所持していた全弾の瞬間増幅魔力薬莢を使用して膨大な魔力の稲光を全身から発しながらこの土壇場で颯爽と翔けつけてきたフェイトは、不意にド派手な登場と共に傷一つ無く無事な姿で現れた彼女の背中を見て一瞬驚きと安堵が入り混じる放心を浮かべたリィンとツナに今までたった二人だけで強大な敵と戦わせた事を一言謝り、高速儀式魔法で山程に魔力の刀身を巨大化させた光の斬馬刀を強く両手に握り締めて今にも星を焼滅させる爆炎の息吹を吹き放とうとしている竜王の化身の前に立ち塞がる。
「雷光一閃……プラズマザンバァァァ──ブレイカアアアアアアーーーッッ!!!」
しっかりとした浮遊鉄骨の上に足場を固めてフェイトは大きく肩の後ろに振り被った光の斬馬刀を一息に打ち振い、自身の出せる最大火力の必殺戦技を放った。 雷光を纏う光の斬馬刀が繰り出されると共にその特大の魔力刀身が一気に伸長されるような格好で射出された金色の極太砲撃《プラズマザンバーブレイカー》は雷鳴の速度で煉獄の大空を穿ち、その長首が振り下ろされて悪魔竜の大顎口から爆炎の息吹が吐き出されるよりも一瞬先に到達する。
『グギャアアアアッ!!?』
竜王の化身が矮小な英雄達と終末の世界を灰も残らず焼き尽してやるとして一兆度の爆炎を吹き放とうとした寸前に勢いをつけて振り下げた首下にある肺部位に金色の極太砲撃が命中。 フェイトが撃ち込んだ膨大な魔力量に比例した特大級の被爆が生じて8000m下の崩壊都市に衝撃波が届く程の爆風反動を爆炎を吹き出す為の器官部分に受けた事で喉を詰まらせた竜王の化身が天から振り下ろしかけた長首を再び天に向くように押し戻されてそのまま後ろに仰け反り、喉元の詰まりに塞き止められた爆炎が圧迫されて暴発を起こし口内で爆散された。 この竜王の化身自体は実際イノケントの《PARAISO》と終末の世界の天空に敷かれた巨大駆動術式方陣を介して創り出された膨大な量の火属性導力エネルギーの塊なので、それは意思など持っていない筈なのだが、詰まり爆発で後方に大きく仰け反らされた長首が内部破裂して煙を上げている様子があまりにも凄絶で痛々し過ぎ、奴が激痛に悶絶して苦鳴をあげているように見える。
「す、凄い……ッ!」
「や……やった! フェイトの物凄い雷砲撃がイノケントの【究極上位導力魔法】の攻撃が放たれるのを阻止しt──」
全身の肌が電気を受けて痺れるようなビリビリとした衝撃風に身を嬲られつつ、フェイトが撃ち放った《プラズマザンバーブレイカー》の出鱈目な威力を目の当たりにしてリィンは思わず呆けて感嘆を漏らしていた。 《バハムートフレアボマー》の圧力が齎してくる途轍もない恐怖とその大馬鹿過ぎる超越火力が放たれて来そうだった事への焦燥に駆られていたまま必死になって虹色の丸薬を入れてあるビンの蓋を開けようとして、ずっと震えが止まらない手に倦ねて一言も発さず悪戦苦闘していたツナもその超越火力の爆炎を放ってきそうだった竜王の化身がフェイトの必殺戦技をくらい、一兆度もの熱量が放出されるのを阻止された光景を見た事で身を苛んでいた恐怖から解放され、一転して喜びの声をあげようとする。
『グルルル……ギャオオオオオオオオオンッッ!!!』
「──てない!? 嘘おおおおおおおっ!!」
