英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡   作:蒼空の魔導書

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本日二話目(第三話)投下じゃあああああーーーッ!!

そしてなのは達の前に立ちはだかるオリ敵(かませ)と死ぬ気の炎を扱う畜炎システムを搭載したオリジナル魔煌機兵がこの回に初登場!




(おお)いなる柴焔の武士

敵艦隊の真下を抜けて司令母艦ガラハッドの周囲を固めていた飛行機械兵器群の航空防衛網を突破した機動六課前線攻略部隊の分隊長二名とFW陣四名と一匹は仲良く横に並んで、彼女達の確保する目標のミッドナイト軍総司令官が乗艦しているであろう、敵主力艦隊の司令母艦ガラハッドの甲板上へと乗り込む。(フリードは成長竜体だと艦内部への突入に連れて行けない為、ここで一旦幼体に戻した)

 

それまでにガラハッドの周辺を固めている他の敵艦や其処らを行き来遊弋する魔煌機兵や、ガラハッド本体からすらも迎撃してくる動きはまるで見られず、すんなりとガラハッドの甲板上に到達できたなのは達はその事を不気味に感じながら、乗り込んだ甲板上を警戒しつつ見回してみる。

 

現在時刻は16:40。 夕陽とミッドナイト艦隊が放つ火砲と硝煙の臭いが大気中に混ざり合い、血潮のように淀々しい真紅色に空が染め上げられている。 それだけでも寒気を感じる不気味さだが、加えてガラハッドの艦上には一切の照明が点いていない為に、無数の鉄機物によって配置構成された殺風景の甲板上は非常に昏くて不気味さ加減が更に益し、気分が凍えるような殺伐とした雰囲気を醸し出している……そして更に輪をかけて不気味なのは。

 

「これは……いったいどうなってるの? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だなんて……」

 

その様子に呆気に取られてティアナが呟いた通り、甲板上に艦の乗組員の姿が誰一人も見当たらず、敵が潜入してきたというのに敵襲警報も鳴らさず、彼女達を迎撃にやって来る白兵戦闘員も自律機械兵器も艦上の至る箇所に備え付けられた対白兵戦迎撃用兵器も……ガラハッドに乗っている敵戦力が鼠一匹たりとも一切姿を現す気配が感じられなかった。 言い知れぬ不穏を感じさせる静寂が漂う中、隊長二人は薄暗い甲板上の周囲を警戒しつつFW陣へ行動指示を出す。

 

『とりあえずみんな、このまま艦橋(ブリッジ)へ突入しよう。 定石(セオリー)通りなら作戦の拘束目標であるミッドナイト軍の総司令官ラコフ・ドンチェルは其処に居る筈だよ』

 

『この不可解な状況で敵がどんな罠を仕掛けて来るのか分からないから、周りをよく警戒して進みましょう』

 

敵陣の真っ只中では迂闊に声に出すとどこに盗聴されるかもしれない為、念話を使ってここからの行動指針とそれを実行するにあたる要点を話し、六人全員その内容を共有できた事を恙無く確認し終えると、話した内容の通り周囲の気配に気を付けながらフェイトを先頭にして薄暗く広い航空迎撃機体専用滑走路上を慎重に歩き進み、艦上の中央に聳え立つ中層ミラービルのような外観をしているガラハッドの艦橋(ブリッジ)前までやって来る。

 

『この中に今回のミッドチルダ襲撃の主犯であるミッドナイト軍のトップが……』

 

『この建物の内部も照明が点いてないようだけど……恐らく暗闇の中で暗視の魔法かそういったゴーグル機器・赤外線レーダー等を装備したこの艦の乗組員や機械兵器達が息を潜めて待ち伏せているかもしれない』

 

『じゃあ正面の通用口から突入するのは危険かなぁ? この建物は全面ガラス張りの構造みたいだし、それなら拘束目標の敵司令官が居そうな階の壁ガラスを打ち割ってショートカットをするなんて方法どうかな、ティア』

 

『う~ん、そうね。 視た感じ、たぶん対魔防弾材質の強化ガラスが使われているのだろうけれど、アンタのIS(インヒューレントスキル)の【震動破砕】なら壊せそうだし、バカスバルらしい脳筋作戦だけど案外悪くはないわね……なのはさん、どうしま──』

 

目の前に聳え立つ内部照明の点いてない艦橋(ブリッジ)を見上げながら皆で制圧効率の良さそうな突入方法を念話でやり取りして思案していたその時だった。 『カッ!』『パチッ、パチッ、パチッ!』という連続した点灯音が突然と鳴り響き、それと同時に艦橋(ブリッジ)の天辺側面に横一列に並んで取り付けられた照明器具(スポットライト)が点灯し、それが宝を盗んで陰から脱出しようとしていた怪盗団をサーチライトで追い詰めたかのように、なのは達機動六課前線攻略部隊六人全員の姿を光の下に照らし出したのだった。

