提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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131話 星に手を伸ばす者へ ⑦ 私はあなたを提督と呼ぶ 

鬼怒は姉と対峙する。

 

 

「…ッ!…強い…」

 

由良は強かった。

同じ艦隊に所属していた時も私は一度もお姉ちゃんに勝ったことがなかった。

 

「そりゃぁ!!」

私の攻撃は躱され…腹に拳をぶち込まれる。

 

「か……はっ」

 

「…ッこのっ!!」

組みつこうとするが…頭を掴まれ膝を顔面にぶち込まれる。

 

 

「うぐっ!!」

ボタボタと鼻から血が流れる。

 

『無駄です…出来損ないのあなたは私には勝てません』

 

 

そのまま私は蹴り飛ばされた。

「ぐうううう!」

 

 

『データも何もかも無い欠陥の負け犬であるアナタは…私には』

 

 

 

 

 

 

「違う!!欠陥でも負け犬でも無いッ」

 

 

『……?』

 

 

 

「…神崎…さん?」

 

「由良!お前を救うために…コイツがどれだけ……いや、負け犬でも欠陥品でも無い!!鬼怒は…鬼怒は!西波島鎮守府の艦娘だッ!!」

 

『だから何なのです?』

 

「コイツは今の操られたお前より強いぞ…俺が知っている。コイツはお前を必ず救い出す!!」

 

「だから由良…お前はもう、苦しまなくて良いんだ」

 

 

『煩いですね』

歩み寄る救を由良は弾き飛ばす。

 

例えビンタひとつでも彼には大きなダメージを与える。

 

「ぐっ…痛くないなぁ…」

 

『…嘘ですね』

もう1発食らわされる。

 

「いや…痛いのはお前のはずだ」

 

『………』

 

 

 

ニヤリと彼は笑って私の方を見た。

 

「鬼怒…提督命令だ…。勝て…打ち倒せ!由良をコッチヘ引きずり戻せ!!!」

 

 

何よコイツ…。

こんなにボロボロで死にかけてたのに。

私達姉妹のことまで…バカね…。

 

「戻せって事は…由良も…お姉ちゃんの手も取ってくれるの?」

 

「当たり前だろ?俺は欲張りな提督だ。でも、1人じゃ抱えられるのはこの両手の範囲だけだ。だからそこから先は俺の手を取ったお前らの手の届くとこまでが範囲だ。…そうさ、全部掠め取るつもりだ」

 

 

 

 

「お前達がどんな過去を持っていようと…歩み続ける限り、どんな事があっても…俺は手を離さない」

 

 

 

 

 

私…私は、一度もアンタを提督と呼んだ事ないのに…。

 

 

何よこの感情は?

何でこんなに熱いの?

どうにかなる…って思っちゃう。

 

 

応えたい。

そのアンタに私は応えたい!!

ここで応えなきゃ女が廃るのよ!

 

「……了解です!!」

 

 

 

 

 

ねえ…お姉ちゃん…。

 

欲張りな人もいたもんだね

お姉ちゃんの手も取ってくれるんだって。

ふふふ、おかしいよね。

 

お姉ちゃんはもう苦しまなくていいんだ!

私が…助けるんだ。

 

いや、私達で助けるんだ!!!

 

 

「お姉ちゃん!!!!助けるから!!」

 

 

その呼び声に一瞬、由良の体が止まった気がした。

 

そこだ!

届け!

届けえええええ!!!

 

「お姉ちゃん!目を覚ませ!!ばかやろおおおおお!!」

 

私の声が届いた。

 

 

 

「帰って来てよ!お姉ちゃん!!」

 

 

「…ぬ?……きぬ?」

 

よし!戻った…??

由良に手を伸ばす。

 

「うぐぁぁぁ!!割れる!頭が割れる!!!!」

由良は暴れ出した。

 

 

「お姉ちゃん…?」

私も一瞬止まってしまった、それがダメだった。

 

伸ばした手は払われる。

 

「………脅威レベルを上げます…。対象を抹殺します」

冷徹な目に戻った由良は右拳を繰り出す。

 

 

また顔面に貰ってしまった。

「ううっ!!」

 

 

私は涙と鼻血を拭って言った。

「やってみろよ…私が何度でも呼び起こしてやるっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひたすらにボコボコにされる。

対抗できる余地すらない。

 

立ってるのが…やっと…かも。

お姉ちゃんぱないよ。

 

でも、待ってて…すぐに助けるから…!

 

 

 

 

 

 

 

まっ…

 

    て

 

       て

 

 

 

 

 

 

ドシャリと私は地面に倒れ込んだ…。

 

 

救は彼女に駆け寄る…由良に立ち塞がるように。

「鬼怒!!起きろ!起きろ!!」

 

 

『退きなさい』

由良は鬼怒を庇う救を攻撃する。

しかし、幾ら殴られようと彼は退かない。

彼女に覆い被さるように彼女を守る。

 

幾度踏まれようと、蹴られようと。

 

彼は守ると…その手を離さないと決めたから。

 

しかし…。

『…鬼怒の停止を確認。提督抹殺を…開始します…』

 

由良は救の首を掴み持ち上げる。

 

 

「ぐっ…っ…ぅ……き……ぬ」

 

 

 

『あなたは馬鹿ですか?そこの艦娘は活動を停止しています。なのに呼び掛けるのですか?あなたもそちらに行くのに』

 

 

 

 

「バ…カは……お前だ……泣いてんじゃねえかよ」

 

 

 

『…?』

左手で目下を触る…これは?涙…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

 

 

お姉ちゃんに殴られた時の夢。

 

…お姉ちゃん?痛いよ!

