英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡   作:蒼空の魔導書

13 / 25
ふふふふ……遂にこれまで貯め込んでいたオリジナル設定の一部を解き放つ時が来たぜ!




初めて相対する三世界の英雄達と次元魔王……そして発令される、新たなるオーダーシステム

遠隔操作探視魔法(サーチャー)を通してリアルタイムで前線の様子を映す、作戦指令室中央に浮かぶ大型のメイン空間映像モニターに映された軍服姿の男を目の当たりにして機動六課後方支援(ロングアーチ)が皆、総員一人も余らず息を呑んだ。

 

「な……なんやねん、あのごっつう素敵な笑顔の男は──ッ!!?」

 

真空中のように息苦しい沈黙を破った六課の部隊長である茶髪ショートボブの女性局員が未だ嘗てない戦慄の震え声で此処に居る全員の今の気持ちを代弁するように全身全霊吐き叫ぶ。

 

なのは達最前線攻略部隊が謎に包まれた異世界からの助っ人達と即席の共同戦線でもって、敵侵略軍──ミッドナイト軍総司令官のラコフ・ドンチェルが駆る強力無比な性能無限強化能力を持っていた“畜炎体循環出力増幅機関搭載型”魔煌機兵スクルドを辛くも撃退し、見事逆転勝利を収めた……作戦の最大目標は敵軍の総司令官(首謀者)であるラコフの身柄を拘束・確保する事だったので、その目標(ホシ)を本当の夜空の星にしてしまった為、結果論からしてみれば作戦失敗と呼ばざるを得ないだろうが、そのお陰で司令塔からの制御が途絶えた事によりクラナガンの都市全域に展開されていたミッドナイト軍の人形兵器部隊全ユニットが一斉に稼働停止して沈黙し、上空で首都航空武装隊を相手に質量(サイズ)と火力差をもって蹂躙していた魔煌機兵部隊も後方の敵艦体への撤退を余儀なくさせる事ができた。

 

先日にあったJS事件の【ゆりかご決戦】を受けて第一管理世界ミッドチルダの防衛戦力が著しく疲弊していた為にまともに戦える人員も装備も相当限られていて、故に今回の戦いは極限と言える程に過酷だった。 正直、勝てる可能性は1%以下だったと言って過言ではないレベルの難局(ムリゲー)だった。

 

それ故に敵軍の頭を押さえる事は出来なかったが、味方の犠牲を少なく隔絶された戦力差の相手を撃退できた事は、まさに奇跡と言えよう。 ほんの数分前、二つの異世界からやって来た英雄達のリーダー二人(リィンとツナ)が互いの“炎”を混ぜ合わせて放った合体戦技(コンビクラフト)で敵軍総司令官のラコフを彼が乗り込んで操っていた無敵の《紫焔の武士》スクルド諸共に夜空の果てまでブッ飛ばして星にした瞬間は、此処(ロングアーチ)も勝利の大歓喜に包まれていたものだった。 彼女達はここ数日連続で次元世界一つを余裕で陥落させねないような規格外な管理局の敵対戦力がミッドチルダを空襲して来たのを大賭けや死力の限りを尽くして乗り切ってきたのだから、“勝って兜の緒を締めよ”という言葉など忘れて長く苦しかった戦いに勝利した解放感を実感してつい浮かれ上がってしまったのも無理はないと言えよう……だがしかし、その喜びも束の間の夢であった。

 

「わ……解りません。 余震もなく突然計測不可能な規模(レベル)の大次元震がミッドチルダ全域に発生したかと思ったら、()()()()()()、気が付くとあの男が最前線攻略部隊の前に姿を現していたのですから、もうとても頭が追い付かないですよ。 勘弁してください」

 

一難去ってまた一難。 勝利の余韻に浸る間もなく謎に包まれた正体不明の男が出現し、機動六課と異世界からの助っ人達の敵だと、威風堂々、爛々として名乗りをあげたのである。

 