ところが、驚くことに究極上位導力魔法は一度止めても導力魔法解除にはならないようであった。 一兆度の詰まり暴発による内部破裂を受けてズタズタになりもう使い物にならなくなったと思われた竜王の化身の長首がDVDの早戻し画像のようにして直ぐに元通りになり、悪魔竜の貌が怒り心頭を露わにしてリィン達三人へ激怒の咆哮を浴びせてきた。 恐らくは「貴様たちはこの竜王の逆鱗に触れた。 故に許さぬ。 その細胞一片も残さず焼き尽くしてくれようぞ!」と言った感じの怨嗟を向けてきているのだろう。 助かったと思って安心しそうになったツナが頭上から吹きかけられてきた耳を劈く竜王の怒声と台風と見紛う強勢力を伴った吐息を受けて、絶望のあまり頭を抱えて白目を剥きながら狂い喚いた。
「ひいぃぃっ! もう駄目だー! おしまいだあああああっ!!」
死ぬ気の炎が額から消えてすっかり“元のダメダメな普通の少年に戻ってしまったツナ”、ひと呼んで【ダメツナ】。 しかしこのギリギリの窮地においては急に雰囲気を様変わりさせてクールな歴戦の炎拳士から情けない悲鳴をあげている臆病な普通の少年に変貌した彼を気にする余裕はリィン達には無い。 三人が見上げた先で竜王の化身が再生した喉の奥に再び星を焼滅させる爆炎の息吹を溜め込み始める。
「くっ! だが、何が何でも絶対に放たせる訳にはいかない! 今度こそ俺が──」
「リィン教官ッ!」
「──っ!? この声は……!」
フェイトは必殺戦技を使用した反動で大きな硬直を起こしており、ダメダメになったツナは聞くまでも無く絶体絶命の状況下で冷静を保てず大騒ぎ混乱しているばかりだ。 リィンは二人が動けないのならば自分が《バハムートフレアボマー》を止めてやるしかないと思い、今度こそ切り札の“無想の極致”を使用しようと太刀を正眼に構える。 そしてもう一度己の裡の深層まで潜ろうと目を閉じようとしたその時、彼の耳に聴き慣れて親しい活力に満ち溢れる真っ直ぐな女子生徒の声が届き、それによって切り札の使用に待ったをかけられる。 自分を呼んだ声が誰のものなのか直ぐに察せたリィンが正眼に構えたまま声が聴こえてきた南東を振り向いて、その方角から黒い戦術殻に運搬される形でこちらに接近して来ている女子三名の姿を確認しようとしたところに──
「──うふふ。 ユウナさん、アルティナさん。 ごめんなさいね。 今回はわたしの方が速かったみたいです♪」
「ミュゼ!?」
「ええ、そうですリィン教官。 教官が一番に愛する生徒のミュゼが、貴方の危機に唯今馳せ参じました♡」
不意に何時の間にかリィン達の直ぐ側を漂っていた浮遊バスの屋根の上へ跳び乗って来ていた、リィンの担任クラス生徒の一人にしてトールズⅦ組の仲間であるミュゼ・イーグレットがいつものあざとい微笑と蠱惑的な声音で自身のクラス担任であるリィンに経った今合流した事を報告する。 彼女はその手に携えた豪華な装飾のマスケット銃のような外見をしている魔導騎銃──《玲銃マルグレーテ》をパレードバトンのように華麗に回して真上へと放り投げる。
「さあ、舞台の幕を上げましょう!」
綺麗に真っ直ぐミュゼの眼前に落下した魔導騎銃は彼女がとある秘密結社の魔女に教わった魔術によって複数に増え、それ等の銃身が竜王の化身に向けられて横一列に整列する。 彼女は続いてトールズ第Ⅱ分校の青い学生服のミニスカートから自身の木目細かな掌にもスッポリと納まる程に小さな導力拳銃を取り出した。
「レッツ──スタート!」