 

「──ドンッ、チェルルルルーーーー! 敵陣のド真ん中に堂々と突っ立ってコソコソ話をするなどとは……んあ、ちょ~~~~っと、緊張感が足りてないんじゃな~~~い?」

 

なのは達が暗闇の中からいきなり眩しい光に照らされて一瞬眩まされた目を庇うように腕で光を遮っている間に、艦橋(ブリッジ)の正面通用口から、なのはの故郷の国で全国知名度の海賊漫画に登場する敵キャラクターが口にするようなヘンテコな哄笑と一緒に人を嘲るような特徴的な口調をした男の声が聴こえてくる。 そして直後に其処から出て来たのは、派手に真っ赤な色合いをした軍服衣装と同色の軍帽に身を包み、その上に対流圏に流れる気流の風に棚引く紫色の長マントを纏った、いかにも“悪の総統”を思わせる出で立ちを前面に出した金髪の中年男性──

 

 

反管理局軍ミッドナイト──≪総軍司令官≫ラコフ・ドンチェル イメージCV:千葉繁

 

 

「これはこれは、誰が来たかと思えば。 管理局が誇る《エース・オブ・エース》高町なのは嬢。 それに並び称される《金色の閃光》フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウン嬢。 先の管理世界の情勢を大きく揺るがしたJS事件を表立って解決に導いた“奇跡の部隊”と囁かれ、ごく最近になって高名を得た機動六課の皆様ではあ~りませんか~あ。 チェルルルルルーーー!」

 

暗闇の中からなのは達の前に悠々と歩み出て来てその正体を現した、ミッドナイト軍の総司令官のラコフは下卑た笑みと耳障りな御調子の饒舌で彼女達の素性を確認してくる。 こうしている今も艦の下で強敵の人型戦闘兵器との交戦を続けているヴィータが此処までの道中で幾度か敵軍の司令官であるラコフの事を()()()()()()()()と言い表して誹謗していたように、実際彼の顔の面積四分の一を埋めるニキビだらけのデカッ鼻の下には軍帽に隠している薄毛の色と同じ小汚い金色をした海苔髭が生やされている。 目の眩みに慣れてきて非常に横柄臭く偉そうなその面構えを視界に入れた途端、なのは達は奮然と警戒を顔に露わして相手へと食って掛かった。

 

「ラコフ・ドンチェルッ!!」

 

「ノコノコと現れたわね。 探す手間が省けたわ!」

 

「この前のゆりかご決戦の所為で街もみんなも凄く傷付いて、それ等がやっと回復しはじめてきたところだったのに、また傷付けに襲って来るなんて、許せないッ!」

 

「反管理局軍ミッドナイト、総軍司令官ラコフ・ドンチェル。 時空管理法に則り、【管理局への武装反乱行為】【次元空間渡航技術の横領、並びに次元空間航行戦艦の大量密造と違法による無断次元世界間航行】【質量兵器の大量違法所持と魔法・異端技術の犯罪転用】【管理指定世界への武装侵略、及びに公的重要施設へ対する武装占拠】【建築・器物損害多数】【地上本部に勤めていた公務・管理局員の大量虐殺】【公務執行妨害】その他諸々などの次元犯罪行為多数に渡り、《第二次ミッドチルダ大空襲》の主犯である貴方の身柄を拘束し、ミッドナイト軍へ対する全軍武装解除と全面降伏を求めます!」

 

「無駄な抵抗をしないで、大人しく投降してください! 僕達が此処へとやって来れた限りで、貴方達ミッドナイト軍はもう御終いです!」

 

相対する敵軍との戦力差が圧倒的に悪く、管理局側劣勢の戦況を一発逆転させて一気に戦いの収束へ持って行く為に起こした、今回の電撃作戦の最終拘束目標である敵軍の司令官の姿を前に、六人は全員咄嗟と手にそれぞれの得物(デバイス)を構えて臨戦態勢を取る(キャロは再び竜召喚魔法を使用してフリードを成長竜形態へと変身させる)。

 

なのはが瞬間に腹の底から沸き上がった激情を表に顕し。 ティアナが緊迫感を不敵な笑みに被せて粋がる素振りを見せながら戦意を起こし。 スバルが先のゆりかご決戦で深い傷を付けられていたミッドチルダやそこに住まう強かな人々による復興活動を二度目の大空襲という形で踏み躙られた事に対する義憤を向ける。 フェイトが剣の立った目でこれまでに相手の犯した罪状を読み上げて内容を確認してから、それに対する相手への対応と要求を述べ。 エリオがこれ以上の抵抗は自分達には無駄だと相手へ強く告げて、ミッドナイト全軍への降伏を勧告する。 しかし、百戦錬磨のエースとストライカーである彼女達に幾ら敵意を向けられても、ラコフはその余裕と嘲りの笑みを僅かも崩しはしなく、それどころか逆に調子付いてなのは達へ対する挑発を強めていく。

