英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡   作:蒼空の魔導書

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黎の軌跡Ⅱ、本編&EXステージクリアーしました。

プレイの感想を一言でいうと、主役はピクニック隊(レン含む)。

創の軌跡の時もそうだったけど、すーなーカップルがとにかく尊いですね。 閃Ⅱの戦闘後ピンチ→助っ人登場のテンプレを最後まで連発しまくった展開も「主人公達以外も皆が戦っているというのが分かるのが軌跡シリーズらしいな」と言って許容できていた自分も流石に【死に戻り】というクソ地雷要素を間章の時のように事前行動で回避もさせてくれずに乱発してきた今作の第3章は進めるのがとても苦痛になってました。 しかし章最後のラストバトルでナーディアのピンチを敵に操られていたスウィンが呪縛を破って救い出した場面がもう激熱過ぎて、これまで貯め込んだ不満が一気に吹き飛びましたよー♪ ホント終わり良ければ総て良し!

それに【死に戻り】がクソ地雷だった半面、絶賛できたのは戦闘システムが過去最高の出来ッ! 新システムの《EXチェインアタック》は連発できると凄く爽快で、今まで出そうで出ていなかった二属性複合導力魔法の《デュアルアーツ》はド派手でカッコイイ! 何よりも今作はボス級ネームドキャラ限定だったけど、なんと敵も遂に《Sブレイク》を使ってきて割り込み必殺を仕掛けて来るんですよ! 最初のガーデンマスター戦で相手がSブレイク使ってきた時はマジで思わず「何イイィィーー!?」ってなりました。 おかげでボス級ネームド戦の度に「何時Sブレイクしてくるのか」とドキドキしながら戦えたので非常にバトルが楽しかったです♪

そしてなんと言ってもレンですよレン! 空の軌跡SCから長らく謎だった結社入り前のレンの過去の闇が今作で遂に明らかになり、彼女自身の手でその過去に決着をつける間章のストーリーはマジで素晴らしかったですね♪(クソ地雷要素の死に戻りイベントも完全な初見殺しのもの以外は事前行動の対処で回避できたのもマジでGOOD! どうして第3章もそうしなかった?)
更にレン関係で超感動したのは苦難だった第3章を乗り越えた最終章の最終コネクトイベに限りますね、やっぱ。 これの内容について詳しくはここでは控えておきますが、とにかく空の軌跡シリーズから碧の軌跡までプレイ済であるレンファンは超必見ですよ! もう感動し過ぎて涙が止まらなくなるので要注意ですね。

それにしても、黎シリーズの最強格キャラである某姉弟子さんがバトルキャラ性能とムービー戦闘描写共々バケモノ過ぎてワロタww。 前作に引き続いてフィールドバトル最速最強だったし、クラフト全部チート性能な上にザイファセッティングできてCP回復スキルを付けまくれば戦闘全部一人でやって手が付けられなくなるし、同じ最強格キャラである某警備主任がブッ放した極太バスターキャノンを一刀両断するわ、くの字体勢砲弾一直線で壁にブッ飛ばされても無傷で出てくるわ、異能やアーティファクト無しで次元空間を切り裂くわ……いったい何なのあの人は、ド○ゴンボールのZ戦士か何かか?(汗)


さて、長文のゲームプレイ感想失礼しました。 では本編をどうぞ!




終末の世界

魔王(イノケント)が高らかと号令(オーダー)を発令したと同時に世界(ミッドチルダ)全体の重力が一瞬にして崩壊し、大空とそこに煌く星々が煉獄の(ほむら)によって蹂躙された。

 

神の裁きの如き無数の雷が世界中に降り注ぎ、地や街を穿つ。 撃ち剥がされた大小の地表・岩盤・街や道路のコンクリートの破片やら、木・動物・車両・住宅から高層ビルといった建造物が宙へと浮かび上がっていき、それ等が丸ごと渦を巻いて退却途中だったミッドナイト軍の艦隊を嬲り砕く様子は意思を持った大蛇のようだ。

 

亡者の悲鳴を連想する割れるような響音が煉獄に染められた大空に轟くと天上が罅割れて、割けた孔の中から異様な漢字で描かれた巨大方陣──“天”を中心にして“(コウ)”“(オツ)”“(ヘイ)”“(テイ)”“()”“()”“(コウ)”“(シン)”“(ジン)”“()”の計十文字がその周囲を囲い並びつつ右回転し、そしてそれの更に外側周囲に“()”“(うし)”“(とら)”“()”“(たつ)”“()”“(うま)”“(ひつじ)”“(さる)”“(とり)”“(いぬ)”“()”の計十二文字が陳列して左回転している──が現出して天に座し、其処から滅びゆく世界を睥睨した。

 

「そ……そんな、(クラナガン)が……世界(ミッドチルダ)が……っ!?」

 

「嘘……だろ……何がどうなってやがるんだ? あの自称魔王の軍服ヤロウが何処の物か得体の知れねぇ戦術オーブメントを使って何か号令(オーダー)みてぇなのを叫びやがった瞬間に、景色が何もかもメチャクチャにブッ壊れた風景に一瞬で塗り替わりやがった……!!」

 

一瞬にして崩壊した世界を目の当たりにし、この場に集った歴戦の若き英雄ら皆が顔面蒼白となって果てしない当惑と戦慄を露わにした。 煉獄の焔のような紅黎(あかぐろ)に染められた大空、収まらぬ神の怒りの如く地を穿ち続けて降り止まぬ無数の轟雷、破壊され尽くして反転した重力に引き剥がされていく地表、 雷火に包まれて建物が倒壊し荒廃されてゆく眼下の街並み、惑星の成層圏外に散らばる宇宙塵(スペースデブリ)のように疎らと散りばめられて宙空を浮遊している破壊された地上から舞い上がってきた大小様々な動物や障害物、天空に顕現された謎の巨大方陣……“世界の破滅”を思わせるその光景はまさしく神々が起こした災厄の天地崩壊による【終末の世界】そのものであったのだから。

 

「お前……いったい何をしたんだ!!」

 

重力崩壊時に発生した時空間衝撃波を受けて大きく罅割れた甲板の鉄床にダンッ! と足を踏み、ツナが怒りの形相をしてこの地獄の惨状を造った魔王へと問い詰めた。 訊かれた魔王イノケントは実に愉快そうな笑顔で答えてくれる。

 

「なに、事前に言ったであろう、沢田綱吉よ。 魔王と英雄達が戦うのに相応しい舞台を()()とな」

 

