提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
蒙と猛が混在してるのはわざとです。
由良により……処刑の刀が振り下ろされたーーー。
「小僧ッ…」
「いや!ダメッいやぁぁぁぁぁあああ!!…!!」
2人は目を閉じた。
「………」
彼は最後までまっすぐと前を向いていた。
その刃が彼に届くことは無かった。
いつものように首が落ちてこなかった,
何故だろう?と私は思った。
どよめく会場内。
「あなた…?」
と、お姉ちゃんの声が聞こえた。
「何をやっている!!!」
真壁の声も…。
「貴様ッ裏切るのか!?」
「……え?」
私は混乱した。
何故なら…
「え?……え?」
何故?私が?そんなはずはない。
でも、この手も私の手
この手に伝わる重みも…私のもの…。
「…鬼怒…」
と、提督は笑顔で私を見る。
「わ、私…わかりません…」
反乱すれば…姉は死ぬ。私も死ぬ。
でも…。
「でも…あなたは死なせちゃいけないって思っちゃったんです」
私がお姉ちゃんの邪魔をした。
お姉ちゃんが何より大切だった。
初めて…お姉ちゃん以外に守りたい人ができたと思った。
「この…裏切り者めッ!今まで生かしておいてやった恩を忘れたか!」
「死んでるわよ…ッ!アンタらに飼い殺されてる間に私は…死んだわ!」
「でも、もう嫌なの…今更だけど…この人だけは死なせちゃいけないって思ったの!!!!!」
「…私は…ただ、お姉ちゃん達と幸せに生きたいだけなの……」
「お前らの手は血に染まっている!汚れすぎたんだ!無理に決まってるだろ!俺以外にその手を取るやつなんかいるものか!!!!」
と、真壁は言う。
「何を言っている?」
と、傷だらけの男は言った。
ーお願い。
涙が溢れる。
「お前以外手を取る奴は居ない?」
ー私を壊して。
「そんな訳ない」
ー助けてくれるんでしょ?
ー壊して壊してこの地獄から解放して。
ーアナタの本当の艦娘に…して。
ー助けて!お姉ちゃんも私も、この地獄から助けてよ!
「ここに居るだろ?鬼怒の提督は俺だ…俺が手を取る!!」
「幸せになれないはずはない…例えどんな手でも…俺がその手を離さない」
涙が止まらなかった。
「離さないだと!?馬鹿な事を! ええい!由良!纏めて処け……」
ズドォォオン
と、その場が揺れた。
「な、何だ!?」
砲撃!? 壁の方からだと!?…壁が…破られた……だと?
深海棲艦か!?
いや!有り得ない!!
そして…
真壁は見た。
その煙の向こうに…1隻の艦を…。
轟音と共にやってきた艦の甲板には……
艦娘が居た。
「西波島鎮守府艦娘一同、その処刑の反対を具申します!」
「提督を…仲間を返して貰いましょうか!!」
大和が皆を引き連れてやってきた。
「大和だと!?奴は……どういうことだ!?…」
「…真壁……随分とやってくれたのう」
「元帥殿が…生きて居た?」
どよめく会場内。
「あのジジイ…死に損なったか!!」
「閣下!!大変です!」
「何だ!!!」
「大本営の正門に住民が押し寄せてます!!」
「何だとッ!!??」
目の前では…
「提督ーー!!鬼怒ーーー!!」
「提督を離せぇぇッ!!!!」
「鬼怒も…大事な仲間なんだッ!!」
「もう安心しろーー!!」
と、艦娘達が。
大本営の正門では…。
「そいつを殺すんじゃねえええ!!」
「その提督さんは…俺らの平和を守ってくれてんだ!!」
「アンタらみたいに座ってただけの奴らとは違うんだい!!」
「神崎を殺すな!」
「お兄ちゃんを返せえええ!!」
「うるさい!黙れ!!」
と、その場へ行った部下が銃を構えるーーーが退かない。
「やれるもんならやってみな!!」
「こちとら何度も命救われてんだ!!奴のためなら惜しくねえよ!!」
「うぐ…」
部下がたじろぐ。
民間人を痛めつけるわけにはいかない。
「さあ!!やってみいや!!!!」
と、住民達が。
「…との事で…」
「んな…ッ…バカな…」
神崎は艦娘に対する抑止力…即ち人質である。
下手に動けばコイツは死ぬ…と言うことを前面に出すことで相手の戦意を削ぐ。抵抗する意思を削ぐ目的がある。
この場合艦娘は
①人質が解放された、若しくは殺された場合
②人質の命を省みない場合
に行動をすることが出来る。
コイツらの場合は②に近いがそうでない。
奴らは言った。
「提督を、仲間を返してもらう」と。
そう、奴らには確信があるのだ、確固たる意思があるのだ。
提督も、仲間も殺させずに取り戻す…と。
だから奴らはこの四面楚歌の中に…獅子の居る檻の中に壁をぶち破って入ってこれたのだ。
この男1人の為に…?
取るに足らん、ちっぽけな命のために…?
民衆が動いたと…言うのか!?
此奴らも…命をかけるというのか?!
この男に…それだけの価値があるのか…?