まるで徒競走のスタート合図を出すように頭上へ真っ直ぐと上げた右手で小導力拳銃の引き金を引いて、指揮官が号令の弾を撃ち上げる。 パン! と一つ小さく鳴らされた号令と共に彼女の眼前に整列した魔導騎銃達が自分で引き金を引いて、竜王の化身に向けて長く伸びた銃身の先から導力エネルギー光線を一斉射出。 目標へ到達するまでの弾道の計算に1リジュ(cm)も狂い無く一直線に飛び伸びて、巨大な的に全弾命中した。 しかし、その程度では星を焼き尽くす程の途方もない導力エネルギー量を持つ究極上位導力魔法を打ち消すどころか、攻撃を放つ竜王の化身の動きを止める事すらも出来ない。
「まだまだ、此処からが佳境です!」
勿論の事、エレボニア帝国内随一の名門で超難関士官学院であるというトールズの筆記試験の採点数を自分の好きに出来てしまう程に明晰な頭脳を持つ彼女は、たかが十数条のエネルギー光線程度だけでどうにかできるなどとは微塵も思っていない。 間髪入れずに眼前に整列する魔導騎銃達を魔術で短距離転移させ、経った今爆炎の息吹の溜め込みを完了させた竜王の化身を完全包囲。 指揮官が毅然と腕を揮って号令を出し、360°全方位より特大の災厄へと照準固定した《玲銃マルグレーテ》の銃口が一斉に火を吹く。
「ロード……ガラクシア──ッッ!!!」
締め括りにそのまま全方位から最大出力の導力エネルギー光線を突き刺し、作戦完了! 碧銀に彩られた無数の光条が連鎖爆発して壮麗なる協奏曲を奏でた。
「や……やった?」
「いいえ、まだです。 ですが城を崩す為の楔は打ち込みました」
ミュゼの必殺戦技《ロード・ガラクシアⅡ》による流麗苛烈なる波状連射が浴びせられ、もはや芸術的と呼べる爆光の煙幕に包み込まれた竜王の化身を観て今度こそ消滅させたのかと思い呆けた口から漏らしたツナに、ミュゼは撃ち方を終えた《玲銃マルグレーテ》をまた一つにして手元へと戻しつつ、真面目な口調で否と答える。 彼女の言う通り、その直後に地上の廃墟を吹き崩し瓦礫を巻き上げる咆哮波で爆光の煙幕が一瞬にして掻き消されてしまった。 再び姿を出した竜王の化身は全く無傷であり、先程と同様に煉獄の天へと長い首を伸ばして爆炎の息吹を放つ準備の溜め込み動作を続けていた……が、口内から漏れ出ている熱量が最初のより若干少なくなっている様子が見て取れ、それがミュゼの必殺戦技がまるで効いて無い訳ではないという証左であった。 そして、相手が爆炎の熱源を発射機能となる喉元へと蓄える体内エネルギー運搬速度を落とした隙の合間を縫って、南東より飛んで来た黒い戦術殻──《クラウ=ソラス》に乗る三名の美少女戦士が漸くリィン達のもとに到着。
「わたしに出来るのは、これまでです。 あとはお願いします、ユウナさん達」
「フフン、任せなさい! あたしに合わせてアル! ティアナさんもお願い!」
「了解です」
「仕方がないわね。 急ごしらえの三人連携になるけれど、なんとか合わせてみせるわ!」
合流した美少女三名はユウナとアルティナのトールズⅦ組特務科女子ペアと、機動六課FW陣司令塔のティアナだった。
ガラハッドが爆散して仲間達全員が終末の世界に散り散りに飛ばされた後、アルティナの《クラウ=ソラス》が自動防衛機能で守ってくれた事で三人は近い場所に落ちていた。 それで三人は一緒になってリィン達の戦いに加勢しようとして、ずっと前から《クラウ=ソラス》で戦場に向かっていたのだが、終末の世界の重力崩壊を広く使って超高速空中戦を繰り広げていたリィン達の移動速度が閃光の如く速過ぎていた所為で、今まで彼らを散々追いかけ続けていたという訳だった。 しかも、一番遠方に吹っ飛ばされていながら真ソニックフォームの音速機動を持ってして誰よりも早く戦場へと辿り着いたフェイトと、盤面を俯瞰するかのような巧みな予測を使いリィン達の移動パターンを読む事で先回りしたミュゼに先を越され、三人共ちょっと悔しそうな色を顔に滲ませている。
