トールズⅦ組の《ARCUSⅡ》、ボンゴレの守護者の《ボンゴレギア》、機動六課の魔導師のデバイスが、勇気の号令の発令によって今、一つに繋がった……!
三つの“軌跡”が交わりし今この時こそ、皆が力を合わせて物語の最初の山を越える時だ!!
「トールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科各員、皆、一気呵成にいくぞっ!」
「「「「「了解(応)ッ!」」」」」
先陣を切ったのはリィン達トールズⅦ組の六名だった。 Ⅶ組の担任教官兼指揮官であるリィンがミッドナイト軍艦隊が陣を敷いているこの空域全体に響き渡らせるように一斉突撃指令を発すると共に、彼を先頭にして六人それぞれ得物を構えて指揮官の指令に士気を上げて応えると、敵大将が駆る新型魔煌機兵へと全員一斉に猛然と躍り掛かっていく。
それに対して敵大将は機体の構えを解いて無防備を晒し、どこまでも相手を侮っているように機関砲剣を携えてない左手で手招きするジェスチャーをさせている。
『ドンッ、チェルルルーー! 大勢で掛かって来たって無駄無駄無駄無駄なんだよ。 ヴァァァカめッ! 生身なんぞでそんなちんまい武装なんざ幾らの数持って掛かって来たところで、この吾輩の最強の機体であるスクルドの絶対無敵の装甲を破壊する事なんざ、何処をどう攻撃したって不可能だってーの! グビッ、グビッ……』
幾ら相手が三つの世界それぞれで未曾有の危機を幾多と救ってきた百戦錬磨の英雄達だからと言ったところで、生身では流石に自分の操る無敵の巨いなる紫焔の武士には、絶対に敵う訳がないだろうと思って大いに慢心しているのだろう。 そんな見え透いた内心を裏付けるように絶対無敵の装甲に守られている機体内部の操縦席空間で馬鹿殿は、リィン達が接敵してこちらの機体の外部装甲に攻撃を加えようとしてきているのにも関係ない風に、虚けにも大仰に余裕をかまして相手の無駄な攻撃を蔑みきった罵倒を吐きつつ、操縦席の横に取り付けられている飲み物置き用の台座に置いてあったコーラのビンを手に取って中身を一気に飲み干した──
「──せいっ!」
「ていっ! てりゃぁっ!」
「はっ、せい!」
「えいっ!」
「オラッ、砕けろ!」
「うふふふ……シュートッ!」
それと同時に、リィン達の一斉攻撃がスクルドの外部装甲を叩き、砕いたのであった。 リィンが目にも留まらぬ太刀の振り下ろしで右脚首部分を切り裂き、ユウナが両手のガンブレイカーを銃撃形態にして右脇腹部分に強化レディアントスチール弾をしこたま撃ち込み、クルトが双剣を刀身が一瞬ブレて映る程に高速で振るって左足踵部分に二筋切り付け、アルティナが《クラウ=ソラス》を頭部へと飛ばし鋭利な刃のような右手で三つ目部分を横一文字に切り刻んで割り砕き、アッシュが長柄の戦斧を大上段から力いっぱいに左足の甲部分に叩き落として装甲破片を砕き散らし、ミュゼが背筋が凍るような微笑をしながら導力マスケット銃で股間部分に狙い定めて貫通力の高い魔力弾が其処を貫いた。
『ぶぶゥゥーーーッ! ほぁぁあ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″ーーーっ!!?』
攻撃された部分の外部装甲がいとも容易く砕けて罅割れ、連鎖爆発の如く其処の至る箇所から大量の砕かれた装甲破片が撒き散らされて粉塵爆煙が巻き起こされた。 機体の彼方此方から中央の操縦席空間へと伝わって押し寄せてくる激震のような衝撃が齎された為にラコフは全身を激しく嬲られてされて堪らず口の中に含んでいたコーラを真正面の外部の景色を映す導力映像画面にブチ撒けつつ絶叫のような悲鳴を操縦席空間内に反響させる。
『ひでぶっ!!』