魔王(ラスボス)と名乗ったその男──《イノケント・リヒターオディン》が放った“威圧”はこの星(ミッドチルダ)に生きとし生ける全ての生命体にこの星が一瞬にして滅亡する錯覚を見せる程に絶大であり、その裁定者の如き風体から放たれる存在感はまるで天変地異や次元災害ですらも優しい霧雨のように感じる程の魔災だ。 それでいて大好物のおやつを前にナプキンを首に巻き付ける子供のように無邪気な笑顔をして、最前線攻略部隊と異世界からの助っ人達を大蛇が雨蛙を睨むような眼光でもって睥睨しているものなのだから、そこに孕まれた正邪混沌(ギャップ)に、皆が底無しの悍ましさを魂の奥底にまで刻み込まれてしまう。

 

「保有魔力総量……測定不可(アンノウン) それに、助っ人達が使用していた“導力”と“死ぬ気の炎”、その他未知数の力を多数あの軍服の男から検知されました!!」

 

「うわああっ!? ののっ、能力計測機が暴発を起こしました!!」

 

「推定脅威度……EX(エクストラ)ランクオーバー──未確認のUNLIMITED(アンリミテッド)(ランク)です──ッッ!!!」

 

「なん……やて……ッ!!?」

 

新たに現れた敵の持つ力は最強(SSSランク)どころか、最強を超えた最強(EX)をも更に超越した、次元世界の歴史において未だ嘗て前例の無い高みの次元にあるらしいと、前代未聞の測定結果が算出された。 作戦指令室の片隅に設置されていた測定機の画面に表示された計測メーターは“SSS(レッドゾーン)”を大きく振り切って計算処理の限界容量を大幅に突き破り、電力が熱をあげて測定機が爆発した。 それは敵の戦闘力は予想だけで次元世界の魔導師の力では束になったとしても恐らくは敵わないだろうと示唆されている訳であり、機動六課後方支援(ロングアーチ)は未だ嘗て遭遇した事がない未知数の次元に立つ魔王(ラスボス)を前にして全員が表情を紫一色に染めていく。

 

彼女達が今までに相対してきた全ての敵が最小微生物(ゾウリムシ)に見えてくる異次元格差の超絶難敵……しかも直前にラコフ・ドンチェル等、反管理局軍ミッドナイトとの抗争で半日以上もぶっ通しで連戦続きだった最前線攻略部隊は全員もう既に魔力も体力も完全に底を尽いてこれ以上戦闘継続する事は非常に危険で。 まして六課最大戦力である高町なのはに至っては先日にあったゆりかご決戦で自分の命を削って限界を超える【リミットブレイク】形態──《ブラスターモード》を酷使し続けた代償を受けて爆弾を抱え込んだ身体を引き摺って今宵の戦いに参加した為に、今日此処までの連戦の無茶も重なって、もう身体の中に抱えた爆弾は爆発寸前にまでなっているであろう事が予想される。

 

「こうなると、頼みの綱は異世界の助っ人の皆さんになるでしょうね……ですがしかし、もしあの男の戦闘力が本当にUNLIMITEDランクだとすると、先程のラコフ・ドンチェルとの集団(パーティ)戦闘であの助っ人の人達が見せてくれた《ブレイブオーダー》という力を使っても、勝てる保証は……」

 

「たぶんアカンやろな……ふうぅぅ……しゃーないな」

 

正面に座ってメインモニターの端末を打っている通信士の女性部隊員が漏らした不安に神妙な面持ちをして答えた部隊長の女性は重い溜息を吐くと踵を返して作戦指令室の出入り口へと足を向ける。 それを見ただけで後方支援(ロングアーチ)の全員が例外なく彼女が何処に向かうつもりなのかを察していた。

 

「出撃するつもりなのですね。 部隊長(あなた)自ら直接、あの戦場(ガラハッド)へと……」

 

「正直“総合SSランク”を持っとる私でも、あないなアホみたいな次元の敵相手に何が出来るんか分からへんけどな……部隊長として、部隊のみんなのピンチに助けに行かへんでどないすんねんって」

 

子狸のようにあどけない幼さが残る童顔を引き締めて、部隊の仲間達を助けるべく命を賭ける覚悟を決めた部隊長の女性のもとに明らかに人間ではない妖精サイズの銀髪の女の子が飛んで来る。

