ウマ娘を背中に乗せて走りたいだけの人生だった   作:観測者と語り部

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この小説を見ている人たちにセイウンスカイが来ますように。


スペシャルウィークにうまシャンして貰いたいだけの人生だった

スペシャルウィークの朝は早い。

 

「んん~~~っ、と。今日もけっぱるべ~~」

 

 ベッドから起こした上半身を大きく伸ばすと、隣で寝ているスズカを起こさないように、行儀よく布団を畳んでジャージに着替え始めた。

 

 まだ、学園のウマ娘たちもまばらにしか起きていない。日が昇ったばかりの時間帯。

 

 牧場育ちのスペシャルウィークは、こうして誰よりも早起きすると、学園のグラウンドで駈足(かけあし)するのが日課になっていた。

 

 それは本格的なトレーニング前の準備運動でもあるし、運動の後にご飯をたくさん食べるのが美味しいからでもある。

 

 寮部屋のポットから温めておいた白湯を一杯飲み干すと、おやつのバナナを数本、口に放り込んで楽しい朝ランの準備は完了である。

 

「スズカさん、行ってきますね」

 

 そうして、寝ているスズカの寝顔を少しだけ見て、今日もぐっすり眠っていることを確認すると、静かに部屋を出た。

 

「んぅ、スペちゃん。ダメよ……そんなに食べたら後のレースが……」

 

 なお、ルームメイトであるスズカの可愛らしい寝言は聞かなかったことにした。自分ってそんなに食べてるかなぁって思うスペちゃんである。彼女はまだ、太り気味を経験したことがなかった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「えっほ、えっほ」

 

 スペシャルウィークは走るのが好きである。もしかしたら、三度の飯よりも走るのが大好きかもしれない。

 

 地元の故郷では、優しいお母ちゃんに見守られながら、日本一のウマ娘を目指すためにたくさんトレーニングを積んできた。学園に来てからも、そうした練習は欠かしていなかったし、他のウマ娘に会えたことでトレーニングの効果が以前よりも高まっているのを実感できる。

 

 何よりも学園に来てからは多くの出会いに恵まれており、スペはそのことを三女神さまに感謝していた。

 

 いつかのレースで見た同室のサイレンススズカはスペの憧れのルームメイトで、仲のいい友達である。憧れの他に、ちょっと気になる感情を抱くこともあるが、スペはそれが何なのか分かっていない。一緒にレースを走って、競い合えたら嬉しいくらいのものだ。

 

 それから、同じクラスのグラスワンダーとエルコンドルパサー。

 

 二人は初めて出来た友達で、分からないことや勉強を見てくれたりするので、いつも助かっている。グラスは静かに、エルは元気よく接してくれるので、人見知りしがちなスペシャルウィークでも話しやすい雰囲気を二人は作ってくれる。

 

 同じくセイウンスカイも、人見知りしていたスペシャルウィークに気さくに話しかけてくれた友達で、今では互いに愛称で呼び合う仲になれた。

 

 初めて学園を案内してくれたトウカイテイオーは、後からとてもすごいウマ娘なんだと知って、世界の広さを実感したりもした。実際に見た彼女の模擬レースは誰よりも速かったのを覚えている。

 

 それから何かと面倒見が良いキングヘイローも大好きだ。彼女にはいつも助けてもらってばかりで、スペとしては感謝の念でいっぱいである。一流を名乗る彼女はウマ娘としても、すごいライバルになりそうで、スペとしてはそういう意味でも気が抜けない友人だと思っている。

 

 誰もが一流を名乗るに相応しいウマ娘たち。

 

 だけど、今は親しい友人として、仲良く一緒に過ごしていきたいというのが、スペシャルウィークの本音でもあった。

 

(今度、みんなに牧場の絶品チーズをたくさん持って行ってあげようっと)

 

 そんな事を考えながら、スペは早朝のランニングを終えていた。

 

 今日も体調は絶好調な感じ。

 

 あとは日課の厩舎の様子見を終えれば、朝の日課は完了する。

 

(えへへっ、ヘータロー。待っててね!)