「SET──GUNNER! 強烈なのをお見舞いしてあげるわ──ッ!!」
「《クラウ=ソラス》──分身&変形装着・形態変化! 同調完了……“ブレイブモード”ッ!!」
「前は未完成で使えなかったけれど、今なら撃てる! くらえ──ッ!!」
《クラウ=ソラス》がリィン達の前へと躍り出て、其処らを漂う横広の浮遊足場の上に意気軒高と飛び降りたユウナ達三人。 竜王の化身が破滅の爆炎を吹き放つのを阻止すべく、または遅れて来た事を挽回すべくして、三人一斉に大技を繰り出す為の構えを取る。 両手に一つずつ握り締めた銃機構搭載旋棍【ガンブレイカー】を逆手持ちに返し、棍突部位にポッカリと空けられた射出口二門で竜王の化身のドテッ腹へ狙いを付けるユウナ。 とある秘密地下工房が制作した超高度の謎機能を使い《クラウ=ソラス》を二機に分身させ、その内の一機を空戦機動殲滅用軽鎧《アルカディアス・ギア》に変えて身に装着し、もう一機を漆黒の大剣《ラグナ・ブリンガー》へと形態変化させ装備したアルティナ。 双銃のインテリジェントデバイス《クロスミラージュ》を持った両腕を交差させて二つの銃口を真っ直ぐに突き出し、足下を固めるよう大きく開いて構え、何物も見通し見逃さない瞳に巨大な目標を映して照準固定するティアナ。
「エクセル──ブレイカアアアアアアアア!!!」
「ソラリス……ブリンガー!!!」
「行っけえええっ!! ファントムブレイザーーーーーーーッッ!!!」
三人は上手く息を合わせてほぼ同時に戦技を撃っ放った。 射出口に迸る導力エネルギーを充填し、ユウナが凛然と雄々しく必殺戦技名を叫ぶよりも速く彼女の構える二丁のガンブレイカーが電撃を伴う程に凄まじい導力光線を目にも留まらぬ勢いで吐き出す。 身に纏った飛行ユニットで攻撃目標の頭上へと飛翔したアルティナがその小さな手で持ってきた自身の丈よりも巨きい漆黒の大剣の剣山を、天を見上げて星を焼き尽くす爆炎があと少しで十分の熱量を口内に満たしかけようとしている竜王の化身の熱源精製箇所へと差し向けて、その柄尻をミサイル発射と見紛う爆速で蹴り出す。 “今度こそは撃ち抜く”という確固たる意思を声に轟かせたティアナが白艶やかな両腕を交差させて伸ばした双銃の銃身に、彼女自身が持つ魔力光と同じ橙色に光る回転する正方形を内包する魔法陣を展開し、それを砲門にして特大の魔力砲弾を撃ち出す。
『ギャオオォオオォォーーッッ!!?』
未来に夢見る三人の美少女戦士が夢へと向かう希望の未来を守るべくして全力で放った必殺戦技は太陽をも遥かに上回るエネルギーを内包する巨いなる暗黒竜王へと、激烈なる風穿音を轟かせて大気を突き貫き猛然と殺到していく。 ユウナの《エクセルブレイカーⅡ》が右下側、アルティナの《ソラリス・ブリンガーⅡ》が上中央側、ティアナの《ファントムブレイザー》が左下側──文字通りの三角点攻撃となって竜王の化身を見事に撃ち抜いた。 命中した下腹部左右と胸部分中心にトラック車両が通れそうな程の大孔が穿たれ、その三点を中心に天の逆鱗の如く炸裂した大爆発が竜王の大山のような巨体を蔽い尽くした。
「よし、どんなもんよっ! やったわねアル、ティアナさん♪」
「むぎゅ……ユウナさん、嬉しいのは分かりますが、いつもいつも急に抱き着かないでください」
──何で昨日まで見ず知らずの他人同士だった私まで一緒に……このユウナって人、お調子者で他人に馴れ馴れしいところもスバルに似ているわね……。