 

「はやてちゃん、(ツヴァイ)準備(メンテナンス)はもう万全ですぅ。 直ぐにでも出れますよ!」

 

「おっと、グッドタイミングやツヴァイ♪ ……ほな、こっちは任せたで、ひよ里。 ちょっくら行ってくるわ」

 

「はい、御武運をお祈りしています……ですが八神部隊長、以前から何度も言ってますが私の名前はルキノです」

 

部隊長の女性は他愛ないやり取りで部下にこの場を任せて緊張をほぐすと、妖精サイズの女の子を連れて作戦指令室を出て行ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄(俺達)が打倒すべき魔王(ラスボス)……だと!?」

 

リィンは焼け落ちかけた艦橋(ミラービル)の屋上より多大な期待が込められた眼差しでこちらを見下ろしてきている謎に満ちた軍服姿の男──イノケントが名乗ってきた彼の素性の概要を聞いて困惑を覚えた為、擦れさせた声音でその内容を一度反芻し、より一層に強い警戒心を持って相手へ懐疑の目線を向け返した。

 

「“魔王”って、御伽噺(おとぎばなし)RPG(ロールプレイングゲーム)とかに出てくるような、あの悪役の魔王の事を言っているのか……?」

 

「ちょっとアンタ、何を寝ぼけた事言ってるのよ? 自分で勇者に打倒される魔王(ラスボス)を名乗り出てくるだなんて、頭がおかしいんじゃないの!」

 

魔王という架空の……しかも悪役の通り名を恥じる事なく堂々と自ら名乗った新たなる敵に、ツナやティアナをはじめとして此処に居る全員が荒唐無稽の心を露わにして疑念や苦情などの文句をギャーギャー挙げている。 確かにこのイノケントという男が今もその身から放っている、人の身には度が過ぎる程に絶大な“霊圧”や世の(ことわり)から外れた魔神(クラス)の気配とそれを裏打ちする畏怖と神聖さを同時に感じさせる混沌が人の形を成したような圧倒的存在感などを考慮すれば、自ら魔王を名乗れるだけの強大無比なる力を秘めているのだろうと予想はつく。 だが、まるで相手(リィン達)を物語の勇者(ヒーロー)に見据えて彼等に倒される役回りである魔王(ラスボス)を喜んで名乗り出てくるだなんて、理解できない趣味にも程があるし、大馬鹿としか呼びようがない。

 

「だいたい貴方、いったい何時からこんな所に──「テスタロッサ! 皆も全員無事かッ!?」──って、シグナム!?」

 

皆で文句を投げつけても爛々とした笑顔のままで微動だにせずにいるイノケントに、外部の次元世界からこの世界(ミッドチルダ)に侵攻してきたミッドナイト軍の航空母艦であるこの場(ガラハッド)に部外者である筈の彼が居る事への疑惑を感じたフェイトが問い詰めようとした丁度その時、背後から聴き知った女騎士の声が響いてくる。 全員が声の方へ振り向くと、其処にはミッド式でもベルカ式でもない独特の雰囲気を持つ術式で描かれた魔法陣が顕れていて、その上には聴こえてきた声の主である女騎士シグナムを先頭に、ヴィータ、ガイウス、エマ──この遥か下で強敵の鉄の守人(オーバル・モスカ)の足止めに務めていた四名が魔女の転移魔術を用いて此処前線へ無事に合流を果たしたのであった。

 

「ヴィータちゃん! よかった、あの凄く強い人型ガジェットを無事に倒せたんだね……」

 

「おうよ! あんな鉄屑ロボットなんざ、この《鉄槌の騎士》ヴィータ様とグラーフアイゼンにかかれば……ってか、なのはテメェ、ヤバイ程身体がズタボロになってんじゃねーかよ!? 口酸っぱくしてあんだけ止めろと言ったのに、また無茶しやがったんだなコラッ!」

 

「あ……アハハ……ごめんn──「その声は……まさか“ヴィータ姉さん”!?」──ふえっ!? 誰なの?」

 

