閃乱カグラ ~光と影の忍達~(仮)   作:レタスの店長

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少年・少女達の成長、翔の思い

 

 

蛇女との交戦、翔が蛇女の学生であった事を知ってしまったその日の夕方…半蔵学院の忍部屋では重苦しい空気が流れていた。既に一同は怪我の手当てを行っており包帯や湿布などが体の至る所に付いていた。

 

…やはり柳生が重傷で意識不明になってしまったのは勿論の事、翔が蛇女の生徒であった事にショックが隠せなかったのだ。

 

 

「………………」

 

 

「……飛鳥ちゃん………」

 

 

俯く飛鳥を心配する佐介……表情を見るからに泣き腫らした痕が分かる為、佐介だけでなく斑鳩や葛城も心配していた……。

 

 

………そんな時、部屋のドアが開きそこには霧夜が立っていた。

 

 

「!霧夜先生!!」

 

 

「や、柳生の奴は……!?」

 

 

「……心配ない、今は意識を取り戻している。暫くの間は入院になるだろうが…」

 

 

「……そ…そうですか……よかった……」

 

 

霧夜も柳生の見舞いに行った様子である為に斑鳩と葛城が彼女の様態を聞くと霧夜がそう答えた為に一同は安堵した表情になった…。

……ふと霧夜は暗い表情である飛鳥を見ては………

 

 

「………お前たち……よく………」

 

 

…霧夜は何かを言おうとしたとき、それを言うのを止めた。……本来であればよく生きて帰って来てくれた……と言おうとしていた。しかし霧夜は何かを思ってかこの言葉を言うのを止め……

 

 

「………。……蛇女の生徒にやられて気落ちしているのであれば…忍になるのを止めてここから出ていけ。」

 

 

「「「「「……っ!?」」」」」

 

 

霧夜の言葉に一同は目を見開く。……その瞬間……飛鳥は再びボロボロと涙をこぼした……

 

 

「き、霧夜先生!!幾らなんでもそれは……!」

 

 

「そ、そうだぜ先生!!アタイらがやられた事を責めるってんなら別に構いやしねぇさ!でも飛鳥は……佐介は兄貴が敵対しちまったって事実を目の当たりにしたんだ!そんな事知らされては気が気じゃねぇだろうに!!」

 

 

「…それでも…だ、忍の道は甘くはない。例えそんな状況になったとしても…戦わなければならない…殺し合わなければならないんだ……。それが仲間であろうが…友であろうが………家族であろうとも……な。」

 

 

「「……っ……」」

 

 

霧夜の言葉に斑鳩と葛城が噛み付くが霧夜は厳しくもそう答える。…忍になるという事は…忍の道は甘いものではなく厳しく苦しく辛い道であるという事を……。そう言われた為に斑鳩と葛城は何も言い返せなくなった。

 

 

「………恐らく奴らは再びここを攻めてくるであろう。俺は今回を機に蛇女の生徒にも立ち向かえるべくお前たちを鍛えていこうと思っている。…確かに今回足止めを喰らってしまった俺が大口を叩ける立場ではないが…それでもこのままではお前が奴らと戦えば……死ぬであろうと判断した…。」

 

 

「……確かに日影もそうだったがししょ…いや、翔の奴もまるで本気を出していない様子だった…。本気出してりゃ今頃アタイは……」

 

 

霧夜がそう言うと葛城も同感しそう呟く。……今までがある意味平和のような状態であったが蛇女がこうやって仕掛けてきた以上は今までのような平穏な状態が続かなくなるというのを察知し、霧夜は実戦でも蛇女に後れを取らないようにすべく佐介達を鍛える事を決意したのだ。

 

 

「…そう言う事だ。お前たちが望むのであれば俺は蛇女の連中にも負けないように指導しよう。だが先ほども言ったように今回の一件で自信を失ったのであればもう忍になるのを辞めるがいい。」

 

 

