英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡   作:蒼空の魔導書

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目標の6月までにプロローグ編完結は達成できませんでしたが、代わりに調べていて驚く事が判明しました。


英雄伝説軌跡シリーズ初作『英雄伝説 空の軌跡FC(PC版)』2004/06/24発売

『家庭教師ヒットマンREBORN!』週刊少年ジャンプ2004年26号連載開始

『魔法少女リリカルなのは(無印)』2004/10/01TV放送開始


そして来年2024年、三作とも同年シリーズ開始20周年…………マジかよ?(今まで気にしてなかった)




英雄足り得る心

──嗚呼(ああ)、なんて美しい……。 伝説の若き英雄達の勇壮なる輝き(ヒカリ)の炎纏う(つばくろ)の群れが、世界を絶望に染め上げる煉獄の紅黎(あかぐろ)絵画(そら)を強き希望への願いに満ち溢れる緋色で塗り替えながらこちらへと迫り来る様は、なんと壮麗で煌びやかな光景なのだろうか……。

 

己の眼に焦がれし三つの世界の真なる英雄達が紡ぐ勇気と絆の軌跡が放つ輝き(ヒカリ)を自らの身で受け止めたいが為に、全世界に厄災を齎す魔王(ラスボス)となって英雄達の前に立ちはだかった空前絶後の大馬鹿者、イノケント・リヒターオディンは大きく見開いた双眼に荘厳な輝きを放つ緋炎の燕が無数の群れで裂空を舞う幻想的で壮麗なる光景を焼き映して感動を覚えていた。

 

その緋炎の燕の群れは裂空の頂点から急速落下しているイノケントを目掛けて対空砲火による弾幕のように矢衾となって猛スピードで向かって来ている。 普通ならば決して交わる事など有り得なかった二つの世界の歴戦の英雄(ヒーロー)が出会い、未知なる力を用いて三世界に仇なそうと立ちはだかった魔王(ラスボス)を打ち倒すべくして互いの持つ(かくご)を合わせ、創り放たれた夢の共演(クロスオーバー)合体戦技(コンビクラフト)。 その豪華壮観な緋炎奥義を常闇の宇宙のような漆黒の大きな瞳にギラギラと映し、英雄を狂信する者(彼らの熱狂的大ファン)としてイノケントは只々涙を流し感無量に浸るばかりだった。 嗚呼(ああ)、まったくもって──

 

「──勇気と絆を武器にして強大なる敵に立ち向かう王道の英雄(ヒーロー)とは、かくも偉大で、尊く美しいものだ……ッ!!」

 

千鳴(ピキイィィィ)ッ! 突貫(ビュォォオオオオ)────爆爆爆爆爆爆爆爆爆爆(ババババババババババーーーン)ッッッ!!!!

 

満面の悦びを浮かべたイノケントが三日月に吊り上げられた口の奥底に在る魂からの大感激を溢れ出させたその刹那、矢衾の列で飛翔して来た緋炎の燕の群れが一直線に雪崩れ込むように彼へと殺到した。 矢頭の緋燕が《次元魔王》の鋼鉄の肉体を直撃し被爆を起こすと、それから途切れなく後続の群れが次々と突撃して機関砲の乱射さながらの連続爆音を煉獄の天に響かせていく。 裂空に乱れ咲く緋色の爆花が真上に座して回る十干十二支の巨大方陣と共に終末の世界の空全体を大きく揺るがした。

 

「「く──っ!?」」

 

生じた爆風は合体戦技を出し終えたリィンとツナがいる空の巣を蹴散らし抜けて地上の崩壊都市(クラナガン)まで届いて来る程の勢力があって、二人が創り放ったその合体戦技──《緋炎奥義・緋炎裂空天翔》の威力の凄まじさを物語っていた。 返って来たその途轍もない衝撃波によって自分達の身を猛烈に嬲られる上に足下の空中足場をも激しく吹き揺すられて、百戦錬磨の実力者たる二人もこれには堪らず足場に身を伏せて揺すり飛ばされないようにしっかりとしがみ付きながら驚嘆苦心を呻いていた。

 

自分達の放った合体戦技の余波が思いの他に強烈で二人が身に襲い掛かった災難に堪えている合間に緋燕の群れが全て先行から生じていた被弾爆玉の層を貫いてその中のイノケントへと突撃し切り、彼を包み込む爆玉の層がまるで泡立つかの如く一気に膨張して盛大に弾けたのだった。 見事に全弾命中である。