 

 既に頭の中は、『馬』と呼ばれる動物の事でいっぱいである。

 

 スペシャルウィークの故郷でもあまり見たことがない『馬』という生き物。

 

 大好きなお母ちゃんと一緒に、幼い頃にお世話をしたこともあって、彼女も『馬』の扱いには慣れている。だから、お世話係の話が上がったときに、真っ先に手を挙げたのは言うまでもない。

 

 ちょっぴり、不安だった学園生活に対して、故郷を思い出させるヘータロー()の世話が出来るのは、スペにとって何よりも良い気分転換になる。

 

 だから、彼女は朝のこの時間が、何よりも大好きだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「……ん、牧草運ぶの手伝って」

「牧草ですね。分かりました!」

 

 厩舎を訪れたスペシャルウィークがまずやることは、お世話係の小さなウマ娘の手伝いだ。

 

 ブランと呼ばれる白毛がとても綺麗な左耳飾りのウマ娘は、その小さな体格もあって重量物を運ぶのがちょっと苦手。

 

 だから、力持ちのウマ娘が何かと手伝ったりしている。報酬ははちみーだったり、いろいろだが、一番の報酬はやっぱり馬であるヘータローと触れ合えることだろう。

 

「ヘータロー。ちょっと待っててね」

"ヒヒ~~ン!"

 

 牧草のかたまりを肩に担いで、目の前を行ったり来たりするスペに、ヘータローは優しい嘶きで彼女を励ました。

 

 それが、いつもありがとねって言われてるような気がして、スペのウマ耳と尻尾が機嫌良さそうに揺れているのは内緒である。学園のグラウンドを整備してる人が積んで来てくれた牧草を運び終えると、スペは用意されている餌入れに、食べやすいよう牧草のかたまりを千切ってから入れてあげた。ちょっとだけ摘まみ食いしてしまったのは内緒である。ヘータローもしょうがないなぁって目でそれを見ていた。

 

 ヘータローの食事量は多い方である。彼は500kg近くにもなる馬体を維持する為に、それはもうたくさん食べるのだ。ウマ娘たちと日々、運動したり併走したりしてるから平均的な『馬』と比べても食べる量は"たくさん"である。

 

 オグリキャップ? 全盛期の『彼』と比べてはいけない……っ

 

 そして食べるのは主に青草や干し草。

 

 それに加えて栄養価が高く、消化のしやすい麦類や豆類なども合わせて与えられた特別メニューだ。

 

 その他にもニンジン、りんご、豆類、油かす、ニンニク、ハチミツ、角砂糖、塩が適度に加えられた。競走馬として非常にバランスの取れた食事量を与えられている。栄養士も真っ青なゴールドシップが考えてくれた『馬』にとっての健康的な食事である。

 

 特に甘味は大好物でバナナやりんごは彼にとってのごちそうなのだが滅多に与えられない。場合によっては糖尿病の原因にもなる。摂りすぎ注意なのだ。

 

 だから、目の前で見せびらかすように食べられると、さすがの温厚な彼もキレるらしい。実際にトウカイテイオーがはちみーでやらかして彼はキレた。目の前であげないよ~~されて、めっちゃキレた。それはもう盛大に嘶いて、威嚇して、厩舎内で後ろ蹴りしながら大きな音を出して抗議した。

 

 万が一、他の『馬』が入舎するかもと備えられていた馬房を分ける壁は大破し、大きな穴が空き、テイオーとヘータローは女帝に怒られたそうな。

 

 そのあといっぱい仲直りした。

 

「はい、お待たせ。たくさん食べて今日も元気に過ごすべさ」

"ヒン♪"

 

 必要な飼い葉と飼料を入れ終えたスペの前で、ヘータローは嬉しそうに餌入れに口を付け始めた。

 

 もしゃもしゃとご飯を食べては用意された水を飲むということを繰り返している。心なしか金色の尻尾も機嫌良さそうに揺れていた。

 

 さっきから前足を掻いて、ごはんをちょうだいって仕草をしていたし、待ちきれなかったのかもしれない。

 