 

「御終いだぁ? ……プププッ。 ドンッ、チェルルルルーーー! 君ら六人だけでこの吾輩を捕らえられると思ってんのかいィィ? それはそれは、流石はかの天才魔導生体科学者にしてS級広域次元犯罪者の《無限の欲望(アンリミテッドデザイア)》Drジェイル・スカリエッティ氏の戦闘機人(ナンバーズ)や彼の天才的技術力をもって現代に甦った【聖王のゆりかご】をも打ち破ったという、管理世界の英雄部隊様ってわけだよねぇ~。 まったくもう、小賢しく我が軍の防衛布陣を突破できたからって、ちょ~~~っと調子ブッ扱き過ぎでしょ~。 吾輩の半分も生きていない生娘共が、もう勝った気でいるなんてねぇ。 チュルルルーーー!」

 

「な、何が可笑しいのよ!?」

 

「可笑しいも何もぉ──こういう事だぜぃ☆」

 

挑発に目くじらを立てたスバルの疑問にお答えして、ラコフは何処からともなく何かのリモコンを取り出した。 そして「ポチッとな!」というお約束のセリフを言ってリモコンの赤いボタンを手に持った親指で押す。 するとその直後に『ガコン! ゴゴゴゴゴッ!』という機械の駆動音とそれに伴う母艦全体の大きな横揺れと共に、丁度ラコフの足下にある自動開閉床板が彼の立つ逆方向にスライドして開き、それによって甲板下層にある格納庫まで一直線に吹き抜ける、凡そ縦5m、横8m程の長方形をした昇降運搬口が出現した。

 

「なっ、何をするつもりなn──きゃあっ!?」

 

更には突然床の奥下から『シュパァァンッ!』という何かを小気味良く射出したような音が木霊したその2秒後、昇降運搬口の奥下から勢いよく突き抜けるようにして巨人のような形をした何かがド派手な轟音を鳴らして現出する。 それの甲板上到達に伴って発生した強い衝撃によって今度は母艦全体が縦に激震し、なのは達が一瞬脚元をよろめかされて体勢のバランスを崩れさせた。

 

「い……たた……ん? ……な──ああッ!!?」

 

「もう、いったいなんだっていうの……よ? ──ッッ!!!」

 

母艦の激震が収まり、床から立ち上がったなのは達は眼前に聳え立っていた謎の巨人を見上げてその姿を確認し、あまりの驚愕に六人全員口から出る言葉と表情を硬直させてしまった。

 

その巨人の正体は現在も尚、ここから後方彼方に見えるミッドナイト軍航空艦隊の防空域で管理局首都航空武装隊の空戦魔導士達を圧倒的な質量数をもって一歩も寄せ付けず、またこのガラハッドの外周に配置されている防衛艦隊の間を哨戒飛行している、ミッドナイト軍が謎の何者かの協力者から譲り受けという異世界の人型有人機動兵器──《魔煌機兵》であった。 それも首都航空武装隊が大苦戦を受けている、人の骸骨に紫色の軽装甲を身に着けさせたような外見をした《ゾルゲ》《メルギア》や、その軽装甲の代わりに分厚くもシャープな甲冑装甲を身に着けさせている外見の《ヘルモード》ともまるで違った。

 

その外観はヘルモードに似ているが、機体全体のカラーリングは想念を孕んで燃える紫焔を思わせる赤紫色で、騎士よりも武士が被る三角兜型をした頭部とその下に覗く顔部分には架空に記される妖怪が持つ不吉の三ツ目を連想させる三角の配置で怪し気に光り放つ赤いレーザーアイレンズが三つ嵌められている。 巨木のように太い両手の手甲部位には何かを放射する為に空いているものだと思われる円形の孔、腰の装甲部分の両脇後ろの二ヶ所に長い四本のバルブを有する噴射推進装置が取り付けられていて、搭乗者を乗せる操縦席空間(コックピット)を覆い隠して守る胸部装甲は異様な熱のような気を感じられる刺々しい装甲版が分厚く三重構造になっている。

 

殿(ラコフ)の御前に跪くその“(おお)いなる紫焔の武士”の名は──

 

 

畜炎体循環出力増幅機関搭載型魔煌機兵──≪スクルド≫

 

 

「ムゥフッフ……シュワッチッ!」

 