 

ーバカ!心配するわよ!無茶しないで!!!ー

ー私はアンタのお姉ちゃんなんだから…!ーー

 

ー鬼怒……ごめんねー

ー痛かったよね… 打ってごめんねー

 

 

私が…無茶な進撃をして轟沈寸前になって帰投した時の…?

 

お姉ちゃん…泣いてたよね…。

泣きながら抱きしめてくれたよね。

 

 

 

 

別の夢…。

 

ナントカ計画の…時の?

 

ー私がその実験を受けますー

ー大丈夫よ鬼怒、心配しないでー

ーきっと私は皆の役に立てますからー

 

お姉ちゃんは私の代わりに……。

 

きっと。今も泣いてるよね…。

嫌な仕事させられて…したくも無いことさせられて。

 

 

 

……立ち上がらなきゃ…!

お姉ちゃんを助けるんだッ!

 

 

右腕がダメなら左腕で

腕がダメなら足で…

這ってでも…

何だろうと…私がやるんだ!!

 

私は…もう機械でも狗でも何でもない!味方してくれる人だって居る!!

お姉ちゃん…私、守りたい人が…出来ちゃったんだ!!!

私は……もう1人じゃないんだ!!

 

 

だって…提督が私を呼んでるんだから!!!

 

 

 

 

 

 

暗闇に光が見えた。

「鬼怒ぅぅううううううう!」

叫び声が聞こえる。

 

煩いほどの温かい声…。

 

 

 

 

 

 

『…死になさい』

グッと手に力を込めーーーーー。

 

しかし由良は見た。

 

 

倒れていた鬼怒が目を見開いた。

立ち上がった。

ぜえぜえと息を切らせながら…。

 

 

「強い…強いよ…お姉ちゃん…。

本当に…凄いな。

私勝てたことないもんね…。

 

でもね…お姉ちゃん…。

私…痛くないよ。

 

お姉ちゃんが怒って…心配してゲンコツされた時の方が何倍も…体も心も痛かったんだ!!!

今のお姉ちゃんの心の方が辛くて痛いはずなんだ!!」

 

 

 

 

ごめんね。

 

 

 

『…脅威を確認…優先事項変更します…』

由良はブンと救を投げ捨て、鬼怒に対峙した。

 

 

「いでっ!ゲホッゲホッ!」

鬼怒が救を受け止める。

 

「鬼怒…お前…」

 

 

私は…真っ直ぐにこの人の目を見て言った。

 

「…ッ!!お願い…()()!私に…力を貸してッ!あなたを守って…お姉ちゃんを救う力を…貸してッッ!!!」

 

 

 

「お前…提督って………あぁ…勿論だ…鬼怒!!!」

 

「行け!鬼怒!!」

ゲホゲホと、提督が私の背中をバシッと叩いて後押ししてくれた。

 

 

「うん!!」

 

ー鬼怒 改ー

これが…私?

今までにない力を感じる。

 

 

 

 

『……。更に脅威レベルを上げます……』

 

 

「いっくよー!!!お姉ちゃん!!!!見てて…提督!!私の…西波島鎮守府でのデビュー戦を!!」

 

「行ってこい!鬼怒!!」

 

 

 

軽い…体が軽い!

でもまだ足りない!!まだ!まだ!!足りない!!

お姉ちゃんにはまだ届かない!

 

守りたいんだ!

応えたいんだ!!

 

 

また2人で…皆で歩んで行くんだ!!!!

 

提督ッ!提督ぅッ!!!!

 

 

 

「行けぇぇぇえ!!!鬼怒ー!!!!」

 

その声が…私の背中を押してくれた!

 

え?体が…何?光って…。

 

ー鬼怒ー 改二ー

まだ…こんな…。

 

 

 

 

 

『測定不能!理解不能!!…私のデータを…超えています」

 

『!?…体が…動かな……意識が…?」

 

 

 

 

「…鬼…………怒……』

 

「お姉ちゃん!」

 

「やっちゃって……」

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…に届けえええええええ!!」

 

鬼怒の右手は

 

ついに由良に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

「…キツいな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐううっ…」

膝をつく2人。

 

「はぁっ!!はぁ…はぁ…」

 

「早くしなさい…鬼怒」

「今ならやれるから…早く私を」

 

 

「お姉ちゃん!? そんな!ダメ!諦めないで…まだ!」

 

「私の手は汚れすぎた…償いきれない程に…」

「だから…殺して!!あなたも…傷つけた!もう無理よ」.

 

「お願い……殺して」

 

 

「…そんな」

 

 

 

「行け…鬼怒」

 

「提督?!そんな!!」

手を取ってくれるんじゃなかったの?!

 

 

「掴め…アイツの手を…心を…お前にしかできない」

ドン…と彼は私の背中を押した。

 

 

私はお姉ちゃんの前に屈んだ。

 

パァン…

「……え?」

 

 

私は泣きながらお姉ちゃんの頬を打った。

 

 

「ふざけるなッ!!!私はもうお姉ちゃんを離さない!!この手を掴んで離さないッ!絶対に死なせない!!」

 

「2人で償うんだ…!!」

 

鬼怒は泣きながら言う。

 

「でも私…誰も……」

 

 

「あの人が居る!あの人が…私が居る!」

救を指さす。

頷く救。

 

「だから…一緒にやり直そう!幸せになろう!!」

 

 

「なれるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃんは…!!!!!!!」

 

 

鬼怒が叫ぶ。




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