ウマ娘を背中に乗せて走りたいだけの人生だった 作:観測者と語り部
この世界には変な生き物がいる。
おっきな体を持つくせに、どこか臆病で。だけど、人に慣れたりすると背中に乗せてくれることもある存在。
大昔には、この世界に現れた新種の生き物だとか、いまだ発見されていない未知の生物だとか騒がれたこともあったらしいけど。詳しい事なんて誰も知らないんだ。その生き物の骨とか、過去に生存していた形跡が余りないから、歴史学者の悩みの種だってマックイーンが言ってた。
だから、誰も知らない良く分からない生き物。
一部では三女神さまの使徒なんじゃないかって、神聖視されてたりもするけど。ボクとしてはあの間抜け顔を毎日見てるから、神聖視されてるって想像も付かないよ。
だって、いっつも砂場でごろごろしたり、気ままに走ったりしてるだけなんだもん。
だけどね。
そいつは、とっても疾く走れて、ボク達ウマ娘と同じくらいのスピードでターフを駆け抜けるのが得意なんだ。四本足で走るおっきな体に、ボク達ウマ娘と同じウマ耳と尻尾を持つ生き物。
人は彼らをウマ娘になぞらえて『馬』って呼んだんだよ。
◇ ◇ ◇
やあやあ、未来の三冠ウマ娘。トウカイテイオーさまだよ。
今のボクは。幼い頃に憧れたシンボリルドルフさん。今はカイチョーって呼んでるけど。少し前に無敗でクラシック三冠を制して、その後も数々の伝説を作り上げたすごい存在の背中を追いかけてる途中なんだ。
ボクはその人みたいになりたくて、幼い頃の約束を守るためにトレセン学園でレースに向けてのれんしゅーの日々を送っている。まあ、まだトゥインクルシリーズにも出てないし、こう、びびっと来るようなトレーナーと会えなくて保留中なんだけどね。
いつかは憧れの背中に届くかな~~なんて思いながら、毎日はちみつ濃いめ、固めの特製ドリンクを飲んで頑張っているのだ!
夢は無敗の三冠ウマ娘! なんてねっ。
で、そんなトレセン学園には不思議な生き物がいる事は、意外と知られてない。
いや、こーぜんの秘密だったかな? マックイーンがそんな事を言ってたような気がするけど、あんまり覚えてないや。
その『馬』っていう生き物はとっても臆病な性格だから、あまり騒がしくしないように配慮してるんだって。ボクたちウマ娘も耳が良すぎるから、騒音とか苦手なのは何となく分かるけど~~。
あんなに大きな体をしてるのに、とっても臆病だなんて信じられないよ。
だって、下手したらゴルシよりもおっきいんだよ?
そのくせ寂しがり屋で、ひとりにすると嘶いたりするから、ウマ娘や学園の関係者は結構、気を遣ったりしてる。ウマ娘の中で世話する人を決めたりとかね。今は白毛が特徴的な小さい女の子が世話してたりするんだよ。
それと、学園では専属のお世話係の他に、名誉餌やり係なんて役職があって、クラス代表で選ばれたボクがこうして人参をあげに行かないといけなかったりする。
それが、ちょっとだけ面倒だと思ったりしたこともあるんだ。
だって貴重なトレーニングの時間が減っちゃうもん。
そのくせ、ボクの事を見つけるとニヤァって感じで歯をむき出しにして笑うんだから。図々しい性格してるって思うよ。
この前だって、横からボクの人参を食べられたし!
見た目がゴールドシチーみたいにとっても綺麗だから、思わず見とれちゃったボクが悪いのかもしれないけどさ。いきなり、ひょいっ、ぱくっ、だよ? もう信じられない。
おまけにウマ娘のことが好きなのか、よく懐きに行くし。
でも、ウマ娘ならきっと誰だって良いに違いないって、ボクのカンは告げてる。だって、誰に対しても、ものすごく機嫌よさそうに尻尾を振るんだもん。なのに、ボクに対してはすぐに態度変えるんだから。
なんかね。お世話してくれてるウマ娘の子以外だと、特定の人に懐いてるみたいなんだよ。
ボクの他に、美浦寮のライスシャワーとか。期待の新人って言われてるミホノブルボンとか。あと同室のマヤとか、生徒会のナリタブライアンとか。他には黄金世代って言われてる娘たちもそう。
あとハッピーミークっていう、とっても珍しい白毛ウマ娘もそうなんだよ。
みんなして、ヘータローにすっごく気に入られてるみたい。
まあ、役得と言えば役得かもしれないね。
気に入った相手だと優先的に"背中に乗せてくれたりするから"
最初はお世話の仕方とか手探りで、文献もあまり少なかったから大変だったけど。それはゴールドシップが全部解決してくれた。
不思議だよね~~~。ゴルシってばなぜか知らないけれど、馬具のつけ方とか、この子専用の蹄鉄のつけ方とか知ってたし。この子も、ゴルシにお世話されてる時だけは凄く大人しくしてるし。
ゴルシは「宝塚記念の時は本当に迷惑かけちゃったからさ~~、こういう所で返しておきたいじゃん?」って言ってたけど、そもそもキミってば宝塚記念に走ったことあったっけかな~~。ボクの記憶に覚えがないんだけど?