ラコフは取り出した機体の胸部装甲(ハッチ)を手元のリモコンの緑ボタンを押して開くとヘンテコな恰好(ポーズ)を付けながらその中の操縦席空間(コックピット)へと跳び乗る。 彼はまるで偉そうな為政者がふんぞり返るようにドンッ!と鳴らして乱暴な尻を操縦席に叩き付け下ろすと、胸部装甲(ハッチ)が自動で閉じる。 すると密閉された操縦席空間内部全体が赤く照らされ出し、悪趣味な金色の王座(そうじゅうせき)に座った殿(ラコフ)の膝上にこの機体を操縦制御する為の空間コンソールが浮かび上がる。 彼はそこに無数と並んだ仮想鍵盤(キーボード)を意外に慣れた手付きで入力すると、跪いた格好で停止していたスクルドを起動し、「いざ、面を上げよ!」と脚を動かして機体を直立させた。

 

無骨な武威を感じられる三角兜を被った頭部の下に赤く光る三ツ目の眼光が、前に首を揃えて立ち並ぶ戦乙女達を射貫いた。

 

『ドンッ、チェルルルルーーーッ!! どぉだ、驚いたか? これこそが、我がミッドナイト軍が異世界の異端技術──【導力器】と【死ぬ気の炎】とやらの力を、数日前に我々の崇高な思想に理解を示してくれた()()()()()()から匿名で譲り受け。 そして我が軍の魔導技術者達の手によってその二つの技術を不断(ふんだん)に取り入れさせて開発した奥の手──()()()()()()()()()()()()()()の特注機体《スクルド》ッ! 昨日クラナガンに攻め込む直前にロールアウトしたばかりの、吾輩の専用機だよ~~~ん♪』

 

分厚い三重装甲に守られていて安全な操縦席空間(コックピット)の中からラコフが『ブエッヘン!』と一息大威張りを鳴らしてスクルドの詳細を相手に自慢するように語ってくる。 だがなのは達は相手の耳障りな声など気にならない程に、眼前に立ちはだかった紫焔の武士の威容とそれが放つ計り知れない重圧を総身で感じ、六人全員が途轍もなく気圧されていた。

 

──なな、何この巨大ロボット……ッッ!? 姿を目に入れただけで、心臓を握り潰されるような凄まじい圧迫感に襲われるなんて……。

 

──JS事件で戦ったスカリエッティのガジェットドローンや聖王のゆりかご。 今もヴィータとシグナムが下で戦っている強力な人型ガジェットを含み、此処へ辿り着くまでに交戦してきた異世界の異端技術で造られた機械兵器。 ……恐らくは、目の前の巨大ロボットは私達機動六課が今までに戦ってきたどの兵器よりも、確実に強さと存在の次元が……違う……ッッ!!

 

酸素を肺に取り込めずに息が詰まるような錯覚を覚え、少女達の白い肌から滴り落ちる大量の冷汗が身に着けているバリアジャケットどころかその下に穿いている仮想下着(インナー)までもびしょびしょに濡らした。 新暦の開闢以来次元世界において最大規模の大災難となった先のJS事件を解決へと導いた百戦錬磨の英雄である彼女達ですら、この“(おお)いなる柴焔の武士”──《スクルド》を前にして、このような醜態と戦慄を曝してしまう程の脅威だった。 そんな彼女達の畏怖されっぷりにラコフは嗜虐的愉悦に浸って益々調子に乗ってくる。

 

『おやおやおやぁ~? どうしたのかなぁ? もしかして……チビッちゃった? プッ! ドンッ、チェルルルルーーーッ! これは愉快♪ あのJS事件を解決した“奇跡の部隊”とあろうものが、戦う前からビビッちゃってまあ、なんとも、なっさけないねー☆ チェルルルルーー!』

 

「フン。 そんな何所かの余所様の力を我が物自慢して見せびらかして、調子に乗ってんじゃないわよ! そのJS事件の決戦を終えたばかりで、ミッドチルダ(こっち)の体制と戦力が消耗しきったところを狙って襲撃して来た卑怯者の癖に!」

 

「そうだそうだ! 機動六課(あたし達)はスカリエッティとナンバーズ(ノーヴェ達)に正々堂々と立ち向かって、頑張って頑張って頑張って、みんな凄く傷付いてボロボロになってギリギリ勝利を掴んで。 それでやっとの思いで平穏な日常を取り戻せたと言うのに……それを、ミッドナイト軍(アンタ達)はこうして汚い土足で踏み躙ってきた!」

 