これまでにリィンやツナ達から受けた数々の高威力攻撃によって耐久値を根こそぎ削り取られてきた為に、最早椅子の体を為してない程に破損された黄金のメッキが剥がれた操縦席が座下で壊れたスプリング器具によって勢い強く持ち上げられ、それに座っていたラコフがトランポリンの要領で天井へ投げ出された。 円形脱毛症でハゲた素頭を思いっきり打ち付けて眼からお星様を溢した後、先程椅子のパイプが突き刺さって穴の空いたアーミーパンツから覗く毛むくじゃらな汚い尻を突き上げた腹這いの恰好で床に落下する。
『ぐぬぬぬ……いい、いったい何がどうなっとんだぁああ? ナゼナゼナゼェェエエーー! 何故に英雄共の攻撃がこの無敵の機体の外部装甲をこうもアッサリ砕いたというのだぁぁーー!?』
今やまるで落ち武者のようにボロボロの姿になった馬鹿殿。 いそいそと立ち上がって壊れた操縦席を取り外しながら、たかが人の生身であるリィン達の通常攻撃なんかで鉄壁の筈だったスクルドの外部装甲がこうも簡単に砕かれたという現実を受けて不条理を呻き散らす。
確かに先程まで、現れ出てきた上空から落下してきて重力落下と高位置エネルギーを上乗せした登場不意打ちをリィンとツナによって頭部に叩き凹まされた時以外は、スクルドの特殊耐炎合金素材の外部装甲に大したダメージを与えられていない。 だが、今のリィン達の攻撃は、ユウナの発令した《ブレイブオーダー》の『トールハンマー』によって【6分の間、ブレイクダメージ+250】という因果律的ポジティブ強化効果──“号令効果”が戦闘集団の理に書き加えられて適用された為に、通常時よりも相手への攻撃で“ブレイクダメージ”をより多く与えられるようになっている。 故に威力+250が加算されたリィン達のブレイク攻撃を受けてしまい、スクルドの外部装甲の耐久値が一気に削り取られて【0】にされてしまった為、スクルドは装甲を破壊され“ブレイク状態”にされて怯んでしまったのだった。
ブレイク状態にされた者は自分の行動順が回って来るまでの間、無防備を晒して行動不能になってしまう為……。
「崩れたぞ! 今だ!」
「追撃します! やあっ! それっ!」
「崩した! 今が好機!」
「追撃します。 やあっ!」
「崩してやったぜ! 追撃しやがれ!」
「任せてください! ショット!」
このようにどんな攻撃でもその相手の体勢を崩させる事ができ、ARCUSⅡ同士による“戦術リンク”接続を駆使すれば立て続けに追撃を加える事が可能なのだった。
『ぐへっ! じょぼっ! わらばっ!』
トールズⅦ組による戦術リンクの即時追撃で無防備の機体を袋叩きにされ、中のラコフはそれによる怒涛のクリティカルダメージ連発を受けて機体の内に伝播してきた大震災レベルの衝撃振動によって操縦席空間内を四方八方上下左右前後へと荒激しく揺す振られた。 堅い内部甲壁や外部映像モニターに休むことなく叩き付けられ続けて全身を隈なく強打されていく彼は、いっそ愉快な呻き声を上げまくって阿鼻叫喚に。
『ハラホレヒレハレー☆ ガーガー! ベケーッ!!?』
てんやわんやと散々操縦席空間内を転げ回された挙句に、リィン達からの追撃が止んで振動が止まると、唯でさえ不細工だった顔をタコのように膨らませて更にズタボロの見た目に成り果てたラコフは頭上にヒヨコとお星様を旋回させて脳震盪に朦朧としながら一瞬ガチョウのモノマネをすると、その直後に振動で天井へとへばり付いていたスクラップ操縦席が重力の枷を再び付けてラコフの円形脱毛症ハゲの脳天へと落下してきてズタボロの全身ごとグシャッ! と圧し潰したのだった。
『ぐおらぁぁああ! ザッケンナコラー!!』
