ウマ娘 ルーザーズグロウ   作:七竹真

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第1R  敗北者の再出発(リ・スタート)

 『ウマ娘』

 

 それは別世界に存在する名馬の名と魂を受け継ぐ少女達

 

 彼女たちには耳があり、尾があり、超人的な脚がある

 

 時に数奇で、時に輝かしい運命を辿る、神秘的な存在

 

 この世界に生きる彼女たちの運命はまだ誰にも、いや、一人の少女がその運命を捻じ曲げることによって誰にもわからなくなった

 

 その少女の名は、『フジマサマーチ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1度目の人生、彼女は敗けた。地方の頂点(オグリキャップ)に、友に誓った夢(東海ダービー)に、そして中央(トゥウィンクルシリーズ)という憧れの舞台に彼女は敗けた。

 悔しかった。地元(カサマツ)では優秀なウマ娘として取り上げられ、誰にも敗けない自信があった。事実、彼女に会うまでは敗けたことなどなかった。しかし、敗れた。どう足掻いてもがいても勝てない相手だった。

 

 

 

 彼女は願った。もし可能なら、もう1度、もう1度だけでいい。オグリキャップに勝って頂の景色が見たい、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めるとそこは、実家だった。実家など何年も帰っていないはずなのに、なぜかそこにいた。

 

「これは、いったい…。」

 

 広い和室。彼女の自室だ。母は菊花賞を制したウマ娘ということもあり、カサマツでは広い家だった。とはいえ、母が亡くなった時には高知のトレセンにいたし、その時にこの家は手放したはずだった。

 

「なんで、ここに…。」

「なんでって、あなた寝ぼけているの?珍しいわね。」

「!母、さま?」

 

 隣を見ると母がいた。まだ若いころの母である。まるで小学校に通っていたころのような時の姿をした母親である。

 

「あなたがトレーニングに行ってないなんて珍しいわね。いつもはもっと早く起きて『努力こそ正義!』とか言って走ってくるのに」

「いや、そんな小学校のころみたいなことは今はしていないです、母さま。」

「何言ってるの?あなた小学生じゃない。」

「え!?」

 

 衝撃の一言。改めて自分の体を見直すとそこには小学生時代の体があった。

 

「え、えーーーーーーーっ!!」

 

 若返ってる、それも自分だけじゃなく、この世界が。逆行、というものだろうか。

 だがそれも僥倖である。また、あいつに勝つ好機(チャンス)が、あいつ(オグリキャップ)を超える時間ができた。ニ度と叶わぬ夢だと、二度と越えられぬ敵だと思った。しかしそれも前回の歴史での話。今回こそ勝たせてもらうぞ。

 

 

 

 母には、夢でレースに出てそして引退する夢を見てて現実と混同してしまったとだけ伝えておいた。納得はしてくれたので良しとしよう。

 さて、これからやるべきことだが、まずはあいつを越えるために必要なものを鍛えることである。先ず、私は逃げ、先行型の脚質を持っている。だからこそ絶対必要なのは圧倒的なスピード、そしてそれを保つための高いスタミナ、序盤に前をふさがれても抜け出すパワーといったフィジカル面だ。ただ、それを手に入れるためにも必要なものがある。

 1つ目は膝だ。それも私の何倍も柔らかいオグリキャップの持っていた柔らかい膝だ。あの膝は自身の体高を低くし、空気抵抗を減らすことができる。

 2つ目は逃げて差すためのタイミングをつかむことだ。私が中央から去った後にサイレンススズカが宝塚で見せた芸当。あれは逃げウマ娘なら絶対に必要だろう。3段階以上のギアを持っていないとできないからこそ走る速度を変える、速度を上げる前にどのくらい溜をするか、これも重要だ。彼女の走ったレースの記録など当然ないわけだから記憶で何とかするしかない。

 そして最後に強い根性だ。頂の景色を最後まで見続けて譲らないために抜かれそうになっても粘り続ける、スタミナが切れそうでも粘り続けることが根性が必須である。

 膝があればスピードを、タイミングを使う賢さがあればスタミナを、根性があれば末脚をより良いものにすることができる。

 何としても頑張らねば!

 

 

 

 

 

 

 まあ、そんなやることを書き出してから毎日やったのは、柔軟、長距離のランニング、短距離走、腕立て、腹筋、体幹トレーニング、etc…。もちろん学校にも行かないといけないので学校にも行く。

 その結果、カサマツトレセン学園に入るころには圧倒的なスピード、圧倒的柔軟性、長距離を走れるスタミナ、短距離もいける瞬発力、トップスピードへ持っていくギアの調節、多少阻まれても抜け出せるパワー、全て前回の歴史の自分どころか、オグリキャップすら超えたと思える仕上がりである。

 そしてもう一つ、前回と違うところはあるのだが、その話はまた後でするとしよう。早く学校へ行かねばならん!

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