 そんな様子をスペは対面に座って見ながら、ヘータローの事を見守っていた。

 

 スペから見ても彼は綺麗な馬だと思う。この世界で珍しい『馬』の中でも大抵は栗毛か鹿毛の子がほとんどで、ここまで見事な尾花栗毛はスペでも見たことはなかった。ススキのようなたてがみは触れるとサラサラで、他のウマ娘たちがとっても綺麗とはしゃぐのも無理はないと思うのだ。

 

 そんな感じで優しげにヘータローを見守るスペの様子は、ジャージ姿なのも相まってとても様になっていた。

 

「このにんじんとっても美味しいですね」

「……ん」

 

 同じく仕事を終えたお世話係のブランちゃんと一緒に、野菜スティックを食べていなければ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 さて、そんな感じでお世話されたヘータローであるが、彼にとって大好きな時間というものも存在する。

 

「今日は朝の調教の予定もないそうなので、このままシャンプーしちゃいましょう」

"ヒ~~~ンンン!!"

 

 スペがそう告げると彼は大きく嘶いて、嬉しそうに首を振った。それはもう、ぶんぶんである。

 

 スペが告げたシャンプーならぬウマシャンの時間。

 

 ヘータローは水浴びが好きである。正確にはミストシャワーでぶわ~~ってされた霧状の水を浴びるのが大好きである。

 

 それはもうはしゃぐのだ。うましゃんしている時は大人しいのだが、夏場に専用の芝トラックで霧状に放水されたりすると、彼ははしゃぎながら前足を掻き上げて、それはもう嬉しそうに走り回る。すごく、うまぴょいしてしまう。

 

 そんな彼の様子を動画にしたものがウマチューブに投稿されたりしているが、既に下手な動画よりも再生回数を稼いでいたりする。ヘータローが走り出した瞬間にうまぴょい伝説のメロディーが流れるから仕方がない。そして休んだり歩き出したりするとメロディが止まる。そして激しく駆け回りだしたりするとメロディがry

 

 なお、投稿者はゴールドシップだったりするが、それは割愛する。

 

 

 

 厩舎の外にある洗い場に連れ出すと、スペは慣れた手つきでヘータローの馬具から伸びる革紐を繋いだ。

 

 洗い場の固定具と、革紐から伸びる金具は繋がるようにできており、そこに固定することで驚いた『馬』が逃げ出したりしないようにする為である。いくらウマ娘の身体能力が優れているといっても、500キロ近い馬の馬体が突っ込んで来たらひとたまりもない。全国のトレーナーさんなら言わずもながである。

 

 ヘータローはとても大人しく温厚な性格なので大丈夫だと思うが、万が一に備えるのは必要なことである。

 

 スペは彼が放馬しないようにとても気を遣っていた。

 

「それじゃあ、まずはシャンプーを用意してと。ちょっと待ってて下さいね」

"ブルルッ?"

 

 シャンプーまだ~~とでも言いたそうに、スペシャルウィークの方に首を回して、彼女の様子をじっとみているヘータローに、スペはまだですよ~~って笑い返した。

 

 

 人間がそうであるように『馬』にもシャンプーというものが存在する。

 

 彼らにとって人間用のシャンプーは刺激というか、香りが強すぎるのであまり好みではない。だから、そういった人工的な香料が使われていない物を使う。

 

 『馬』にとって求められる成分も違っており、髪を綺麗にするというよりも、地肌を綺麗にするという側面が強い。だから、シャンプーというよりはボディソープに近いだろう。

 

 ただし、ヘータローのたてがみに関しては、ものすご~く気を遣われているので、そこだけは特別かもしれない。ある意味で髪と同じように念入りにケアがされている。それから彼のウマ尻尾も対象だ。

 

 夏になると水着を着たウマ娘と一緒に尻尾を洗っているらしいのだが、真相は定かではない。大抵のウマ娘たちは夏の合宿で遠征に出ているためである。噂では水着姿のウマ娘と一緒に映るヘータローの写真があって、それが高値で取引されているとか何とか。

 

 実はそれが水着に着替えた理事長とたづなさんの姿だったりするかもしれない、とかいろいろあるが、やっぱり真相は定かではない。

 

 真実はいつもヘータローだけが知っている。ただし、彼は答えてくれない。

 

"ヒヒン?"

