提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
真壁という男は、真面目な人間…ではなかった。
自らの邪魔になる人間は自らの手を汚さずどんな手段を以ってしても排除する…そんな人間だった。
実際に御蔵を何処かに隠したのも彼である。
彼は明かさない、信用しない。
彼にとっては部下も駒であり、踏み台である。
元帥の居場所、安否はこの場では彼しか知らない。
観衆という者は時として残酷なものを奇喜なる目で見る。
特に自分に関係のない…他人の不幸、自らの安全を保障された恐怖。
大本営の外部にある…野球場か?くらいの場所に俺は連れてこられた。
外周は高い壁に囲まれ、その外は海…つまり、逃げることはできないと俺に現実を突きつける。
そして何より…結構集まってんな…
盛り上がってるのは…ほぼ、真壁の息のかかった連中だろうな。
真壁は盛大にマイクを通して言った。
「諸君…悲しい悲しいお知らせがある。コイツは…軍人失格だ!!戦場で死ぬべき奴が敵と内通しており、国家転覆を目論んでいた!!」
「また御蔵元帥閣下の失踪にも関わっているッ!!」
「所属不明の艦娘や兵器を所持して居ることも分かっている!このまま野放しにしておくと…必ずや、この国の大きな障害となるだろう!奴はその為に、鎮守府や艦娘を利用したのだ!!!」
「諸君…どうするね?」
殺せ!
殺せ!!と真壁の問いに沸き立つ場内。
「…そうだ、この男の所業は許されるものでない!この国の兵士達も言っている訳だ……故に…処刑とする!!」
「ふん…茶番だな」
「……彼女達は兵器なんかでは無い。感情を持ち、血も涙も流す…。それはここに居る皆がわかって居る事だろう!」
「俺は艦娘を…所持したつもりもないし、この国に仇なすつもりもない!」
「俺は無実だッ!!!!」
「黙れ!!!」
と、思いっきり殴られる。
「……鬼怒!そいつをここへ!!」
鬼怒が俺のところに駆け寄り腕を掴む。
「ごめん、こうしないと…私もお姉ちゃんも死んじゃうんだ」
やっと最後に言えた少しの本音。
ごめんてのも本当、殺されるのも本当…。
「知ってる」
は?今なんて?知ってる……って?
「!?…何で?なら何でこうしてここに居るの?!」
「お前は…ウチの所属だろ?だから助けたかった」
「え?」
助けたかった……?
「…その為に来た」
知ってて…黙ってたの?
わざと捕まって?
私に殴らせた…。
やっぱりコイツは私の罰を避けさせるために?
わざと私を煽って殴らせたの…。
「ご苦労なことね」
バカだ…大バカだ…
その結果が…処刑だと言うのに…
「一つ聞いていい?」
「ん?何だ?」
「なんでアンタは絶望しないの?諦めないの?この状態で!状況で!」
「まだ生きているしな…死ぬまでは諦めない」
「大丈夫だから…お前達も助けるから」
「何でよッ!!なんでアンタはそこまで!!」
「君が…泣いていたから……」
「え………」
カップ麺食べてたのも見てたけど…
君が毎日泣いているのを見ていた。
時々、切なそうにする表情を見ていた。
焦ってるのも…
姉が囚われになってる事も。
あの鎮守府のメンバーが少しずつ好きになっていることも…。
大事な艦娘が泣いている…。
それだけで動く理由は十分だ。
この世界に来て…どれだけ君らの存在に助けられたか。
安心と温もりを与えてもらったか。
今でも覚えている…
その時の感情を。
「俺は提督だ。お前達が泣かないよう、沈まないようにするのが俺だ。いや、例え提督じゃなくてもそうした」
「あなた……」
「モタモタするな!!」
真壁の一声でハッとする…そうだこれは仕事なんだ。
最後の…仕事。
本当に最後なの?
お姉ちゃんは帰ってくるの?
