「な……なんやねん、あのごっつう素敵な笑顔の男は──ッ!!?」
真空中のように息苦しい沈黙を破った六課の部隊長である茶髪ショートボブの女性局員が未だ嘗てない戦慄の震え声で此処に居る全員の今の気持ちを代弁するように全身全霊吐き叫ぶ。
なのは達最前線攻略部隊が謎に包まれた異世界からの助っ人達と即席の共同戦線でもって、敵侵略軍──ミッドナイト軍総司令官のラコフ・ドンチェルが駆る強力無比な性能無限強化能力を持っていた“畜炎体循環出力増幅機関搭載型”魔煌機兵スクルドを辛くも撃退し、見事逆転勝利を収めた……作戦の最大目標は敵軍の
先日にあったJS事件の【ゆりかご決戦】を受けて第一管理世界ミッドチルダの防衛戦力が著しく疲弊していた為にまともに戦える人員も装備も相当限られていて、故に今回の戦いは極限と言える程に過酷だった。 正直、勝てる可能性は1%以下だったと言って過言ではないレベルの
それ故に敵軍の頭を押さえる事は出来なかったが、味方の犠牲を少なく隔絶された戦力差の相手を撃退できた事は、まさに奇跡と言えよう。 ほんの数分前、二つの異世界からやって来た英雄達のリーダー二人(リィンとツナ)が互いの“炎”を混ぜ合わせて放った
「わ……解りません。 余震もなく突然計測不可能な
一難去ってまた一難。 勝利の余韻に浸る間もなく謎に包まれた正体不明の男が出現し、機動六課と異世界からの助っ人達の敵だと、威風堂々、爛々として名乗りをあげたのである。
「保有魔力総量……
「うわああっ!? ののっ、能力計測機が暴発を起こしました!!」
「推定脅威度……
「なん……やて……ッ!!?」
新たに現れた敵の持つ力は
彼女達が今までに相対してきた全ての敵が
「こうなると、頼みの綱は異世界の助っ人の皆さんになるでしょうね……ですがしかし、もしあの男の戦闘力が本当にUNLIMITEDランクだとすると、先程のラコフ・ドンチェルとの
「たぶんアカンやろな……ふうぅぅ……しゃーないな」
正面に座ってメインモニターの端末を打っている通信士の女性部隊員が漏らした不安に神妙な面持ちをして答えた部隊長の女性は重い溜息を吐くと踵を返して作戦指令室の出入り口へと足を向ける。 それを見ただけで
「出撃するつもりなのですね。
「正直“総合SSランク”を持っとる私でも、あないなアホみたいな次元の敵相手に何が出来るんか分からへんけどな……部隊長として、部隊のみんなのピンチに助けに行かへんでどないすんねんって」
子狸のようにあどけない幼さが残る童顔を引き締めて、部隊の仲間達を助けるべく命を賭ける覚悟を決めた部隊長の女性のもとに明らかに人間ではない妖精サイズの銀髪の女の子が飛んで来る。
「はやてちゃん、
「おっと、グッドタイミングやツヴァイ♪ ……ほな、こっちは任せたで、ひよ里。 ちょっくら行ってくるわ」
「はい、御武運をお祈りしています……ですが八神部隊長、以前から何度も言ってますが私の名前はルキノです」
部隊長の女性は他愛ないやり取りで部下にこの場を任せて緊張をほぐすと、妖精サイズの女の子を連れて作戦指令室を出て行ったのだった……。
「
リィンは焼け落ちかけた
「“魔王”って、
「ちょっとアンタ、何を寝ぼけた事言ってるのよ? 自分で勇者に打倒される
魔王という架空の……しかも悪役の通り名を恥じる事なく堂々と自ら名乗った新たなる敵に、ツナやティアナをはじめとして此処に居る全員が荒唐無稽の心を露わにして疑念や苦情などの文句をギャーギャー挙げている。 確かにこのイノケントという男が今もその身から放っている、人の身には度が過ぎる程に絶大な“霊圧”や世の
「だいたい貴方、いったい何時からこんな所に──「テスタロッサ! 皆も全員無事かッ!?」──って、シグナム!?」
皆で文句を投げつけても爛々とした笑顔のままで微動だにせずにいるイノケントに、外部の次元世界から
「ヴィータちゃん! よかった、あの凄く強い人型ガジェットを無事に倒せたんだね……」
「おうよ! あんな鉄屑ロボットなんざ、この《鉄槌の騎士》ヴィータ様とグラーフアイゼンにかかれば……ってか、なのはテメェ、ヤバイ程身体がズタボロになってんじゃねーかよ!? 口酸っぱくしてあんだけ止めろと言ったのに、また無茶しやがったんだなコラッ!」
「あ……アハハ……ごめんn──「その声は……まさか“ヴィータ姉さん”!?」──ふえっ!? 誰なの?」
「おっ? へへっ、なんだよエマ。 やっとアタシの事を素直に歳上と認めてヴィータ姉さんと呼ぶ気になったのかよ♪」
「いや、ヴィータちゃんの事じゃなくて……えっ、どなたですか? “ヴィータ姉さん”の声にそっくりだったけど、私、もしかしなくても人違いして……」
「エマ! ガイウスも無事でよかった」
「あ……リィンさん!」
「後輩の皆も、全員大した怪我は無いようだな」
「はい! 御二人にも大きな怪我は見当たらないようで、安心しました♪」
「えっと……リィン君、そちらの御二人は……」
「
──風……?