「それと、別に私の事は呼び捨てで構わないわ。 見たところ歳は近いようだし……」
「ほんと! じゃあ“ティア”って呼ぶわね♪ よろしく、ティア!」
──(ガクッ)少し親しくなっただけであだ名呼びしてくるところまで……しかもあだ名付けのネーミングセンスもバカスバルと全く同じって……。
三人同時の必殺戦技による一斉大火力追撃が会心に決まり、ユウナが炸裂爆発の猛烈な余波を受けて髪やスカートが大いに乱れている事にも気付かずに、アルティナとティアナを二人共纏めて両腕いっぱいに抱き寄せて大喜びに舞い上がる。 逆風で危なげな姿を曝しだした美少女三人から無言で視線を逸らし明後日へ向ける男子共。 そしてハイテンションに浮かれているのはユウナただ一人だけであり、アルティナは慣れたように呆れながら言っても無駄と解りつつ淡々と鬱陶しいから止めてくれアピールを促していて、ティアナに至ってはユウナが見せてくる調子良く人当たりのイイ性格から親しくなった自分に同じあだ名を付けてくるところに至るまで自分の親友兼相方であるあの何時如何なる時もヘラヘラして人にベタベタしてくる青髪格闘魔法少女にそっくりだと思い愕然と項垂れている始末だ。 しかも二人が放つ鬱陶しいなオーラは浮かれモードになったユウナには全然届いていない。 フッ、手に負えんなww。
「は……はは。 何はともあれフェイト、ミュゼ達も危ないところに駆けつけてくれて助かった。 みんな無事だって信じていたよ」
「うふふ、それは当然のことですリィン教官。 愛する殿方の危機に馳せ参じてこそ、真の乙女なのですから♡」
「それにリィンとツナこそ、此処まであんな途轍もなく人に過ぎた魔法を使うような規格外の強敵相手にたったの二人で戦って、よく頑張って持ち堪えたね。 イノケントに危うくやられそうになっていた私の親友と部下の事も助けてくれたんだってね? どうもありがとう」
「もしかして、二人には会って来たの?」
「(ツナさん、先程と雰囲気が変わっているような……?)はい。 御二人共ほぼ瀕死の重傷を受けていましたので、とりあえず手持ちに有った【アセラスの薬】で戦闘不能状態を回復させてから《クラウ=ソラス》の回復治癒機能で放置しておくと致命的になりそうな外傷を治しておきました」
「だけど、スバルもなのはさんも魔力と体力は回復しきれていなかったので、戦線復帰は難しいかと思います。 さすがにいつも無茶しがちなあの二人でも今回ばかりは大事を取って後方で待機しているのだろうかと……というかユウナ、いい加減にしてそろそろ離してくれない?」
「ぐっへへ~。 アルのスベスベな触り心地も相変わらず最高だけど、ティアのお肌も艶々でなかなかイイわね~♥」
此処に来るまでの道中でやった事をリィン達に話している間にユウナが百合百合スキンシップからエロオヤジモード化した為、身の危険を感じたティアナとアルティナはセクハラ女の頭と鳩尾を無言でどついて彼女の拘束を無理矢理に引き剝がした。 二人からくらわされた密着零距離の張り手は魔力と《ARCUSⅡ》で若干威力強化されていてなかなかに強烈だった故、ユウナは「あう″っ!?」となって一瞬目が星になり、(とりあえず)正気を取り戻した……その直後、ユウナ達三人の必殺戦技三角点攻撃の炸裂で巻き起こされた大爆発後の爆煙が突然内側より発せられた竜の怒号によって引き裂かれた。
『ギャオオオオオオオオオン──ッッ!!!』
「な──にィィッ!!?」
「う″……あ″あ″あ″あ″っ!!」