「おっ? へへっ、なんだよエマ。 やっとアタシの事を素直に歳上と認めてヴィータ姉さんと呼ぶ気になったのかよ♪」

 

「いや、ヴィータちゃんの事じゃなくて……えっ、どなたですか? “ヴィータ姉さん”の声にそっくりだったけど、私、もしかしなくても人違いして……」

 

「エマ! ガイウスも無事でよかった」

 

「あ……リィンさん!」

 

「後輩の皆も、全員大した怪我は無いようだな」

 

「はい! 御二人にも大きな怪我は見当たらないようで、安心しました♪」

 

「えっと……リィン君、そちらの御二人は……」

 

トールズⅦ組(俺達)の頼れる仲間さ。 さっきミッドチルダ(この世界)()()()()()()()()()時に、このガイウスが【下の方から誰かが危険な目に遭っているような“風”が流れてきている】と言ったから、一旦二人と手分けをしていたんだ」

 

──風……?

 

「そ、そうだったんだ……御二人共、ヴィータちゃんとシグナムさんを助けてくれて、どうもありがとうございました。 わたし、機動六課の教導官と前線分隊指揮を務めている、高町なのは一等空尉です。 そちらはガイウスさんと、えっと……」

 

「あ……はい。 はじめまして、タカマチさん。 私はエマ・ミルスティンと申します。 こちらのリィンさんとガイウスさんとは元トールズ士官学院特科クラスⅦ組の卒業生同士です。 詳しくは後程お話ししますが、私はこの世界の魔導師(タカマチさん達)のとはちょっと違う“魔法”を使えるので、どうかお役に立たせてください」

 

「そ、それはご丁寧にどうも……にゃはは。 でも、出来ればわたしの事は“なのは”って気軽に名前で呼んでください。 お互い歳も近いみたいだし、あまり硬くならないで、普通に接してくれると嬉しいかな」

 

「は、はい……それでは改めて。 よろしくお願いします、なのはさん……どう聴いてもやっぱり似ているなぁ、姉さんの声に」

 

「確かに、先程より何処か聴き馴染みのある良い声をしているとは思っていましたが、()()()()()()でしたか……」

 

「?」

 

なのはは自分の方を眺めてきながら口元に手を添えた思案顔をして何やらブツブツと呟き合っているエマとアルティナに訳が分からず首をコテンと傾げて頭の上に?マークを浮かべている。 しかしそこで全員がハッと気付く。 和気藹々と自己紹介し合っている場合ではない、今彼等は魔王(ラスボス)を名乗る未知数の力を持つ敵を前にしていたのだったと。

 

「うむうむ。 実に良い♪ 英雄(しゅじんこう)達と新たな仲間が邂逅を果たす場面(シーン)は何時見ても尊い輝きを放っている。 光の未来(さき)に明日への希望を見据える若者同士が手を取り合うその姿、この先の展開(みらい)に期待が膨らみ心が躍るというものだ」

 

「──って、うぉっちょぉおお!? ちょっとあの人、何だかあたし達とエマさん達の再開を律義に見守ってるみたいなんですけど!」

 

リィン達は自分等全員よりも遥かに格上だろう相手の前で迂闊に隙を見せてしまったかと思い、全員慌てて再び気を引き締めつつ自称魔王(イノケント)が見下ろしている艦橋(ミラービル)の屋上に意識を向け返してみたところ、奴はこちらの隙に付け入ろうとする素振りもせずにその場から一歩も動いていなかった。 そればかりか、こちらが合流を果たした仲間達と労いや新たな交友を交わす光景を、まるで映画の名場面(シーン)を観て感極まったファンの観客さながらに、腕を組んで何度も首で頷きながら感想(コメント)を呟きつつ、大きく感動したあまりに只でさえギラギラした目をして濃過ぎる顔面が笑窪で歪まされる程の破顔一笑をしていたので、気を抜かされたユウナが思わずスッ転びそうになったのを踏ん張ってから盛大にツッコミを叫んでいた。 何時の間にか先程までミッドチルダ全域に向けて放出されていた絶大な霊圧も綺麗サッパリと消している事から、相手が相当気を遣って邪魔をしないようにしていた事が伺える。