機動六課(わたし達)は勿論、今もわたし達の後ろで戦ってくれている地上部隊や航空武装隊、クロノ君やカリムさんをはじめとした管理局の重役を担っている人達の裏方での頑張りに、ユーノ君等の頼もしい後方支援(バックアップ)、敵に拉致され操られて、わたし達と無理矢理戦わされても、最後まで心は屈したりはしなかったギンガと“あの子”も……そういったスカリエッティ達に深い傷を付けられた人々や世界は決して少なくなかった。 だからみんなで頑張って、この前にようやく手に入れたばかりの傷を癒せる平穏を、どうして貴方達は平気で壊せるの!!」

 

スクルドと動作をシンクロさせて、相手に人差し指を差して蜻蛉を捕るみたいにグルグルと回しておちょくってみたり、腹を抱えて嘲笑してみたり、両掌を肩の上で上向きに翳して肩を竦めてみたりして、怖気づき畏縮してしまっているなのは達の事を小馬鹿にし、挑発しまくるラコフ。 どこまでも図に乗った彼の態度が癪に障ったティアナとスバルが怒りの反論を返し、なのはが管理局の皆が頑張ってJS事件を解決しやっとの苦労で手に入れた念願の平和を台無しにされた事への義憤と慨嘆を訴える。 だがしかし、ラコフは戯けるように耳部へ片掌を付け翳して【何、よく聴こえないなぁ?】的なジェスチャーをスクルドに取らせ、なのは達が言ってきた事に対していったいどの口が言うのかと異議を唱えてくる。

 

『ふぁい? 正々堂々と立ち向かった? みんなDrジェイル氏の所為で傷付いたって? 管理局(キミタチ)は本気でそう思い込んでいるのかいィィ!? ……ドンッ、チェルルルルーーーッ! コイツァお笑いだなぁ。 そもそも、Drジェイル氏が管理局の転覆を計略したのも、元々は管理局最高評議会(腐れ三脳ミソの老害共)がDrジェイル氏を裏で操って、管理局の正義を次元世界中に示す為なんかに悪役にしようとした因果応報(マッチポンプ)の所為だったでしょう?』

 

「な──っ!?」

 

スクルドに己の腹部をバシバシと叩かせつつ耳障りに嘲笑いながらラコフが実に滑稽だなと言わんばかりに並べてきた事の内容を聞いたフェイトが驚愕を漏らした。 他の皆も「どうしてお前がそれを知っている?」と顔に書いて大小の動揺を呈している。 何故なら、ラコフの口から話されてきた内容が先のJS事件の裏で取り行われていた管理局上層部の不祥事で、なのは達もその情報を知らされたのが事件解決後の事後処理会議中だったという、最近の局中極秘事項(トップシークレット)だったからに他ならず、その情報が外部に漏れる事で管理局組織の信用と尊厳の損失と一般民に暴徒や混乱が起きぬように、今も厳重に規制されていた筈だったからだ。 それを何故、他と比較して規模が巨大であるとはいえ、いち次元犯罪テロ組織の頭目に過ぎないラコフの耳に知られてしまっている?

 

『そうだなぁ。 確か……【プロジェクトF】とそれを土台にした【戦闘機人量産計画】とか、Drジェイル氏にそれ等の人造魔導師を作らせたのって、あの最高評議会(腐れ三脳ミソ老害共)じゃなかったかしらぁ? 聞けばこの前のゆりかご決戦で死んじゃった、元地上部隊本部統括のレジアス・ゲイズ氏も裏で資金援助していたそうじゃあないか。 本局の方に優秀な人材を取られてばかりで、弱っちい地上部隊の戦力を増強する為にってさぁ☆』

 

「貴方は……その情報を何所で聞いたというの……!?」

 

『チェルルルルー! なぁに、この前ちょっとした伝手を手に入れてねぇ。 JS事件の顛末の詳細は勿論。 十年前に第97番管理外世界《地球》に第一級ロストロギアの【ジュエルシード】が落とされたのを契機に其処の管理外世界の一般住人だったなのは嬢が魔導師の力を開花させたという事も、そのジュエルシードを巡ってなのは嬢がフェイト嬢と相争った事も、その事件の主犯であったプレシア・テスタロッサ女史が過去に行った魔導炉の駆動実験の失敗で犠牲にした実の娘のアリシア嬢を蘇生させる目的でDrジェイル氏の提唱した記憶転写型模倣人造魔導師創造計画【プロジェクトF】を自ら完成させて(アリシア嬢)の記憶を転写したフェイト嬢を人工的に生み出したという話の内容も、生み出したフェイト嬢は結局アリシア嬢の偽物でしかないという事に気付いたプレシア女史はフェイト嬢を道具扱いしてジュエルシード集めに使い潰した末にポイッと捨てて実娘の死体と一緒に心中して虚数空間へ落ちて行っちゃったという後に《PT(プレシア・テスタロッサ)事件》と名付けられた次元世界史に残る大事件のかっなしー結末の真実だって、吾輩は色々と詳しく知ってるんだよーーん♪』