しかし、そんなにこっ酷くやられてまでも、小悪党という人種はどうしてか、どこまでもしぶとく諦めの悪いド根性を持っているものであった。 幸いにもそれのお陰で我を取り戻し、ブレイク状態から回復できたラコフは、自分の上に圧し掛かったスクラップ操縦席をヤケクソ火事場の一蹴りで退かして、奮起する。
『こんな事で、まだやられてたまるかーーいっ!!』
先程にアルティナの《クラウ=ソラス》の攻撃によって機体のメインカメラであった顔面部の三つ目を三つ共割られてしまった為、正面の導力映像画面が消えて真っ黒になっているものがなんのその、まだメインカメラがやられただけだと言わんばかりにラコフは仮想鍵盤を指で叩き付けるように打って映像の消滅した導力映像画面をしまい、正面透過映像に切り替え肉眼目視でもって外部の状況を確認。
「次はオレ達の番だ。 獄寺君! 山本! 一緒に畳み掛けるぞ!!」
「合点招致です十代目! 遅れるんじゃねぇぞ山本!!」
「お前こそな! トールズⅦ組が作った追加打点攻撃の隙、オレ等が潰してやる訳にはいかねーだろ!!」
すると丁度、スクルドの近接攻撃可能範囲から一旦距離を取って離れたトールズⅦ組と入れ替わるように。 ツナ、獄寺、山本のボンゴレ三人組が空中から猛スピードで迫って来ていたのだった。 両手の《XグローブVerX》の炎を逆噴射し音破衝で邪魔な空気を割きながら音速滑空するツナを中央先頭に、その左右後方を、楕円形の浮遊台の上に圧倒的バランス感覚で立ちつつ髑髏型火炎放射器《赤炎の矢》の発射口に弾であるダイナマイトを込めながら真っ直ぐ乱れず飛ぶ獄寺と、三本の小太刀の青色炎刃を推進力に飛翔する山本が、若干速度遅れで、しかし決して離されないようにピッタリと追従している。
ツナ達三人共が身に装備している【X】の文字が大きく主張する荘厳な装飾品──《ボンゴレギア》より、それぞれ自らの持つ属性の“死ぬ気の炎”を灯し、ユウナが発令した『トールハンマー』の号令効果が集団共有されている印である光を発している。 トールズⅦ組が所有している《ARCUSⅡ》との因果律的な重複接続を介する事で、彼等の端末よりブレイブオーダーシステムの恩恵を受けられるようになった。 故に今は彼等三人にも、ユウナの『トールハンマー』の号令効果である【ブレイクダメージ+250】が適用されている。
故に今は彼等の攻撃でもまともに叩き込めれば今のスクルドの罅割れだらけになった外部装甲なぞ容易に破壊してしまえる事は確実だった……だがしかし、まだラコフには奥の手が残っていた。
『おのれぇい生意気なクソガキ共が! キサマ等が図に乗るのもこれまででぇぇい! 対攻撃反射防御結界《リアクティビアーマーA》展開ィィィーーーーーッッ!!!』
ラコフは興奮MAXになった金切り声を上げ、これで一発逆転だとしてスクルドに自身の周囲を球形に覆う導力エネルギーの防御結界を展開させる。 先刻になのはとスバルが合体戦技として放った《Wディバインバスター》をも簡単に撥ね返した、絶対無敵の対攻撃反射防御結界《リアクティビアーマーA》が空を進撃するツナ達三人の前に立ち塞がった。
「隊長機の対戦車砲撃防御結界!? 拙い、ツナ達一旦止まってくれ! あの結界へ迂闊に攻撃すると反射されるぞ!!」
スクルドの周囲に展開されたリアクティビアーマーAを目の当たりにして焦燥の色を滲ませたリィンが、飛翔突撃に乗じた威勢のままに突撃して結界を突破しようと試みようとしていたツナ達へと険難を張り上げて一時制止を呼び掛けてくる。