「耳が……壊れ……る……!!」
大気を伝播してこの終末の世界全体の大空に悲鳴をあげさせ、創造の地上本部があった地の中心から東西南北の果てまで伸びる十字型の大地割れが発生する規模の超大音量で鳴り轟いた竜王の咆哮にリィン達は全員耳を劈かれる。 忽ち頭が真っ二つに割れそうな程に激しく脳内を反響し、咄嗟に耳を両手で塞いで耐え難い激痛に苦悶を曝した。 怒号はすぐに止み、耳に残った耳鳴りに蟀谷を歪めつつ頭を上げて空を見遣る。 依然変わりなく天の中心には朱炎の輪郭線を纏いて太陽の如き極光を下々に放ち続けている火属性の究極上位導力魔法の駆動術式方陣が展開され続けていて、その真下で業火を纏う三対六の大翼を羽ばたかせて地上の星を焼き尽くさんとする竜王の化身は未だ健在であった。
「ククク……なるほどな。 主人公が絶体絶命の局面においては必ず頼れる仲間達が駆けつけ、皆で力を合わせる事で危機的状況を打破するか。 過去には立場の違いや性格的に反りが合わず、仲違いや衝突をしてきた事もあっただろうが、時に行く道に立ち塞がる壁を乗り越えるべくして手を取り合ったり、時に止むを得ぬ事情の前に敵対し本音でぶつかり合ってきた事で、繋がりの環を広げ強固に育まれてきた英雄達の絆の力よ。 嗚呼なんと美しきかな……」
竜王の化身が業炎の火の粉を煉獄の空に撒き散らしながら羽ばたく頭上に輝きまくる巨大方陣の上面に立つ次元魔王は《バハムートフレアボマー》という究極の導力魔法を打ち破ろうと、次々と主人公達のもとに集結し持てる必殺戦技を束ねて星をも焼滅させてしまう絶対的なエネルギー量の塊である竜王の化身が一撃必滅の攻撃を放つのを阻止してみせようとする光の絆で結ばれし仲間達の雄姿を、宇宙一つを丸々飲み込んだかのようにギラギラと輝かせる暗黒の瞳に映しながら、此処に感極まれりといった心酔の表情で彼らの絆をどこまでも褒め称える言の葉を詠み耽っている。 正道を征く光の英雄達が放つ輝きはどこまでも至高で美しいと、高見から見物して自分の身勝手な夢想に酔い痴れている。 英雄達はそんな風に世界の平和を壊そうとしている黒幕が観客気分でいる事がどうしても許せない。
「イノケント──ッ!!」
「ふはははは! そんな大声で叫ばずとも、ちゃんと聴こえているぞリィン・シュバルツァー。 ……しかし、なるほどよなぁ。 単騎や二人の力だけで食い止められぬものには三人以上で協力して掛かってゆくか。 確かにとてもシンプルで合理的であり、単純な戦力と制圧力を大幅に上昇させる事で、より強大な相手を制せる可能性を上げるという実に強力な戦法だ。 実際にこうして俺が発動した《バハムートフレアボマー》の攻撃が放たれるのを加勢による戦力数増加を活かした波状連携攻撃をもって絶妙に妨害し、一度ならず二度までも攻撃阻止してみせている。 まったくもって素晴らしいよ。 英雄の持つ信頼と絆の力、とても良いぞ……だが、まだまだ足りぬよ。 この究極の火属性導力エネルギーで形作られた竜王を滅するまでにはな」
「そ、そんなぁ。 フェイト達の攻撃だけじゃ、足りないって言うのか……」
一兵卒の軍人や並大抵の魔導師が受ければ即泡吹いて気絶する程の“威圧”が込められた激昂をリィンから向けられても平然と嗤うイノケント。 奴からフェイト達の加勢と連携で竜王の化身の爆炎放射を阻止し続け大変健闘している事に対し相変わらず嘘偽りの無い賞賛が送られ、しかしそれだけでは《バハムートフレアボマー》を解除する事は出来ないとキッパリ断言されて、ツナは瞳を弱々揺らがせて意気阻喪とする。 リィンやフェイト達も歯を食い縛ったり目尻を吊り上げたりして打つ手の厳しさを感じながら辛々とした冷水を全身から流し出している有様だった。