 

「う″っ……どう……なった……?」

 

しばらくして余波は止まり、暴風と大気震動によって滅茶苦茶に搔き回された空の巣……彼方此方にすっ飛ばされて他の浮遊障害物と滅茶苦茶に衝突を繰り返したお陰でジャガイモのような凸凹球形に変形した空中足場の上、どうにか振り落とされずにしがみ付き堪え切ったリィンとツナは安全を確認し、伏せていた身を上げて立ち上がる。 激しくすっ飛んで色々とぶつかった空中足場が齎した連続的な反動によって、表面に腹這いに密着していた全身を強く打ちのめされた所為で手酷い筋肉痛を受けたリィンは肩の呻きを漏らしながら爆煙の入道雲を見上げて、その中のイノケントはいったいどうなったのかと溢した。 彼の隣で腹に受けた強打痛を庇いつつ立ち上がったツナも同様に見上げて呟く。

 

「や、やった……の……か?」

 

流石にここまでやれば倒せただろうと淡い期待を口にするツナだが、その疲労で擦れ切った声に込められた確証は薄い様子であった。 彼の中の“超直感”は警告音を一向に止めてはいないし、血も冷え切って全身がブルブルと震え、どうしても足下を落ち着かせられないのだ。

 

「……」

 

リィンも剣呑な双眸で天を濛々と覆った爆煙の入道雲を無言で睨みつけて「ゴクリッ!」と息を呑んでいる。 彼もまたあの黒雲の中に一宇宙よりも遥かに(おお)きな存在感を感じ取り、より張り詰めた警戒心を剥き出して左腰に差す鞘に納めた太刀の柄を利き()手に強く握っていた。

 

《次元魔王》イノケントは人の世界の理外に在る“魔人”と同等か、或はそれ以上の位階に在る未知数の超越者だと思われる。 本来なら只人の身で相手にできるような存在ではなく、初見で打倒するなど例えどんな英雄や実力者を大勢集めてもほぼ不可能というもので、ましてやたった二人だけで戦うなど自殺行為と言っていいだろう。

 

二人がそれぞれの元居た世界で過去に幾度も苦難の末に勝ち抜いてきた強敵達との戦いから得てきた豊富な経験値に加え、《神氣合一》《大空のボンゴレギア》という異能と特殊装備を用いた超強化形態(スーパーパワーアップモード)、もう一つおまけにリィンのブレイブオーダー『烈攻陣《焔群》』の号令(オーダー)効果で因果律的な攻撃強化も重ね掛けるまでの事をやって、それでようやっとこうしてイノケント・リヒターオディンという“魔人”へまともな一撃を御見舞いしてやれた。 ……だがしかし、それまでであった。

 

「──くは、ははははははははーーッ!!!」

 

「「────ッッ!!!!」」

 

散々強化を重ね死力の限りを尽くして相手に食らい付いていった末に作れたたった一度きりの絶好の好機(チャンス)につけて創り放った会心の合体戦技すらも、次元魔王には届かせられなかったようだ。 天から墜ちるような魔王の哄笑が終末の世界全体に響き渡った直後に爆煙の入道雲が晴れ、その中から砲金色(ガンメタルカラー)(濃い紫がかかった灰色の事)の光沢を放つ無機質な球形結界の中で愉快爆笑を曝しながら《次元魔王》イノケントが五体無事の姿を現した。 渾身の合体戦技がまるで効いていない魔王(ラスボス)の姿を目に納めた瞬間にリィンとツナの顔色が戦慄一色に染まり、声の一つもあげられない程の絶望が二人の英雄を苛んだ。

 

「本当に、三世界の英雄(おまえたち)は最高だな。 “ボンゴレの血脈”であり純度は極上であるとしても()()()()()()()で【黄昏の零】を持つ俺に僅かながら手傷を負わせたばかりか、()()()()()()()()()()の影響により可能となった可能世界産戦術導力器からゼムリア外部端末物資への重複接続(デュアルリンク)を存分に活用する事で俺との戦闘力差を埋め、守るための負けぬ気迫をもって勝利への機を引き寄せてみせた。 その機を掴む為に“疑似戦術リンク”を利用し即興で創り放った新たな合体戦技(コンビクラフト)も実に見事な出来栄えだったぞ。 大空属性の炎の調()()特性に【必殺(クリティカル)・詠唱駆動解除率100%】とステータス低下に加えて【ポジティブ状態変化解除】とその他も様々な効果を発揮させるという、まさしく“すぺしゃる”と呼ぶに相応しい必殺技であった。 これにはさすがに魔王(ラスボス)の俺でも、この《絶対障壁》を展開しなければ只では済まなかったであろうなぁ」