現在から約3年前、当時大陸最大の軍事力を誇っていたエレボニア帝国における最名門の軍士官候補生養成校《トールズ士官学院》の第Ⅱ分校Ⅶ組特務科の担任教官であるリィンがまだトールズ特科クラスⅦ組生徒の重心として現役士官学院生だった時代に、彼と彼の仲間であった初代トールズⅦ組クラス士官候補生徒達は、とある帝国宰相暗殺事件の発端を切っ掛けにして帝国の中核を担う重鎮達の子等が数多く在籍する自分等の学院に、魔煌機兵の前身となる人型有人兵器《機甲兵》を用い襲撃してきた帝国宰相暗殺犯たるテロリストグループ──《帝国解放戦線》と対峙した。 その時に敵の幹部であった女性──《S》が駆り出してきた機甲兵の隊長機体《シュピーゲル》が展開する対戦車砲撃防御結界《リアクティビアーマー》を前にして、当時は今現在の機動六課FW陣よりも若干ばかり実力が上で場数を多く踏んだ程度の未熟者に過ぎずに烏合の衆ならぬ“雛鳥の衆”でしかなかったリィン達初代トールズⅦ組にはそれを突破出来る手札が全く無かったが為に、《S》の駆るシュピーゲルの剣によって文字通り手も足も出せず完膚なきに全員次々と地に叩き伏せられたという、苦渋を舐めた経験をした。
あの時はその直後にリィンが後に自身の相棒となる、とある“古の伝承の巨人”を呼び起こした事によって形勢逆転できたが、今はもう“彼”は現世より去って征ってしまっている。 故に同じ失敗はもう許されず、異世界で出会った新たな仲間達に同じ苦渋を舐めさせる訳にはいかない。
「三人共、ここは一旦下がってくれ! 奴の結界は俺の最大のSクラフトで解j──「心配要らないよリィン。 この程度の結界ならボンゴレ組だけで突破するのに問題はない!」──してみせる……って、何っ?」
しかし今のリィンには相手の機体が展開したリアクティビアーマーAを打ち破れる“奥技”がある。 故にその切り札を今こそ解禁し、《紫焔の武士》の最後の砦を自らの剣をもって破壊すべきが最善。 そう考えた彼はツナ達に前線から下がるように呼び掛けたのだが、他二人のリーダーであるツナが代表してリィンにはNOと返答した。 驚くべき事に、機甲兵の対戦車砲撃防御結界の概要を全く知らないにも拘らずボンゴレ三人組は相手の機体を完璧に覆い守っている無敵のリアクティビアーマーAは自分等だけで問題無く突破可能だと疑う事なく言い張ってきた為、リィンは虚を突かれて思わず目を見開いてしまう。 無論、彼の生徒達もそれを聴いて訝し気な色を浮かべて呆気らかんとし、相対するスクルドの内部でそれを聴いていたラコフもこちらの残された最後の切り札をいとも容易く突破できるなどと簡単にほざいたツナ達へ動揺が混じった遺憾を向ける。
『ふふ、ふざけた事ほざいてんじゃねー! 吾輩最強の専用機体である《紫焔の武士》の展開する、この絶対無敵の《リアクティビアーマーA》をっ、キサマ等中坊程度のクソガキ三人風情がっ、突破できる訳がねーだろっ!! 手汚い管理局の不当な当てつけを受けて6年前にその席を追われたとはいえ、腐ってもこの元クラナガン都市代表知事たるラコフ・ドンチェル様を相手に、そんなガキの駆引きごっこ遊び程度の見え透いた虚勢なんぞ、通用せんわい──ッッ!!!』
「なら虚勢かどうか試してやる! ……獄寺君!」
「御任せ下さい、十代目!」
相手の苦し紛れの挑発に敢えて乗ってやるとしたツナはまず獄寺に攻撃するように促した。 敬信するボスから先陣を任された信頼に応えるべくして意気揚々と返事した獄寺が颯爽と前へと突出し、「奴のドテッ腹に風孔空けてやるぜ!」と弾を装填済の《赤炎の矢》の放射口を絶対無敵の反射防御結界に覆われたスクルドへと差し向けた。
「標的射程距離700。 甲板上の温度12度(炎上後温度上昇値込みの数字)。 気圧480hPa。 風速は南西へ40m──」
瞳に付けたコンタクトレンズ型の照準計算装置を使って相手の急所への最適精確な命中射線を算出する為に環境分析を行いつつ、極薄の“青色の炎”を灯した指輪を指に嵌めた右手で標的へ狙いを絞った左手の火炎放射器の手元を少々弄り──
「──《SISTEMA C.A.I》──嵐+雨!」
発射!
