ウマ娘を背中に乗せて走りたいだけの人生だった 作:観測者と語り部
……私です。
だって、タイシン路線でぶっ刺さったんだもん……(100連)
メイショウドドウダ~~(天井)
エイシンフラッシュだと……(石はあげませんっ!!)
ふと、思うことがある。
アタシが見たい景色っていうのは何なんだろうって。
今のマネジにスカウトされて、モデルとしてずっと言われるままにやってきた。
表情とかポーズとか頭の中で計算して、カメラマンやスタッフたちと声を交わしながら"自分"の映る姿を想像する。そうして、綺麗なお人形としての自分を作り上げて、言われるままにモデルとしての仕事をやってきた。
だけど……ある時、怖くなった。
◇ ◇ ◇
アタシは、自分で言うのも何だけど、意外と素行が悪い。怒ると手が付けられないってよく言われる。それくらいの激情家。いちど火が付いたら止まらなくなる自信がある。
だけど、有名な雑誌に映る自分とか、ビルの広告に展示された自分の姿とか、誰からもクールで綺麗って言われるくらいのすまし顔してて。アタシの内面とか性格とか全然見えないくらい綺麗に着飾ってて。
まるで、お人形みたいだなって思ったら、自分が自分じゃなくなるような気がして……怖くなった。とっても恐ろしかったんだ。
本当の"自分"はどこに居るんだろうって。
それからはがむしゃらに走った。走って、走って、訳も分からず走り続けて。綺麗なお洋服とか、靴とかダメになるくらい走ってさ。
何度も転んで全身を泥だらけにしながら、走って、叫んで、気が付いたら自分でも知らない場所に来ていたんだ。
遠くで綺麗な夕日が浮かんでて、目の前にあるどこにでもありそうな河川がキラキラ輝いててさ。
それで、"自分"はここに居るんだ。ちゃんとここに居るんだって自覚したら止まらなくなってた。
綺麗で美しいゴールドシチ―としてのイメージを護りたいマネジの反対を押し切って、トレセン学園に入学して。ウマ娘の誰もが憧れる夢の舞台で、アタシも皆と同じように輝きたいって思ったんだ。
絶対に一着を取って、ターフの上で頂点に立って、誰もが、あれがゴールドシチーなんだって認めるような自分になる。
だけど、そんな甘い考えでトレセン学園でやっていけるほど、レースの世界は優しくない。
≪ゴールドシチーは五着。最後に上がり切れず、遅れてゴールインする形となりました≫
「ハァ……ハァ、ハァ、くっそっ……」
遠くから聞こえる実況アナウンスの声。
好き勝手にアタシを寸評するトレーナー達の声。
走りで劣っている部分を指摘する声はまだいい。けれど、アタシの全力の走りを見て、綺麗で優雅だとか。尾花栗毛が美しいだとか、走りよりも見た目の優雅さばかりに目を奪われている連中はなんなんだ。
そんな事よりもアタシを見てよ! アタシの走りをちゃんと見ろっ!!
「なんだよ……くっそ、ゴールが遠い」
自分なりに限界を振り絞った全力疾走。脚に手をついて息を整える無様でみっともない姿。
これが今のアタシだ。
振り向いて、自分が走り抜いたターフの向こうに手を伸ばす。
目に見えるゴール板との距離が、アタシの夢の距離だと現実を教えて来るようで嫌になりそうだった。
でも、決して諦めたくなんてないんだ。
◇ ◇ ◇
アタシの走りが"普通"と比べると劣ってるっていうのは自覚してる。
もちろん、トレセン学園に入学できたんだからそれなりの才能はあると思う。でも、レースを真剣に、それこそ何もかもを投げ捨てて努力を積み重ねてる"一流"と比べると、アタシは何もかもが劣る。
なんたって、モデルの仕事とレース選手としての二足草鞋だ。どうしたって、他の選手よりも成長が遅れる。
でも、今のマネジに拾ってもらった恩もあるから、モデルの仕事を全部投げ捨ててレースに専念する訳にもいかない。やるといったら全部やるのが、ゴールドシチーとしてのアタシの矜持だ。
散々無理言って、我が儘を通してきてんだ。これくらいでへこたれてどうするんだって感じだった。
「見て、ゴールドシチーさんだ」
「相変わらず綺麗だよね~~」
おまけにどいつも、こいつもモデルとしてのアタシを見てくる。
別にそれはいい。