 

「そんなっ! 管理局内でもごく一部の高官にしか公表されていないPT事件の機密部分の詳細情報まで……」

 

『勿論、吾輩はその年内に続けて起きた《闇の書事件》の詳細だって秘匿部分の内容まで隅々と知っているんだけどさぁ……それもこれも、大体の不幸な大事が起きてきた数々の原因の大元はぜ~んぶ、これまでに管理局の老害のお偉いさん方が闇でコソコソとやらかしてきた汚職のオンパレードだったのではぁ、ないんですかねぇん? そこん所はどうなのよ、キ★ミ★タ★チィ~?』

 

ラコフの御道化た口からなのは達が過去に関わってきた重大事件の極秘概要がアレよコレよと語られ、そもそもそれらの悲劇が起きるに至った大元の原因というのも今は亡き最高評議会をはじめとする時空管理局上層部の老害共が組織の掲げる正義の正当性を絶対のものとする為に、遥か昔から日の当たらない所で幾つも執り行ってきた後ろ暗い裏工作が連綿と続いて糸を引いてきて成った因果応報(マッチポンプ)が大体だろう、という指摘をなのは達の心に刻まれた傷を小突くように投げつけてくる。 それを受けた彼女達は増々と深まる困惑と拒絶感に表情を歪めていく。

 

「……確かに、管理局は管理世界の法と秩序の守護を掲げて魔法やロストロギア等の異端技術の統制管理を行ってきた、その裏で今は亡き最高評議会を中心に管理局の絶対正義を過信するあまりに正道を外れて裏で非道に手を染めていた汚職局員は決して少なくはない。 だから巨大な組織であるが為のそういった闇の部分が管理局の内に数多く存在していた事実は否定しません」

 

周りの仲間達が過去の深い傷痕に塩を塗られて、憎たらしく「ベロベロバー!」ポーズを大仰に晒してこちらを挑発しまくってきている相手の機体に向かって今にも喰って掛かりそうな剣呑な空気を漂わせている中で、なのはは一人冷静になって相手の指摘してきた内容に対して肯定の返事を返した。 強固な正義感と何が有ってもその想いを絶対に曲げない頑固さでよく知られる不屈のエース・オブ・エースの口から発せられた意外な言葉に、彼女の仲間達が虚を突かれたように驚きの反応を表し、対峙する機体の中に搭乗するラコフもまた予想外そうに若干驚いた表情を一瞬浮かべてから感心した反応を示してきた。

 

『ほおぅ? 意外にも物分かりが良い様じゃないか、なのは嬢。 君の言った通り、管理局の掲げる正義などぉ~、所詮は嘘嘘嘘ォォウ! 不正塗れのインチキな~のさっ♪ だ~か~ら~さぁ、管理局(キミタチ)にこの広大な次元世界の法と秩序を守護する資格なんて、全然! 全くッ!ち~~っとも! これっぽっちだって無いのだよォォォォオオオッ!! そんな司法組織の風上にも置けない偽善まっしぐらの独裁機関に鉄槌を下し次元世界を奴等の支配から解放してやる為に、武力を掲げて革命を起こそうと立ち上がったミッドナイト軍(吾輩達)の何が悪だと言うのだぁぁっ! ドンッ、チェルルルルルーーーーーッ!!!』

 

「なのはさん……」

 

かの管理局の切り札である不屈のエース、高町なのはが遂に己が与する組織の行いに非がある事を認めて屈したのかと思い、溢れるばかりの愉快のあまり嗤いが止まらずにピョンピョンとスクルドを跳びはねさせて、調子の良さを最高に上げて侮辱という侮辱の限りをこちらへと吐き散らしまくるラコフを前にしても、一切の憤りを表さずに無言で俯き前髪の影で眼元を覆い隠して表情を伺わせる様子がないなのはに、スバルが不安を向ける。 他の仲間達も同様に黙するなのはへと注目を集めている。 まさか本当に自分達の最も頼れる不屈のエースは敵の言った事を素直に受け入れて管理局の敷く秩序が過ちであったと認め、屈服してしまったというのだろうか……その真相は次に彼女が毅然となった口を開いて語り出した事によって明らかにされる。

 

「だけど……管理局にあるのは闇の部分ばかりじゃないよ」

 

『あぁん?』

 