「貫け、《赤炎の雨》────ッ!!」
獄寺がそう言い放つと同時に左手の髑髏型火炎放射器の放射口より若干青色みが混ざった赤色の炎の閃光が射出される。 発射前に意気込んで予告した宣言通り、結界を貫通したなら確実に敵の機体の腹部ど真ん中を直撃する正確無比の弾道で真っ直ぐにグーン! と炎の閃光が伸びて、狙い定めた標的へと向かって行く。
──見たところ先程から獄寺が撃っていた《赤炎の矢》と比較して、あまり弾の外観に変化は無いように見えるが……。
「アルティナ……もしもの場合はあの三人の退避をフォロー出来るように備えていてくれ」
「……了解」
外側でリィンとアルティナがそのようなやり取りを交わしたのを他所に、獄寺の放った《赤炎の雨》が敵の機体への干渉を阻む《リアクティビアーマーA》に到達し、ギャリリリリリーーッ!! という鉄削りのような聴く耳の中を激しく劈き回すが如き嫌な音を掻き鳴らしながら突き刺さった。
『ドンッ、チェルルルーーー!! この見た目通りに頭の足りん、不良のガキが! ヴァァァカメェェーーッ! どうやら吾輩の言った事が全然理解出来なかったらしいなぁ? こんなチンケな“嵐属性の炎”なんかで、このスクルドの絶対無敵の《リアクティビアーマーA》を分解しようたって無駄無駄ァァッ! たかが一人が使える単発属性の炎なんざぁ、簡単に跳ね返し……てや……アレェ?』
だが何かおかしい。 通常ならば《リアクティビアーマーA》への外部からの攻撃は結界に触れた瞬間に例外なく全て一瞬の拮抗もする事なく進行方向を反転され、瞬く間に攻撃を飛ばしてきた相手へと反射される筈だ。 それなのに、スクルドと外部を隔てている結界に突き刺さった、若干青色みが混ざった赤色の炎の閃光は何時まで経っても自分を放った主のもとへ反射されては行かない様子だ。 それどころか、炎の閃光はまるで手強く硬い岩盤を少しずつ掘り進めていくドリルのように、《リアクティビアーマーA》の結界形成を構成する導力エネルギーを段々と分解していっているようにも窺える……。
『どどどっ、どういう事だァァーーッ!!? いったい何故! 何故生身の人一人程度が放った“嵐属性の炎”なんぞがァァーーッ! “可能世界”と“七輪世界”の二つの次元世界外世界の技術の粋を結集して開発した、この最強最新鋭の魔煌機兵たる《紫焔の武士》スクルドの。 その絶対無敵である筈の《リアクティビアーマーA》を、たとえちょっとずつだからと言って、ちゃんと分解できてやがるんだァァーーーッ!!!』
ラコフは透過映像越し眼前で自分の搭乗している機体と外部を完全に隔てている絶対無敵の筈の導力エネルギーの隔壁の中を突き進み、鬩ぎ合いの激しい火花を迸らせながら鉄削りのように甲高い乱雑音を鳴り響かせて遅々と迫り来る獄寺の炎をまるで食い入るように覗き込んで、驚愕に血走らせた両眼をビョーーーン! と飛び出させたような超大袈裟な反応と共に不条理を前にしたような発狂を露わにした。 それは確かに、獄寺やオーバル・モスカも使用する“嵐属性の炎”は燃やす全てのモノを分解する特性を持っているが、しかし幾らなんでもエースやストライカー級の魔導師が放つ絶大なエネルギー量の魔力砲撃すらも簡単に防いで反射できる程に強力であった防御結界がたった一人の中学生が生身の出力で撃ってきた“嵐属性の炎”一つのみによって突き破られようとしているなどと、とてもじゃないが、たとえそれが実際目の前で起きていてもその現実を疑ってしまうのも無理はないと言える。
そんな機体越しに外から視てもそのような分かりやすい驚愕の形相を晒していると分かる中の操縦者へ、炎の閃光を撃ち込んだ本人が不敵の嘲笑を差し向けた。
「ハッ! バーカ、その結膜炎の汚ねぇ二つの眼玉ひん剥いてよーく見てみやがれ。 その《赤炎の雨》はその名が示す通り、嵐属性だけの弾じゃねぇんだよ!」
『なん……だとォォッ!?』