「舞台を()()だって? ……まさか、お前がその手に持っている戦術オーブメントの因果律事象改変機能(オーダーシステム)を使って、ミッドチルダ(この世界)を丸ごと創り変えたとでも言うつもりなのか!」

 

イノケントが言った断片的な説明を聞いてリィンが自分の知り得る戦術オーブメントの機能知識と掛け合わせて解釈し、眉根を寄せてその解答はとてもじゃないが有り得ないという感情を含んだ声を張り上げる。 リィン達トールズⅦ組勢が所有している《ARCUSⅡ》の“オーダーシステム”は導力技術的に因果律へ干渉する事ができ、そこにルールを書き加える事で一定時間味方集団(パーティ)を強化したり、高位次元から幻獣種が顕現される程に霊脈(レイ・ライン)が異常なまでに活性化している地域でなら特殊な改造を施した導力端末機を使用する事で因果律の書き換えを行い敵集団が発令した号令(オーダー)効果を無効化し行動を阻害する事も可能にしている。 だがしかし──

 

「帝国最先端の戦術オーブメントである《ARCUSⅡ》をもってしても、世界一つ程の大領域規模を創り変えれる程の容量(キャパシティー)はさすがに無いだろう。 カルバード共和国のヴェルヌ社が新開発を推し進めているという【第六世代型】でも恐らくは無理だろうと思う。 素人目で悪いが、もしそれを可能にするならば少なくとも国一つの使用分全部の導力器から余さず演算領域(リソース)を持ってくるか、または古代遺物(アーティファクト)や教会騎士が使う【法術】のような神秘(オカルト)的な力に頼るかしかないのだが……」

 

リィン達は元の世界で約三ヵ月前に【エリュシオン】という現在のゼムリア大陸各国における導力技術では到底実現不可能である“機械知性”と邂逅し、“世界最後の兵器”【逆しまのバベル】においてゼムリア大陸の全人類の命運を懸けた最終決戦を行った。 詳細は今は省くが、エリュシオンは霊脈(レイ・ライン)の活性化と導力ネットワークの連動により偶然誕生し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()大陸規模の巨大データベースを構築していた。 その膨大なる容量(キャパシティー)を利用する事でエリュシオンは現世事象の情報を多元並行世界規模に至る所までを観測・演算する事を可能にした【限定式収束未来演算】を実現していたのだった。

 

そのような事もあった為、リィンは自分がしてきた経験則から神秘(オカルト)に頼らない機械技術の力で世界を好きに改変する事も絶対に不可能ではないだろうと思っているのだが。 しかしそれでも戦術オーブメント一つでそれ程に大きな規模の改変を実現する事は流石に難しいだろうと考えていた。

 

「くくく、流石なかなかに良い解釈をするなリィン・シュバルツァー。 もっとも次元世界そのものを創り変えるのではなく、高位相次元空間に創造した俺の領域(テリトリー)号令発令者()を含む此処に居る全員を強制位相転位させたというのが正解だがな」

 

「高位相次元空間に創造した領域(テリトリー)……だと?」

 

「そうだ。 これは『TERRITORY(テリトリー) ORDER(オーダー)』──通称《TTO》と呼んでいる“多重因果律干渉改変創造システム”でな。 この“MULTIUNIVERSE(マルチユニバース)式”近未来戦術オーブメント《PARAISO(パライゾ)》の特色機能なのだよ。 この戦術端末所有者が号令(オーダー)を発令する事によって多重時空へ接続・干渉改変し、端末に保存された各固有の【心象世界】を()()()()()()()()()()()()()()()()。 そして号令発令者とその近場に居た者を敵味方全員区別なく強制的に創造構築した【心象世界】の中へと放り込む──つまり、俺が作成した風情のある戦闘領域(バトルフィールド)におまえ達全員をご招待したという訳だ!」

 

「なん……だと……!」

 

瞳を揺らしてそう口から洩らしたリィンと同様にツナやなのは達も皆一様に驚愕を露す。 イノケントの持つ《PARAISO》なる未知の技術が使われた近未来の戦術オーブメントに、高位相次元に端末所有者の【心象世界】──つまり奴が心に思うが儘に創った戦闘領域(バトルフィールド)空間に戦闘の参加者全員を隔離してしまえるという今までにない大規模な新オーダーシステム《TTO》。

 

次元や時空に関係した事象や事件にはトールズⅦ組勢もボンゴレ勢も機動六課勢も全員何度か巻き込まれて経験してきているが、戦術オーブメントのような人の片手に納まる程の携帯機器一つで多重時空の改変を成し此処にいる大人数を高位相次元空間に創造構築した自分の領域(テリトリー)へと強制転位まで可能と聞けば色様々な場数を踏み越えてきた三世界の英雄達であっても流石に耳を疑わざるを得ないでいる。

 

──高位相次元空間……何故だろう、トールズⅦ組(俺達)は最近そのような場所に行っていた気がするけど、思い出そうとすると何故か其処の記憶にだけ奇妙な靄がかかるんだよな……思い過ごしか?

 

──多重時空への接続と改変か……それを聞くと【10年バズーカ】での未来渡航や白蘭の並行世界移動能力を思い出すな……。

 

──どうやら魔導師(わたし達)が使う《封時結界》とは似ているようで大分違っているようだね。 ミッドチルダが本当に崩壊したんじゃないという事が分かっただけもちょっと安心したけど、これは外からの援軍は期待できないかな……。

 

「くくく。 さあ、舞台は整ったぞ! 三世界より集いし歴戦の英雄達よ。 おまえ達のキズナの力と勇気の輝き(ヒカリ)を存分に魅せてくれ! この《次元魔王》イノケントに対して──ッ!!」

 

《TTO》の概要に三世界の英雄達がそれぞれ自分の世界で見てきたそれと関連がありそうな要素を思い浮かべて半分思考に耽っていたところに、イノケントが嬉々として戦闘準備万端を告げる。 (ミッドチルダ)を丸ごと圧壊させてしまいそうな程に絶大なる霊圧と闘気を解放し、彼が立っている崩れかけ艦橋(ミラービル)を中心に爆発の如き波濤が周辺へと拡散していき、ミッドチルダの崩壊景色に更なる破壊の爪痕を刻み付けた。 今までずっと尊敬して已まなかった三つの英雄伝説と今魔王(ラスボス)として交えれる歓喜に胸を躍らせ、余波の突風に激しくはためく外套の内側に佩いていた身の丈程に(しゃく)が異様に長い鞘に納められた軍刀の柄に手をかけて、グッと腰を下ろし戦闘姿勢を取ろうとする。

 

「──っ! 来るぞッ!!」

 

「全員身構えろ! 決して一瞬たりとも奴の動きから目を逸らすn──」

 

相手が戦意を持って動いたのを見て一早くに槍と剣を取り仲間達を守護するように前へと踏み出したガイウスとシグナムが得物を構えつつも鬼気迫るような大声で背中の仲間達へと最大の警戒を呼び掛ける……それよりも一瞬速く、群青色の光の軌跡を空に描く魔王の太刀筋が仲間達の盾となった守護騎士の二人の目前に()()()()()

 

──な……にっ!?

