「………な……なんだ……コイツは……!?」
(………『妖魔』……まさか地下にこんなモン飼ってやがったのかあの連中は……。人工的に造った様子だが…上級クラスか……!)
突如現れた大型二足歩行の化物に焔は驚き、翔も内心で驚きつつもその化物を『妖魔』と呼んだ……。
………『妖魔』…古来より人々に仇なす存在として恐れられてきた存在であり、忍が現代にも存在する理由がこの妖魔を滅ぼす為であったのだ。
……最もその妖魔は忍によって生み出されている事はほんの一部の真っ当な忍しか知らないのだが………。
「ブオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
「「……っ!!!」」
大型妖魔は翔と焔を見て咆哮を上げた……。まるで獲物を見つけてように喜ぶかのように……。
「……へっ……へへへ………!どうやらこのバケモノ……殺り合いたい様子だな……上等だ……!!!」
「!?やめろ焔!!お前に敵う相手じゃねぇ!!さっさと逃げろ!!」
「黙れ!!怪我して役に立たないお前は引っ込んでいろ!!」
焔はその妖魔に恐怖を覚えつつもそう言い出し六刀を構えた。焔が妖魔と戦おうとしている事に翔は気付いて怒鳴るように制止の声を上げるも焔はそう言い返しては妖魔に突っ込んで行ってた……が………
……ゴッ!!
「……が……は…………!?」
大型妖魔の拳が焔の腹…いや、ほぼ体に直撃し、喰らった焔は血を吐きながら六刀を手放してしまい壁に叩き付けられてしまった……!
「…あ……あの馬鹿野郎が………!!」
大型妖魔の攻撃を受けてしまった焔を見て翔はそう言いつつも今度は自分が大型妖魔に突っ込んで行く。……幸いターゲットを焔にしている為か翔が近づいている事に気付いてはいなかった…………。
「あ……が………っ…!……ゲホッゲホッ………!」
焔は体に激痛が走りつつも血を吐いた…。今ので恐らくあばらの骨が何本か折れてしまった様子であった……。
………妖魔の存在は本来なら卒業した忍学生しか伝えることを許されない為に学生時代には存在すら隠されていた。……それ程忍にとって妖魔は脅威であり例え下級の妖魔であっても忍が殺される事例があった…。ましてや上級クラスであるこの妖魔に今の焔が敵う筈もなかった無かったのだ………!
「グ……グオオ…………!!!」
「……ひっ……ぁ………ぁぁ…………」
大型の妖魔が焔に近づいていく……この時焔は今までに感じたことのない恐怖と絶望…に包まれてしまった……。間違いなくこのバケモノは自分を殺すという事を……考えなくとも本能で察知し、逃げたくとも今のダメージと恐怖で動くことが出来なかった……が………
「…オラァッ!!!」
「グゴッ!!?」
「…!?」
そんな時、妖魔の頭部に強烈な一撃が加わり妖魔は大きくよろめいた……!翔が飛び蹴りを喰らわせたのだ……。
「油断したなバケモノめ、お前の相手はソイツじゃなくて俺だ!掛かってきやがれ!!」
「ぐ……グオオオオオォォォォォォ!!!」
翔は言葉は恐らく分かる事は無いが妖魔に向けて叫ぶ。それに妖魔は反応し、恐らく頭部を蹴られた事に怒ったのか翔に突っ込んできては拳を振り下ろすも翔には回避される。
(焔の野郎は逃げ……られねぇか今のを喰らって気絶しなかったのは幸いだが……とりあえずはコイツを焔から離さねぇと……!)
翔も今ので焔が今まともに動ける状態じゃない事を把握しては妖魔の攻撃をかわす事に専念しては出来るだけ焔との距離を離す事を考えた。
………しかし回避しているだけとは言え今の翔も万全な状態ではなかった。それは右腕の重傷の痛みもあるが………
「……ハァ……ハァ………!」
止血する暇も無かったが故に多くの血を流してしまっており目がかすんできてしまっていた……!…そして……
ドガッ!!
「ごはぁっ!!!」
妖魔の振るっていた腕に当たってしまい翔も吹き飛ばされ壁に叩き付けられてしまった……!
「しょ……翔………!!」
………そして再び妖魔は焔をターゲットに近づいていく……が………
「……っ…!『雷光』!!」
翔は左手を妖魔の足に向けて一直線に走るビーム状の電撃を放った……!それを受けた妖魔はそのまま地面に倒れ込んだ………!
「…くそっ……我ながら情けねぇ威力だ……!普段なら足を貫通できるほどの威力はあるってのにな……!」
翔は今の攻撃に苦虫を噛み潰したような表情で言う。……翔の言う通り肩の重傷も無く万全な状態であれば今の電撃で足を貫通させられる程の威力は出せ、それどころか焔を守りながらもこの上級妖魔すら葬れる実力はあった……。しかし今の状況ではそれが出来ない状態であったのだ………。
(………何故だ……何故なんだ……?…何で…アイツはあんな怪我をしながら……あのバケモノと戦う事が出来るんだ……?……それどころか……何で……私を守るんだ………?)