 

 馬だけに。

 

 

「それじゃあ洗いますね~~」

"ヒヒ~ン♪"

 

 まずは、お湯の温度を確かめると、スペは人肌よりもあったかいお湯を、ヘータローに優しくぶっかけた。馬に慣れさせるために、まずはホースの先端のトリガーを引いて霧状に噴射する。

 

 お湯を浴びせていると、ヘータローは気持ちよさそうに目を細めている。耳の動きも心なしか機嫌良さそうだ。

 

 それが終わるとホースの先端を放水モードに回して、少し強い感じのお湯を噴射する。馬にとっては、ちょうどマッサージされるくらいの刺激の強さ。脚の先から、ヘータローの馬体にと、温かいお湯で濡らされているヘータローは、それはもうご機嫌である。何回も嘶いた。気分は天にも昇るほどのうまだっちだ。

 

 ヘータローのたてがみと尻尾もうましゃんされて、わしゃわしゃと丁寧にシャンプーされた。気分は美容師の綺麗なお姉さんにシャンプーされる感じかもしれない。彼の綺麗なたてがみも、すっかり泡に隠されて、それからミストシャワーと洗い流されてゆく。

 

「じゃあ、次は身体を擦りますね。痛かったら言ってください」

"ふっひ~ん"

 

 それからスペが行うのはゴムブラシを使ったごしごしだ。

 

 馬の毛並みを洗うという事で、人間の髪と同じように洗うと思うかもしれないが、馬の毛並みの向こうは分厚い皮膚である。

 

 人間と同じようにごしごしと洗わなければならない。

 

 地肌の汚れを落とし、ウマ娘よりも何倍も大きな馬体をごしごしと丁寧に洗われ、後ろ足の股の間は素手で丁寧に拭いてもらった。馬は見えないところに立たれることを嫌うし、真後ろにいる人間を蹴ったりすることもあるが、ヘータローはとても大人しくしてくれるので、スペとしてもやり易い。

 

 ヘータローは優しく尻尾を持ち上げられて、ミストシャワーでデリケートなところも洗ってもらった。お尻を洗えない馬の尻はいつも綺麗にされているし、彼のうまだっちは今日も元気である。ただし、お相手の牝馬はどこにもいない。

 

 なお、馬体も体格も優れているヘリオスタロウは当て馬の筆頭である。彼が近づくと世の牝馬たちはその気になるらしい。ひと目ぼれならぬ馬惚れである。そして、その後に種付けさせて貰えないまでがセット。

 

 彼は血統不明のサラ種なので仕方がない。

 

"ヒヒン?"

 

 なお、本人は気にしなかった模様。

 

 何なら人間の調教師のお姉さんの方に懐いてたりもする。

 

 あまりの聞き分けの良さに本当に馬なのか? 実は人間じゃないのかと噂されたりもしたが、やっぱり真相は定かではない。

 

「それじゃあ、今度は水きりです。大丈夫。怖くないですから」

 

 

 臆病な生き物である馬が怖がったりしないように、時折、馬体を撫でたり声を掛けたりしながら、スペは作業を続けていく。

 

 今度は水きりだ。

 

 汗こきと呼ばれる靴ベラの形をしたものや、ワイパーの形をした道具を使って、まるで汗を拭うかのように馬体に付いた水をきっていくのである。

 

 スペは、ヘータローの首から順番に、前から後ろ。上から下に丁寧に水を切っていくと。先ほど、念入りに洗った尻尾の近くや前足の付け根なんかも丁寧に拭いていく。馬は自分で身体を拭けないので、水気が残らないように注意しながら丁寧に、丁寧に拭っていった。

 

 さすが牧場育ちのウマ娘というべきか、とても慣れた手つきである。レースが終わったら、お母ちゃんと一緒に酪農するのもいいかもしれない。

 