 

──(はや)い……ッ!!

 

敵が十階以上も有る中層艦橋ビルの屋上からまるで瞬間移動して来たかのように目が錯覚を覚え、守護騎士二人の顔が驚愕と戦慄の二色に染められる。 二人の懐に飛び込んできて、着地の姿勢から風圧で捲れ上がった外套の内側より黒漆の光沢が塗られた鞘ごと引き抜かれた長軍刀は計り知れない暴威の慣性を持って孤月を描き、異次元の速度と威力を纏う。 鞘に納められし魔王の刃が逆袈裟に群青色の破壊光線を引いて振り上げられてくるその凶撃を開ききらせた瞳孔に映して、二人の守護騎士は極限すら生温いと思える程の絶対零度の悪寒に襲われる。 不可避の絶死の予感が知覚遅延(オーバーレブ)を齎して時が遅延し二人の世界から色が失われた。

 

「「──クッッッ!!!」」

 

停止した世界の中を破滅の残光を追従させながらゆっくりと迫り来る絶死の風を纏った魔王の剣……自分達二人がそれによって断たれたら、そのまま背中に守る仲間達をも纏めて引き裂かれてしまう事だろう……守護騎士の肩書きに懸けてそうはさせるものか! 二人はその意志を極めて強く握り締めた槍と剣へと注ぎ込み、絶対零度によって凍り付いた全身に活を入れて無理矢理動かした。

 

「「ぬおおおおおおおおおッッ!!!!」」

 

「ふうん──ッ!!」

 

停止した世界が再び動き出して色を取り戻した。 それと同時にガイウスとシグナムが互いに持つ槍の長柄と騎士剣の刀身を前に交えさせて十字盾を作り翳し、イノケントが魔速の抜剣をもって振るってきた鞘付きの絶刀と正面衝突した。

 

(ゴウ)ッ──ズッッガアアアアアアアアアアンッッ!!!

 

「「ぐわ──あ″あ″あ″あ″あ″あ″────ッッ!!」」

 

「「「「「「「うわああああああああーーッ!! / きゃああああああああーーッ!!」」」」」」」

 

守護騎士二人の十字盾と魔王の剣による衝突の結果は途方もない凄惨なる大災害を齎したのだった。 壮絶に繰り出された両者の得物が触れ合った刹那、僅かな鍔競り合いも許されず守護騎士の十字盾が一瞬で槍と剣に分離させられて得物の持ち主二人諸共に斜め45°の鋭角で上空へと弾丸ホームランの如く打ち飛ばされた。 それと同時にその場に撒き散らされた暴嵐の如き埒外な程に猛烈な衝撃波がドーム状の圧層となって広がり、守護騎士二人に守られたリィン達も全員為す術なく散り散りにされて母艦の外へと吹き飛ばされていく。 その直後、一瞬前に彼等が立っていたミッドナイト軍の司令母艦ガラハッドは内側から膨張破壊されるようにして球形の衝撃圧によってバラバラに分解され、直下に見える荒廃した首都クラナガンへと崩落していったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ゲホッ! ……ハァ、ハァ……」

 

地上の荒廃都市へと崩れ墜ちていく銀色の母艦の残骸。 其処から約300アージュ(m)離れた空中に漂っていた都市ビルの内部ロビーで、自らの背中で抜き砕いた外壁の瓦礫に埋もれる状態で倒れていたリィンが肺に溜まった息を吐き出して数秒失っていた意識を取り戻した。

 

「うぅ…う……ここ……は……?」

 

幸い身体の上に被さっていた瓦礫は彼よりも小さく軽量の欠片だけだったので、上体を起こせば自動的に全部上から零れ落とせた。 まだ朦朧とする頭を抱えて立ち上がったリィンはまず周囲の状況を確認しようとしてロビー内を見回してみる。 地上から折れて浮き上がったビルであるので当然だが電気は通っていなくて照明も全滅している為、辺りは不気味に薄暗い。 重力崩壊を受けて壁も天上も崩落個所だらけにされていて、ビル内に設置されていた大小さまざまな機械や物が其処らに積み上げられて酷く散乱された有様はまるで大地震が起きた直後のようである。

 

そして何よりも異常だったのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 彼の左手側に消灯された天井照明器具が奥行きまでズラリと並んでいて、右手側に砕けたタイル面がまた奥の暗がりの先まで続いて行っている。 そのタイル面の疎らに散乱された物々が其処に貼り付くように吸着されているように見える景観も非常極まり過ぎて大変に目を混乱させてくる。

 

「いったい何が……っ! そうだ、俺達は魔王を名乗るイノケントという男と戦闘になったんだ。 それで相手からの初撃が速度も威力も凄まじく規格外過ぎて、その一撃を受けて仲間全員乗っていた飛行母艦から吹き飛ばされて、分散させられてしまったんだった。 みんな──ッ!!?」

 

リィンはふと気を失う直前の記憶を明瞭に思い出し、直ぐにイノケントの初撃をくらって散り散りに吹き飛ばされた仲間達の行方と安否が気に掛かった。 忽ち彼の蟀谷に焦燥の汗が浮かんでくる。 記憶が確かなら地上から約5000アージュ上空に停泊していた飛行母艦(ガラハッド)の甲板上から艦の外へと全員生身のまま吹き飛ばされて行った筈だ。

 

常人ならば落下傘(パラシュート)も背負わずに生身で上空に投げ出されたら余程の命運を持っていない限り無事では済まないだろうが、今のⅦ組なら上空に停泊する飛行戦艦から擦れ違う高速飛行巡洋艦へと跳び移る事や高山の崖から落とされてからほぼ無傷でその崖をよじ登り戻って来る事も難しくはないし、飛行手段を持つアルティナやボンゴレの三人組(ツナ達)機動六課隊長陣(なのは達)、自力では飛べない機動六課FW陣(スバル達)も空中での活動を可能とするスキルは全員身に付けている……だがしかし、あの埒外の魔王が振るった剣は数多の歴戦の中で己の武を高く洗練に鍛え上げてきた騎士の中の猛者であるガイウスの槍とシグナムの剣に共々容易く打ち勝ち、その攻撃の余波でその場に居た百戦錬磨の英雄(リィン達)全員を纏めて司令母艦(ガラハッド)の外へと吹き飛ばしたばかりか、そのまま乗っかっていた母艦をも爆散させてしまったのだ。 直前にあったラコフ・ドンチェルとの激戦でほぼ半壊状態になっていたとはいえ、母艦一隻を生身の人間が振るった剣で木っ端微塵にしてしまうなどとは幾らなんでも攻撃力の規模が常軌を逸し過ぎている。