 

「ふははは! なに、当然だろうユウナ・クロフォードよ。 英雄(しゅじんこう)が仲間との初邂逅や再開を果たすという貴重な名場面(シーン)を生で目にできるというのに、どうしてそれに水を差せというのだ?」

 

「へ……っ!? どうしてあたしの名前を」

 

「そういや、このクソデカ三つ編み野郎。 ボンゴレファミリー(オレ等)とは見ず知らずの筈なのに、さっきは十代目の御名前ばかりか十代目が世界最強のマフィア【ボンゴレファミリー】の十代目ボスだっつうファミリーの最重要機密まで知っていやがったよな?」

 

「貴方、確かイノケントって言ってましたね……。住む世界が異なっていた私達全員の素性の情報(プロフィール)を詳細深く知り得ているだなんて……それに、さっき私達がラコフ・ドンチェルと戦っていた時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ガラハッド(この艦)の何処かに貴方は隠れていたとすると……!? まさか……貴方はッ!!」

 

イノケントが童子の如く純朴過剰に満ちた素敵な笑顔で嬉しい哄笑をあげながら、まだ名乗りもしていないユウナのフルネームを呼んでみせた事に対して、名前を呼ばれた本人は呆気にとられて固まってしまう。 それに獄寺が、先程イノケントが現れた時にボンゴレファミリー(こちら)が表に漏洩させないよう厳重な情報規制を行っていたファミリー内部の機密事情についてを彼がペラペラと詳しく口に出していた事を思い起こし、相手への不審感を懐く。 そうしたらフェイトが執務官という役職柄ならではの推理を使い、イノケントの正体について得た相手の情報と今の状況を照らし合わせて洗い出しを試みる。 すると彼女はイノケントがガラハッド(この艦)に隠れ乗っていた理由に気付き、途端に激しい敵意の目を相手へ飛ばし出した。 何故なら──

 

「ふはははは! ()()()()()()()()()フェイト・T・ハラオウン執務官よ。 今現在我々が乗っているこの銀色の次元間航行母艦と周囲に浮かぶ艦隊を率いて、今宵この第一管理世界ミッドチルダに襲来し、先程までお前達や時空管理局地上部隊と半日以上に渡り激しい交戦を繰り広げていた《反管理局軍ミッドナイト》。 彼等が新戦力として戦線へ投入してきていた【人形兵器】【魔煌機兵】【オーバル・モスカ】。 それ等の兵器製造に必要だった【導力器】と【死ぬ気の炎】の技術知識や製造材料を連中に提供していたのは他でもない──この俺だ」

 

「「「「「「「────ッッ!!!」」」」」」」

 

イノケントは誤魔化す事など微塵もせず、両腕を高らかに大きく広げて今回の戦いに己が関与していた事の全容を盛大に暴露した。 そう、何を隠そう、ミッドナイト軍に取り入ってリィン達やツナ達の世界の力を与えていた匿名の協力者の正体はこの男、《イノケント・リヒターオディン》だったのだ。 今明かされた衝撃の真実を受けて三世界より集結した歴戦の若き英雄達は皆目をはち切れんばかりに大きく見開いて驚愕の様相を露わにし、全員相手への警戒レベルを最大値まで一気に上昇させた。 もう疑う余地はない、奴は紛れもなく自分達の敵だ。

 

「はは、俺が黒幕だと判って直ぐに全員が戦う目付きに変わったな……ふは、良いぞ。 ようやく俺を倒すべき敵だと認めたか」

 

「ああ……だが、どうしてだ? そこまでの事をしてまでオレ達の敵になりたい訳が分からない。 イノケント、いったいお前は何が目的なんだ!」

 

英雄達に己を敵だと認定されて、まるで昔から憧憬を抱き続けていた人から承認を受けたかのように悦びを顔に表わす此度の戦いの黒幕である自称魔王に、ツナは剣呑な雰囲気に理解に苦しむような思いを混ぜた表面を浮かべつつ橙色の煌炎を灯した右手の人差し指をさし向けて、何を企んでいるのか教えろと問い詰めた。 リィン達もツナの質問に同感を示す頷きを呈している様子だ。