「そ、そうだったんだ……御二人共、ヴィータちゃんとシグナムさんを助けてくれて、どうもありがとうございました。 わたし、機動六課の教導官と前線分隊指揮を務めている、高町なのは一等空尉です。 そちらはガイウスさんと、えっと……」
「あ……はい。 はじめまして、タカマチさん。 私はエマ・ミルスティンと申します。 こちらのリィンさんとガイウスさんとは元トールズ士官学院特科クラスⅦ組の卒業生同士です。 詳しくは後程お話ししますが、私は
「そ、それはご丁寧にどうも……にゃはは。 でも、出来ればわたしの事は“なのは”って気軽に名前で呼んでください。 お互い歳も近いみたいだし、あまり硬くならないで、普通に接してくれると嬉しいかな」
「は、はい……それでは改めて。 よろしくお願いします、なのはさん……どう聴いてもやっぱり似ているなぁ、姉さんの声に」
「確かに、先程より何処か聴き馴染みのある良い声をしているとは思っていましたが、
「?」
なのはは自分の方を眺めてきながら口元に手を添えた思案顔をして何やらブツブツと呟き合っているエマとアルティナに訳が分からず首をコテンと傾げて頭の上に?マークを浮かべている。 しかしそこで全員がハッと気付く。 和気藹々と自己紹介し合っている場合ではない、今彼等は
「うむうむ。 実に良い♪
「──って、うぉっちょぉおお!? ちょっとあの人、何だかあたし達とエマさん達の再開を律義に見守ってるみたいなんですけど!」
リィン達は自分等全員よりも遥かに格上だろう相手の前で迂闊に隙を見せてしまったかと思い、全員慌てて再び気を引き締めつつ
「ふははは! なに、当然だろうユウナ・クロフォードよ。
「へ……っ!? どうしてあたしの名前を」
「そういや、このクソデカ三つ編み野郎。
「貴方、確かイノケントって言ってましたね……。住む世界が異なっていた私達全員の
イノケントが童子の如く純朴過剰に満ちた素敵な笑顔で嬉しい哄笑をあげながら、まだ名乗りもしていないユウナのフルネームを呼んでみせた事に対して、名前を呼ばれた本人は呆気にとられて固まってしまう。 それに獄寺が、先程イノケントが現れた時に
「ふはははは!
