提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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119話 私の初恋をあなたに捧ぐ

伝えたい言葉は

彼に届くことなく…私の中に。

 

彼の居た部屋で

何もない空に

彼の眠っていない墓に 

 

私は呟いた。

 

 

「愛してるよ」

 

 

伝える事なく

私の胸の中にあるまま…

私も旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……私は待つ。

彼がここに来るのを。

 

 

 

 

「お待たせ…えと」

 

「今の私は迅鯨よ?」

 

「………お待たせ、迅鯨…いや、秋姉さん」

 

「…むう…。来てくれてありがとうね。なかなか2人で積もる話ができないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「……」

無言が続く。

 

 

 

決して話す事がない訳ではない。

 

話したいことがありすぎるのだ。

2人を割いた時間は…現実にしては長くないが、私からすれば何十年と孤独に感じた。

 

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

「ん?!うわっ!」

 

私は…彼に抱きついた。

「……やっと触れられた…ぐすっ」

 

 

 

「ずっと…ずっとこうしたかった…。ぐすっ…」

 

声にならない…。

 

「君が進学や就職で居なくなって寂しかったけど…たまに会えるのか嬉しかった。先輩の話ばかりでヤキモチ妬いてたんだよ?」

 

 

あなたに伝えたい。

 

 

孤児院での家族という形だったからこそ、伝えられなかった想い。

もし、壊れてしまったら…元に戻れない気がして。

 

 

でも…

あなたは逝ってしまった…私を置いて。

 

「…救君が亡くなった時は…本当に辛かったんだよ?生きる気力も湧かなくて……まあ私も病気で死んじゃったけど…ね」

「今まで当たり前にあったものが突然無くなるなんて…もう嫌だよ」

 

「俺は生きているよ…秋姉さんも」

彼は私を撫でてくれる。

暖かいなあ…。

 

 

 

「救君が私の名前を呼んでくれなきゃ…諦めてた」

 

私は沈みかけていた。

彼が諦めるなと言ってくれたから私は…立ち上がれたんだ。

 

 

 

やっと願いが通じた。

「立ち上がれる力をください」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?救君」

 

 

「なに?」

 

 

 

 

 

彼女は言った。

弱々しい声で…縋るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「抱き締めて?壊れるくらいに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は私を力一杯抱き締めてくれた。

痛いと私は言う。

そして、もっと強くと言う。

 

私も強く抱き締め返すーー痛い。

 

でもこの痛みが私が生きているという…彼が居ると言う実感ならば…私は嬉しく思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の大切なものはずっと奪われてきた。

理不尽に、無慈悲に、突然に。

 

何もかも諦めていた。

幸せも、将来も、生きることも。

 

 

あなたの居ない色の無い世界は何も感じなくて…

あなたは会えても離れて行ったけれども…

 

 

罪滅ぼしでもあるけど、あなたを守って沈めるならそれで良いとも思ったのに、あなたは私に諦めるなと言った。

 

 

 

私の世界に色が溢れた。

 

目の前に、心の中にあなたを感じた。

 

だから…今ここに居られる。

 

 

 

 

 

 

どれだけ伝えたくても伝えられなかった私の初恋の想い。

 

私の中にあるら伝えられなかった想いは…もう

 

あなたの居たい空の部屋で言わなくて良い。

 

何も無い空に呟かなくて良い。

 

あなたの眠っていない墓に縋って言わなくて良い。

 

 

 

 

 

だって…

目の前にあなたが居るから。

 

やっと…言えるから。

 

 

 

 

 

「やっと…言える…………好き…あなたが好き…大好きなの。ずっと前から……ずっとずーーっと前から、あなたが私を助けてくれた時から!」

 

やっと…言えた。

やっと言えたんだ。

 

 

「例え一時の泡沫の夢でも…いいの。あなたのそばに居させて?」

 

涙が頬を伝う…止まらなくて、止められなくて…。

 

 

「泡沫じゃなくて、ずっと居てよ」

彼は言った。

「ずっと隣に居てよ。もう離さないからさ」

 

 

 

「俺も好きだからさ…愛してるから」

 

 

 

 

生前にどれだけ…何を犠牲にしても得られなかったもの(言葉)

この世でたった1人、大好きな人からの…「愛してる」の言葉。

 

 

報われた気がした、

全てが…救われた気がした。

 

 

 

 

 

私は泣いた。

 

あなたが死んだことも、出会えたことも、愛してると言ってくれたことも…何もかもひっくるめて。

 

すべて…込めて

「ありがどぉ…愛じでるよお」

と、精一杯彼に抱き着いて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しかった…。

抱き締める腕を離して彼を見つめる。

 

 

 

照れくさいけど…これが今からのスタートだ。

 

 

 

私は負けない…どんな理不尽にも。

 

だって隣にはあなたが居るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?愛してるって本当?」

 

「本当」

 

「どこにも行かない?」

 

「行かないよ」

 

「四六時中一緒に居ていい?」

 

「それは…」

 

「好きって言ったよね?」

 

「え?」

 

「好きって言いましたよね?」

 

「……うん」

 

「なら!!!」

ガバっと私は襲いかかった。

「んむ!?んんん!!!??!?!?」

 

唇を奪うのみッ!

私のファーストキス…ッ。刻めッ!その身に刻め!

 

 

「ぷはっ…!シスターがこんな方して良いのかよ!?」

 

「シスターでなくて艦娘です♡」

 

「都合のいい…」

 

「でも好きと言いましたよね?」

 

「……」

 

 

遠慮もしません。

もう離れたくないから、愛する提督と…ずっとどこまでも一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日。

 

 

 

あきつ丸と2人で休憩がてらもらったチョコを食べる。

 

「あー…この甘さ…好きだわあ…」

 

「そーでありますなあ…」

 

 

 

「好きっていいました?!」

 

「このチョコレートがな!!」

 

「む…浮気かと思いました」

 

「何で手に包丁持ってんの?」

 

「たまたまです」

 

 

 

「……」

そそくさと逃げようとするあきつ丸。

 

「逃げるなよぉーあきつ丸ぅ」ガシッ

 

「離してください!無理無理無理無理!耐えられません!こんな空気の中居られるか!!」

 

「俺だってこうなるって思ってなかったんだもの!」

 

「提督殿の旧知の方でしょ!?責任持ってください…でありますよ!!」

 

「無理無理!俺にも止められんもの!」

 

 

「仲良さげ…ですね…。妬けますわあ」

 

 

「「ひいいいいいい!!!」」

2人で逃げた。

 

「待ってくださいー!」

笑顔で追いかけてくる迅鯨。

 

 

手には包丁があるけど…。

 

 

 

こうして鎮守府にヤベーヤツがもう1人降臨なされた。

 

 

 

 





迅鯨…(ヤベーヤツ)が加わった!
バリバリ武闘派な感じで登場。

鎮守府ヤンデレオリンピックがあったら優勝候補間違いなしな気がする…そんな彼女。

迅鯨の登場時のセリフが妙に頭に残っていたので
こういう登場になりました。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
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