【究極上位導力魔法】は全てに共通してその絶大な威力や効果に引き換えて通常の戦術オーブメント端末ではとても賄えきれない莫大なる導力エネルギーと普通の上位導力魔法よりも遥かに巨大規模となる駆動術式を構築する事が必須になってくる。 それ故に多元並行宇宙のあらゆる世界から異端技術の粋を集めた近未来戦術オーブメント《PARAISO》の絶大な因果律改変規模と規格外の導力エネルギー運用をもってして高位相次元空間へ接続し自由自在に戦闘領域の創造構築を行える『TERRITORY ORDER』を利用することで究極上位導力魔法を使用する為に必要である巨大規模の駆動術式方陣を構築展開する事を実現した。
究極上位導力魔法の詠唱駆動中、詠唱術者は巨大駆動術式方陣が展開する完全防御の因果律結界の内側で守られている為、如何なる手段を用いても駆動解除する事は不可能だ。 だがしかし、その発動に掛かる莫大なEP故にその術が持つ馬鹿と呼べる程絶大規模の攻撃や効果を最大限且つ円滑に発揮できるように、発動直後に必ず導力エネルギーを充填して術を放つ装置的な役割を持つ魔導巨像が召喚される。
そして召喚された魔導巨像にはHPが存在し、導力エネルギーが充填されて攻撃が放たれる前にどうにかして一定量ダメージを与えて魔導巨像のHPを削り切る事が出来れば、魔導巨像は消滅し究極上位導力魔法を解除する事が出来る……のだが、驚くべき事に究極上位導力魔法の魔導巨像はたった一回HPを0にしただけでは消滅せず、一回やられる毎にHPは全回復され、それを六回繰り返し、最初のHPと合わせて合計“七回”分の残機を持っている。 つまり、これまでにフェイトの《プラズマザンバーブレイカー》で一回、ミュゼからユウナ・アルティナ・ティアナによる必殺戦技四連鎖で竜王の化身のHPを二回0にしたが、あと“五回”もやらなければ《バハムートフレアボマー》を止める事など出来ぬううぅぅ! という事なのである。
「──ハッ! だったらアタシ等の手で、足りねぇ分をそのギガ暑苦しいクソデカ竜に食らわせてやりゃあイイってだけのハナシだ!!」
一度0になったHPを全回復し、竜王の化身──改め《バハムートフレアボマー》の魔導巨像が長首を天へと伸ばして三たび星を焼滅させる爆炎を放つ為の火属性導力エネルギーを充填し始め、今現在此処に集まった戦闘員全員のCPを底尽きさせたリィン達が最後まで決死の覚悟で足掻いて止めてやるとして身構えたその時、突然として生意気そうながら歴戦の覇気を感じれる幼女の声が煉獄の大空に甲高く響き渡った。 その直後に魔導巨像の背後に真っ赤な騎士甲冑を身に纏う赤毛三つ編みの幼女が、大きなハンマーヘッドのそれぞれ片方ずつを超速回転掘削機構とロケット噴射推進機構に変形させた戦槌型アームドデバイスをその小さな全身を使って豪快に振り回しながら猛然と突進して来た。 現れたその赤毛三つ編みの幼女の正体をよく知っているフェイトとティアナがとても頼もしそうな笑みをパァっと浮かべ、声を揃えて彼女の名を呼んだ。
「「ヴィータ(副隊長)!!」」
「おう! お前ら、待たせたな! 古今単騎無双の夜天の主の守護騎士が最強の矛、この《鉄槌の騎士》ヴィータ様と絶対破壊の魔戦槌《グラーフアイゼン》が来たからには、どんな敵も壁もクソデカ竜も、何もかもブッ壊してやるぜッ!!」