 

「落ち着け……兎に角、まずは一旦外を確認してみよう」

 

仲間達の安否は気になるが、現状を把握しない事にはどうしようもない。

 

リィンは壁の上を歩いて近くのテナントルームの出入り口らしき扉を足下に見下ろした。 扉を開けて中を覗き込もうと思ったが、そこにはドアノブが付いておらず、代わりにカードリーダーらしき小箱型の読み取り機が扉の傍に備え付けてあった。

 

──カードキーセキュリティー式の扉か……参ったな。 建物内の導力(リィン達の世界(ゼムリア大陸)の各国で使用されている需要エネルギー)はどう見たって完全に切れているし、たとえ手元にカードキーがあっても肝心のカードリーダーが停止しているから扉は開けられないだろう……仕方がないな。

 

リィンは正方で扉を開けるのは諦めて、裏技を使う事にした。

 

八葉一刀流──(よん)の型、紅葉(もみじ)切り!

 

居合いに構え、静の呼吸で抜刀。 同時にシャラン! という金高い切断音が響き渡り、緋色の太刀が鮮やかに振り抜かれた直後、齎された一瞬の静謐が過ぎると同時に足下の扉に暁の横一文字が刻み込まれる。 そして扉は音も立てず刻まれた暁の一文字に沿ってバターのように滑らかに両断された。

 

──昔、Ⅶ組入学後の最初の特別課外活動でルナリア自然公園入口の南京錠を切った時にも思ったが。 緊急事態とはいえ、人の手が入った施設を八葉の技で破壊するというのは、なかなかに心が痛むな……。

 

「さてと、中のテナントから窓の外を……うおっと!?」

 

リィンはズキズキと痛む内心で技を自分に授けてくれた老師へ謝罪をしてから罪悪感を持って切断した扉の奥へと()()()()()……その直後の事であった。 テナントの中へと落ちた途端に彼の目に映る視界がクルッと右へ回り、右手に見えたカーペットが剥がれて散乱している壁面……もといテナントルーム内の床へと引き寄せられるように右手から落下した。

 

剣の達人にして帝国一の名門士官学院の戦術教官であるリィンに掛かれば急に重力の向きが変わって不測の方向に墜落したところで、即応的に受け身を取るので大事に至る事はまずない。 先に落ちた右手の掌を床へ着けて、その腕を追突と同時にしなやかなに曲げる事でバネのように衝撃を殺し、そのまま上から圧し掛かった身体を横へと投げて転がす事で怪我無く対処してみせた。

 

「ふぅ……。 油断大敵だったな。 俺が壁の上に立っていたのは横に倒れているビルの中に居るからだと思っていたが、建物内に置いてある物や機械が壁になった床面に貼り付いているのはどう考えても不自然だった……」

 

そう自身の油断を反省しながら、身体を床に転がした際に巻き付いたカーペットを剥がして立ち上がる。

 

「確か先程にイノケントが《PARAISO》と言っていた未知の戦術オーブメントを使って《TTO》と呼んでいた未知のオーダーシステムを発令した際に大規模な重力崩壊が起きていたな……『天地崩壊・神々の黄昏(ディザスター・ラグナロク)』と言っていたか?」

 

【黄昏】……凄く、嫌な出来事を思い出させてくれるオーダー名だな……と、リィンはそう思いながら眉根を寄せた視線をテナントルームの窓側へと向ける。 案の定、その壁一面に貼られていたらしき窓ガラスは一枚残らず無惨に割れ砕けて、窓際の床に砕け落ちたガラスの破片が大小無数に散らばっている。 それ故に吹き抜けと化した窓側から外に広がる崩壊世界の景色を一望できた。

 

「自分の目を疑いたくなるような絶景だな、悪い意味で……今までに帝国やクロスベルで対峙してきた異変の中で幾度となく現実改変された魑魅魍魎の世界や神秘の異界は目の当たりにしてきたが、これ程までに滅亡的な光景は流石に見た事はないかもしれない……」

 

想像を絶する破滅と渾沌に染められた終末の世界(ディストピア)を眼に焼き付けてリィンは唾を呑んだ。 物々しい高層ビルが立ち並んでいた大都市は倒壊した建物の瓦礫と罅割れた道路でごった煮返し凄惨に荒れ果て、宙空には重力崩壊によって地上から剝がされたビルや瓦礫や車両や木々などが無数に渦巻き川に流れる流木のように浮き漂わせて、自然の摂理に冒涜を唱えている。 煉獄の焔に侵食された夜天から地上を見下ろす巨大方陣が“天”の一文字を中心に十干十二支(じっかんじゅうにし)を一時も休まず回し続ける様は怒りに荒ぶる裁きの神の眼と錯覚するようだ。

 

過去に自分がトールズⅦ組の仲間達や大勢の同志と共に立ち向かい乗り越えてきた《煌魔城》《黒キ星杯》《七の相克》《逆しまのバベル》──ゼムリア大陸を幾度となく渾沌に塗り替えようとしてきた世界改変級の災厄の数々ですら、これ程までに希望も光も見当たらない世界ではなかっただろうとリィンは悲愴に物思った。 これが今度の宿敵《次元魔王》イノケント・リヒターオディンと奴が持つ未知なる技術で作られた近未来戦術オーブメント《PARAISO》の力なのか……終末の世界を創造して現実の上から塗り替えてしまう程の因果律改変の力を有する規格外に強大な魔王(ラスボス)と対峙しているという現状の難関さを自覚し、身を引き締めつつそろそろ仲間達と敵の捜索に出ようとしてテナントの出入り口へ踵を返そうとすると──

 

バキィィ! ガァァンッ!