誰もがアタシを"綺麗なゴールドシチー"として見るのは仕方がないし、多くのモデルの仕事を経験したから、そういうのは慣れてる。容姿を褒められるのは嫌いじゃないし、綺麗になるためのアドバイスとかコツを聞かれたら答えるくらいはしても構わない。
でもさ。学園にいる時くらいは、ただのゴールドシチーとして過ごしたいって思う時もあるじゃない。
今は、そういう気分だから。
ひとりになりたいんだ。
「シチーさんっ、あのっ」
「悪いけど今は忙しいの。また今度にしてくれる?」
「あっ、そうですよね……」
だから、他のウマ娘に声を掛けられても、逃げるようにしてその場を去る事しかできなかった。
今は無性に走りたい気分なんだ。この胸のうちで燃え上がる激情を何とかしないと、今にも叫びだしそうだった。
この後も仕事が控えている以上、時間は無駄に出来ない。
「やっぱりトップモデルって忙しいんだろうなぁ」
「すごいよね。モデルと走る練習どっちもこなしてるの」
「この前見た時の走りも、優雅で綺麗だったな~~」
「えっ、見たことあるの?」
「うん、ひとりで走ってる所をこっそりと。邪魔しちゃ悪いと思ったから」
「いいなぁ~~」
誰もがアタシの走りに"綺麗なゴールドシチ―"を求めてくる。
それがイヤで、イヤで、堪らなかった。
だから……ウマ娘としてのアタシの敵は、モデルとしてのアタシ自身だった。
◇ ◇ ◇
ふと、思う事がある。
ウマ娘が先頭を駆け抜けた時に見える景色は何なんだろうって。
トレセン学園にも、走っている最中にそういう景色を見た子が何人かいるらしい。
それは果てしなく広がるターフの向こう側だったり、夜空に広がる星空から光り輝く流星が降りそそぐ景色だったりと、人によっていろいろらしい。
なら、アタシにとっては、あの日見た綺麗な夕日がそうなんだろうか。
がむしゃらに走って、泥に塗れてみっともない姿を晒していた。そんな、アタシよりもずっと綺麗で、キラキラと輝いてたあの日の夕日。
「はあぁぁっ!!」
アタシは今日もターフの上を駆け抜ける。
最近、目立つのもうんざりしてきたから、誰もいないようなちょうどいいコースを見つけた。学園の中央にある運動場とは別の、学園の郊外にあるぽつんとした広い場所。芝いっぱいの絶好の練習場みたいなところ。
綺麗に整備されたそのコースは、あまり使われていないのか妙にキレイな感じがした。
正直、学園に来たばっかりのアタシには、なんで誰もいないのかが分からなかった。
クラスの噂話とかをちゃんと聞いていれば、そこが何処なのか分かったかもしれない。
でも、"ゴールドシチー"としてのアタシを見ると、誰もがもてはやすし。ウマ耳に聞こえてくる噂が自然とアタシの事ばかりになるから。そこが誰の為の場所なのか全然知らなかったんだ。
そんな事も関係なく、今のアタシはずっとターフの上を走り続けていた。
(風が気持ち良いな。このまま何も考えずに走っていたい)
だから、何も考えずに全力疾走してた。
風を受けて、足を風に乗せて、まるで自分自身が風になったみたいに速く、速く、誰よりも速く駆け抜ける。
アタシを見ている連中が言う"綺麗なブロンド"を風にたなびかせて。アタシ自身、自分がどんな風に見えているのか、自分で直に見ることが出来ないアタシの走りで。何週も何週もしようって、何も考えずに走ろうって足を動かし続けて。
そうして。
ふいに、目の前で力強く、優雅に駈ける同じ"綺麗な尾花栗毛"を見た。
コースの外側で、準備運動みたいに走っている。それから、不思議そうにアタシを見たような気がした。
まるで、"なんでここにいるの~~?"みたいな間抜けな表情で、走りながら、首を傾げるなんて器用な真似をしてるんだ。
アタシは思わず、自分の足を止める。
向こうも足が止まった。
それから四つの脚を、ステップでも踏むみたいに。まるで観客にアピールするかのように"テイオーみたいな"動きをすると。その『馬』は再びコースの外側を駆け抜けていった。
「キレイ」
自然と、そう呟いてしまうくらい、その生き物は綺麗だった。
走る時に金色のたてがみが、風にたなびいてた。アタシの髪とおんなじように風に揺れて、まるでそれが何処までも広がる金色の稲穂のようで。好きで集めてた夕日の写真に写るどこかのライ麦畑ってみたいって。そんな風に言ったら失礼なのかな。