麗は悲痛な涙から変わりら安堵の涙を流した。
「……皆来たんだ…良かった……」
いや、安堵だけではない。好きな人へ何も出来なかった自分への悔しさも混じっている。
「さすが…アイツらだ…。ああ言うのを見せられると…滾るな…」
蒙武蔵は空を指差し言った。
「提督よ…何故人は
「え…?」
「星も月も届かぬが、届かぬからこそ、輝くからこそ手を伸ばしたくなるんだ…己を照らす太陽も月も星も…いつか届くと信じて…」
「そして、その手は今は届くんだ…例え変わり者と言われようと…何を敵にしようと……伸ばし続けない者にその輝きは掴めないし、その輝きを間近で見ることすら出来ん…」
「伸ばし続けることをやめた時、そいつは…………死ぬ」
「武蔵…?」
「そうだろう?提督!ここで黙って見ていても…心が死ぬ………なら!お前の命!私らに預けてみろ!」
「何故私がお前を打ったかわかるか?!己だけの命を犠牲にするなんてことはあってはならないからだ!!お前は何だ!?私らの提督だろう?お前は1人か?違うだろう!」
「私達が居るだろう!!!」
打たれた頬がズキンと傷んだ。
「頼れ。私らを…頼れ!!私らに命を預けて…私らの命も賭けてみろ!!」
「声を上げろ!麗!お前は負け犬でも…弱い女でも…1人でもないんだ!………お前は私達の太陽なんだ!!」
「私達はお前の下でないと輝かないんだ!」
「私らはお前の剣であり盾だ!!雲が邪魔なら私達が薙ぎ払う!雨風がお前を狙うなら私達が守ろう!!」
「うるさいぞ!だまれ!」
と、兵士が銃を構える。
それでも武蔵は叫ぶ。
「さあ!!今こそ、手を伸ばせ!
「届かぬなら!私らが腕となろう!!!お前は何だ!どうしたい!」
鬼怒も手を伸ばし始めた。
彼を救った。
彼の手を取る為に、姉を救う為に。
西波島のメンバーも手を伸ばして居るからこそ、ここにたどり着いた。彼という太陽を取り戻す為に。
私もそのつもりだった。
しかし……そう、彼女達は私が自分だけの命を犠牲にしようとしたことに怒ったのだ。
私と彼女達は一心同体…。
一緒に死んでと言われたら「喜んで!」と言うだろう。
そう…彼女達は言って欲しかったのだ
一緒に命を懸けて欲しかったのだ。
あの場で、
「手を貸して!彼を助ける!」と。
ごめんね…そんな事させて。
ありがとう…武蔵。
彼女は流れる涙を拭って…
両頬をパシンと叩いて言った。
「皆……私は、彼を…助けたいの!!!私の命を預けるから!!力を貸して!このままじゃ…私が…私じゃなくなっちゃう!!私を彼のもとへ連れて行って!!!この馬鹿げた処刑をぶっ壊すのを手伝って!!」
そうだ…それでいい!
「あぁっ!!それでこそ私らの提督だッ!!」
「聞いたな…お前達ッ!」
皆が首を縦に振る……笑顔で。
よぉぉし!行くぞォォ!!
と、蒙武蔵は隣の兵士を殴り飛ばした。
武蔵達もまた、手を伸ばすのだ。
麗と言う提督の手を取る為に、守る為に。
彼女の守りたいものを守る為に。
「この!裏切るか!!」
大本営の兵士が言い麗を掴む。
「その薄汚れた手で提督に触れるなッ!!!」
蒙武蔵が兵士を蹴り飛ばす。
「退け!貴様らの指示は受けん!私達に指示できるのは…麗だけなんだ!!」
「薙ぎ倒せ!!」
「提督を奴のもとへ!!!!」
「騒がしいな……」
そして…真壁は更に驚くこととなる。
艦娘が私兵を薙ぎ倒す中…
雑踏を極める中でただ1人、世界が止まったかのように静かに此方を見つめながら歩みを進めている。
とある提督が手を挙げていたのだ。
その提督の目は一切の迷いも無く…高く、高く真っ直ぐにその手を挙げて叫んだ。
「真壁閣下!!神崎大将殿の処刑の件…賛成しかねます!!鎮守府一同全力で反対させて頂きます!!」
そこに真壁の知るオドオドとした彼女の姿はなかった。
隣では憲兵が気絶していた。
「なっ…貴様!命令違反か!?」
彼女は泰然と言った。
「…ええ!なら私達も殺しますか?ーー私達は…猛武鎮守府は彼に付きます!命懸けで抵抗します!!」
「…バカな…」
「バカはテメェだろうが…えぇ?真壁よ」
男も手を挙げて言った。
「巌ぉ…貴様までか!!!」
「兄ちゃんには借りがあっからよ…呉鎮守府も…奴の処刑に反対!!奴の解放を求む!」
「テメェら!!行くぞ!俺らの大将は御蔵元帥だ!!!」
狂っている…
コイツらは狂っている。
もう少しで…もう少しで!!!