「組織の正義を求めるあまりに正しい心を失くしてしまった一部の局員達が犯してきた汚職による因果応報(マッチポンプ)ばかりじゃない。 自然発生した次元災害や凶悪な次元犯罪者から次元世界中の罪と力の無い人々を守ってきたという正当な実績だって確かにある。 【伝説の三提督】をはじめ、クロノ君やリンディさんやギンガ達【陸士108部隊】等といった次元世界の平和と光を確かに想って務めている善良な管理局員だって数多く居る。 管理局にあるのは闇の部分ばかりじゃない、真実正統な光の部分だって確かに存在しているんだ! 管理局(わたし達)が次元世界の守護者を気取るのは分不相応でおこがましい偽善なのかもしれないけれど、少なくても次元犯罪者に深く傷付けられた世界がやっと得られた平穏を、得られた直後に消耗していたところへ奇襲を仕掛ける、なんていう卑怯な方法でやって来るような正真正銘の逆賊からミッドチルダ(この世界)を守る為に、みんなで一丸となって戦う事は絶対に間違いなんかじゃない!!」

 

「な、なのはさぁん!」

 

「そうよ、その通りよ!」

 

「こんなふざけた人の言う事なんかに惑わされたりはしない!」

 

「少なくとも機動六課(わたし達)は正しいのかも判らない体裁の上の正義なんかの為に戦っているんじゃなくて、自分達の信じる光の未来を守る為に戦っているんです! 貴方みたいな自分のやっている悪事を屁理屈で正当化しようとする卑怯な人なんかに、わたし達は屈したりはしないです!」

 

「グキューーッ!」

 

管理局には旧い歪んだ正義の思想に負けず正しき人道の先に在る光を信じて組織に勤めている人間だって大勢いる、そう真っ直ぐ相手の悪意と向き合って堂々と言い断じたなのはを見て心の底から安堵した仲間達も彼女の言葉に便乗して消沈しかけていた士気を捗々しく天上高くまで引き上げた。

 

機動六課のエースはラコフの戯言などに屈してなどいなかった。 旧い歪んだ思想に囚われた昔の人間達が過去に作った闇は今の自分達が光で照らしてやり直せばいい……次元世界の英雄である彼女の不屈の意志と叙情的にどこまでも真っ直ぐな行動や言葉はいつだって皆の心の中の深い暗闇に希望の光を照らしてくれるのだ。

 

『だだだ、黙らっしゃい! 貴様達みたいな小娘共が何をどうほざこうと、管理局が不正をやっていたのは紛れも無い事★実ぅっ! よって我々ミッドナイト軍こそが……否、この吾輩ラコフ・ドンチェル様こそがッ! 数多の次元世界を統べるのに相応しいのだァァァアアーーーッ!!』

 

ラコフは自分の立場が悪くなってきたのを感じ、苦し紛れに論破を試みるが……。

 

「不正と言うのなら……貴方だって過去に相当な事を犯したでしょう? ねぇ──ラコフ・ドンチェル()()()()()()()()()()()()!」

 

『ひょっ!?』

 

現役の執務官(フェイト)が横から口を挟み、彼女が事前に調べて手に握っていたラコフの弱みを盛大に暴露し始めた事で、風向きは決定的に変えられたのだった。 それは反管理局軍ミッドナイトの司令官である彼は、驚く事に組織を創る以前はミッドチルダ政治界の重鎮的立場に就いていて、その時に彼が犯した言い逃れの出来ない不正案件の数々である。

 

「執務官隊の過去の容疑者検挙記録データによると、貴方は元々ミッドチルダの悪徳政治家で、6年前にこの首都クラナガンの代表知事に就任してから直ぐに都市知事選挙結果の不正操作や公金の横領などといった数々の政治犯罪が次々と明るみに出た結果、貴方は執務官隊の強制検挙が執り行われる直前に夜逃げを敢行し、その後に管理局から政治犯罪の逃亡犯として次元犯罪者認定されて広域指名手配され、就任日から一月経たずしてクラナガン知事を追い遣られた……と記載してありました」

 

『あばばばばばば!?』

 

「更には、貴方はその夜逃げをした後に次元犯罪者にされた事を逆恨みして、ミッドチルダ国際銀行から持ち逃げした莫大な横領金を資金源に《反管理局軍ミッドナイト》を組織し、管理局への反乱を起こした……などとも書かれていました」

 

『ぐぬぬぬぬーーーっ!!』

 

「極論、貴方は色々と見苦しい言い訳を並べているだけで、結局はただ自業自得に対する腹いせを自分の地位を追い遣った管理局へ不当な矛先を向ける事で払拭したかっただけの、ただの小悪党にしか過ぎn──ッ!!?」

 