「おお~い、、ヘータロー、いる~~?」
「ご飯の時間だぞ~~」
学園の片隅に建てられた厩舎って呼ばれる専用の施設にそいつは居るんだ。
そこが彼に与えられた部屋で、ウッドチップの上で寝っころがったりしてるらしい。それ、結構高いんだぞ~~?
"ヒヒン?"
ほら、ボクの声に反応して馬房から首だけ出してきた。
綺麗なたてがみの付いた長い首に、愛嬌があるって言われてる顔立ち。ゴールドシチ―とおんなじ尾花栗毛っていう特徴的な毛並みをしてる。たてがみと尻尾がススキみたいに綺麗なんだ。
それに、くりくりとしたおっきな瞳に、ぴんとたてられた長いウマ耳。額の白い星が特徴的。ボクたちウマ娘の中にも同じような星を持つ子が何人かいるよね。
だから、そういう所もそっくりだよ。
それに後ろで揺れるふさふさのウマ尻尾。
この子がヘータロー。お世話係の白毛の幼いウマ娘がそう呼んでるから、みんなしてそう呼んでる。
本当は保護された時に付けていた馬装からヘリオスタロウって名前があるらしいって分かってるんだけど、皆はあだ名の方が呼びやすいみたい。
なんかヘタレっぽい名前だよね。
だけど、『馬』っていう生き物にしては、すごく頭が良くて。
油断したりすると、すぐ脱走したりするんだ。
この前も厩舎の閂を綺麗に外して外に出てたらしいし、ほんとに油断ならないやつなんだよ?
あの時はホウバだ~~ってトレーナーさんたちが叫んで練習どころじゃなかったんだから。
もう大迷惑だよ。
なんで、ボクの模擬レースの前に限ってそういうことするかなぁ。
捕まえるボクの身にもなってよね。おかけで、その日以降はやらなくなったけど。
「ヘータロー、ほら。ごはんだぞ~~」
「ちゃんとありがたがって食べるように~~」
"ひひ~~ん♪"
バケツいっぱいの人参を手に取って差しだすと、嬉しそうに噛んであっという間に食べてしまった。
この子の餌は綺麗に皮が剥かれているブルジョワ仕様。いかにヘータローが大事にされていて、VIP待遇なのか良く分かる優遇っぷりだよね。
おやつにりんごやバナナが出たときなんか、すごく嬉しそうに興奮して、ぶるるって息が荒くなるし。
それでいてボクの指を噛まないように注意してる節があるから、憎めないところがあるというか。
イタズラ好きのくせに、そういう気遣いが出来るところが愛される理由なのかもしれない。
それを、証明する話というか。
この前、カイチョーと一緒にレースを見てたら、ヘータローも、お世話係の子と一緒に模擬レースの見学に来てたんだ。
そしたらレースで走ってた子の一人がコーナーでバランスを崩して転んじゃってさ。スピードも落としてたから大きな怪我とかは無かったんだけど。その子はすぐには立てなかった。
そしたら、それを見ていたヘータローがちょっと速いくらいの動きでその子に駆け寄って、心配そうに鼻をすり寄せたのを今でも覚えてる。
ちょうどボク達ウマ娘でいう
歩幅が大きいから、何とも言えないけど。
とにかく、その子に駆け寄って、大事を取って担架で運ばれていくまで、ずっと傍に寄り添ってたのは記憶に新しいよ。
そういう気遣いをさ。ちょっとでも未来の三冠ウマ娘で、テイオーなボクに向けてくれると嬉しいんだけどなぁ。
まったく。
あっ、このニンジンおいし~~♪
"ぶるるるっ"
「あっ、いや……これは、その、ね……?」
「ごめん、ヘータロー。もしかして怒った?」
実は、この時ちょっとだけヤバイって思った。ボクのウマ耳がしゅんってなったのが分かる。
食べ物の恨みは恐ろしいからね。この前だって減量中のマックイーンの前でおやつ食べてたら、すごく恨めしそうな顔で見られたし。
でも、ボクだって授業が終わったばっかりで、小腹が空いてたんだもん。
うううぅ~~~、ここに来る前に何か食べておけばよかった。
"ごぎゅるるるる~~"
あぅ、またお腹が鳴っちゃった。
こんなの恥ずかしくて、カイチョーに聞かせられないよ~~~……
でも、人のニンジンは盗み食いするなって格言があるくらいだし。でも、お腹が空いてるし……
ううぅ、絶対怒ったよね……?