 

確かに疑問を感じるのはもっともだ。 魔王(ラスボス)を名乗り、異なる二つの別世界からそれぞれ次元世界には存在していない異端技術を提供する事で反管理局軍へと取り入って、JS事件後の復興中だったミッドチルダを滅茶苦茶に破壊して、それで黙っていればいいのにそれ等の所業を隠す事なくミッドチルダに集結した三世界の英雄達に堂々と暴露する事で彼等の敵意を喜んで貰うという。 口にしてみると悪役の基本に則ったような悪行三昧だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? しかも当人からは人が発せれるものとは思えない程に凄まじい圧力(プレッシャー)は感じれど、()()()()()()()()()()()()()()()ものだから、困惑に輪が架かる。

 

「そう急かすな。 今宵の物語はまだ始まったばかりなのだ。 このようなプロローグで主人公たる英雄達がラスボスの目的を知ってしまったら、物語の面白味が薄くなるだろう?」

 

しかし、お楽しみは後まで取っておくものだと期間限定販売の極上スイーツを買えて上機嫌で家の冷蔵庫にしまっている女子高生のような調子で勿体ぶり、回答を拒否したイノケント。 リィン達は眩暈を覚えた。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 双方とも確かな緊張感を持って相手と対峙している構図だが、その緊張感の種類が致命的に違えてしまっているから徹底的に嚙み合わない。

 

「俺は今、胸が高鳴り張り裂けてしまいそうな程に感動している。 トールズ士官学院Ⅶ組、ボンゴレファミリー、古代遺物管理部機動六課……ずっと以前より長年この目を焦がれて狂おしいほどの尊敬をこの胸に懐いてきた英雄(ヒーロー)達が、今まで世界同士を隔ていた断絶の壁を超えて、今日この場へと集結を果たした。 そして今、俺は魔王(ラスボス)として焦がれ続けてきた英雄(おまえ)達の前に立ち塞がっている……ふは、ふははは! 心より嬉しいぞ。 長年追い求めてきた夢をようやく叶えられた!!」

 

夜天を見上げてバッと両腕を大きく開き、宝くじの一等を当てたかのように盛大に歓喜して大はしゃぎをする自称魔王(ラスボス)

 

「な……なんなのよ、あの男は!?」

 

「ハッ! どうやら相当に頭がイカレた野郎のようだぜ、ありゃあ……」

 

「つーか、如何にもバカの類だろアレは? 言っている事の意味不明さ加減がランボ(アホ牛)並だし……」

 

英雄(じぶん)達の敵になれた事を無邪気に喜ぶ、相手の持つその異常な感性に皆がヤバ過ぎる歪さを感じ取って身が硬直する程の動揺を露わにしている。 此処に居る誰も唯一人としてイノケントと会った事がある者など居る筈ないのに何故奴は英雄(じぶん)達へ気持ち悪い程に過剰な憧憬を向けているのかはこの際今は置いておいて、“物語”だのなんだのと相手の発言の内容が理解不能過ぎて凄まじく気が滅入ってしまう。 もしかしてアイツはただの馬鹿なのではないのかと疑い出したところだったが……。

 

「……さてと。 本当ならプロローグに登場してくるラスボスの御約束(てんぷれ)というものに従って、今回は主人公パーティ(お前達)との“因縁ふらぐ”を構築するだけの顔見せ程度に留めて、この場は一度身を引いておく……()()()()()()()()がな」

 

「「「「「「「──ッッ!!?」」」」」」」

 

イノケントが気持ちよく一通り哄笑を終えた途端、再び奴は絶大なる霊圧を放ち出して眼下のリィン達へ先程よりも猛烈にギラギラを増させた眼光で見据えてきた。 今度のは鷹が地上の獲物に狙いを定めるように、明らかに攻撃を仕掛けてくる意思が向いてきている。 未だ嘗てない程に重厚な空気に殴りつけられて、リィン達は意識を戦闘モードに切り替えた。