 

自身の周囲を覆っていた砲金色(ガンメタルカラー)の球形結界を解除して、途方もない疲労と憔悴に押し潰れそうになって尚も諦観は一切無い視線で睨み上げてきている主人公達(リィンとツナ)へ多大なる尊敬と賞賛の笑みで返す魔王(イノケント)。 彼は清々しく気分の良さそうな顔でリィン達がここまでの戦闘において特に良かったポイントを挙げて褒め称え、二人が自分を打ち倒す決定打にする為に創り放った合体戦技《緋炎奥義・緋天裂空天翔》の効果内容を見破りながらもその出来栄えを見事だと伝えてくる。

 

説明の中に聞き慣れない用語(ワード)が幾つか有り気掛かりになりたいところだが、今はそれよりも──

 

──極限まで無理に近づけて幾つもの強化(バフ)を重複掛けしつつ、尋常でない三次元の死闘を繰り広げた果てに、折角作り出す事ができた一度きりの勝利の好機(チャンス)だったのに。 それをモノにできなかったか……くっ!!

 

──《絶対障壁》……だって!? そんなバカなっ! 炎の純度を最高に高めた大空属性の調()()もまるで効果を受けない障壁(バリアー)だなんて、あんなのどうやったら破れるんだよ……!!

 

千載一遇の決定打をいとも容易く防がれてしまい、軋む音を鈍く響かせる程に歯を強く噛み締めて厳しい表情を浮かべて愕然と深い落胆を露わにする二人の英雄(ヒーロー)。 今日初めて知り合ったばかりの二人で即興で考えたものだったとはいえ、《緋炎奥義・緋炎裂空天翔》は先程の好機の最中に今現在のリィンとツナが御互いに持つ力(炎)を最大限に発揮させた遠距離必殺合体戦技だった。 命中させれば100%確実に相手の戦技(クラフト)導力魔法(アーツ)の詠唱駆動を止める事が可能であるリィンの《滅・緋空斬》を他の炎と上手く混ざり合わせて放てるように最適化(アレンジ)し、受け継がれし“ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)”で最高の純度に高められ万象をも調()()するツナの大空属性の炎と融合させて、どんな強化(バフ)や防御だろうが絶対に撃ち貫く緋炎の燕を裂空へと飛翔させる……しかし、そんな正に当たれば絶対必殺と言える合体戦技ですらも、この呆れる程に規格外の魔王(ラスボス)には通用しなかったのだ。

 

極限の激闘を超えて作り出した僅かな勝機をも掴ませてくれない……そんな理不尽を目の前に突き付けられて、絶望しない人間はいない筈だ。

 

「それでも尚、己の意志で世界や大切な者達を守ろうと必死覚悟で奮起し、絶対に勝利を諦めないのが真の英雄(おまえたち)だ。 違うか?」

 

「無論だ。 少し前に()()()()()()()()()()()()()()、俺はもう二度と自分一人で無茶な戦い方をするつもりはないが。 お前がどんな目的だろうと、次元(この)世界や仲間(なのは達)を傷つけようとする限りは絶対に、この太刀を納めたりはしないッ!」

 

「オレは自分自身を英雄だと思った事は一度もないけれど。 それでもこの手で大切な友達と新しい仲間(スバル達)を死ぬ気で守りたいんだ。 その想いと覚悟は1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、この炎と共にある! 今までも、そしてこれからも、ずっと──!!」

 