「「「「「「「────ッッ!!!」」」」」」」
イノケントは誤魔化す事など微塵もせず、両腕を高らかに大きく広げて今回の戦いに己が関与していた事の全容を盛大に暴露した。 そう、何を隠そう、ミッドナイト軍に取り入ってリィン達やツナ達の世界の力を与えていた匿名の協力者の正体はこの男、《イノケント・リヒターオディン》だったのだ。 今明かされた衝撃の真実を受けて三世界より集結した歴戦の若き英雄達は皆目をはち切れんばかりに大きく見開いて驚愕の様相を露わにし、全員相手への警戒レベルを最大値まで一気に上昇させた。 もう疑う余地はない、奴は紛れもなく自分達の敵だ。
「はは、俺が黒幕だと判って直ぐに全員が戦う目付きに変わったな……ふは、良いぞ。 ようやく俺を倒すべき敵だと認めたか」
「ああ……だが、どうしてだ? そこまでの事をしてまでオレ達の敵になりたい訳が分からない。 イノケント、いったいお前は何が目的なんだ!」
英雄達に己を敵だと認定されて、まるで昔から憧憬を抱き続けていた人から承認を受けたかのように悦びを顔に表わす此度の戦いの黒幕である自称魔王に、ツナは剣呑な雰囲気に理解に苦しむような思いを混ぜた表面を浮かべつつ橙色の煌炎を灯した右手の人差し指をさし向けて、何を企んでいるのか教えろと問い詰めた。 リィン達もツナの質問に同感を示す頷きを呈している様子だ。
確かに疑問を感じるのはもっともだ。
「そう急かすな。 今宵の物語はまだ始まったばかりなのだ。 このようなプロローグで主人公たる英雄達がラスボスの目的を知ってしまったら、物語の面白味が薄くなるだろう?」
しかし、お楽しみは後まで取っておくものだと期間限定販売の極上スイーツを買えて上機嫌で家の冷蔵庫にしまっている女子高生のような調子で勿体ぶり、回答を拒否したイノケント。 リィン達は眩暈を覚えた。
「俺は今、胸が高鳴り張り裂けてしまいそうな程に感動している。 トールズ士官学院Ⅶ組、ボンゴレファミリー、古代遺物管理部機動六課……ずっと以前より長年この目を焦がれて狂おしいほどの尊敬をこの胸に懐いてきた
夜天を見上げてバッと両腕を大きく開き、宝くじの一等を当てたかのように盛大に歓喜して大はしゃぎをする自称
「な……なんなのよ、あの男は!?」
「ハッ! どうやら相当に頭がイカレた野郎のようだぜ、ありゃあ……」
「つーか、如何にもバカの類だろアレは? 言っている事の意味不明さ加減が
「……さてと。 本当ならプロローグに登場してくるラスボスの
「「「「「「「──ッッ!!?」」」」」」」
イノケントが気持ちよく一通り哄笑を終えた途端、再び奴は絶大なる霊圧を放ち出して眼下のリィン達へ先程よりも猛烈にギラギラを増させた眼光で見据えてきた。 今度のは鷹が地上の獲物に狙いを定めるように、明らかに攻撃を仕掛けてくる意思が向いてきている。 未だ嘗てない程に重厚な空気に殴りつけられて、リィン達は意識を戦闘モードに切り替えた。
「折角だ。 お前達の素晴らしい
完全に一戦やる気になったイノケントはニヤリと口角を吊り上げると、夜風にはためく軍服外套の内側から意気揚々として長方形状の携帯端末機の形をした謎の
「アレは……まさか“戦術オーブメント”か?」
「ですが、私が記憶している限りでは、あのような形式の物が造られているというのは帝国政府情報局の導力技術開発記録にはありません」
「以前エリカ博士の話にも聞いていたカルバード共和国のヴェルヌ社が単独一社で新開発を推し進めているという、噂の“第六世代型”とはまた違うみたいですね……」
「どちらかと言えば
イノケントが左手に持った得体の知れない未知なる戦術オーブメントを目の当たりにしてトールズⅦ組勢が一早くに臨戦態勢を取り、それに引きつられボンゴレ勢と機動六課勢も最大の警戒と共に身構える。 目の前の敵がどのような力を持っているか判らなかろうが、毅然として立ち向かう覚悟を決めれる歴戦の若き英雄達の雄姿に、光に焦がれた魔王は尊大なまでの敬意を表する。
「くくく、いいだろう。 ならば、まずは魔王と英雄達が戦うのに相応しい舞台を“創る”とするかな」
「何を言って──」
実に嬉しそうに不敵なる微笑を浮かべてまた理解し難い事を言い、左手の未知なる戦術オーブメントの表画面を持った指で何故か素早く器用になぞり出したイノケント。 それはどういう意味なんだとリィンが問う前に、イノケントは
「《次元魔王》の名において《
そうこの宇宙の法則そのものへと命ずるように魔王が
あとがきコーナー『リリカルマジカル
蒼い空、碧い海。 水面に揺蕩う
アリサちゃん(アロハ水着姿でデッキプールサイドに寛ぎバカンス満喫中)「夏休みということで、豪華客船の旅の中よりお届けするわね♪ 真夏のセクシィー超ヒロイン【アリサちゃんの“炎の軌跡講座”】第5回──」
ポチャン!
