提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
その日は朝からどんよりとした空だった。
その時は突然やってきた。
「神崎 救!敵深海棲艦との共謀で我が国への転覆を行う容疑がかけられている!大本営まで来てもらおう」
バタバタと大本営兵士が鎮守府へとやって来た。
「は?」
「…神崎さん……来てもらいます…」
「鬼怒…?」
令状を見せられる。
そこには敵深海棲艦との内通、国家転覆思想なんたらと書かれてあった。
「ふん!鎮守府提督とあろうものが敵と通じているなぞ…死刑もあり得るぞ!!」
「登録もされていない艦娘も従えている…とか」
アズレン組の事か…。
連行しろ!と言われる救。
「ふざけるな!やめろ!」
「提督はそんな事してない!」
と、口々に艦娘達は言うが誰も耳を貸さない。
「指揮官様ッ!!」
桜大鳳をはじめ、皆が艤装を展開する。
「待ってくれ!」
救が言う。
「提督…」
「何だ…」
「皆…艤装を収めろ!手を出すな!…大丈夫だから」
と救は言う。
「少し時間をください」
救は兵士に向かい言った。
「大和…コレを……着任記念の…渡せてなかったらから…」
「何を今更…まあいい、早くしろッ」
救は大和にメガネを掛けてやる。
「武蔵みたいだな…。すまん、今のタイミングで…。俺の居ない間…頼んだ」
「……」
大和は無言だった。
そして
大和は表情を変え…
グシャリとメガネを握りつぶしたのだ。
「なっ…大和?」
驚く救。
「お話しすることは…ありません」
大和はそれ以上何も言わなかった。
「ふん…無能な提督に愛想を尽かしたか…ククク。まあいい…さあ行くぞ!!」
と、提督は鬼怒と共に去って言った。
その事件は瞬く間に拡がった。
「…鬼怒が裏切ったの!?」
「鬼怒は…大本営の手先だったの?!」
「それに…大和も……向こう側の艦娘なの?」
その矛先が鬼怒に向いてしまうのは突然のことだった。
そして大和への疑念も深まった。
「今すぐに大本営に乗り込みを!」
「待て!一歩間違えたら提督との無事が保証されかねるかもしれない!」
「……」
誰も居ない執務室に立つ大和。
乱雑になった部屋は、日常から非日常へと変わった事を教えてくれる。
そこに突然ドアが開かれて艦娘が入ってきた。
「提督殿はいますか!?」
「…っ!遅かったですか…」
「あなたは…蒙武の大淀…」
「大和さん!」
大淀からの情報によると
御蔵元帥が謎の失踪
真壁元帥補佐が代理で元帥に就任。
途端に圧政を開始し、周囲は刷新。
元々から黒い噂の絶えない人物だったらしい。
過去には艦娘に関する実験に関わっていたとの噂も。
かねてから邪魔だった神崎を監視、処罰対象として指示
鬼怒は真壁の管理下にある艦娘だった。
深く親交のある麗や巌も監視下に置かれ、大本営に召集されてしまったと。
深海棲艦との関わりだけでなく所属不明の艦娘を所属させたとしての証拠として挙げられたので…解任だけでなく、反逆罪として処罰される可能性があると。
「……大淀さん」
「はい!」
「この話は他の誰かには?」
「まだですが…誰にも会ってないので」
「そう、なら都合がいいわ」
「何を…?」
蒙大淀の意識はそこで途切れた。
そして次の日には大本営からの査察が入った。
土足で上られて
思い出の写真も調べ上げられ全てを荒らされた。
私たちはそれをただ眺めることしかできなかった。
「何だよ!!大和と言い大本営と言い…」
「提督…大丈夫よね!?」
.