高潔な英雄達への信頼と期待を込めた圧を孕ませた眼光を軍帽の下にギラリと光らせて問いかけてくるイノケント。 だが相手の言う通り、目の前の魔王(ラスボス)に自分達の力がまるで通じない事実を示され絶望的な戦闘力(レベル)の差を突き付けられようとも、リィンとツナはまだまだ諦めたりはしない。 罪無き人々の平穏と大切なものを絶対に護ってみせるという不退転の想いで絶望を跳ね除け、七の絆を誓いし灰色の闘気を纏う刃と友を守る決意を秘めた覚悟の炎を燃やす拳を睥睨する魔王へと突き向けながら、不滅の輝き(ヒカリ)を宿した眼で(したた)く睨み返し、此処から一歩も退かない意思を叫ぶ。

 

そう、【英雄足り得る心】とは、決して己の栄誉や利益を得る為に格好をつけるものでも、常に正しい立場でいたいが為に自身の力と正当性を周りに見せつけるものでもない。

 

聖人か偽善者か血筋か立場などで決めるものでもない。

 

弱く罪無き誰かが卑劣なる悪者や災厄が齎す理不尽などによって脅かされる事を決して許さない。 心より大事に思う場所や愛する者を奪おうとする魔の手から守りたいと願い、身を挺して立ち向かう。 たとえ己の立場が危うくなったとしても無辜の民の居場所と尊厳を守るために悪政を振るう権力者を討つ。 ──即ち愛をもって人道を尊び、義をもって外道を許さぬ、その行為と意志そのものなのである!

 

「ククク、そうだ。 本物の勇者や英雄(ヒーロー)とはそうであらねばならん。 例えその想いに根差した真実が我欲や利己的願望(エゴ)であったとしても、無力や凡小故の無謀な行いであるとしても、己が正しいと信じるモノの為に愛と勇気でどれ程に分厚い“壁”にも立ち向かう者達にこそ【光の英雄】の称号が相応しい」

 

「「……」」

 

「果たして神に選ばれて力を手にすれば“勇者”か? 格好良い派手なコスチュームを身に纏って悪党や怪獣をやっつければ、それだけで“正義のヒーロー”になれるのか? ……くは、はははは! そんな訳があるまいよ。 何故なら、俗物は英雄(ヒーロー)の在り方に憧れるのではなく、その者が持っている“光”を狂おしい程に妬ましく思っているからだ。 特別な力を振るって正義を名乗り悪党を排除して得られる栄光が、人々から浴びせられる喝采が、主役を照らす脚光が、己こそ絶対の正義だという事を世界に認められているという圧倒的な優越感が、全て欲しくて欲しくて堪らない。 故に、英雄の持つその“光”を全部己に寄越せとして、奴らは恥も知らず図々しくも英雄の皮を被るのだよ。 最初から最強? ちーと無双? 神から譲って貰った摩訶不思議な神通力を使って、楽をして世界を手玉に取り、他の誰一人として力と強さで追随をされずに僅かな苦戦すらも拒絶したく、眉目麗しい女(ひろいん)を囲って酒池肉林(はーれむ)を築きたい? ハハッ、そのような堕落者の凡庸な願望なぞ、実に卑賎(ひせん)矮小(わいしょう)だろうよ。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に勇者や英雄を名乗る資格など皆目(かいもく)として無いのだ」

 

「お前は……」

 

期待の圧を乗せた眼光で睥睨してきながらリィン達が持つ身を挺して他者を護る高潔な英雄の精神を尊び、その裏で低俗な願望で英雄の皮を被る俗物を否定する言葉を吐き捨てるイノケント。 英雄の輝き(ヒカリ)を矮小な欲望で穢す凡俗共を断じて認めないと語る間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のを観たリィンは相手の心奥に根差す絶対的価値観(アイデンティティー)の一端を垣間見たような気がした。

 

「さて、お前達の英雄の資質は期待した通りに極上だった。 ……次はその高潔な輝き(ヒカリ)の真価を試してやろう。 我が《次元魔王軍》が数多の多元並行世界より収集した異端技術の粋を結集し完成した、このMULTIUNIVERSE(マルチユニバース)式近未来戦術オーブメント《PARAISO(パライゾ)》だからこそ実現した最上位導力魔法(アーツ)の更に上位──【究極上位導力魔法(アルティメット・アーツ)】でな──ッ!!」

 

「な──ッ!!?」

 