フェイトが人差し指を相手にビシッと差し、お前の醜い本性は見破ったと突き付けようとしたその途端、痺れを切らしたラコフがそれ以上は言わせないと言わんばかりにスクルドの太い左腕を動かして彼女に殴り掛かってきた。 話している最中に相手から不意打ちが飛んできた為にフェイトは目を見開いて咄嗟に真横へと飛び込み転がり(ドッジロール)で緊急回避し、直後大木の幹のような赤紫の武者鎧籠手が直前までフェイトが立っていた床をパイルドライバーのように派手に穿ち貫いた。 その衝撃でまたまた母艦全体が強烈に揺らされ、乗艦している人と物の全てが激しく揺り動かされた。

 

「ちょっとアンタ! 自分の立場を悪くするような事を言われそうだからって、逆上して他人が話をしている最中に不意打ちして来ないでよっ!!」

 

『うるさいうるさいうるさーーーいっ! こうなりゃあ予定通り、実力行使で全員叩きのめしてくれる!!』

 

激震でその場から動かされまいとして甲板上の至る所に固定設置されている運搬用の自動ベルトコンベアーに必死の形相でしがみつきながらスバルが猛抗議してきたのを、ラコフは我儘な子供が癇癪を起こすように言って返し、完全に自分へ向けて怪しくなった雲行きを無理矢理にでも戻してやるとして、相手を力尽くで黙らせてやると吐き捨てる。 すると彼はスクルドの左肩後ろの機体武装収納部を展開して、その中に収納してある機体台サイズの機関砲剣を自動射出し、宙を舞って目の前に落下したそれをスクルドにキャッチさせて戦闘態勢に構えた。

 

更にはガラハッドの防衛装置が作動し、甲板の至る所の床が開いては下の格納庫から運搬昇降機で導力駆動式の自律機械兵器が無数に迫り上げられ、それ等がわらわらと陣形を組んで既に臨戦態勢のなのは達を完全包囲してきた。

 

『ドンッ、チェルルルルーーーッ! 管理局に吾輩の積年の恨みと、反乱軍を組織してからの六年間ず~~~っと【弱小】だの【臆病に隠れ回るのだけは上手いドブネズミ集団】だのと随分舐められてきた屈辱の数々を、管理局の英雄として祀り上げられて調子付いている生意気な貴様達をボッコボコのメッタメタにしてやる事で、今此処でキレイさっぱりと晴らしてくれるわ! あ、覚悟しろぉいっ!』

 

最早完全に化けの皮が剥がれたラコフは清々しいまでの開き直りを見せて、得物(デバイス)を手に身構えるなのは達に八つ当たり同然の私怨をたっぷりと乗せた敵意を向けてきている。 最初から隠せてはいなかった小悪党っぷりを前面に押し出して、徹底抗戦の構えを見せている。

 

「なのは、これ以上は……」

 

「うん……こうなったらもう話し合いで説得するのは無理みたい」

 

「それなら、もう遠慮はいらないですね!」

 

「JS事件をやっとの苦労で解決して、ようやく取り戻せた平穏を一ヶ月経たずに壊された挙句、今もこうして耳障りな小悪党の下らない逆恨みに付き合わされて、将来私が執務官になる為の貴重な勉強と鍛練の時間をよくも悉く潰してくれて……鬱憤溜まってんのはこっちだって同じなのよ!」

 

「次元世界の平和と僕達の未来は誰にも破壊させはしないぞ。 いくよ、キャロ!」

 

「うん、エリオ君! フリードも力を貸してっ!」

 

「ギュオォォーーーン!」

 

立場の優劣は今此処に決した。 義は機動六課に在り。 ならば最早、是非も無し!

 

「古代遺物管理部機動六課、最前線攻略部隊、総員六名。 これより“第二次ミッドチルダ大空襲事件”を引き起こした主犯である反管理局軍ミッドナイトの総軍司令官ラコフ・ドンチェル容疑者の身柄を拘束する為、機動六課・航空武装隊・地上部隊によるミッドナイト軍撃破の為の《合同電撃作戦》、最終段階(ファイナルフェーズ)を開始します。 スターズ・ライトニング分隊各員、迎撃展開。 各自連携して敵機械兵器群の包囲を破り、まずは拘束確保目標が操っている魔煌機兵スクルドを無力化するよ!」

 

「「「「「了解ッ!!」」」」」

 

隊長(なのは)戦闘開始(オープン・コンバット)の号令に他の五人が気合いを入れた返事をして、敵の包囲を破りに各自散開して攻撃を開始した。

 

 

 

 




……いったいどういう事だってばよ? 事前に作っておいたキャラ設定メモには書いてはいなかったのに、ラコフのセリフ回しが書いてて自然と超絶変に個性的になったんだけどぉぉぉおおーーーっ!!

と、とにかく次でいよいよリィンとツナが登場します。 それもこの後で更新するので、楽しみにしていてください。

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