 

──っ!! 聴こえた……骨を砕くような打撃音と、岩か何か硬質な物に何かが激突したような衝撃音が……此処から見える空の何処からか、微かに……。

 

道半ばながらにして“(ことわり)”に触れし達人の耳は目の前に見える宙空に僅かに響いたその小さな戦闘音を聞き逃さなかった。 それはこの遠くない煉獄の空の中の何処かで戦闘が行われているという証左であった……。

 

──今、俺達の敵はこの終末の世界にイノケントただ一人だけだ。 見るまでもなく交戦している相手は彼に間違いは無いだろう。 なら打ち合っているのは誰だ? 何処で、何人で戦っている……。

 

瞼を閉じて戦闘音が響いて来た方角へ気配を飛ばし、戦闘地点を探る。 音や人の気配だけでなく、空気の流れや宙に漂う浮遊物の配置と動き、そして今までの戦いを得て培ってきた経験からの予測──全身の五感と第六感で感じ取れるその全てが手掛かりになる……見つけた。

 

「其処か──ッ!!」

 

閉じていたリィンの双眸がカッと強く見開かれ、確信を宿した剣先の如き鋭い視線を探り当てた場所へと差し向けた。

 

まず彼が今居るのは崩壊都市のゴーストタウンと化した首都クラナガンを下にして真横に倒された格好で地上約5000アージュ上空に浮遊しているオフィスビルの16階だ。 重力崩壊に巻き込まれて地からビルが引っこ抜かれた際に衝撃圧で色んな箇所が崩落し、吹き飛ばされて来た彼が先程の16階ロビーへ着弾する際に直前に突き破った箇所が見分けられないくらいに穴だらけの廃塔と化している。

 

また、この高位相疑似世界の全体は重力崩壊の真っ只中に在るようだが、宇宙空間のように無重力化したのではないようだ。 リィンは今崩落した窓の吹き抜けから()()()()()()()()()()()()()()。 そこから推測するに恐らく人や椅子などといった()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というルールが成り立っているような様子だ。 そうなると逆に建物や車両などの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事だろうか……まあいい。

 

まだ曖昧だろうが、この終末の世界のルールを理解した上でリィンが見据えた先に注目してみよう。 戦場は彼の居る浮遊ビルから上空へ向かって250、奥行きへ1500程の空域に漂っている直径150平方アージュ程の岩石浮遊島の上。 その中央で針山のように隆起した無数の岩に取り囲まれて、周囲の時空を歪ませる魔障を放つ長軍刀を遊園地のアトラクションを愉しんでいる真っ最中の子供の如く嬉々として嗤いながら手に構えるは、この終末の世界を創造した張本人たる《次元魔王》イノケント。 それと相対しているのは回転式六弾倉(ナックルスピナー)付属の武装籠手《リボルバーナックル》を右手に嵌める鋼鉄のストライカー──スバル・ナカジマであった。

 

「ゼェ、ゼェ……ま……だだ……ゴハァッ!」

 

「スバ……ル……」

 

全身に手酷い負傷を受け、息も絶え絶えになって血反吐を吐く程の満身創痍を負いながらも、異次元の強さを持つ魔王の前に一人スバルは歯を食いしばって立ち塞がり続けている。 彼女の背中には彼女以上の重傷を負って岩柱に背を預けてぐったりとしている次元世界の英雄たる白き魔導師──高町なのはが朦朧と消えそうな意識を必死に保ちつつ、大切な教え子が傷付けられていくのをただ見ているしかできないでいた。

 

病み上がりで身体に重い負担を抱えていた挙句、先の戦いで魔力を全て使い果たしてしまったなのははこれ以上まともに戦闘を行う事ができない状態だった。 それでいて先程イノケントの初撃によって全員散り散りに吹き飛ばされた際に、彼女は運悪く其処から一番近場を漂っていた妙に頑丈な造りをしていた公衆トイレの屋根に激突して其処に停まった所為で最悪にも敵に一番最初に見つかり、頼れる仲間が離れ離れになっている中たった一人で最強の魔王と対峙する事を余儀なくされた。

 

無論、魔力という魔導師最大の戦闘手段を全て失っていて無謀な玉砕突攻を選ぶ程、時空管理局きっての最優の魔導師(エース・オブ・エース)と称されている高町なのはは愚か者ではない。 防御魔法の代わりにレイジングハート()を盾に使った防御姿勢を取り、周囲を漂う浮遊物へと飛び移って全力全開で逃げた。 遠くから見ても目立つように空中を大きく動き回る事で遠くへ吹き飛ばされた仲間達が自分が戦っているのを見つけて集まって来てくれるのを信じていたからだ。

 

だがしかし、相手はSランク魔導師をも圧倒的に凌駕する人知を超えたUNLIMTED(アンリミテッド)(ランク)の規格外。 イノケントが鞘に納めたままの長軍刀をその場で一太刀振るっただけで、逃げ回って距離を大きく離していたなのはが音破衝(ソニックブーム)に切り裂かれ、彼女はそのまま錐揉みに吹き飛んで千数アージュ離れたこの岩石浮遊島に墜落したのだった。

 

彼女の残存魔力は0ではあったがその前から身に纏っていた魔導防護服(バリアジャケット)がギリギリ無事であった事が幸いし、岩の地面に音速で激突して踏み潰されたトマトと化してしまう事態はなんとか免れた。 だがしかし、生身だったならば完璧に身体が弾け飛んでしまうような激突速度で叩き付けられたダメージはいかになのはの魔導防護服が難攻不落の空中要塞級と称される鉄壁の防御性能を誇っているとはいえども流石に無効化する事は出来なかった。 墜落で全身に齎された衝撃は多少軽減できてもダンプトラックにはねられたような威力があったのだ。 それ故に彼女の全身の骨は砕け散り、その骨が五臓六腑に突き刺さって口から大量の血を吐きだした。 吹き飛ばされる直前に敵から受けた音破衝(ソニックブーム)によって全身に切り刻まれた非常に痛々しい無数の斬痕も合わせて、文字通りズタズタのボロ雑巾のような無惨な姿にされてしまった。

 

こうなってはいかに不屈のエースといえども最早まともに動く事すら叶わなかった。 それでもなのははその不屈の意思によって意識は酷く朦朧としながらも皮一枚で保ち続け、計り知れない深刻なダメージによる地獄のような激痛に喘ぎながら耐えて、尚も硬い岩の地面を這い擦って逃げようとした。 しかし、魔王からは逃げられない。 この終末の世界の創造主にして支配者たるイノケントはなんと別の浮遊島に乗ってそれを念力で自在に操るように飛ばして来るという予想だにできないような移動方法を使ってあっという間に追い付いてきたのだ。

 

なのはは魔力も体力も底を尽き、敵に完全に追い詰められて絶体絶命のところだった。 全身血塗れで地を這う彼女の目の前に再び立ちはだかったイノケントが()()()()()()()()()()()()()()を浮かべて、いざ放とうとしてきた鞘付き長軍刀の一突きで彼女がとどめを刺されようとしたその刹那、ウィングロードに乗って一番乗りで駆け付けたスバルが二人の真上から飛び降りて間に割り込み、イノケントの突きが放たれる前に不意打ちで奴の鳩尾にカウンターブロー(リボルバーキャノン)を叩き込んだ。