イノケントが語った主張に対してリィンが何らか意見しようとしたが、言葉を投げるよりも先に相手が話を切ってリィン達の持つ英雄としての器を試してやると投げつけてくる。 そして外套の懐から二重層スライド構造のスマホに似た近未来の戦術オーブメント《PARAISO》を手に取りながら、なんと既存世代の戦術オーブメントで発動する事のできる最上位の導力魔法(アーツ)を更に上回る究極の導力魔法を使用すると宣言し、リィンを驚愕させた。 両目を大きく見開き明らかな動揺を露わにし出したリィンの横顔を見てツナが心配を投げかける。

 

「そんなに驚いて、どうしたんだリィン?」

 

「有り得ない……最上位導力魔法は“ロストアーツ”を除く現代の戦術オーブメント端末の規格で使用可能な導力魔法の中で文字通り最大威力・効力を発揮できる駆動術式なんだぞ? それを上回る【究極上位導力魔法】は四年前の《リベールの異変》時期に使用されていた第四世代型から今現在の第五世代型まで実用不可能だったと導力技術を専門としている仲間達(アリサやティータたち)からも聞いている。 それに、最上位の攻撃導力魔法の破壊力は街中や人里近くでは無暗に使用する事を躊躇われる程のものなんだ。 それ以上の術式ともなればクラナガン(この下の都市)のように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ぞ!」

 

リィンが信じられないと言いたい焦燥の声でゼムリア大陸(元居た世界)の近年で実用化された戦術オーブメント開発事情を導力技術に詳しい仲間達から聞いていた一部の内容を踏まえ、イノケントが発動しようとしている【究極上位導力魔法】の予測規模がどれだけヤバイか想像し、正気を疑う厳しい視線を頭上高くに浮かび上がった次元魔王へと送る。 この終末の世界の地上に在る造り物の崩壊都市(クラナガン)と同じように街一つを丸々破壊可能な規模(レベル)の攻撃導力魔法(アーツ)を発動させるともなれば必然的に相当莫大な導力エネルギー量が必要になるだろうし、戦術オーブメントのような小型導力端末機でそれ程のエネルギー消費量を賄って運用可能なのか、俄かに信じがたい。

 

リィンとツナはまだ知らない事だが、なのはやフェイトをはじめとする次元世界のトップランクの魔導師が使用可にしている【集束魔法(ブレイカー)】はそれこそ街一つを軽々と消滅させられる規格外の魔力エネルギー量を発揮するのだが、その莫大な運用魔力は事前に多数使用された魔法によって大気中に散らばった魔力素(魔法で消費した魔力の滓の事)を自らに集束し再利用する事で確保している。 しかし導力魔法に使用させる導力エネルギーとは《七耀石(セプチウム)》と呼ばれる特殊な鉱物結晶から抽出されるものであり、消費した導力エネルギーは魔力素のように大気中へ散らばる事は無く消失してしまうのだ。 ならばイノケントはどうやって……。

 

「ふはははは! さあ、我が宿敵にして敬愛せし三世界の若き英雄達よ。 その尊き勇気と絆の輝き(ヒカリ)と、平和と勝利への不屈の意志と、愛するものの総てを守護せんとする高潔な精神をもって。 並行未来の英知と魔導が外宇宙の果てより呼び起こす“竜王”の爆炎を、見事乗り越えてみせるがいい──《PARAISO》導力結晶回路エネルギー伝導率臨界点突破! “超越回転駆動(オーバードライブ)”開始だ!!

 

「「────ッッ!!!?」」

 

そして遂には煉獄の天の中心に座す十干十二支巨大方陣の上へと昇り立ったイノケントは更に天高々と《PARAISO》を掲げると、本日最高潮のはしゃぎ様を露わにして導力魔法(アーツ)発動前の詠唱駆動(ドライブ)をし始めた。 ところが、その詠唱駆動は通常の規格のものとは明らかに一線を画す次元の演出を顕した。 まず、駆動開始した瞬間にイノケントが左手に高々と掲げた《PARAISO》が“火”が燃焼するように強烈な赤色を発光しながらレースカー専用エンジン駆動回転音よりも数千倍は(おお)きく騒々しい爆動音を轟かし、それに続いて術者が立つ十干十二支巨大方陣が《PARAISO》が発し出したのと同色の光を強烈に放ちつつ、十干漢字を刻む内盤の右回転と十二支漢字を刻む外盤の左回転が超加速をし始めたのだった。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ──!!