そんな事を考えてたら。
"ひょいっ、ぱくっ"
"すーーっ"
ヘータローはボクが掲げたバケツから人参を咥えると器用に目の前に差しだしてきた。
もしかして食べろってこと?
「いいの?」
"こくん"
ボクの返事に、ヘータローはニンジンを咥えたまま小さく頷いた。
「ありがとう、ヘータロー!!」
その気遣いをすごく嬉しく思いながら、満面の笑顔を浮かべて人参を取ろうとしたら。
"ササッ"
「へっ……?」
急に顔を逸らされた。
「もうっ、何するのさ!?」
もしかしてそういう悪戯なのかって、ボクが思わず怒りを顕わにすると。ヘータローは人参をゆっくりと差しだしてくる。それを取ろうとして、またササッって感じで逸らされる。
いや、まさか、もしかして……
「ヘータロー? もしかして、キミが咥えたままの状態でニンジンを食べろっていうの?」
その言葉にヘータローがちょっとだけ笑ったような気がした。
ううっ、うううぅ~~~。
なんで、ボクがそんな恥ずかしい事をしなくちゃいけないのさ~~。
でも、また、ごぎゅるるるるってお腹が鳴ってるし、ちょっとだけ小腹を満たしたいし。
でもでも、無視して食べたらヘータローに嫌われるような気がするし、それはそれでイヤだし。
ていうか、この前ゴルシがマックイーンに「ポッ○ーゲームしようぜ~~」って絡んだ時の真似だよね。厩舎の前で、ヘータローを見に来たマックイーンと、ゴルシのやり取りを見てたんだ。
それで、真似したくなったってこと……?
うううぅ~~~~。
「もうっ、今日だけだからね?」
ボクの言葉にヘータローは心なしか、すごく嬉しそうに尻尾を揺らした。
未来の三冠ウマ娘であるボクに懐くなんて、ヘータローもお目が高いヤツなんて思いながら。内心ではちょっとだけ恥ずかしかったのも事実。
こんなところ誰かに見られたら一生の恥ならぬ、一生のウマ娘の恥だよ~~~。
「……テイオー、なにしてるの?」
「ふぇっ!!?」
そんな事を考えていたら、お世話係の子に、ばっちり見られたから。口止め料にはちみ~~を一緒に飲むことになっちゃった。
うううぅ~~~、ヘータローのばか~~~~っ!!!
体力が50回復した。
体力の最大値が4上がった。
スキルpt30入手。
『食いしん坊』のヒントレベルが1上がった。
『愛嬌』になった。
「はちみ~~、はちみ~~、はっちみ~~♪」
「はちみ~~をなめ~~ると~~♪」
"ヒヒヒン、ヒヒヒン、ヒッヒッヒ~~ン♪"
"ヒヒヒ~ン、ヒヒ~ン、ヒヒ~~ン♪"
「なぁに、それ。もしかしてボクのまねっこ?」
"ヒヒン♪"
その日の最後に、そんなやり取りがあったとか、無かったとか。
サポートカード。
祝福されし誘導馬。
全てのトレーニングの効果がアップ。
一緒にトレーニングすると、上昇量がアップ。
ファンの獲得数が大幅に上昇。
トレーニングでウマ娘が怪我しにくくなる。
寝不足、太り気味、偏頭痛にならなくなる。
トレーニングの体力低下が半分になる。
全てのヒントがランダムで発生するようになる。
ヒントレベル5。
目標レース以外のターンで、体力30以下になると強制的に休日。
ウマ娘が不調になるとお見舞いに来て、やる気が上昇。
騎乗イベントが発生すると、やる気アップ。ランダムでステータスが10上がる。
厩舎イベントが発生すると、体力が10回復。スキルpt30獲得。
併走イベントが発生すると、そのウマ娘の得意なスキルのヒントがあがる。
想いの継承時に以下の追加イベントが発生するようになる。
三女神の祝福
3つの内、どれかひとつがランダムで発生する。
・全ステータスALL100。
・すべての脚質適正と距離適性。芝とダート適正をAにする。既にAだった場合はSに上昇。
・ランダムで3つの金スキルをヒントレベル最大で閃く。ただし、たいていは鋼の意志が付く。
コンシューマ版の隠しキャラかな?