 

結果から言って急所に入ったスバルの一撃はイノケントに大したダメージを与えるまでには至らなかった。 果たして相手が所持している戦術オーブメント《PARAISO》の身体強化機能によるものか、奴の全身に漲る絶大な霊力を意識的に操作して打点防御に回したのか、その両方かはスバルには全く判別できない。 ……しかしそれでも、今年春先にあった機動六課の部隊発足からこれまでの約半年間、管理局の最優の魔導師(エース・オブ・エース)たるなのはの厳しい指導の下で土台の基礎鍛錬から来る日も来る日も鍛え続けて練磨し抜かれた、逆境を打ち砕くストライカーの鉄拳は少しながらも魔王の鋼鉄の肉体を殴り飛ばした。 スバルの右拳(リボルバーナックル)が懐に打ち込まれた直後、イノケントは鳩尾から背中へと衝撃が通り抜けて背後に立っていた針岩十数本が砕け折れる程に痛烈な反動を受けて軍靴の踵を削り、2アージュ程度の短距離だが完璧に後方へ突き飛ばされたのだ。

 

その僅かに距離が開いた隙を決して逃さずにスバルは背後に庇っていた己の敬愛する恩師(なのは)を腕に搔っ攫って、素早く後方に聳えていた針岩の壁際に深く傷付いた恩師の背を預ける。 そして重傷の恩師に代わり、一人最強の魔王に一対一の戦い(タイマン)を挑んだのだったが──

 

「──ハハハッ、成程よなぁ。 流石はあの『叙情的(リリカル)なる魔法少女と戦記』の準主役たるスバル・ナカジマだ。 知ってはいたが、師匠譲りの気強さと不撓不屈の闘志を確かに受け継いでいる。 何よりもこれ程までに完膚無きまでに叩きのめされて、俺との絶対的な力の差を骨の髄まで刻まれて尚も、決して諦めたりせず絶望など微塵もする気など見せない、すこぶる強き希望(ヒカリ)を宿したお前の大きな眼差しが、魔王たる俺の戦意を魂魄ごと気圧してくるなどとは……フハハハハ、まったくもって素晴らし過ぎるッ!!」

 

「はぁ、はぁ! ……そ、そんなに余裕ぶっこいて、よく言うな! アンタなんかに褒められても……ぜぇ、ぜぇ! ぜ……全然嬉しくなんか……ない……よ……ッ!!」

 

結果は御覧の通り、全く歯が立たずにギッタンギッタンに叩きのめされ、惨たらしい程の満身創痍で肩で息をしている有様であった。 この背を見守る恩師のように力無き人々を護るべくして錬磨してきた自慢の拳は、目の前でこちらが健気に頑張る姿を見て一人勝手に感動している次元魔王(バカ)の鋼鉄の肉体に幾度となく打ち込もうと砕く事が出来ぬばかりビクともさせられず、逆に亡き母の形見であるリボルバーナックルの外装と共に砕け散った。 「深い傷を受けて倒れた恩師には絶対に手出しはさせぬとして魔王へと捨て身で挑み掛かってくる勇者に対し、格下だからと舐めて掛かって反撃一つしないのは敬意に反するだろうな」と言った相手が反撃として振るってきた鞘付き長軍刀に左腕をへし折られて、中に埋め込まれていた戦闘機人の機械の骨組みが露出しバチバチと漏電の音を鳴らしている。 そしてこちらの勇気に敬意を称するようにして容赦なしに振るい落としてきた追撃のメガトン級威力の唐竹割によって脳天をかち割られ、額に巻いたトレードマークの白い鉢巻が大量の血で真っ赤に染まり、そこから滴り落ちる流血で右目が潰されている。 もし彼女が戦闘機人ではなく普通の人間の魔導師だったら今頃は間違いなく無情に猟奇的(スプラッタ)な死に体を曝していた事だろう。

 

相手との実力の差は文字通り次元違いであった。 残念ながらスバル一人だけではこの《次元魔王》を打倒できる可能性は万が一にも存在していない。

 

「スバル……もういいから……わたしを置いて君は……逃げて……!」

 

「はぁ、はぁ……断じて……ぜぇ、ぜぇ、御断り……しますッ! ゲホッ、ゲホッ! 幾らなのはさんの……言う事でも……はぁ、はぁ……あ、貴女を見捨てて逃げるだなんて、死んでも……嫌です……ッ!!」

 

「ああ、それも美しいよなぁ……。 傷付いた互いを労り、大切な相手を護る為に自ら進んで己の命を差しだそうとする慈愛と自己犠牲に溢れた戦乙女(ヒロイン)の尊き精神、実に見事なものだよ」

 

「うる……さいッ!! 魔王を名乗っている癖に人をよく褒めるな。 気持ち悪いんだよ──ッ!!」

 

スバルは背中に庇った恩師の言う事に逆らい、自分達の庇い合う姿をまるで恋愛舞台ドラマの告白シーンでも見ているかのような恍惚とした微笑みを浮かべながら賞賛を述べてきたイノケントへと向かって残る力を振り絞って岩地を蹴り、渾身の跳び回し蹴りを奴の側頭部へと薙ぎ放つ……が、遠心力を乗せて叩き付けた黄金の右脚すらも次元魔王を微動だにさせる事すらできず。 超合金でできた柱を生足で蹴りつけたかのように首元で勢いを止められると同時に痛烈な反動が返ってきて打面部分より痙攣の波が全身に駆け巡る。

 

「痛────っつあああッ!!?」

 

「ふははは! 非常に真っ直ぐで良い蹴りだ。 だが魔王(おれ)には効かんよ。 そぅらお返しだッ!」

 

「ぐほああッ!!」

 

イノケントの首元に蹴り入れて痙攣した恰好のまま、クレーンで大きく振られた巨大鉄球のような破壊力が乗った相手の踏みつけ蹴り(ヤクザキック)で元々バリアジャケットで露出していた生腹が突き刺され、守るべき恩師が力無く凭れ掛けている真横の岩壁に蹴飛ばされて、大の字貼り付けで背中から激突した。

 

「スバル──ッ!!」

 

「が……あが……ガホッ、ゴホッ! ……まだ……だ!」

 

「クハッ、そうだ。 まだまだこんなものでは終わらないだろう? 俺がずっと思い焦がれてきた不屈の魔法少女(ヒロイン)らよ。 ……立て! そしておまえ達のその不屈の輝き(ヒカリ)を全て余さず俺にぶつけて来るといい!!」

 

「言われ……なくても……!」

 

壁に叩き付けられた衝撃で持っていかれそうになった意識を気合いで持ち堪え、スバルは壁から剥がれ落ちさせた満身創痍の身体に限界を超えろと鞭を打ってよろよろと立ち上がる。 彼女が魅せる不屈の輝き(ヒカリ)に惹かれるようにして喜悦を顔に浮かべながらゆっくりと歩み寄って来る人知を超えし最強の魔王イノケント。 英雄達の輝き(ヒカリ)を欲するが為に抗いようのない理不尽を携えてやって来る光の魔王の手から自分の大切な人を守る為なら、誰かを助けれる立派な魔導師に成る事を夢見る機人の少女は何度だって立ち塞がる!