 

その直後、炎のように赤く輝いて超速回転を開始した巨大方陣から尋常ではない“圧”が発せられ、高位相次元の壁ごと終末の世界を激しく震撼させる。 同時に術者が立つ巨大方陣の上部が同じ赤色に光る半円(ドーム)形の導力駆動術式に覆われ、その一連の事象工程を下から見上げたリィンがそれに非常に慣れ親しみがある見覚えを感じ取って雷に撃たれたと錯覚する程の衝撃をその身に走らせた。

 

「まさか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうのか──ッ!!」

 

「ふははははー! 概ねその通りだ、リィン・シュバルツァー! お前も沢田綱吉もこれ程に巨大な駆動術式を見せられたならば、俺の言った事が実現可能であると理解できたであろう? エレボニア帝国の第五世代型戦術オーブメント《ARCUSⅡ》で適応されている火属性最上位攻撃導力魔法《ゼルエル・カノン》──その更に上位に位置付けされる“火属性究極上位攻撃導力魔法”を、今から御見せしようぞ!!」

 

「っ!! 来るぞ。 何をしている、早く構えろリィン──ッ!!!」

 

火属性究極上位攻撃導力魔法の駆動術式と化した巨大方陣の回転速度が《ARCUSⅡ》で強化を施された達人の動体視力をもってしても最早其処に刻まれた術式を読み取る事は不可能になった程に加速され、太陽の如き目が焼け焦げるような極光の輝きに染められた。 それに伴って何故か巨大駆動術式方陣から放たれていた“圧”は急消滅し、終末の世界全体の激震も水のように鎮められた。 だがしかし、ツナの中の“超直感”はそれが相手の詠唱駆動が完了した合図だと伝えてきて、それがとんでもなく危険な攻撃が来ると非常警報を甲高く鳴らした為、彼は一早く防御の身構えを取りつつ、まだ現実感を持てずに精神的衝撃からの回復を遅れさせていたリィンへ咄嗟と怒鳴り飛ばして正気を取り戻そうとさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……だが、もう遅かった。

 

「外宇宙のその果てより来たれ。 その爆炎の息吹で惑星をも焼き尽くす、竜の王者(キング・オブ・ドラゴン)よ───《バハムートフレアボマー》ッッッ!!!!!」

 

天に立った次元魔王の盛大なる呼び声が那由他の次元時空を超えて轟き渡る。 直後に彼の足下の巨大駆動術式方陣が急に超速回転を止め、同時に心臓の鼓動の如き脈を一度打つ。 その静謐な脈動音が森羅万象をも畏怖させる霊的な“威”を伴って終末の世界全体のモノへと伝わり、その一瞬の間『天地崩界・神々の黄昏(次元魔王の支配領域)』内に在る何者から何物をの魂魄までも活動を絶対零度で凍結させた。

 

──ぁ……ああ……っ!!

 

──な……んだ……()()は……!?

 

見上げた事象への不信のあまり刹那の一瞬見せてしまった心の綻びに付け込んで来た霊的威圧を受け、その精悍な顔付きを今にも凍死しそうな酷い青紫色に染めたリィンの瞳に映し出されたのは、この世のものとは思えない程に想像を絶した戦慄の光景だった。

 

詠唱駆動を完了して特大の脈を打ったイノケントの巨大駆動術式方陣……朱炎に燃ゆるその下面の内側より産出されるかのようにして顕れ()でるは“捻じれ双角を生やした悪魔のような頭部を持つ、大山よりも巨大な黒竜の首”であった……!

 

刹那に齎された静謐を破り、魔王の呼びかけに応え出現した埒外級の幻獣を目の当たりにし、ツナまでもがそれから放たれてくる超越的な威圧感に圧倒的な畏れを懐いて身を石のように硬直させた。 遂にここまでずっと彼の額に灯され続けていた死ぬ気の炎も鎮火され、ミッドチルダにやって来る直前に飲んでいた特殊な丸薬により内面から外されていた全身の精神抑制(リミッター)が戻り、この局面で()()()()()()()()()()が強制的に元に戻されてしまった……。

 

『ギャオオオオオオオオオオンッッ!!』

 

「ひっ……ひいいいいいいぃぃ!! なんか凄くデッカイ、ドラゴンが出たーーーーッ!!!」

 