でも、そんな感じで。
おまけに四本の脚が交互に動いて、そんな風に走る姿は何処か惹かれるものがあった。
アタシたちウマ娘とおんなじウマ尻尾も、ウマ娘が走ってるときと同じような動きをして。風に揺れているんだ。
尻尾も、たてがみと同じ綺麗な金色で、ススキみたいにさらさらと指の中で梳けてしまいそうだった。
そいつが後で聞くところの『馬』っていう生き物なんだって、この時、アタシは初めて知ったんだ。
それがアタシとアイツの出会い。
同じように綺麗な尾花栗毛を持つもの同士。誰かに綺麗っていつも言われるウマ娘と、誰が見ても綺麗だって呟いてる『馬』との出会い。
だけど、向こうの方がずっと優雅で、ずっと力強くて、誰よりも速く走れる存在なんだって、この時のアタシは知りもしなかったんだ。
だって、今のアタシはバカみたいに、そいつに見とれてて、思わず白い頬が紅潮してるくらい興奮してるって自分でも気付いてたもん。
「……だれ?」
「うえ!? えっと、アタシは」
「……ここタロ兄の練習場。専用コース。いちおう関係者以外立ち入り禁止ってなってる」
「うぇええええっ!?」
あと、ウマ娘がどうして郊外の空いたコースに近寄らないのかも初めて知った。
お世話係らしい小さな白毛ウマ娘にじっと見つめられて、狼狽えてしまうアタシ。そんなアタシを走り終わったその『馬』もじっと見つめていて。
この時のアタシは違う意味で顔が赤かったと思う。超恥ずかしい。
◇ ◇ ◇
それからは時間が空いたときに、なんどかヘータローに会いに行くようになった。
目当ては、もちろんヘータローの背中に乗る事だ。
ヘータローの背中に乗って、どこまでも広がってそうな芝の上を走り回ると超気持良いんだよ。何もかも忘れて。どこまでも駆け抜けていけるんじゃないかって、そんな気分にさせてくれる。とにかくすごいんだ。
それに乗ってる時と、自分で走ってる時の風の感じ方も全然違くて、ウマ娘のアタシでも、必死に姿勢を整えるので精一杯だ。
まあ、そこが楽しいんだけど。両手で手綱を操るのも、鐙に足を乗せて踏ん張るのも楽しいじゃん。
何だか"在りし日の記憶が思い出されるような"そんな感じがする。なんてね。
「あははっ、ヘータローはすごいね。ほら、もっと早く走ろうよ!!」
"ひひ~~ん♪"
アタシの声を受けて、ヘータローが機嫌良さそうに首を振る。ターフを駆け抜ける速度が一段と上がった。
もちろん、ヘータローの全力なんかじゃない。世話係の小さな白いウマ娘には、あまり速度を出さないように言われているし、付き合い始めて知ったこの子の頭の良さからも、ヘータローがあまり走る速度を上げちゃいけないって自分で理解してるのも知ってる。
なにせ、背中に人を乗せてない時のこの子の走りはとんでもなく速くて、力強いんだ。最終コーナーでロングスパートを掛けていって、最終直線でさらにとんでもない加速を見せる走り。
普通に乗ってたら急な加速に付いて行けなくて、不安定な騎乗を強いられる屋根がぶっ飛ぶんじゃないかって、ユキノとかと一緒に唖然としてたっけ。
とにかくすごいんだ。
そんでもって、あれに付いて行けるテイオー。もちろん併走したんじゃなくて、乗ってた時のほうの話ね。
もう、完璧に乗りこなしてた。いったいどんなバランス感覚と体幹してんのってくらい安定してて。『馬』とウマ娘が一体になってるんじゃないかってくらい見事な走りだった。
逃げも、先行も、差しも、追込みも自由自在。
一緒に走るのは万が一があったら危ないっていうから、競い合ったことはないんだけどさ。
でも、ヘータローがアタシらとおんなじウマ娘として生まれていたら、いったいどんな記録を打ち立てたのかなって思うくらいには凄い走りを見せられたんだ。
もう、嫉妬したとか、そんな思いは全然なかった。素直にすごいって。そう思った。
アタシも、いつかは誰よりも強くなって、誰よりも速くターフを駆け抜けるそんなウマ娘に絶対になってみせるって。
そう思うくらいには。
だけど、今はこうして、ヘータローと一緒になって走っているのが気持良いから。もう少しだけこのままで。
「それじゃあ、ヘータロー。ちょっとだけラストスパートな」
"ふっひ~~んっ!!"