 その頃にはスペの隣に素敵な人がいたりするなんて、と思ったりもしたが、そこはご愛嬌だ。

 

(それは、さすがに無いかな~~? あははっ)

 

 でも、ちょっとくらい素敵な人に会ってみたい気もするスペであった。

 

 亡くなった、もう一人のお母ちゃんはどんな人と出会って、どんな素敵な恋をしたのだろうか。そういうことが気になってしまうのも、スペシャルウィークというウマ娘も年頃のひとりの女の子だからかもしれない。

 

 今度、故郷で待ってるお母ちゃんに聞いてみようと思うのであった。

 

「あっ、いけない。タオル持ってくるの忘れた!?」

 

 ごめん。ヘータロー。ちょっと待っててね~~なんて言いながら、スペは慌てて厩舎の方に戻っていった。

 

 後に残るのは水も滴るイケメンならぬ、イケウマが一頭だけ。

 

 このあとはタオルで拭いた後に、ドライヤーでたてがみを乾かしたりするのだが、まだ水を切ったばかりなのでヘータローのたてがみは濡れたままだ。

 

 たてがみからポタリと滴れる水が、彼の大きくてくりくりした瞳や、まつげの上を流れていく。

 

 ぶるるっ、ぶるると、タオルまだかな~~なんて感じで首を上げ下げするヘリオスタロウ。

 

(あぅ、ライスなんかが来ても迷惑なだけだよね……)

"ふひ~ん?"

 

 そこに現れたウマ娘の気配と、気後れしながらも近づいてくる音に反応したヘータローはゆっくりと顔を上げる。

 

 厩舎の陰から現れたのは、スペと同じくジャージ姿のライスシャワーで、その頭にはトレードマークの青いバラ飾りが付いた帽子をかぶっていた。

 

 目隠れ少女ならぬ、目隠れウマ娘である。

 

「ひゃっ、こっち、見てる。えっと……」

 

 恐る恐るといった風に、おっかなびっくり近寄ってくるライスシャワー。

 

 彼女の姿や匂いから、いつか背中に乗せたこともあるな~~なんて事を思い出したヘータローは、上げていた警戒心を下げた。

 

 そしてゆっくりと、手を伸ばしてきたライスの小さな手に、その鼻先を押し付けると。

 

 彼は自分のウマ鼻をすぴすぴさせる。

 

「わあぁぁぁ~~」

 

 ライスは思わず感嘆といったふうに声を漏らした。触れてみて分かるが、鼻先から伝わる体温は人肌よりも少しだけ温かい。

 

 それでいて、手に掛かる息や鼻先の動きが何だかくすぐったかった。

 

 こちらをじっと見つめてくれる瞳も何だか優しくて、まるで見守られているような気さえしてくる。

 

(濡れた金色のたてがみがとっても綺麗。まるで、絵本に出てきた王子様を導いてくれる白馬みたい)

 

 首筋を撫でて、ちょっとだけヘータローの長い首を抱きしめてみると、力強さが伝わってくるような気がした。

 

 この子、首が強いのかな~~なんて思いながら、スペのいない間に『馬』との触れ合いを堪能するライスシャワー。

 

 その馬の顔を見つめていると、とってもドキドキしてくる気さえする。濡れている姿が、また一段と彼の美しさを際立てているようで。朝日に照らされた、その姿はまるで一枚の絵画から抜け出してきた芸術のような気さえもして。

 

「すごく綺麗でかっこいいな~~」

 

 だけど、端的に言えば、ライスの目はちょっと曇っているかもしれなかった。

 

 ヘータロの馬体は朝日に輝いているせいで、ちょっとイケメン補正が増している。

 

 トウショウファルコと並ぶ美しい馬と伊達に呼ばれてはいないので仕方ないのかもしれないが。

 

 悪い男ならぬ悪い馬に引っ掛かりそうな感じだが、ヘータローとしては別そういうつもりはない。

 

 むしろ、少し心配しているかもしれなかった。

 

 この子の雰囲気が、美浦トレセンで一緒に併走したこともある牡馬とよく似た雰囲気だったからである。

 