 

「駄目だよスバル……これ以上やったら……戦闘機人の君でも只じゃ済まないよ。 ……そうなったら君の目指してきた夢だって……叶わなくなるんだ。 だからわたしの事は──」

 

「絶対に嫌です! だってあたしには貴女が必要なんだ、なのはさん! それに、今大切な人一人も守れないで逃げ出したりしたら、あたしは一生貴女のような助けを求める誰かを救う事のできる立派な魔導師にはなれやしない──ッ!!」

 

「ッ!?」

 

先日に起きたゆりかご決戦の前に【五番目】の名が付けられていたスカリエッティの戦闘機人(ナンバーズ)の一人と彼女が力を暴走させて激突し相打ちになった時よりも凄惨な損傷状態を抱えてまで次元レベルで戦闘ランクが隔絶している敵を相手に無謀な戦いを挑み続けるスバルの事を見ていられず、なのはは彼女の背中に向かってもうこれ以上自分を守らなくていいから逃げろと必死に枯れかけた声で訴えたが、彼女はどこまでも強情になのはの願いを突っ撥ねた。

 

大事な教え子の未来が敵の手によって無情にも打ち砕かれる光景を見る事は教導官としてもなのは個人としても非常に耐えがたいのだろうが、スバルだって自分の敬愛する恩師にこれ以上傷付いて欲しくないと思う気持ちは負けていない。 仮にもし立場が逆だったならば、なのははスバルが自分を置いて逃げろと訴えても今の彼女と同じように相手の要求を拒否して最後まで諦めず傷付いた相手の事を守って敵に立ち向かい続けるのだろう。 相手を大切に思う気持ちは二人共同じなのだから。

 

「四年前に遭った空港火災であたしが一人逃げ遅れて火の中に取り残された時も、機動六課に入隊してからその後も、なのはさんは何時だって未熟なあたしの事を助けてきてくれたんだ! 今度はあたしがなのはさんの事を守ってみせるんだ!! だから、絶対に逃げたりなんかするもんか──ッ!!!

 

「スバル……」

 

「くは、ふははははは! いいぞ、それでこそ我が崇拝と賛美を掲げし光の英雄だ。 己が愛する人や世界を害せんとする魔の手から護る為に抗いようのない絶大な力を持つ敵へ愛と勇気を持って立ち向かい、たとえ己の持つ全ての力が相手に全く通用せずどれだけ打ちのめされようとも決して諦めずに幾度も立ち上がって限界を超えていく。 その輝き(ヒカリ)こそ光の魔王(おれ)が求めてやまないものなのだ」

 

血が滴る歯を噛み締めて不退転の意思を叫ぶ愛弟子の頼もしくも痛ましい背中を見てなのはは見開いた大きな瞳を当惑と悲痛に揺らがせる。 既に半壊状態(スクラップ寸前)に陥っている半機械の身体を引き摺って尚も魔王(じぶん)の前に立ち塞がり続けて諦めない希望の目を向けてくる青き格闘魔法少女の高潔で勇ましい姿を前にしてイノケントは誠に天晴と言わんばかりの哄笑を発し、惜しみない賞賛を目の前の真の勇者へと送りつつ彼女が示したその“輝き(ヒカリ)”が見たかったのだと告白して嬉しい悲鳴をあげる。 「英雄(ヒーロー)とはやはり最高だ!」と。

 

「だが、まだまだ俺は物足りないぞ。 故に、()()()だ。 もっともっともっと、英雄(お前達)輝き(ヒカリ)を俺に見せてくれ! 肌で感じさせてくれ! この目に! 身体に! 心に! 魂に! 熱く焼き付けさせてくれ──ッ!!」

 

イノケントは最高潮に感極まって両腕を盛大に広げ、英雄(スバル達)に更なる多くの光を求めて熱烈な想いを語り告げる。 そして未だに鞘から刃を抜かぬ長軍刀の切っ先を彼女達へ差し向けて、先程以上に極大なる闘気と霊圧を全身に激しく漲らせた。 終末の世界が割れんばかりに激震する。

 

「んぐ──!!?」

 

「きゃ……あ″あ″あ″あ″──ッッ!!!」

 

さあ、どこからでも掛かって来るがいい勇敢なる三世界の英雄達よ。 その輝き(ヒカリ)をもって、この《次元魔王》へと立ち向かって来い! 位相と次元をも突き破って現実の世界(ミッドチルダ)をも崩壊させかねない程の魔王の重圧(プレッシャー)を受けて最早限界ギリギリだったなのはとスバルの精神が耐えきれずに敢え無く圧壊させられる──

 

「「──させるかッ!!!」」

 

そのあわや万事休すとなりかけた、まさにその寸前であった。 イノケントが発した闘気によって彼等が立っている岩石浮遊島の外周を囲んでいた無数の針岩がへし折れてそれが浮上し、直後に確固たる意志と覚悟を乗せた青年と少年の声が聴こえてくると共に島の下二方向からそれぞれ灰色橙色の閃光が一直線に襲来。 島の周囲上に浮遊した針岩の残骸を空中の反射足場に利用する形で二色の閃光が対峙していたスバルとイノケントの間へと割り込んでその地面に突き刺さり、その場に爆発したような多量の粉塵が舞った。

 

「なのは、待たせてすまなかった。 もう大丈夫だ」

 

「スバルもよく頑張ったな。 あとはオレ達に任せてくれ!」

 

間も無く粉塵が晴れて姿を現したのは勿論主人公(ヒーロー)の二人──《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーと《ボンゴレⅩ世(デーチモ)》沢田綱吉であった。 二人は無想の霊力(マナ)を纏わせた一太刀と全ての調()()を為す大空属性の炎を振るい、なのはとスバルを圧し潰そうとしていたイノケントの霊圧を一時的に断ち切って静め、重圧から解放された戦乙女二人(ヒロインら)を背に守護する形で最強の魔王(イノケント)へとスバルに代わって相対する。

