀直入に言いますが期末の筆記試験で赤点を一つでも取るとその人は温泉旅行に行く事が出来なくなります。勿論、実技試験の失敗もそのまま赤点に含まれます。」
「えっ……」
「一つだけでも不味いですが万が一全てで赤点を取ってしまったら最悪の場合、選抜メンバーから外されてしまいます。」
「ッ!!」
「こ、籠鉄……?」
すると蒼鬼は話を戻す為に手を叩いて未来達の方を向き説明を再開する。そして蒼鬼の言葉に未来と唯依は驚いていたがそれ以上に尋常ならざる事態と思わしき籠鉄の表情を浮かべていた事に未来はギョッとした表情となった。
「籠鉄……さっきの様子もそうだったけど……もしかして勉強が……」
「……全然出来ねえ…………」
「……あ…やっぱりそうなんだ…」
先ほどの籠鉄の様子からして疑問を浮かべていたが未来がそう尋ねると籠鉄が重々しい言葉を吐くように答えた為に未来は納得した。
………日頃から脳筋寄りな思考の持ち主な籠鉄であるが未来もここまでとは思わなかったのだろう。現在も選抜メンバーに居るという事は全教科赤点は免れているのだろうが彼の反応からして恐らくは昨年の温泉旅行には行けなかったのが把握できた。
そして一年生である為に昨年を知らない未来と唯依以外はその結果を知っておりだからか蒼鬼も少しだけ弱々しくなった声になりつつも説明を続けた。
「……取り合えず来週は中間テストがありますから一先ずはそちらの対策を行いテストの成績に合わせて今後の勉強のペースを考えていきましょう。蛇女では50点以下が赤点ラインに含まれますが幸いな事に中間テストでは筆記試験しか行われない為にその間は勉学に集中出来ます。勉学は歴史を初め忍術、幻術、体術、そして人外の種族の五科目です。 私も可能な限り力を注ぎますので全員で温泉旅行に行ける様に頑張りましょう。」
「う、うん…」
「そうね。今年こそは全員で…ね?」
「まあせやな」
「ええ、勿論ですわ」
「当然、そのつもりだ」
蒼鬼が対策としてそう案を出しつつ励ましの言葉を言い、未来、春花、日影、詠、真司蛇は頷いた。
「俺も出来る限りの協力はするぜ。まぁ蒼鬼程力になれるかは分からんが分からねぇとこがあったら出来る限り教えるし……なぁに、全員で力を合わせれば試験なんて乗り越えられねぇ事はねぇさ。今年こそみんなで旅行に行って楽しもうぜ!」
「お兄ちゃん………」
「……流石は蛇女の次席の翔くんは言う事が違うわね~~」
「…ゑ”!?」
「そ、そうなの…………?」
そして翔は一同に蒼鬼程ではないが勉強で分からない所があれば教えると言いつつみんなで協力すれば乗り越えられない事は無いと言い出した。そんな翔の発言に唯依は惚れ直すように翔を見つめるも春花がニヤニヤしつつ茶化すようにそう言った……瞬間に未来と唯依は唖然とした。
普段のふざけた様子から見て蒼鬼の次に凄い人物であった……となれば唖然となってしまうであろう……。
「………翔や監督生の人に教えてもらえれば確実に赤点は免れるよ。…まぁそうでなくともみんなと協力すれば赤点は取らないだろうし間違っても1人で何とかなる考えは捨てた方が良いよ。過去に「馴れ合いなんぞ必要ない。勉強ぐらい1人でできる」とほざいて赤点取った馬鹿が居たし……」
「………っ…!」キッ
「ひ、響輝さんっ!?」
「…だって本当の事じゃん」
そして響輝は翔と蒼鬼に教われば確実、それがダメであっても一同でヤマ当て等をすれば赤点は取らないと未来と唯依に説明した。……そんな中、去年にて馴れ合わずに1人で勉強すると言いつつ赤点を取った人物が居ると言った瞬間に焔が響輝を睨みつけ、蒼鬼は響輝の発言を止めようと制止するも響輝は平然とそう答えた。その様子からして未来と唯依は把握しつつそれ以上尋ねようとしなかったが唯依に関しては何処か呆れた表情になっていた…。
「……俺は試験用の勉学は一人で行う。付き合うのは日頃の授業と実技試験の訓練だけだ…」
「……言った傍から…………もう駄目だね…」
「…いや、寧ろアイツは1人で勉強して点取れんと色々不味いだろう。タダでさえ理由は分からんが特別転入してきた21歳の最年長なのに……」