霧夜がそう言うと葛城、斑鳩は強くなりたいと思っているのかその気になるような表情となり、佐介も少し戸惑いがあるものの今のままでは駄目だと思うような表情をしていた。……だが……

 

 

「……分から……ない……分からないよ……」

 

 

「…飛鳥ちゃん……」

 

 

「…私……どうしたらいいの……?……強くならなくちゃいけないのは…分かってるつもり…だけど……私…お兄ちゃんと戦えない気持ちで…いっぱいいっぱいで……でも…戦わなくちゃいけない………どうしたら……どうしたら……」

 

 

飛鳥は涙をこぼし頭を抱えながらそう言う…。今回の一件で落ち込んでいられない事は飛鳥自身も分かっている事だが……慕っている兄と殺し合えと言われても簡単に気持ちを変えて殺し合う事なんて出来るはずが無かった。

 

 

(……やはり飛鳥にとってかなりのショックが大きかったか……。俺もみんなには気持ちを入れ替えてもらおうと発破をかけたつもりだったが…やはりこればかりは……。)

 

 

今の飛鳥の状態を見て霧夜もどうしたらよいのか分からない状態であった。事実先ほどの言葉も今回の一件で忍になる為の過酷さを経験した上で気持ちを入れ替えてもらう為に発破をかけたのであったが兄が敵で殺し合わなければならないという立場となってしまった飛鳥にとっては簡単には立ち直れない状況となっていた。こればかりは霧夜もどうすればいいか分からずどう声を掛けるべきか考えていた……時であった……

 

 

「………やろう…飛鳥ちゃん……」

 

 

「……え……?」

 

 

突如佐介が飛鳥の肩を軽く叩いてそう言う。

 

 

「……このまま…このまま腐ってちゃ……ダメなんだ……強くならなくちゃいけないんだ……!」

 

 

「………………。」

 

 

「僕だって……僕だって翔兄さんと戦いたくはない……何でこんなことになっちゃったのかも分からないしどう言えばいいのか…どうすればいいのか分からないよ……でも…このままじゃダメなんだって事は……分かるんだ……。」

 

 

佐介は飛鳥にそう言う……正直何故翔と敵対してしまう状態になった理由もどうすればいいのかも分からない……しかしこのまま腐ってしまってはいけないという事は何となく勘付いていた。

 

 

「…まずは光牙くんを倒せる程に強くなって……そして今度は翔兄さんを止められるように強くならなくちゃいけないんだ……!それで解決するとは…限らないけど……まずは蛇女よりも強くなるんだ……!」

 

 

「………………。」

 

 

「……僕も……僕も一緒に……戦うから……!…飛鳥ちゃんと……一緒に…戦う……から……!………だから……だから………!」

 

 

「…ぁ………」

 

 

佐介は強くなることを願った。……翔と戦う前に彼は光牙とぶつかり合い、全く敵わなかったのだ。その悔しさから続いて翔が蛇女に居るという事実を突き付けられてしまったのだ。その事から彼自身もどうすればいいのか分からない状態であったがそれでもこのままでは駄目だと思っていた。………でもやはり翔が敵になってしまった事は彼自身も相当ショックであり、強がっていたのか堪えていた涙が溢れてしまいながらも飛鳥を説得していたのだ……。

 

 

(……私って……ダメだなぁ………。悲しいのは……私だけじゃないのに……佐介くんだって……辛いはずなのに………それでも佐介くんは……このままじゃダメだって思ってる………。それなのに……私だけが辛い…悲しいって思っちゃってて………私は……私は………)

 

 

「……!…あすか…ちゃん………」

 

 

飛鳥は涙を流す佐介を見て思う…。辛いのは自分だけじゃない…佐介だって本当は泣き叫びたいくらいに辛いはずだった…。でも佐介は今のままではいけないと先を見ようとしていたのだ。そんな佐介を見た飛鳥は今の自分が情けないと思いつつ…ふと佐介を抱きしめて小さく嗚咽をこぼした……。

 

 

 

 

 