身に纏っていたボンゴレギアも強制解除され、死ぬ気の炎を灯していた時の冷静な威風とクールな雰囲気を完全崩壊させて、ダメダメな感じで気弱な風の少年に一変したツナが白目を剥いて情けない悲鳴をあげる。 イノケントが最高に愉快な気分で召喚した悪魔の頭を持つ巨大黒竜が巨大駆動術式方陣から飛び出してその圧倒的に絶大な全身を煉獄の大空へと現したのだ。

 

「火属性究極上位攻撃導力魔法《バハムートフレアボマー》。 それは三世界から遥かに離れし外宇宙の狭間に君臨している【竜王バハムート】が吐く爆炎の息吹(ブレス)をそのまま再現し、この星の全てを焼き尽くす! そしてその熱量は太陽をも遥かに上回る()()()だあああああぁぁーーーっ!!!」

 

業火を纏う三対六の大翼を羽ばたかせ、終末の世界に召喚された外宇宙の竜王の化身。 凡その目測で地上の崩壊都市(クラナガン)全体と同じぐらいという途轍もない(おお)きさの図体を誇り、体内に秘められている熱量は外に拡散したならば忽ち一つの太陽系列が蒸発し消えてしまう脅威の摂氏温度。 イノケントはそれを近未来の戦術オーブメント《PARAISO》を使って再現し、火属性の【究極上位導力魔法(アルティメット・アーツ)】として発動したのだと諸手を挙げてどうだ凄いだろうと言わんばかりに大声で自慢し叫んだ。

 

しかし、それが事実ならば幾らなんでも冗談では済まされないだろう、これは……。 幸いこの終末の世界『天地崩界・神々の黄昏(ディザスター・ラグナロク)』はイノケントの《PARAISO》の《TTO》システムで現実世界から離れた高位相次元空間に創られている為、この場で発動しても少なくとも現実世界のミッドチルダが蒸発してしまう事態にはたぶんならないだろうが──

 

「ふざけるな……そんなものを放たれたら俺達もこの領域(フィールド)内の何処かに散り散りになった仲間達も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ッ!!」

 

「そんなの絶対イヤだーーーー!! でも酷い怪我していたスバルとなのはを後ろに待たせて、このままだと離れ離れの山本や獄寺君達だって危ないから、逃げる訳にはいかないし……うわああー! いったいどうしたらいいんだああああああっ!!?」

 

パワーインフレにも程がある究極上位導力魔法の発動を目の当たりにして極限の緊迫を強く噛み締めながら絶体絶命の危機感を叫ぶリィンと、隣でそれを聴いてノイローゼのように自分の頭を両手で挟み込んで大混乱に陥るツナ。 だがしかし、二人の攻撃ダメージを上昇させていたリィンのブレイブオーダー『烈攻陣《焔群》』は既に制限時間(カウント)切れによって終わっていて、死ぬ気の炎が消えてしまったツナは御覧の通りもう戦力にはならない。 何か打開策を考えている暇は無く、無情にも煉獄の大空に君臨した竜王の化身の持つ圧倒的な破壊の殺意を秘めたドス黒い眼光が二人の主人公(リィンとツナ)とその下の地上へと差し向けられ、悪魔のような頭部の口が裂ける程に大きく開かれ、その喉の奥から星を焼き尽くす一兆度の爆炎が激しく渦巻きながら上がって来て、それを勢いよく吐き出す為に喉元に溜めら(チャージされ)ていく。

 

「ふははははー! さあ、リィン・シュバルツァー! 沢田綱吉! そして我が信奉せし三世界の若き英雄達よ! お前達の素晴らしい勇気とキズナの力と輝き(ヒカリ)で起こす奇跡を、今一度魔王(おれ)に見せてくれ!! 光の勇者やヒーローは絶対不滅なのだと信じさせてくれ!! 俺に英雄(お前達)を、愛させてくれええええええええええええええええッッ!!!」

 

──くそっ! ……こうなったらやむを得ない。 異世界で使うとリスクは高いが“無想の極致”を解放する以外に方法は無いか──

 

──もうしょうがない。 この“新しい死ぬ気(がん)”は二つしかないから、リボーンの居ないところで極力使いたくなかったけど。 これを飲んで“あの状態”になるしか──

 