「あなたの為に…こんなに人が…艦娘が集まるの…?」
「お前を助けにも来てんだぞ?鬼怒…」
「鬼怒ー!!苦しかったろ?!今行くからなぁ!!」
と、天龍が叫んだ。
なぜ天龍がここに…?
地下牢に監禁されているはずじゃ?
苦しかったろ?ですって?
貴方達だってじゃない…。
わからない…私には。
なのに…こんなにも胸があついの…。
胸も…頬も目も熱いよ…。
「ええい!!もういい!貴様らだけでも…殺すっ。やれ!由良!!」
「……ハイ」
「お姉ちゃん……おねえちゃぁあん!!」
もう、お姉ちゃんを人殺しにさせない!!
気づいたらお姉ちゃんに体当たりしていたー。
「邪魔するの…?あなた」
「あなたじゃない!私は…鬼怒…お姉ちゃんの妹よ!!」
「そう…」
ズキンと頭が痛む…。
何だろう?
「すぐに目を覚まさせてあげっから!!…久しぶりの姉妹喧嘩よ!!」
「ダァァァアリィィィンンンン」
それはー壁の上から飛んでやって来た。
さも当たり前のようにあの男の横に着地して…こっちを睨んだ。
「金剛ッ!」
そして何より…それが来るのを当たり前のように彼女の名前を呼ぶ神崎が居た。
ソレには真壁も驚いていた。
「貴様!仲間割れで沈んだのではなかったのか!!」
金剛はふんふん〜♪と歌いながら言う。
「サプラーーーイズ!仲間割れ?私達は仲良しチームデース!そんなことありまセーン!全て作戦デース!」
金剛は沈んでなかった。
そう見せかけてゴーヤに回収してもらい治療。
単身で大本営に忍び込み、監視の目を掻い潜り、行動していたのだ。
地下牢で謹慎させられていた艦娘?
彼女達は元帥閣下の居場所を探るために行動していたネー。
「大和ォ!貴様ッ裏切ったのか!!!」
「裏切る?いいえ?私は…最初から提督の意思に従ったまでです」
「私の提督はこの世にただ1人。愛する者もただ1人…神崎提督のみです」
「その為に仲間を轟沈寸前まで痛めつけられるのか!?」
「……あなたには分からないでしょう。私達の見ているものが…考えが」
大和の後ろから現れた鳳翔が、吹雪が…皆が言う。
「「大好きな仲間の為なら…愛する提督の為なら…このくらい痛くないですよ」」
「「提督や鬼怒達の方が…痛くて苦しかったはずです!!」」
「あれ?少し遅くね?さっき殺されかけたけど」
拘束具を外してもらった救が言う。
「あー…鬼怒が止めるとわかったヨー…だからごめんね?」
「カッコいい登場のタイミングを待ってたな?」
「ゔっ…」
「ふん!まあいい!お前のデータは…コイツにもあるんだ…行け!殺せ!」
「艦隊計画のデータネー。それもResearch済みヨ!」
最強艦隊計画
歴戦の艦娘のデータを無理矢理に艦娘にインプットさせて、中身の強化を図る。
また、劇薬や実験で体を強化し動きに対応出来るようにする。
余計な感情を持たず、ただ命令を遂行するマシンを作り上げた。
もはや廃人同然である艦娘だが、戦力は絶対だった。
だが、倫理に反すると言うことで計画は打ち切られた…はずだった。
「何だ!調べ済みか!!もったいないだろう?!私はそれを引き上げて…こうして成功まで漕ぎ着けたんだ!!……従順に、死をも恐れぬ戦闘マシン…コレでこの海も世界も…俺のものだァ!!!」
「…貴様!」
と救が吠える。
「絶対に許さないデース!!」
『やってみろ!!行け!コンゴウ』
真壁の後ろから現れたコンゴウは冷たく言った。
『…金剛、及びその提督の抹殺を開始します』
「………」
金剛がコンゴウと対峙する。
「フフフ、ワタシモ居ルワ」
そして、戦艦棲姫も同じく現れる。
「やっぱりアンタの方が向こうさんと通じてたじゃないか…」
「フン!どうせ死ぬ奴には関係ない!」
「ワーオ…2人は…聞いてないデース。てか、自分以外のコンゴウは初めて見ましたヨ。てかめっちゃ標準語で静かデース」
「ダーリン!見ちゃダメネー!!アレはダーリンに刺さりそうな気がして止まないデース!」
「あのキャラ…見習うか?」
「ノーデース!大淀か榛名と見分けがつかなくなりマース」
まじで言ってんなコレは。
「…なら、私達がコンゴウを引き受けよう!!」
声のする方には蒙武の武蔵か仁王立ちで居た。
その後ろを艦娘に護衛されながら麗がこちらへと走ってきている。
愛する彼の元へ至る為に。
「ohー蒙武の武蔵?!あーー…お互いその方が全力出せそうネー」
自分相手に本気は……ね…うん。
さあ…反撃開始よん♡
やっとこさ反撃開始
この話はボリュームが多くなっちった。
よく"手を伸ばす"というワードがこの小説には出てきますが、この小説全体のテーマでもあります。
少しでもお楽しみいただけましたか?
お楽しみいただけたなら幸いです!