「おい!お前ら…揃っているか!?」
と大本営の兵士から言われる。
「あれ?大和達は?」
「金剛達も居な……」
と、その時だった。
ドオオオオオン…と轟音が響いた。
大和の主砲の音だった。
「何だ!?この音は!?」
と兵士は驚く。
「大和主砲の音!?まさか!!」
どこかで期待した。
大和が、大本営相手に戦うのだと。
でも…
駆けつけた彼女達が見たのは…
「や…ま…ト…ぉ」
「………さよなら」
水面で大和の足にしがみ付く金剛を海へ蹴落とした大和。
水面から海へと沈む金剛。
大破した鳳翔に吹雪と電だった。
大和はその手を取る事なく…ただ静かに沈むかつての戦友を眺めるだけだった。
「お姉様ーーーーー!!!!」
榛名が飛びかかる。
「大和ォ!テメエエエエエ!」
天龍が激昂し、背後から殴りかかる。
が… 裏拳一発。
「がっ!!!」
天龍は海へと弾き飛ばされた。
榛名は顔面を掴まれ海へと薙ぎ倒される。
「大和…あなた…」
と、龍田が天龍を抱えて大和を睨む。
「お姉様…!お姉様ッ!!」
比叡は海に叫び
「榛名を離しなさい!!」
霧島は敵意を大和に向けている。
しかし大和は言う。
「鎮守府の為です。勝手な行動をすることは許しません。金剛や他の艦娘は…大本営に危害を加えるつもりだったので……処分しました。鳳翔及び吹雪、電…天龍と榛名は牢にて謹慎とします。他に…他に前に出る人は居ますか?!」
十分過ぎた。
目の前で味方が沈み、実力者達が大破に追い込まれる姿は…
彼女達から反抗の意思を削ぐのには。
誰も何も言わなかった。
逆らえなかった。
「大和…裏切るのか」
「…私達の目的は…世界の平和よ」
大和の目はどこまでも暗く冷たかった。
「…もういい」
「おい、帰るぞ…」
大本営の兵士は言った。
「お前達の処遇は追って通知する。くれぐれも変な気は起こさないように…」
数日後…。
鎮守府には兵士が滞在するようになり、雰囲気は最悪と言えた。
何より…
「伊良胡さん、地下牢へ食糧は私が持って行くわ」
「…はい」
大和だった。
その実力は並ぶ者が居ないほどとされる艦娘で、武蔵ですら大和に文句を言えないようだ。
「おい大和、俺らも地下牢へ行くぞ」
「何故ですか?」
「俺らもよ…溜まるんだわ」
「楽しませて欲しいしな…くひひ」
「この…お前らッ」
「うるせえよ…死にてえのか?」
と、兵士に武器を向けられる。
「くっ…そお」
「……」
大和の目はドス黒く濁っていた。
「良いですけど……知りませんよ?」
「あ?」
「や、大和!!」
「やめてください!大和さん!」
「逆らう気を無くす為に…腕も…目も足も……ね。修復剤で元に戻るとは言え…苦痛だったと思いますよ…?何度も何度もそんな状態でも…いいですか?」
「ひっ…」
「なっ…大和…嘘だろ?」
麻耶が青ざめて言う。
「大和…さん?」
「……」
大和はただ気味悪くニヤリと笑った。
「うっ…気分が……トイレに行ってくる」
「もういい!殺すなよ…利用価値はあるんだ!」
大和は1人地下牢へと降りて行く。
ニヤリと笑いながら。
そして、牢の前に立ち言う。
牢の中の彼女達と目が合う。
「さあ………初めてましょうか…」
「ええ…はい、金剛は処理、他の反抗する艦娘は地下牢へ……はい」
「例の深海棲艦、艦船と呼ばれる者も同じく地下牢へ…反抗的ではありますが…大丈夫です」
『そうか……奴の処刑の準備は進んでいる…。しかし、まさかお前から連絡があるとはな…大和。お前は提督の事を慕っていると思っていたのだがな…』
「…鎮守府と艦娘の為ですから…」
『ふっ……おい、決まったぞ。奴の処刑は3日後だ』
「はい」
毎日茹だるような暑さが続いていますが…いかがお過ごしでしょうか?
車のエアコンが壊れまして…地獄のような日々を送っております。
お楽しみいただけましたか?
ドス黒い回なので楽しめるかは分かりませんが…次回へと続きます