獄寺に指摘された通り、《リアクティビアーマーA》を少しづつ着々と鉄削りのように分解しながら掘り進んで来ている炎の閃光の様子を、両手の指で両目の瞼をこじ開けながら覗き込むようにしてよく観察して視るラコフ。 すると、なんとその炎の色を構成しているのは嵐属性を示す赤色だけではなく──
『──なんと吾輩ビックリ仰天! これはッ、“嵐属性の炎”の赤色に薄っすらと“雨属性の炎”の青色が混じっているではないですかーーッ!?』
「御明察だぜ。 もっとも、嵐属性単体で放つ《赤炎の矢》の表面に微量の雨属性の炎を塗装した【鎮静分解炎弾】ってのが正解だけどな! この炎弾の表面を覆う雨属性の炎の鎮静特性がまずテメェのその《リアクティビアーマーA》とかいう反射バリアーの強度と攻撃反射性能を弱体化させ、更に脆くなったその部分を嵐属性の炎で分解し、どんな堅い壁をもブチ貫く。 それがその《赤炎の雨》の正体だぜ!!」
そう獄寺が極薄の“青色の波動”を点灯させた右手の中指に嵌めた指輪がよく相手に見えるように、右手を前に突き出して中指を上に向けながら挑発するようにして技の詳細を説明する。
実のところ獄寺が過去にこの嵐属性と雨属性の炎を配合した【鎮静分解炎弾】を初めて使用した時はまだ《赤炎の雨》という技名を付けてはいなかった。 最近になってツナや獄寺達《ボンゴレファミリー》が大いに関わっていたとある代理戦争が無事に終戦した事によって暇を持て余していたところ、獄寺は暇つぶしに自分の使用できる属性の組み合わせ全通りの技に名前を付けてみる事にしたのだった。
「この技に名前を付ける時、めんどくせーから最初は既に最初から名前を付けていた最強の組み合わせである嵐+雷属性の《赤炎の雷》と同じようにして【フレイムレイン】って付けようとしたんだけどな。 でも上に撃ち上げて雨状に降らせる技でもねーのに【雨降り】って付けるのはどう考えても変だったからな。 そんで“炎で貫く”って意味合いを兼ねて《赤炎の雨》って名付けた訳だぜ」
『ぐぬぬぬぬ、うぉのれ~……だがこぉぉんな色変わり損ないのガスバーナーなんぞ、この《十二月の子持ちししゃも(機関砲剣の名前)》で蠅の如く直接叩き墜としてくれるわーいっ!』
そう言ってラコフは諦め悪く、スクルドに右手で握った機関砲剣をめいいっぱい高々振り上げさせ、それを今にも眼前の結界を突き破って来そうになっていた《赤炎の雨》へ向けて全力を込めて振り下ろそうとするが。 その刹那の一瞬の間に獄寺の真横を疾風のようにすり抜けて炎の閃光が突き刺さる結界の目の前へ飛んで来た山本が、青色の炎翼の剣と化させた時雨金時のその切っ先を炎の閃光が後引く火尾へ射線が重なるようにして差し向けつつ、手放して自分の足下へと柄を落とす。
「おっと! 試合中に焦りと不注意は禁物だぜ。 これで雨属性の炎の追加得点だ!」
『ちょっ!? おまっ、それ超高炎圧の雨属性の炎の剣じゃねーの! まさかキサマやめr──』
「いくぜっ! 時雨蒼燕流──攻式・三の型」
そして足下へ水平の姿勢を保たせたまま真っ直ぐと落下させた時雨金時の柄尻を──
「──遣らずの雨!!」
右足の爪先で勢いよく前方へと蹴り飛ばした。 無論その切っ先は真っ直ぐとそのまま獄寺の《赤炎の雨》の尾尻に後方から深々と突き刺さった。 するとその瞬間、時雨金時の全身に灯る莫大な量の“雨属性の炎”が丸ごと全部《赤炎の雨》へと受け渡され、微々たるものだった量が強大に為った雨属性塗装によって大量のガスを注入したガスバーナーのように青白へと変色した炎の閃光が、《紫焔の武士》を守る最後の砦にして最強無敵の反射防御結界《リアクティビアーマーA》を一気に鎮静で弱体化させ、罅割れて脆くなった硝子のようにして粉砕したのだった。
『そそそ、そんなヴァカナァアアアーーーッ!!? 絶対無敵の反射防御結界がウソダバドンドコドーn──』
ボコッ! ゴオオオオオォォォォォーーーーーッ!!