「…ゑ?そんなに歳離れてたの?言動が幼かったから歳近いと思ってたよ」
「……」ギロッ…
「だ、だから響輝さん!」
そんな中、光牙がそう告げる為に響輝がそう言い出す。……が、翔がそう答えた為に響輝が少し驚いた表情で言った。……光牙は元々忍の本隊に居たが理由は分からずも特別転入してもう1度学生生活を送ることになった為にメンバーの中で最年長である彼が1人で勉強したら赤点を取ったとなれば色々と大問題となるであろう…。
……しかしまたもや響輝の失言によって光牙は表情を変えずとも響輝を睨んだ為にまたもや蒼鬼が響輝の発言を制止させた。
「……済まねぇ、蒼鬼。今回も頼む」
「……いえ、どうか気になさらないで下さい。これも私の仕事ですから」
そして最後に籠鉄は申し訳なさそうに蒼鬼にそう頼み込むも蒼鬼は微笑みつつも快く引き受けた。昨年の最初の中間試験で籠鉄の学力が絶望的だと判明してからは蒼鬼はテストの時期によく籠鉄に付く様になったのだった。その為に他のメンバーも、文武共に指導が上手い蒼鬼が居れば籠鉄もギリギリで何とかなるだろうと考えていたのであった。
…………因みに去年の中間試験の結果はというと……
蒼鬼
忍術:100点 幻術:100点 体術:100点 歴史:100点
種族:100点
順位:1位/4000位 総合:500点
翔
忍術:100点 幻術:96点 体術:100点 歴史:100点
種族:100点
順位:2位/4000位 総合:496点
春花
忍術:96点 幻術:100点 体術:74点 歴史:84点 種族:72点
順位:10位/4000位 総合:426点
真司蛇
忍術:92点 幻術:90点 体術:78点 歴史:80点 種族:60点
順位:25位/4000位 総合:400点
焔
忍術:100点 幻術:60点 体術:82点 歴史:88点 種族:52点
順位:32位/4000位 総合:382点
日影
忍術:90点 幻術:74点 体術:76点 歴史:78点 種族:62点
順位:36位/4000位 総合:380点
詠
忍術:80点 幻術:70点 体術:70点 歴史:70点 種族:70点
順位:44位/4000位 総合:360点
籠鉄
忍術:54点 幻術:23点 体術:58点 歴史:22点 種族:17点
順位:3890位/4000位 総合:174点
………明らかに籠鉄だけが不安だらけな結果であるが果たしてどうなるのであろうか…………?
____________________________________________
秘立蛇女子学園では中間試験と期末試験がそれぞれ年に三回行われ、6月の今は一度目の期末試験が最も近い。期末試験の内容は大きく分けて二つ、筆記試験と実技試験だ。
そして今、蒼鬼は分身を駆使して様々な生徒の元を見て回っている。中間試験で持ち点が200を超えていなかった者は籠鉄以外は5体の分身で纏めて見ており50点以下の科目があった者は1教科に1体の分身が付き、五教科分で5体、更に実技試験で不安のある者や向上心の強い者が蒼鬼や鎧威の元を訪れ厳しい修行を行っている。そして実技試験対策では20体が一般生徒に、2体が選抜候補に、7体が選抜メンバーに付いている。籠鉄には特別頑丈に作り込んだ分身を送っており、オリジナルは仕事を熟し、その後に自己訓練を行っている形だ。
…つまり合計で40体の分身を扱いながら自己訓練も行っているので、ハッキリ言ってかなりの無茶である。流石の翔も蒼鬼のこの行動には「たまげたなぁ…」と言う程であった。
…しかし蒼鬼は苦労を顔に出さず、これを熟している。そんな蒼鬼を見たからか他の生徒達も負けていられないとばかりに実力を向上させていき、着々と成果を出していた……。
………そんな一方で蒼鬼の分身から訓練を受けている人物たちが居た……
「……それでは総司さんからお願いします。」
「フッ…では見せてやろう。蛇女で最も美しいこの私の技に見とれるが良い、蒼鬼よ」
蒼鬼がそう指示を出すと何処かキザな口調でナルシストに当たるであろうと思える自信が感じ取れる様子で話す人物が居た。