 怪我しない~~? だいじょうぶ~~? という感じの気分である。

 

 彼の在りし日の記憶がよみがえる。

 

 大きな馬体を持つ尾花栗毛のヘリオスタロウ。牝馬で白毛馬なハッピーブラン。他と比べると少し小柄な気がする黒鹿毛のライスシャワー。

 

 いつも仲良し三頭は、美浦トレセンではずっと一緒だったから。

 

 こうして、また会えるのはちょっと嬉しかったりする。

 

 なお、そんな彼女は、厩舎から戻ってきたスペシャルウィークにライスさんって言われて、ひゃいっ、その、ごめんなさい~~~と逃げ出してしまった模様。

 

 そのあと、スペにタオルでいっぱい拭いてもらった。

 

 めっちゃ嬉しかったので、いっぱいすりすりした。

 

 そんな日の朝の、トレセン学園の様子。

 

 今日もウマ娘たちは元気に過ごしている。

 

 

 




スペシャルウィーク。
実は幼い頃にヘータローに会ったことがある。

ひとつはウマ娘時代。もうひとつは競走馬としてデビューする前である。

競走馬時代は、他の馬に慣れさせるため、気性の荒い乳母の牝馬に代わってスペの様子を見ていた。この時にだいぶ馬慣れしたので、在りし日のグラスワンダーを警戒したり、栗毛の馬に対して嘶くような真似はしなくなった。でも、やっぱり種付は嫌いらしい。

晩年は黄金世代の五頭と一緒に、年老いたヘータローと違う世界の夢を見ている。偶に連れ出されては、実際に会うこともあるらしい。


ライスシャワー
何だかんだでヘータローとエンカウントしては、ハルウララと一緒に乗馬したり、散歩したりしている。

この世界の絵本では偶に『馬』を題材にすることもあるので、珍しい彼らの内の一頭であるヘータローが気になる様子。

あの日、ヘリオスタロウの背中の上で、夕日に照らされたターフの上を走ったことが忘れられない。

偶にヘータローの事を間違ってお兄様と呼ぶのは在りし日の記憶があるからか。

ちなみに、トレーナーの事はお兄さまか、お姉さまと呼ぶ。まだ、どちらなのか確定していない。

お兄様なのは、受け継いだ魂の影響かもしれない。その世界はヘリオスタロウがまじもんの兄代わりだったからである。彼の義妹のハッピーブランと共に仲良く美浦トレセンで調教を受けていた。

特にハッピーブランとの仲の良さは有名で、交配は別として、競走馬としての役目を終えたら一緒に余生を過ごさせてあげたいと思うくらいの感じであり、周囲は微笑ましそうにその様子を見守っていたのだが。

その先は割愛。

ウマ娘の彼女の最近の日課は、ヘータローと一緒に仲良くリンゴを食べることらしい。

ハルウララが元気よく会いに行って、ライスシャワーが付いて行って、ウララを探しに来たキングが仕方がなく付き合う様子が確認されている。


ヘータロー
誘導馬時代のなごりで、ウマ娘たち見守るのが趣味。
最近、鷹のマンボが遊びに来ているらしい。

鞍を付けたまま歩いていると、背中の鞍にマンボが止まり、どこからか「ケェエエエっ」と怪鳥みたいな鳴き声が聞こえてくるとか何とか。怪鳥(会長)だけに。

他にはグラスワンダーと一緒に芝の上でお茶会を開いていたりする。そして、だいたいセイウンスカイの背もたれ兼お昼寝用の枕である。

隠し要素としてミホノブルボンのサポートにヘータローを加えると、休日に必ずもふもふしだすので、体力回復70とやる気アップが必ず発動する。上手くいけば継承時に三女神の加護で、コンセが貰える。たづなさんは泣いていい。

あげませんっ、されたのでご機嫌取りをかねて書いた。
かっ、書けば出るって言うから(震え声)

実際はセイウンスカイの実装でテンション爆上げになっただけである。

ちょっとコンビニ行ってくる。
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