 

「リィン……君!?」

 

「ツツッ、ツナさん!!」

 

「くはははは! 此処で真打登場か。 そうであろうそうであろう♪ やはりヒロイン達が絶体絶命となったこの土壇場のタイミングに満を持して参上するよなあ、主人公(ヒーロー)ならばッッ!!」

 

非常に頼もしく、安心感がある背中を見せて只今馳せ参じたリィンとツナに思わず驚きの声をあげるなのはとスバル。 そして彼等二人がこのタイミングで現れる事を確信していたように愉快に嗤い声をあげたイノケントが諸手をあげて主人公二人の登場を歓迎した。 だが二人は静かなる嚇怒を灯した目でイノケントを睨む。

 

「御託はいい。 たとえお前の目的が何であろうと、お前はなのは達をこんなにも酷く傷付けたんだからな……」

 

「絶対に許さないぞ、イノケント! 力尽くでの手段は嫌だったけど、お前だけは別だ。 オレ達の全力でお前を叩きのめして、お前が傷付けたスバル達とミッドチルダ(彼女達の世界)に住む人達に土下座させてやる……ッ!!」

 

二人はイノケントがなのはとスバルの事を理不尽に傷付けた事へ対して激怒していたのだった。 普段は基本的に誰にでも優しく接する温厚な性格である二人だが、今は修羅の如き剣呑とした視線を対峙する魔王が向けてきている好奇な視線と衝突させて火花を散らさせ、噴火直前の火山のような赫々とした雰囲気を放っている。 全身には相手が発しているものに勝るとも劣らない凄みが掛かった気迫と闘気が包んでおり、魔王が創った支配領域であるこの終末の世界全体を相手の重圧と共振し諤々と震撼させている。 その影響を受けて地上から剥がれた木々や建造物ばかりか細かく砕かれた岩や瓦礫までもが上空に浮き上がってくる。

 

二人の怒りはそれ程までに(おお)きいのだ。 傷付けられたのはたかが今日出会ったばかりの他人だろう、だから別の世界から来た人間がそんなに激怒する事ではないって? ふざけるな。 人が理不尽に傷付けられて怒らない奴などただの薄情者だ。 ましてや女性が嬲り殺されそうになっているのを見て見ぬふりをするなど英雄どころか男が廃るというものだろう。 相手の事情を聞こうともせず問答無用の武力行使で強制排除をしようとするなど英雄(ヒーロー)気取りの俗物だとは言ったが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものは確かに存在しているのだから。

 

「ククク、いいだろう。 俺も最初(ハナッ)から英雄(お前達)の力をこの身で体感する為に《TTO》を使って英雄達と魔王が戦うのに相応しい終末の舞台を用意したのだからな。 本気で戦ってくれるのならば寧ろ望むところ、男失格覚悟の上で女達を殴った甲斐があったというものだ」

 

「くっ! お前──」

 

「ツナ、相手の言葉に冷静さを失うんじゃない。 心頭滅却すべし、されど内なる意思と魂には覚悟の炎を燃やして……やるぞ、ツナ!」

 

「ああ! お前も頼む、ナッツ!!」

 

「ガオ!」

 

乱れた心や半端な力ではこの埒外の魔王を倒す事など絶対に不可能だろう。 ツナが相手の挑発に冷静を欠いて思わず食って掛かりそうになったのをリィンが今にも爆発しそうな自身の内なる激情も共に諫めると、二人は我を制して静かなる闘志を燃やして“全力”を解放する。

 

灰色の騎士は明鏡止水の心に精神を統一し、空の女神の加護に祝福されし大陸に伝わる黒鋼で鍛えられた天地を切り裂く緋色の神刀を正眼に構えて、胸の内に秘めた“神の氣”を己が(うち)のままの呼吸をもって呼び起こさんとする。

 

大空の守護者は“大切な皆を守る”という自身の抱く覚悟を額と拳に灯した炎へと籠め、肩に乗せた己の分身たる炎の鬣を持つ小獅子に自身の全力を引き出せる最強の武装となって一体となるように命じる。

 

すぅー……こぉぉぉ────(しん) () (ごう) (いつ) ッッ!!!

 

形態変化(カンビオ・フォルマ)──全力解放(リベラツィオーネ・ポテンザ・ボンゴレギア)ッッ!!!

 

「GOOOOON!!」

 

そして両雄絶唱ッ! 爆放ッ! 大気をも激震させる無限の力が爆発するように解き放たれ、二人の若き英雄から天上を衝く程に巨大な灰色と橙色の光柱が高々と立ち昇るのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の“炎の軌跡講座”はお休みです。


本日は『THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡』の最新話もこの後に続けて更新します。 そちらの方もお楽しみに♪


アリサちゃん「次回はリィンとツナヨシ君が全力(全開までではない)を出して大暴れするわ! サブタイ予告は『神氣絶唱(しんきぜっしょう)ボンゴレギア』よッ!!」

グナちゃん「オイコラ。 サイコウチョウニモリアゲルバトルカイデ、サブタイヨコクガネタスギルダロ!」

某元《殲滅天使》兼未来の生徒会長「この身はオーバルギア……じゃなくて普通のクールな美人女子学生よ。 馬鹿一直線に叫ぶのは義姉のキャラだしね」

フェイト「サキモリ? バイクの乗り捨ては危ないし、壊すと勿体ないからやらないよ(それに私、車派だし)」

某B級遊撃士《零駆動》「ハハハ、まさしく愛だな」

某映画女優兼痴女怪盗「何故そこで愛ッ!?」

某大空のアルコバレーノ「カップラーメンはこの前に初めて食べましたけど美味しいですね。 ヨーヨーとスケートはまだやった事がないので、是非一度やってみたいです」

アルティナ「世界を壊す、歌があるッ! ……そんな歌があったら最悪ですね。 もしそんなのを歌うような凄く迷惑な人には問答無用でソラリス・ブリンガーします」

某ラニキ「ちょっと待て!? 俺は錬金術師なんかじゃねぇし、局長でも全裸でも神様モドキでも大佐でもねーっての! だからオラオラは止めてくれーーー!!(泣)」

某庭園《棘の管理者》のキチホモ「女の身体が完璧だってぇ? アハハハ、笑える冗談じゃないかww。 だって完璧なボスは大陸一イイ男だからねぇ♪」


う~ん、カオスになったな……とにかく、次回更新の執筆も頑張りますね。(もう今年年内には無理っぽいけど……)

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