グナちゃん(甲板端で足を滑らせて海に落ちて、ピカー!)「サラダバー!」
アリサちゃん「──始まるよ……ってちょっとおおおっ!? 待って! 此処海のド真ん中d──」
ちゅっどーん!!
アリサちゃん(大パニックで逃げ惑う)「きゃあああ! グナちゃんの爆発で空いた船底の穴から海水が大量に入ってきたわ! 沈没する前に急いで逃げなきゃ──!!?」
船内へと駆け込んだアリサちゃんの前から、入り込んだ海水が濁流となって押し寄せてきた。
アリサちゃん(“しぇー!”のポーズ)「ウッソー!? 浸水してくるのハヤスギ! 美人薄命なんてイヤァァァーッ!!」
???「うおおおおおっ!!」
濁流が迫り、アリサちゃん絶体絶命かと思われたその時、某赤毛の冒険家の永遠の相棒の如く隣りの壁を拳一発でブチ破ってきた白鉢巻のボーイッシュ青髪少女が間に割り込み、間一髪
ボーイッシュ青髪少女「お待たせしました! あたしが来たからにはもう大丈夫ですよ!」
アリサちゃん「た、助かったわ……という訳で、本日のゲストはこの其処らの男よりも男前な魔法格闘少女で、前回紹介した【リリカルなのはシリーズ】のTVアニメ第3期『魔法少女リリカルなのは
スバル(魔法障壁で必死に濁流を塞き止めながら)「“救助隊”志望です! ていうか、何この非常時の中で
アリサちゃん「彼女は時空管理局の陸戦魔導師で《古代遺物管理部機動六課》の前線実動員“
スバル(障壁片手にデレて、そして濁流に押され出して慌て出す)「ふぇ!? い……いやぁ、そんななのはさんの一番弟子だなんて、それほどでも──って、のあああっ? 一瞬気が散った所為で魔法障壁の構成強度が脆くなっちゃってる!」
アリサちゃん「11歳の頃に遭った空港火災から当時15歳だったなのはさんによって救い出されたスバルは、なのはさんのように“誰かのピンチを救う事の出来る立派な魔導師になる”という夢を志して、陸士訓練校を首席で卒業し、時空管理局の陸上警備隊に入って、それからなのはさんと再会を果たして、彼女が隊長として率いている【スターズ分隊】の一員として機動六課に入隊していったのよ。 自分と同じ新入隊員でFWのティアナ、エリオ、キャロの三人とともに部隊入隊から日々、部隊の戦技教導官でもあったなのはさんからビシバシと魔法戦闘の訓練指導を受けてメキメキと強くなっていき、僅か半年の期間で高位の魔導師にも引けを取らないレベルまで成長して、遂にスバルは敵に攫われて洗脳された格上の魔導師であった姉を打ち負かして救い出すまでに至ったわ。 それはまさに彼女自身が夢に志してきた“誰かのピンチを救う事の出来る立派な魔導師”の姿そのものだったわね♪」
スバル(あたわた)「うわあああ、通路の水嵩が増しすぎて、水圧で魔法障壁に罅が入った!」
アリサちゃん(目の前のスバルが張っている魔法障壁が破られそうになっているのに気付いていない)「自身と姉の“特殊な出生”の事など色々と難題事を抱えているけれど、持ち前のガッツと負けん気と憧れたなのはさんから貰った薫陶を逆境を壊す力に変えて、スバル・ナカジマは夢を目指して走り続けるのよっ!」
スバル(限界)「もう……ダメ……だ……。 アリサさん……逃げ……て……」
アリサちゃん(未だ目の前の危険に気付く事なくマイク片手にデッドヒートマッハしているアンポンタン)「イケイケゴーゴー! 未来のレスキューレンジャー、スバル! 君こそが真のストライカーだッ!!!」
バッリーーン!
アリサちゃん「……え?」
ザッバアアアーー!!
アリサちゃん(逃げ遅れて濁流に飲み込まれる)「うにゃあああ!? 押し流されるーーー!!」
スバル(強烈な水圧を零距離で受けて気絶&水没)「ぶくぶくぶく……」
グナちゃん(空のボトルに入って水源から流されて来た)「ダイサンジデコウザドコロジャネーシ、コンカイノコーナーハココマデノヨウダナ……ソンジャ──サラダバー!」