竜王の化身が終末の世界ごと英雄達を爆炎の息吹(ブレス)で焼き滅ぼそうと長い首を上げて大きく息を吸い込んだ。 馬鹿みたいに輝き過ぎてもはや無駄に神々しい小日輪と化している巨大駆動術式方陣の上で最高潮の大歓喜をあげ、大変嬉々となったあまりに面白く歪みまくらせた破顔を全面に露わして、到底無茶振りの限度という限度を超え過ぎた英雄達への期待と信頼を狂い叫ぶ次元魔王(超大バカ)。 一方このまま黙って息吹を放出させたら間違いなく一巻の終わりだと確信し、大きな代償(リスク)を支払う覚悟を決めてここまで取っておいた“切り札”を使用する決断をする二人の主人公(リィンとツナ)

 

リィンが全身から放出していた灰色の霊圧闘気(オーラ)を一度収め、《神刀【緋天】》を正眼に構え直しながら改めて自身の更に奥深い(うち)へと意識を沈める。 ツナが眼前の竜王の化身が放つ途方もない圧力(プレッシャー)に怯える自身の手を覚悟でどうにか動かし、着ているパーカーのポケットから“不思議な虹色の丸薬”が二つだけ中に入れてある透明ビンを取り出して、蓋を開けようとする。

 

……だがしかし、リィンの切り札は()()()()()()()()()()()()()()()()必要があり、ツナは恐怖で手が震えて直ぐにビンの蓋を開ける事が出来ない。 従って竜王の化身の方が先に爆炎の息吹(ブレス)を吹き放つ体勢に入り、天に反り伸ばしきった長首の口から喉元に溜め(チャージし)終えた一兆度の爆炎を溢れ出させる。 あとは勢いをつけてその首を振り下ろし、口を大きく開いてその中の爆炎を一気に吹き出せば、全てが終わる──

 

──くそっ、焦りで集中が……駄目だ間に合わない──ッ!!

 

瞬間増幅魔力薬莢全弾装填(カートリッジ・フルバーストリロード)────!!」

 

イノケントの火属性究極上位導力魔法《バハムートフレアボマー》がいよいよ撃ち放たれようとして、三世界の英雄達が万事休すとなるその直前だった。 相手の対界戦略級殲滅爆撃が繰り出される寸前を見て“切り札”の使用を急ぐに焦ってしまって集中を途切れさせてしまい、“無想の極致”の領域にまで届かせられず遂ぞ諦めかけるリィン。 だがその刹那、遥か真下から凛然と美しい女性の声が届いてくると同時に一筋の“金色の閃光”が疾風迅雷の如き(はや)さをもって彼らの背後を翔け上がって来た。 そしてその閃光は二人の頭上で停止し、全身に纏われていた金色の魔力闘気を弾けるようにして消した中から美しい金髪(ブロンド)ツインテールを夜風に棚引かせる黒魔導師──機動六課前線ライトニング分隊隊長、フェイト・T・ハラオウンが大気を迸る雷光(プラズマ)を纏わせた特大の光の斬馬刀(バルディッシュ・アサルト)を威風堂々と肩に振り上げて構えた立ち姿で現れたのであった。

 

「フェイト……!?」

 

「リィン、ツナ。 待たせてゴメンね。 その魔法は()()が止めてみせる!」

 

 

 

 




遂に次元魔王(馬鹿)の奴がはっちゃけ始めやがりましたー☆

リボーン「一兆度とかイカにも頭の悪い数字が出やがったしな」

グナちゃん「テイウカ、【アルティメット・アーツ】ッテ、ソノママノネーミングジャネーカヨ。 コンナブットンダインフレオリジナルアーツヲプロローグヘンショッパナカラダシヤガッテ、ドクシャタチハワケガワカラネーダロ?」

アリサちゃん「心配御無用ッ、その為のこのあとがきコーナー『超絶最強ヒロイン、アリサちゃんの“炎の軌跡”講座』じゃないの! 【究極上位導力魔法(アルティメット・アーツ)】の事だって、この超絶最強究極女優(アルティメット・ヒロイン)アリサ・ラインフォルトちゃんがちょちょいのちょいと詳しく全部説明してa──」

※【究極上位導力魔法】の詳細は次話の本編で説明されます。 ついでに『炎の軌跡講座』の次回はプロローグ編後の序章に書く予定なので、プロローグ編が完結するまでお休みです。

アリサちゃん(ハンカチ噛み締め)「チックショーーーーーッ!!!」


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