 

「折角だ。 お前達の素晴らしい輝き(ヒカリ)を一度この身で直接味わっておくとしよう!」

 

完全に一戦やる気になったイノケントはニヤリと口角を吊り上げると、夜風にはためく軍服外套の内側から意気揚々として長方形状の携帯端末機の形をした謎の小物(アイテム)を手に取り出した。 しかしボタンは一切存在せず、表側一面全体に電子画面(ディスプレイ)が貼り付けてある。 厚みの薄い側面をよく目を凝らして視ると中心に断面線が走っており、二重層スライド構造をしているようだった。

 

「アレは……まさか“戦術オーブメント”か?」

 

「ですが、私が記憶している限りでは、あのような形式の物が造られているというのは帝国政府情報局の導力技術開発記録にはありません」

 

「以前エリカ博士の話にも聞いていたカルバード共和国のヴェルヌ社が単独一社で新開発を推し進めているという、噂の“第六世代型”とはまた違うみたいですね……」

 

「どちらかと言えば古代遺物(アーティファクト)に近しい雰囲気(かぜ)が感じられる。 どのような事象を起こせる機能を持っていてもおかしくはないだろう。 皆、気を付けろ!」

 

イノケントが左手に持った得体の知れない未知なる戦術オーブメントを目の当たりにしてトールズⅦ組勢が一早くに臨戦態勢を取り、それに引きつられボンゴレ勢と機動六課勢も最大の警戒と共に身構える。 目の前の敵がどのような力を持っているか判らなかろうが、毅然として立ち向かう覚悟を決めれる歴戦の若き英雄達の雄姿に、光に焦がれた魔王は尊大なまでの敬意を表する。

 

「くくく、いいだろう。 ならば、まずは魔王と英雄達が戦うのに相応しい舞台を“創る”とするかな」

 

「何を言って──」

 

実に嬉しそうに不敵なる微笑を浮かべてまた理解し難い事を言い、左手の未知なる戦術オーブメントの表画面を持った指で何故か素早く器用になぞり出したイノケント。 それはどういう意味なんだとリィンが問う前に、イノケントは艦橋(ミラービル)の真下に居る彼等に表画面を見せつけるようにして未知なる戦術オーブメントを突き掲げた。 画面内には『TERRITORY ORDER Standby』と大きく表示されているのが見えた。

 

「《次元魔王》の名において《TTO(テリトリーオーダー)》を発令する! (すべ)て滅びよ──天地崩界・神々の黄昏(ディザスター・ラグナロク)ウウウゥゥゥゥーーーーッッ!!!

 

そうこの宇宙の法則そのものへと命ずるように魔王が号令(オーダー)を発した瞬間、第一管理世界ミッドチルダは崩壊した……。

 

 

 

 

 

 




あとがきコーナー『リリカルマジカル復活(リボーン)! 超絶最強ヒロイン、アリサちゃんの“炎の軌跡”講座!』第5回



蒼い空、碧い海。 水面に揺蕩う(おお)きな船……。

アリサちゃん(アロハ水着姿でデッキプールサイドに寛ぎバカンス満喫中)「夏休みということで、豪華客船の旅の中よりお届けするわね♪ 真夏のセクシィー超ヒロイン【アリサちゃんの“炎の軌跡講座”】第5回──」

ポチャン!

グナちゃん(甲板端で足を滑らせて海に落ちて、ピカー!)「サラダバー!」

アリサちゃん「──始まるよ……ってちょっとおおおっ!? 待って! 此処海のド真ん中d──」

ちゅっどーん!!