…そう、以前翔に屈辱的な攻撃によって敗れた選抜候補生メンバーのリーダー、総司であった。そして訓練が開始され、大型の傀儡の大軍が総司に向かっていくも総司は焦る事無く大小の鎌の付いた鎖状鞭を取り出し攻撃に構える。
「秘伝忍法『鎖龍百飛閃』!!」
すると総司は凄まじい速度で移動しながら鎖状鞭を振り回し、鎌の切っ先で次々と傀儡を仕留めていく。…10、20、30と時間が経過する毎に巻き込まれる傀儡の数が増えていき……10秒が経過した所で蒼鬼が合図を出し総司が攻撃を止めた。
「どうだ?」
「……倒した合計は90体。前回の57体よりもかなり伸びています」
「フッ…そうだろう?流石はこの私、以前よりも更に美しさに磨きが掛かっている…!」
今回行っている訓練の内容は10秒間で且つ一度の秘伝忍法で何れだけ傀儡を倒せるかという物だ。因みに秘伝忍法は連擊物という縛りを付けており、更に秘伝忍法を受ける事を前提に作られているので頑丈さも並の傀儡より数段上であった。
加えて言えば前回よりも更に頑丈さも上がっているので1体壊す難易度も上がっていると言える。……それを総司は、10秒で90体破壊したのだ。実力が向上している事は間違いないだろう。
……最も彼女がライバル視している焔や光牙は倍以上の成果を出している為に総司は表面上程は喜んでいないというのが事実だが…。
「それでは次に芦屋さん、お願いします。」
「ようやくか……待ち侘びたぞ悪鬼よ、邪神様の加護を受けた我の力…とくと見るが良い!そしてその力に惹かれて入信を……「結構です」…したいと思った時には……って、まだ最後まで言っておらんぞ!?話は最後まで聞かぬか!!」
「何度も言いましたが入信はしません。それよりも今は訓練に集中して下さい、待ち侘びていたんですよね?」
「ぐぬぬ……普段は申し訳なさげに断るというのにこう言った時期になると用が済むまでは極端に冷たくなりおって……」
そして次に呼ばれたのは赤髪で可愛げのある少女で口調は何処かじじ臭さを感じさせ壮大な態度を取った様子の少女……同じく翔に屈辱的な攻撃で倒れた選抜メンバーの1人の芦屋であった。
……彼女は自分が正体不明の神の666番目の使徒だと自称する…俗に言う厨二病に近い邪神系美少女だ。ついでに言えば選抜補欠の中で一番の変わり者としても校内で有名人であった。……最も蛇女には翔を含む変人が沢山居るのだが……
そして彼女は日頃から入信者を集めようと生徒に声を掛けて回っているのだが分かりきった事だが入学から数ヶ月が経った現在でも入信希望者はゼロ。それもその筈彼女はその壮大な態度から相手の神経を逆撫でするかの様な事を言ってしまい、気付いた時には手遅れというのが大半であった。……所謂未来よりも酷いレベルのボッチである…(…酷い(笑))
そんな彼女は蒼鬼の事を悪鬼と呼んでいる。最初にそう呼ばれた時は驚いた蒼鬼だが光牙の事を邪神、翔の事を大魔王と呼んだりしているのでそういう物だと納得していた。
そんな芦屋は蒼鬼に入信の誘いをするもそう返された為に少し怒った様子になりつつも武器である巨大鉄輪を構えた。
「秘伝忍法『兇嵐陰絶輪』!!」
そして芦屋は鉄輪を投げ付け、凄まじい速度で回転する鉄輪は傀儡の軍勢を切り裂いていく。そして総司と同様に10秒が経過した所で蒼鬼が止めの合図を出した。
「……倒した合計は92体。前回が50体でしたから倍近く伸びていますね」
「なっ……!?この私が光牙でも焔でも蒼鬼でもなく芦屋に負けただと……」
「邪神様の加護を受けた我の技は正に神の技……!その進化に限界など存在しないのじゃ!……しかし悪鬼も邪神様も…そしてあの大魔王もまた進化しておられる。ただでさえあの方が我の遥か先を進んでおられるなら我もまた腕を磨かなくてはならん!」
特に競っていた訳ではないが負けず嫌いの総司は芦屋に傀儡の討伐数で負けた事を悔しがる。一方で芦屋もまた自分の結果には自信を持っているのだが彼女が目指す蒼鬼、光牙、翔との差を考えて慢心はしていない様であった。