でも、私はこれに縋るしかないんだ。
「麗ちゃん」
「救君…」
「えへへ、すまんね…こうなっちった」
そのままでは彼は連れて行かれ…殺される。
目の前には救君が居る。
懐の銃に手を伸ばす。
「っー!!」
例えどうなろうと…彼の処刑の妨げになるなら…。
兵士を人質にでもすれば時間は稼げる筈だ。
クビになっても…逃げながらでも2人で生活するのも悪くないかな…?
ううん…もし私が…死んだとしても…
やる!!
やるしかない!!
「うご…」
動かないで!とは言えなかった。
「…このっ!!」
パァン…と乾いた音がした。
「え?」
武蔵が私をぶったと気付くのに少し時間が掛かった。
「何だ!?」
一斉に注目を浴びた。
コレでは…何もできない!
「む、武蔵…?」
「提督…ふざけたマネはするな…」
なんで!?なんで!なんで!!
詰め寄る私を武蔵は押さえつける。
暴れても暴れても…艦娘には勝てない。
「すまない…西波島の提督とは恋仲にあるようでな…大人しくさせる」
「フン、艦娘の方が利口と見えるな…大人しくしてろ」
武蔵…!!
どうして!?
目の前に救君が居るのにッ!
このままじゃ!!
そのまま私は引きずられて元の席へと戻された。
「言い残す事は?」
「……やるなら徹底的に殺せよ?じゃないと確実に俺は戻ってくるぞ!!」
「ふん!口だけは達者だな……。やれ…由良…。おい、鬼怒!見てろ!お前の最後の仕事だ…お前の提督はお前達が殺すんだ!!!」
私は汚れたく無いからな…とその場を離れる真壁。
「特等席から見ないのな…」
「由〜良ちゃん?」
と、話しかけてみる。
「・…」
「中止できない?」
「不可能です」
「どうしても?」
「鬼怒も居るよ?ウチに来ない?」
「だから何だというのです?そこの出来損ないは私には関係のない事です」
「ウチは楽しいよ?」
「国家転覆を企むことが?」
「そんなことしてないよ…」
「負けるな由良…絶対お前も…鬼怒も助ける」
「…助ける……?」
反応した?
よし!
会話が続くと思った矢先の事だった。
「首を切り落とせ!!その首は門へ飾ってやる!!」
「……」
由良は一瞬、表情を変えて……それから
「はい…」
と言った?
本来の由良の感じはなく…ただ、命令を遂行する機械のような艦娘。
自らの提督や他の提督を手にかけても何の感情も動かない。
と思っていたが…もしかしたら…
由良は分厚い刀を高く振り上げた。
「……」
彼はまっすぐと前を見つめていた
その目には絶望感も無かった。
ただ、静かに一度私やお姉ちゃんの方を見て言った。
「鬼怒、由良、ごめん…そんな思いをさせて…」
と。
そして…
「…でも、俺は死なんぞ……」
「いやっ!いやぁぁああ!!救君!!」
どこかの提督が叫んでいる。
由良は刀を無機質に振り下ろした。
ドッ…と言う音が聞こえた。
「ごめん」という言葉を聞いた。
皆最後は私に恨みの言葉を吐きながら死んだのに…。
1人…居たな…今でも覚えている。
「ごめんな…」
って言ってくれた人。
私の唯一の提督。
お姉ちゃんも皆も平等に大切にしてくれたあの人。
最後の最後まで私達を信じて…ごめんなと言ってくれた人。
同じ事を言った神崎さん。
馬鹿な人…。
助けてくれるかも…なんて思っちゃう人。
いや、実際に助けられたのだ。
この人を殴らなかったら私は……。
そんな馬鹿は嫌いじゃない…。
もっと違う出会い方してれば…なあ。
優しかったこの人。
最後まで諦めなかったこの人
手を伸ばし続けたこの人。
光り輝いているようで…眩しかったこの人。
この人は最後まで私達の事を……。
私は…私は…
暑い……。
溶けそう…。
でも台風きてる!
キツい展開ばかりですが
お楽しみいただけましたか?
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。
メッセージでの質問ありがとうございます!
質問に答えますね。
お前は一体何者だ?
しがないサラリーマンです。
ブルーカラーです。
機械分解したりなんやかんやしてます。
ちゃんと寝てますか?
寝てまさぁ!!
2時くらいに…。
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