アリサちゃん(大パニックで逃げ惑う)「きゃあああ! グナちゃんの爆発で空いた船底の穴から海水が大量に入ってきたわ! 沈没する前に急いで逃げなきゃ──!!?」

船内へと駆け込んだアリサちゃんの前から、入り込んだ海水が濁流となって押し寄せてきた。

アリサちゃん(“しぇー!”のポーズ)「ウッソー!? 浸水してくるのハヤスギ! 美人薄命なんてイヤァァァーッ!!」

???「うおおおおおっ!!」

濁流が迫り、アリサちゃん絶体絶命かと思われたその時、某赤毛の冒険家の永遠の相棒の如く隣りの壁を拳一発でブチ破ってきた白鉢巻のボーイッシュ青髪少女が間に割り込み、間一髪魔法障壁(プロテクション)を張って濁流を塞き止めた。

ボーイッシュ青髪少女「お待たせしました! あたしが来たからにはもう大丈夫ですよ!」

アリサちゃん「た、助かったわ……という訳で、本日のゲストはこの其処らの男よりも男前な魔法格闘少女で、前回紹介した【リリカルなのはシリーズ】のTVアニメ第3期『魔法少女リリカルなのはStrikerS(ストライカーズ)』の準主役、レスキュー隊志望の“スバル・ナカジマ”よ!」

スバル(魔法障壁で必死に濁流を塞き止めながら)「“救助隊”志望です! ていうか、何この非常時の中でゲスト(あたし)の紹介をし始めているんですか!?」

アリサちゃん「彼女は時空管理局の陸戦魔導師で《古代遺物管理部機動六課》の前線実動員“FW(フォアード)”の一人。 そして実は前回紹介した【リリカルなのはシリーズ】の主人公である高町なのはさんの一番弟子と言える教え子なのよね」

スバル(障壁片手にデレて、そして濁流に押され出して慌て出す)「ふぇ!? い……いやぁ、そんななのはさんの一番弟子だなんて、それほどでも──って、のあああっ? 一瞬気が散った所為で魔法障壁の構成強度が脆くなっちゃってる!」

アリサちゃん「11歳の頃に遭った空港火災から当時15歳だったなのはさんによって救い出されたスバルは、なのはさんのように“誰かのピンチを救う事の出来る立派な魔導師になる”という夢を志して、陸士訓練校を首席で卒業し、時空管理局の陸上警備隊に入って、それからなのはさんと再会を果たして、彼女が隊長として率いている【スターズ分隊】の一員として機動六課に入隊していったのよ。 自分と同じ新入隊員でFWのティアナ、エリオ、キャロの三人とともに部隊入隊から日々、部隊の戦技教導官でもあったなのはさんからビシバシと魔法戦闘の訓練指導を受けてメキメキと強くなっていき、僅か半年の期間で高位の魔導師にも引けを取らないレベルまで成長して、遂にスバルは敵に攫われて洗脳された格上の魔導師であった姉を打ち負かして救い出すまでに至ったわ。 それはまさに彼女自身が夢に志してきた“誰かのピンチを救う事の出来る立派な魔導師”の姿そのものだったわね♪」

スバル(あたわた)「うわあああ、通路の水嵩が増しすぎて、水圧で魔法障壁に罅が入った!」

アリサちゃん(目の前のスバルが張っている魔法障壁が破られそうになっているのに気付いていない)「自身と姉の“特殊な出生”の事など色々と難題事を抱えているけれど、持ち前のガッツと負けん気と憧れたなのはさんから貰った薫陶を逆境を壊す力に変えて、スバル・ナカジマは夢を目指して走り続けるのよっ!」

スバル(限界)「もう……ダメ……だ……。 アリサさん……逃げ……て……」

アリサちゃん(未だ目の前の危険に気付く事なくマイク片手にデッドヒートマッハしているアンポンタン)「イケイケゴーゴー! 未来のレスキューレンジャー、スバル! 君こそが真のストライカーだッ!!!」

バッリーーン!

アリサちゃん「……え?」

ザッバアアアーー!!

アリサちゃん(逃げ遅れて濁流に飲み込まれる)「うにゃあああ!? 押し流されるーーー!!」

スバル(強烈な水圧を零距離で受けて気絶&水没)「ぶくぶくぶく……」

グナちゃん(空のボトルに入って水源から流されて来た)「ダイサンジデコウザドコロジャネーシ、コンカイノコーナーハココマデノヨウダナ……ソンジャ──サラダバー!」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。