 

 

………そして暫くしては飛鳥は立ち上がり涙を拭うと……

 

 

「……霧夜先生……私を…いや、私たちをもっと鍛えてください…!」

 

 

「…飛鳥………」

 

 

飛鳥は霧夜にそう頼んだ。……泣き腫らした痕があるも先ほどとは違い決心した表情であった。

 

 

「…お兄ちゃんの事…正直どうしたらいいのか分からない……でも佐介くんの言う通りこのままじゃダメなんだ…!…それに……焔ちゃんにいい様に言われて黙ってるわけにもいかないよ……!……だから……だからお願いします!」

 

 

「……飛鳥ちゃん………!」

 

 

「…よっしゃあ!それでこそ飛鳥だぜ!!」

 

 

飛鳥はそう言う。正直翔の件はどうしたらいいのか分からないが佐介同様このまま蛇女に好き放題されて黙っている訳にはいかないと思い、強くなるために指導を霧夜に頼んだ。

そんな飛鳥を見て佐介も笑みを浮かべ、葛城も嬉しそうにしては飛鳥に抱き着いた。

 

 

「…分かった……お前達の気持ちはよく分かった…。今ここに柳生や雲雀……それと政宗も居ないがあいつ等も気持ちは同じであると俺は思う。…俺はお前達に俺が持っている知識や技術…そして秘伝を全て教えていく…これからの戦いを生き残れるようにな。だが当然、これまでの修行から一転して厳しくなるから……覚悟してくれよ…!」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

そんな佐介達の意思を見て霧夜は佐介達がこれからの戦いを生き残れるようにする為に自分の知る忍のすべてを彼ら彼女らに教える事を決心した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~蛇女子学園・屋上~~~~~~~~~

 

 

 

 

場所は変わり夜の蛇女子学園……。翔は屋上にて空を見上げていた。その表情は……何処か無表情な様子であり何を考えているか分からない表情であった……。

 

 

「……翔くん…………」

 

 

「……おぉ、蒼鬼………」

 

 

そんな時、蒼鬼が姿を現し翔を呼んだ。……彼女も翔を心配するような表情であった……。

 

 

「…ほら見ろよ空を、星が綺麗だぜ。」

 

 

「……確かに綺麗ですね……。」

 

 

翔がそう言うので蒼鬼は翔の元へと歩み寄り隣に立って空を見た。翔の言う通り綺麗な星空であった……。

 

 

「………大丈夫……ですか……?」

 

 

「……?何が?」

 

 

「……半蔵に乗り込んでから……翔くん何処か暗い感じがして……。」

 

 

「…そう……か?」

 

 

蒼鬼はそんな翔を心配するように言う。蒼鬼の言う通り半蔵に乗り込んでからの翔は何処か様子が可笑しいと蒼鬼は気付いておりやはり佐介達と戦った事が原因であるのかと思っていたのだ。

 

 

「………私ではどこまで力になれるか…分かりませんが……もしも何か思い悩んでるなら……話してみてくれませんか…?」

 

 

「……蒼鬼………」

 

 

蒼鬼は自分がどこまで力になれるか分からないが先ほどの件等で悩んでいるのであれば吐き出してもらう為に話して欲しいと言った。普段からおちゃらけている翔がこんな様子だと…蒼鬼も心配で仕方が無かったのだ……。

 

 

……蒼鬼にそう言われた翔は………悲しげな表情になりつつ蒼鬼に抱き着いた……。

 

 

 

 

 

 

…………のだが……

 

 

 

 

……モギュッ……

 

 

「…ひゃあっ!!??///」

 

 

抱き着いたと同時に翔は両手で蒼鬼の尻を掴んでいた。その事に蒼鬼は悲鳴を上げつつ赤面していた。

 

 

「しょ…翔くん何を…!?///」

 

 

「…おぉ……やわらけぇ…詠のデカケツとは違ったサイズと柔らかさ…プリケツかぁ…」モミモミ

 

 