『おぎゃああああああああああ!!?』
《リアクティビアーマーA》を粉砕してその勢いのまま間髪入れずスクルドの腹部中心上部の三重構造炎伝導板胸部操縦席ハッチを纏めて突き破り、内部操縦席空間に燃えるような轟音を唸らせて突入してきた青白い炎の閃光が操縦者であるラコフの円形脱毛症ハゲの素頭部を掠めて機体の背中から外へと突き抜けて行った。 炎はそのままスクルドの背後に聳える艦橋の右側を通り過ぎて艦の艦尾から彼方の夜闇へと吸い込まれて消失したが、ラコフの頭は焚火のように炎上し、持ち主はその頭に猛烈と感じる焼痛と儚く焼け散って死滅していく己の残髪毛根に阿鼻叫喚を催した。
「よっしゃあ! 特大三塁打、決まったぜ!」
「これであの鎧武者ロボヤローの防御能力は総崩れにしたッス! 一発決めてください十代目!!」
「ああっ!」
ユウナの『トールハンマー』による号令効果の恩恵を共有して受けているお陰様で、獄寺と山本の攻撃が特大のブレイク攻撃と為り、鉄壁を誇っていたスクルドの武者装甲は壊滅的に破壊された。 物理、死ぬ気の炎、魔法も無差別に全ての攻撃を跳ね返す絶対無敵の反射防御結界《リアクティビアーマーA》も破れ、最早敵大将の駆る機体たる巨いなる紫焔の武士を守るものは何も無い!
「うぉぉおおおおおおーーーっ!!」
砕け散った結界の細かな導力エネルギーの破片が粉雪のように降り注ぐ中を、ツナは勇ましい雄叫びをあげつつ、胸に大孔を空けて完全な無防備状態に陥ったスクルドへと飛翔して向かい、堂々の突撃を敢行。 何時の間にか右手に装着していた、その甲に【Ⅰ】と刻まれた籠手に埒外の熱量の“橙色の炎”を秘め、その拳を力強く握り締めながら、音すらも置き去りにする爆速でもって降り注ぐ導力エネルギーの破片を蹴散らして、“究極の一撃”を敵へ叩き込むべくして猛然と突っ切って行く。
究極の一撃──≪Ⅰ世のガントレット≫
「ツナさんが右手に着けてるあの籠手は、さっきあの人が空から降ってきてリィンさんと一緒にスクルドの脳天に不意打ちを叩き込んだ時にも着けて殴ってた、チョー強い武装だ……!」
「まさかあの籠手って、さっき獄寺と山本が炎を灯した不思議な装飾品の中から出したカワイイ小動物を自分の武器と合体させて強力な武装に変化させていたのと同じように、さっきまでツナの肩に乗ってたのがチラッと見えた可愛らしい子供ライオンが彼の右手に着けていた燃えるグローブと合体して変化した武装なのぉぉ!?」
次の追撃に備えて仲間集団の最後尾に待機しながら前線の戦闘を観て眺めていたスバルが、敵へ突撃して行くツナの右手に装着された《Ⅰ世のガントレット》に見覚えを感じ、それに心強い期待の眼差しを向けている。 そのすぐ真後ろではフェイトが、ツナの装着し出した凄まじい炎を秘める籠手が、先程まで自分と共に協力して強敵と戦っていた彼の仲間の二人がやっていたのと同じように、自分のと同じ属性の炎を身体に灯す不思議な小動物と融合させて元々の装備を強化したものだと推察し、困惑を頂点に達させて目を回している。 その他の機動六課最前線部隊の魔導師達も一心になって、その炎の籠手から今解き放たれようとしているボンゴレ十世の“究極の一撃”に注目を集め、固唾を呑んで見守る様子だ。
皆からの期待(内約一名は困惑)を一身の背に受け取ったツナは引き絞った右手の《Ⅰ世のガントレット》から覗く、中指に嵌めた《大空のリングVerX》に灯る橙色の炎と残りカウント1となったブレイブオーダーの光を一切溢さぬようにしっかりと、握り締めて──
「いくぞ……覚悟しろ!」
拳に勇気と覚悟の炎を纏い──
『やっ、ヤメテッ! くくく、来るんじゃねぇぇぇえええええ──ッッ!!!』
己の身の安全を守ってくれていた炎も鎧も結界も全て憎き英雄達に破壊されてしまい、恐怖に駆られて情けない悲鳴をあげだした敵大将を中に乗せた、崩壊寸前の巨いなる紫焔の武士の顔面に目掛けて──
「バーニングアクセル────ッ!!」
大空に煌く太陽の如き橙色に燃え盛る炎の鉄拳を、一発叩き込んだ!