一方焔は妖魔と戦う翔を見て内心でそう思う……。焔からしてみれば重症を負った状態でもはや勝てる見込みもない状況であるのにも関わらず諦めずに妖魔と戦っている事を……そして何よりあれ程翔を否定していた自分を守ろうとしながら戦っている翔を見て焔はもう分からなくなってしまっていた………。
「ぐはっ……!!」
再び攻撃を受け倒れてしまう翔……しかしそれでもまだ立ち上がるが……かなりの出血によりフラフラになりまともに立っている状態にはなれなかった……。
「……もう……もうやめろよ!!」
「……?」
突如焔が翔に向かって叫んだ………
「なんで…なんでそんな状態になりながらも戦うんだ……!?ましてや私なんかを守りながら………!……私なんか放っておいて……お前だけでも逃げればいいだろうが!!!」
「…………」
「……私は……私は散々お前やお前たちに暴言を吐き捨ててきた…!お前を妬み、お前の存在すら否定した…!そんな私を、お前が助ける義理なんて無いだろう!!」
焔は翔に向かって叫ぶ。……今まで焔が翔にしてきた仕打ち……それを考えれば自分なんかを守る理由なんて無いと思っての事であろう…実際焔の内心は翔を信用できないとはいえ死んでほしくない……そう思っていたのだ……だが……
「……確かにな……お前は散々鬱陶しい位に突っかかってきては罵倒してきたりと耳障りな事も吐いてきやがった……。」
「…………」
「俺だってまだ死ぬわけにはいかねぇしお前の言う通りこのまま放置して尻尾巻いて逃げてぇさ……けどな、頭ん中でそう思っていても体が言う事を聞かんのだよ。」
「……え………?」
翔は皮肉を言いながらも焔にそう言い、焔は少し驚きの表情を浮かべた…。
「昔と比べれば不愉快な奴になったとは思った………だがな、俺の中じゃお前をまだ仲間……親友だと思っているようだ……」
「…………っ……!」
「…だからその親友をみすみす死なせるわけにはいかねぇんだ…だからお前はそのまま俺に守られてやがれってんだ…!」
翔の言葉に焔は目を見開いた。
……そしてかつての事を思い出す……そう、子供の頃の悪ガキ連中と喧嘩した時の事……その喧嘩で焔は今のように不注意によって攻撃を受けてしまい負傷してしまい動けない状態であったが翔はそんな焔を守りながら戦っていた。その際焔は自分に構うなと言ったが……
『親友すら守れねぇのは男が廃るってモンだ!こっからはお前を傷付けさせはしねぇ、だからお前は俺に守られてろ!!』
……翔はそう言いながらも焔を守りながら戦い続けた。実際その後翔は焔に指一つ触れさせずに悪ガキ共を全員倒してしまっていた……。
(………あぁ………そうか…………)
(……コイツは……昔から……昔から変わっちゃいなかったんだ………)
(……それを……それを私は………男が全員……それも親友である翔までもアイツのように裏切ると思い込んでいたんだ………)
(……私は………私は………!)
「……め……ん……」
「…あ?」
「……め…ん………ご……めん…………ごめん……なさ……い………っ……」
焔は涙を流しながら翔に謝罪の言葉を呟いた……。翔は変わったところはあってもこういう所だけは昔から変わっていなかった事を……それを焔はかつて自分を裏切ったトラウマである男とみんな同じだと思い込んでしまっていた事……それがすべてあふれ出てきたのだった……。
「…だぁぁ、泣くんじゃねぇ!!泣いてる暇があるんだったら使える武器を寄越せ!!」
「……っ!……ぶ、武器………しかし……」
「あるだろ、その背中に背負ってる刀が!」
「え?…い、いや……しかしこれは………」
「何躊躇ってんだ!早く寄越せ!それとも形見か何かなのか?!」
そんな泣く焔に翔は叫びつつ武器を渡すように言う。そう言われた焔は先ほど吹き飛ばされた際に手放してしまった六刀に目を向けるが翔は焔の背中に背負ってある七本目の太刀を渡すように言う。しかし焔は何故か躊躇うように言う為に翔がそう言うと焔は慌てて翔に七本目の太刀を投げ渡した。
「……よし……これで少しは……っ!?」
翔は左手でそれを受け取ると使えない右腕の代わりに鞘を口で咥え太刀を抜こうとする……が………
「…!?ん、んだこれ!?抜けねぇ………」
「……わ、分からない……私も何故か……その刀だけは……抜けないんだ……」
「はぁ!?なんじゃそりゃ!?」
引き抜こうとするも何故かビクともしない事に翔は動揺していると焔もその刀を抜くことができない事を聞いた為に翔はそう反応をした。
……しかしそんな状況を妖魔は待ってくれず翔に攻撃を仕掛けてきた。
「……ちぃぃ!抜けなくとも鈍器ぐらいにはなるか!おらぁぁ!!」
「ぶ…グオオォォォォ!!」
翔はそう言いつつもその太刀を鈍器のようには扱えると思い妖魔の頭部を殴るように使った。確かにダメージは与えられているものの隙を作れる程度の威力しかなく妖魔は反撃を繰り返してきた……!しかし血を流している分翔の方が劣勢となり遂に膝を着いてしまった……
「はぁ……はぁ………」
「しょ、翔!!」
息を切らしながら膝を着く翔……そんな様子に妖魔もまるで勝ち誇ったかのようにゆっくりと翔に近寄って行った……
「くっそ…このひねくれポンコツ刀が……!俺らはこんなところで死ぬわけにはいかねぇんだよ!!」
翔は未だに抜けない太刀に悪態を吐きながら近寄ってくる妖魔に抵抗するかのように太刀を殴りつける構えを取った……
「抜けねぇ鈍らなんぞ……折れちまいやがれってんだ!!」
そう言いながら近づいてきた妖魔に向かって太刀を振り下ろした……瞬間………
ズシャッ!!!