「ちょ…しょ、翔くんやめ…あうぅ……///」

 

 

「あ~~~柔らかい……鬼だ……鬼がかかったプリケツダァ……」モギュッモギュッ……

 

 

「ぅぁ……///しょ……翔……くん…………////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……止めてください…!!」

 

 

「あだだだだだだだだだだっ!?」

 

 

蒼鬼の尻を両手で容赦なく揉みしだく翔……。蒼鬼も揉まれ過ぎて恥ずかしさ等でいっぱいいっぱいになっていたが……尻を揉んでいた翔の両手首を強く握りしめた。流石に痛みで翔は両手を尻から離すのであった……。

 

 

「もう!何してるんですか!!///」

 

 

「いや~~蒼鬼が悩みを癒してくれるって言うから癒される為にもな~~~」

 

 

「全然意味が違いますよ!…心配して損しました……」

 

 

悩んでいるように見せかけて翔がこんな事をしてきた為に蒼鬼はムスッとしながら触られた尻を撫で擦っていた。

 

 

「…いや……正直俺もショックだったぞ?佐介はともかく半蔵のメンツの実力を……。正直あのまんまじゃ俺らどころか……他の忍学校の連中にさえもやられちまうレベルだったからな……。」

 

 

翔は少し真剣な表情となってそう言う。実力を確かめに行ったものの思ってたよりも酷いレベルであったのが翔の正直な感想であったのだ。

 

 

「……確かに今の俺は佐介と飛鳥とは敵対関係………敵に同情や情けなんて必要はねぇが…………家族は違う……。……俺の私情にはなるが……あいつ等には死んでもらいたくねぇ…だから……もっと強くなって高みを目指してもらいたいんだ……。」

 

 

「………翔くん……」

 

 

(……そう……今のこの世界を……忍の世界を変えてもらう為にも…な……)

 

 

翔は蒼鬼に本音をそう言う。……確かに今は敵対関係であるが彼自身家族である佐介や飛鳥には死んでもらいたくないと思っていたのだ。

 

 

「………だからこそ非情となってあいつ等にはあんな態度で接した。これからの戦いがそんな考えで通用しないと言う事を分かってもらう為にな……」

 

 

「……でも翔くん…飛鳥さん泣いて「いうな」…っ……!」

 

 

「…………俺だってアイツに泣かれたのマジで罪悪感感じてんだよぉ……!」

 

 

「翔くんに罪悪感ってあったんですね」

 

 

だからこそ翔は敢えて非情となり今の半蔵の連中や佐介や飛鳥の考えではこれから先の戦いを生き残れないという事を分からせた様子であった。だがその結果、飛鳥があそこまで泣きじゃくってしまった事を蒼鬼が言おうとするも翔に制止される…が…翔自身も泣かれた事に余程ショックや罪悪感があるのか口から血を流しつつそう言った。そんな翔に蒼鬼も蒼鬼でさり気なく毒を吐いていた。

 

 

「…ま、そんな感じさ。今日の事でアイツらが折れずにこれを機に強くなってくれる事を俺は願っている。そうじゃねぇと張り合いも無いしな……悪忍としては失格な考えだろうけどな。」

 

 

「…翔くん………」

 

 

翔はそう言いつつ佐介達が折れずにこれを機に鍛えて強くなって再び再戦してくるという事を願っているかのように言った。そんな翔を見て蒼鬼は確かに悪忍として考え方は失格ではあるが翔自身が佐介や飛鳥を思っての事だと…家族思いであった事を安堵した。……正直蒼鬼もあの時の翔の言動に驚きや戸惑いが隠せなかったが今の言葉を聞いて蒼鬼も安堵したのであった。

 

 

「……さて…俺らもまごまごしてたら追い抜かれるだろうし…頑張らねぇとな!」

 

 

「…そうですね…!」

 

 

そして翔と蒼鬼もそんな佐介達に負けない為にも強くなることを決意するのであった……。

 

 

 

 

 


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