金色のたてがみがたなびく背中にしがみつくように、姿勢を低くして、そのたてがみに顔を埋めるようにして。
アタシはヘータローの走りに合わせて、教わった通りに姿勢を整えていく。"馬"が走るうえで、本来は必要のないリュックが邪魔にならないいように。
蹄が何度も力強くターフの上を踏みつける音がする。激しく息を吸うヘータローの息遣いが聞こえる。触れ合う肌と肌を通して伝わる躍動感の熱。触れ合う肌が熱い。熱くなる。ヘリオステイローとも呼ばれた"馬"の生命の鼓動を間近で感じる。
そうして力強く駆け抜けて、アタシの髪や肌で吹き荒ぶ風を感じて、それからゆっくりと、ゆっくりと蹄の駆ける音が小さく、ゆったりとしていく。そんな終わりの合図を聞いて。
アタシはようやく顔を上げることが出来た。
「ぷはあ、ヘータローの走り、マジやばだわ。ゴーグルしてないと顔もあげらんないし」
厩舎でいっつも呑気そうにしているヘータローだけどさ。
こうして何度か運動させてあげないと、いろいろと悪いものが溜まったりしちゃうらしくて。定期的に運動をさせてあげるんだって。
そういう時に、併走のお供を頼まれたウマ娘が、こうしてヘータローの走りに付き合ったりしてるってワケだ。
まあ、アタシらウマ娘にとっては、気分転換を兼ねたご褒美みたいなもんなのかな。走ったあと、すっげえ気持ちがいいんだ。絶好調ってやつ?
いつもはトウカイテイオーがほとんどその役目をこなしてるらしいんだけど。今日はたまたまアタシにお鉢が回ってきた。だから、今日は忙しい合間に時間作って、乗らせてもらってる
「……ん、シチーさん。お疲れ様。このあとは……」
「はいはい、分かってる。ヘータローのたてがみを整えてあげればいいんだろ? お安い御用だよ」
「ん。タロ兄のこと。よろしくお願いします」
それで、これ。
ヘータローのたてがみを整える仕事。
驚いたことに『馬』もたてがみを切ったり、整えたりするらしい。だから、美容師でスタイリストの経験もあるアタシにお願いされることになって。ついでに、まあ、騎乗の優先権みたいなのを貰えたりしてる。いわゆるギブアンドテイクってやつ?
この前、ヘータローの写真を見せられた時は、すんごく可笑しくて笑っちゃったっけ。
なにせ、金髪リーゼントとか。三つ編みリボンいっぱいとか。いろいろとアレンジされてんだもん。
今日は毛先を整えたりするだけだけど、時間があったらいろんな髪型にしてあげたいな。もちろん、ヘータローが許してくれればだけど。
「それじゃあ、ヘータロー。アイシングして、水飲んで、少しだけゆっくりしたら髪切るよ。いい子だから大人しくしてな?」
"ひひん♪"
アタシの名前はゴールドシチー。
どこかの競走バの名を受け継いだウマ娘。
いつか見たあの日の景色を追い求めて。"綺麗"だけじゃない本当のアタシを追い求めて。
自分らしく、力強く、どんな事でも挫けず諦めずに、自分の夢を掴み取りたいと願うウマ娘。
いつかヘータローにもアタシの走りを見せてあげたいな。
それがあの日見た綺麗な尾花栗毛に魅せられたアタシにできること。
こんどはアタシ自身の美しさで、誰よりも力強い走りで、アンタのことを魅了してあげる。
もちろん、アタシの事を応援してくれてるファンの皆も。
いつもお世話になってて、アタシの事を一番に考えてくれてるマネジにも。
それからいつか出会えるかもしれない。アタシのトレーナーに対しても。
「っし。それじゃあ行こうか。まずはたてがみを軽く濡らして。場合によっては引っこ抜いて」
"………ひん"
「こらこら、そんな情けない声出さないの。男の子なんだから我慢しなって。なるべく痛くないようにするからさ」
このランウェイの主役はアタシだから。
……いつか魅せてあげる。最高の走りで! 勝ちにいく!
それで、アタシらしく走るよ。アンタと。いつか、その先へ。
「ぶほっ、げほっ、ちょ……ヘータロー!? なんで、ドレットヘアーでリーゼントなの!?」
“ひん?”
なお、このあと様子を見に来たテイオーがイメチェン♪ヘータローに吹いたのは秘密である。
ついでに、飲んでいたはちみーも吹いた。
笑いすぎてトウカイテイオーのやる気が上がった。
体力-10。やる気アップ2+。偏頭痛が治った。
注目株になった。
ゴールドシチーの育成終わった後に、ゴールドシチーのキャラソン聞くと、ふんにゃかハッピー♪ はんにゃかラッキー♪ センキューシラオキ♪ ウェイウェイウェ~イ。バイブス上がってきた!!ってなる。
つまり素顔のココロは良い曲だってことだ。
この日から
育成シナリオでキャラを把握しながら書いてるので、執筆速度は遅め。
ビワハヤヒデをやらないと、BNWが書けん。
次回、タイシンからのBNWのバナナ、ニンジン、リンゴ。
ヘータローの好きな食べ物は私の持ってきた美味しい特産、でかいバナナだ。
誰の顔がでかいって?