「………!?」
「ぐ………ブオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!??」
突如浴びた返り血に翔は驚き妖魔の方を見ると……妖魔の胸に大きな切り傷が出来上がり血が噴き出していた…!
「……か……刀が……抜けた………!?」
焔もその光景と太刀を見て驚きの表情を浮かべた。そう、どういう訳か鞘が振るった瞬間に飛んでいき太刀が抜けていたのだ……。
……更にその瞬間………
ボワァっ!!
「うわっち!?」
「翔!?」
突如翔の周りに炎が噴き出た事に翔と焔も驚く。まるで炎が翔を纏っている状態となり太刀にも炎が纏われていたのだ……!
「…いや…熱くねぇ……そうか、この刀の力か………!」
翔はこの炎が熱く感じる事は無く、更にこの太刀が炎を噴き出している事に気付くとふらつきながらも再び立ち上がっては………
「………来いよ……バケモノの出来損ないが……」
「ぶ……ブオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!!」
翔がそう言うと妖魔は翔に向かって突っ込んで行き拳を振り下ろす……が……
ザシュッ!!!
「ブギャアアアアアアアアアァァァァ!!!」
翔は妖魔が振り下ろした腕を斬り落とし……
「……終わりだ!!」
ザァンッ!!ボオオオオオオオオオオオォォ!!!
「ブオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
更に太刀を振るっては斬撃を浴びせつつ更には太刀の炎により妖魔は炎に包まれた。苦しみの声を上げる妖魔であったが段々と声が弱まっていき……
「ブ………オ…………」
そのまま焼焦げながらも倒れ込んだ。どうやら今の一撃で勝負がついた様子であった…。
………すると先ほど抜けた鞘が翔の持つ太刀に飛んで行ってはそのまま太刀は鞘に収まっていった……。その事に翔は少し驚きつつも再び太刀を抜こうとするが先ほどのようにビクともしなくなっていた。
「………っ……」
「!翔!!」
しかしダメージなどが蓄積していた翔はふらついた瞬間バタリと倒れてしまった。そんな翔の元に焔もフラフラになりながらも立ち上がっては翔の元へと駆け寄って行った……。
「翔…!大丈夫か………?」
「……こりゃあ…やべぇかもな………」
焔が翔に声を掛けるも翔の目は既にかすみ切っていた。無理もない、大量出血しているのにも関わらず戦い続けていたからだ……。焔は折れたあばらの痛みに顔をしかめつつも翔を運び出そうとした……が……
「ブオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!!!」
「……っ!?」
焼き殺されたかと思われた妖魔が咆哮を上げながら立ち上がって来たのだ…!焔が驚く間も無く妖魔は焔と翔に向けて切り落とされてない方の腕を振り上げ殴りつけようとしていた………
ザァンッ!!!
「………っ……!?」
瞬間、突如上空から妖魔の頭部に何かが突き刺さった。今ので妖魔の頭部は貫かれたのか焔達に拳を振り下ろす前に拳が止まり……立ったまま生命活動を停止した………。
「………ふぅ………」
「…ひ……びき………?」
妖魔の頭部の上には響輝が立っており両手には刀を手にしていた。どうやら今の攻撃で妖魔の頭部を刀で貫いた様子であった。
「翔くん!焔さん!!!」
響輝に続くかのように蒼鬼も現れては翔達の元へと駆け寄った……。
「……そう…き………か………?」
「っ!し、しっかり!しっかりしてください!」
「………流石に……今回は…やばかった………」
「っ!翔!!」「翔くん!!」「…!」
蒼鬼は今の翔の姿を見て驚きながらも翔に声を掛ける。……今までに翔がこんな状態になった事を見た事が無かったが故に蒼鬼も動揺が隠せずにいた。
そして翔は蒼鬼の姿を見て安心したのかそのまま力が抜けたかのように意識を手放してしまうのだった………。