提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
131話も投稿していますのでそちらもご覧下さい!
並行する話なので順番は大丈夫です!
コンゴウは倒れる武蔵を見下ろしていた。
何度打ち倒そうと立ち上がってくる彼女に尊敬の念すら抱きそうになる。
何度倒れたか分からない。
それでも私は立たねばならない。
「ぬおおおおおおおおおお!!」
武蔵とコンゴウの激しい乱打戦は続いていた。
的確なデータとは面倒なもので…手も足も出ない。
正直なところ、致命箇所を避けてガードしかできない
しかし、
「痛く…ないなァ…同じ金剛でも…こう違うか」
『…強がりですか?』
「いいや、違うな。事実だ」
コンゴウのパンチが顔面に突き刺さる。
が…あの金剛の拳に比べれば…全然痛くもない。
『満身創痍じゃありませんか』
「……生命感もない拳じゃあ…私は倒せんぞ」
「そしてな?お前の拳から…助けてくれと聞こえるんだ」
「何を言って…」
ズクンとどこかが痛んだ。
武蔵の脳裏に過去が過ぎる。
そう、あの金剛の拳は…体の奥まで、脳まで届いた。
提督を馬鹿にされた悔しさ
仲間を馬鹿にされた悔しさ
愛する者を守りたいと言う想い
どれも貴様にはないものだ。
ただ、悲しく…助けてと言っている。
「今更…何も言うつもりもない!しかし…私はまだ、倒れるわけにはいかんのだ!」
彼女達を救いたい!!!
それが…私の提督の命令だからな。
『あなたに何がわかりますか?この生き方しか知りません』
『あの方が言うんです。この身は既に汚れて…泥だらけの身体なんです…そんな私に…』
「私とてそうだ!しかし諦めるな!例えその身が汚泥に塗れようとも…歩む足を止めるな!!」
かつて私は提督の立場を守る為に、ありとあらゆる事をやった。
他の提督を貶めた。痛めつけた。
自らを、仲間をドーピングで改造した。
そうしないと…勝たないと麗が馬鹿にされ続けると思った。
麗も何も言わなかった、言えなかった。
それに甘えて、それが正しいと思い続けていた。
あの提督に会うまで。
私達は奴らを馬鹿にしまくった。
ーー腑抜けーー
ー芋だなー
ー本当に鉄底海峡をこいつらが?ー
奴も他の奴と同じだと思っていた。
そんな事はなかった。
奴はそんな私らを完膚なきまでに打ちのめした。
あまつさえ私は奴の命を演習中に狙った。
それすらも跳ね除けて奴らは私達を降した。
麗はそれでも私達を庇った。
私達はすれ違っていたのだ…いや、見ないフリをしていたのだ。
本当に馬鹿なことをしたと思った。
そればかりか…奴は
閉ざされかけていた麗の心を溶かした。
私達の気持ちもわかると…言ってくれた。
私は…私達は…応えるためにここに居る。
今も私達と共に手を取ってくれる奴らに恥じぬ艦娘…艦隊となる為に。
しかし…過去は消せない。
でも何故、今私達が歩み続けられるか…?
神崎 救が言った言葉だ。
「コンゴウよ…お互いに汚泥に塗れていよう」
「歩み続ける限り前に進めるんだ。がむしゃらに、ひたすら前へ進め!そうすればいつしか泥も乾いて落ちてゆくさ。後ろを見ても、泥だらけの足跡も、乾いて落ちた泥も消えないけど……それでも歩み続ける限り、一緒に泥に塗れてでも俺はお前の手を離さない」
『意味がわからない』
「あの金剛と一緒に居る男の提督が言った言葉だ」
暑苦しいセリフだよな…と武蔵は言う。
「見ろ!こっちに向いて走って来てる女が私らの提督だ!奴らはコンゴウ…お前の手も取ろうとしているんだ」
「奴らは…お人好しのアホだ…だがな…私らはそれに救われているんだ…あの人達が手を取って握ってくれるから頑張れるんだ」
『何が言いたいのですか?』
「だから…」
グッと拳を握り込む武蔵
足が震えるーなら歯を食いしばれ。
視界がぼやけるーーなら己を信じろ。
限界も近いーーーなら倒れ側の1発を。
全てを込めて相手に伝えろ。
「だから…コンゴウ…一緒に歩もう…私達が居る!だから…負けずに抗って、進み出せえええ!!」
生まれた時から…そうだったから。
羨ましいと言う感情すら……。
なのに何故彼女達はこんなにも輝いているのか…?
こんなにもまぶしく輝いて……。
武蔵 改ニ 発動
『………』
ワタシはその右拳を避けようとも、受け止めようとも出来た。
しかし何だ…この感情は?
知らない…いや、忘れていたのか?
その考えは私の動きを一瞬止めた。
その一瞬は、彼女の拳が私に届くのに十分すぎる時間だった。
「行けええ!武蔵ーーーーッ!!!!!」
麗が叫んだ。
息を切らして走るだけでもキツいはずなのに…
彼女は艦娘の為に叫んだ。「行け」と。
コンゴウは見てしまった。
こちらへやって来る彼女の姿を…
想像してしまう。
彼女の下で笑う自分をーー。
ドゴッと武蔵の右拳がコンゴウの腹にぶち当たる。
「目を覚ませ…!コレが…私達の…想いだッ!!受け取れッ!!うおおおおおおおお!」
艦隊計画 被験002 コンゴウ
それが私の名前だった。
この生き方以外を知らない……
兵器として作られた存在。
負けないはずだった。
失敗の中で生まれた成功例…。
私と言う存在の過程にたくさんの犠牲があった。
私は負ける事は…許されない。
汚れた手では真壁さん以外手を取ってくれないから…と教えられてきた。
私には仲間を悼むことも出来ないから…
立派に仕事をして、綺麗になれ…と。
なのに私は…この武蔵に負けた。
何故体は動かなかったのか…?
何故私は…
負けたのに…こんな気持ちに…。
目の前に…人間の女がいる。
きっと私の片手ですら殺せる程弱い生き物…。
彼女は壁まで吹き飛ばされた私を抱きしめて泣いている。
「辛かったよね…もう大丈夫だから、もう…嫌なことしなくていいから…私が居るから」
意味がわからない…。
何故そんなことを…?
何故…?
どこかが痛む…。
何だ?この痛みは…。
「無駄です…。私はコレ以外を知らない…兵器です。お前達の言う幸せ…というものにはなれません……この汚れた手はあの方以外取ってくれないのですから」
だが
彼女は言った、叫んだ!
武蔵も鬼怒も…2人は叫ぶ。
届くように…。