…因みに選抜候補生メンバーが翔と戦った後に光牙とも戦ったのだが案の定惨敗していた。(無論、翔の時のような屈辱的な敗北では無かったが…)それもあってか選抜候補生メンバーはそれぞれの思うやり方で修行を積み重ね強くなっていった。
「……それでは次の訓練です。改良された傀儡100体を相手に10分生き残るか或いは殲滅して下さい。先に言っておきますがその傀儡は動き出すと時間になるまで攻撃を辞めません。なので辞退するなら今の内です」
「……辞退だと……?フフッ…良いだろう。ならばこの私が全て殲滅してやろう!」
「何じゃと?……総司!よもや貴様、我の獲物まで横取りする気か!?」
「早い者勝ちだ。それに芦屋、たった一度私に勝った程度で良い気になるなよ?私は同じ相手に何度も負ける程甘い女ではない。慢心していれば今回のお前の勝利が生涯で唯一になってしまうぞ?」
「ほう…?言うではないか。……良いじゃろう。我に挑んだ事を後悔させてやろう!」
「望むところだ!それに私はお前ごときに負けている場合ではない。光牙や焔…蒼鬼もそうだがまずは奴を……翔を倒さなければならんのでな…!」
「…ほぉ?そこは気が合うのぉ?我も大魔王を倒すことを目的としておるのじゃ!あの屈辱を晴らすためにの……」
そして蒼鬼から新たな課題が出されたが蒼鬼の言葉が癪に障ったのか先程まで悔しがっていた総司が額に青筋を立てて反応してそういう。すると芦屋も総司の発言に反応してはお互い火花を散らしあうが突然意見が合い始めてはそう話し出す為に流石の蒼鬼も疑問に思った…。
「………あの……翔くんを倒すって………」
「「当たり前だ(じゃ)!!アイツ(あ奴)は…………!!
私(我)の尻(お尻)にあんな屈辱的な攻撃を仕掛けては私(我)に大恥をかかせた敵だぁぁ(じゃぁぁ)!!!」」
「………あーーーーー」
総司と芦屋の怒りの叫びに蒼鬼は納得した………。
………そう、以前この2人が翔と戦った際に受けた『千年殺し』と言う名のカンチョー攻撃だ…。あの攻撃を受けた2人はあの後かなりの激痛に治療室に運び込まれ、更には数日学校を休む羽目になりそんな攻撃によって治療室に運び込まれてなおかつそんな理由で休む羽目になったという屈辱的な思いをした為に翔に対しての怒り…いや、復讐と言うべきかそんな思いを抱いていた……!
「覚えていろよ翔………!!今度は貴様の尻にこの鎖状鞭をねじ込んでやろうぞ………!!」
「それは我のセリフじゃ!!我が鉄輪をねじ込んでるのじゃあぁ!!」
それぞれがそう言い合うと同時に訓練が開始され、怒りのパワーによってか改良された傀儡を次々となぎ倒していった……。
(………翔くん……あの時にあなたの取った行動は今……総司さんと芦屋さんを向上させる行動になりました。………しかしそれと同時にあなたに対しての危機が迫る事となりましたよ……?特にお尻に………)
そんな総司と芦屋を見つめつつ蒼鬼は無表情……でありつつも何処か翔を心配する様子でそう思うのであった………。
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「……ぶぇくしょぉぉぉい!!」
「汚ぁ!?」
「お、お兄ちゃん……風邪…?」
「…いや?風邪ひくような真似したつもりは無いんだが……」
その一方、自分も勉強しつつ唯依達に勉強を教えていた翔は突如くしゃみをした。飛んできたのか未来はギョッとしつつ唯依が心配するように声を掛けるも翔も疑問に思いつつそう答えた。
「…籠鉄君、ここは漢字が違います。水と氷の記入欄が逆です。確かに字は似ていますが他の問題などを見れば気付ける範囲です。制限時間に焦らず問題をよく見て下さい」
「……おう、すまねぇ……」
その一方で選抜メンバーで最も心配されている籠鉄はというと既に勉強で心が折れかかっていた……。具体的には「崖っぷち」と書かれたハチマキが力無く落ちる程度に……
「…………この先どうなってしまうのか……?」
「頑張れ籠鉄ぅ~!」
「…界〇様風に言うのやめい」
そんな籠鉄を見た響輝と翔は某北の銀河の神様風にそう言い出す為に未来がツッコミを入れた。
……………果たして本当にどうなってしまうのであろうか………?