提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
現在話数にご注意ください!
真っ直ぐにこちらにやってくる。
真っ直ぐにこちらを睨みながら一歩一歩詰めてくる。
「いけー!提督!」
「誰が出来損ないだ…」
「貴様が語るなよ」
「テメェだって利用されてんだよ…深海棲艦に良いように利用されただけなんだよ」
「ケンカすんなら…テメェの拳でやれよ!三流がッ」
「ウルセェ!!!貴様に何が分かるッ!!届かぬモノもあるのだ!どう頑張っても…凡人は天才には敵わないのだ!!ダカラ俺はこうして…敵とでも手を……確かに利用された!しかし俺は勝った!あの体は俺のものだ!!」
「逃げただけじゃないか」
「ナっ」
「自分の限界を勝手に決めつけて…手を伸ばす事を諦めた馬鹿野郎じゃねえか!!その結果がコレか!!」
「色んな奴傷付けて…めちゃくちゃに踏みにじって…」
「黙れええええええ!!」
真壁は砲撃した。
「提督!!危ないー!!!」
鬼怒は叫んだ。
が、
その砲撃は当たらなかった。
多少の破片が彼に当たったが…意にも介して無かった。
当たらない…?
避けて…いないのに?なぜ?
奴が目の前…に?
「!?」 ザッ
何故俺は後退りした!?
今の俺の半分ほどの大きさしかない
「うらぁぁあっ!!」
彼は男を殴った。太腿であろう場所に拳が当たる。
ただの人間が…俺を殴る…だと?
ズキン…
「ぐううう!………??」
ダメージは全く無いはずなのに…
何故だ?
痛む。
傷ひとつつかず、逆に救の手の方が傷ついているのに…。
何故痛い。
拳が痛い…でも知るか!
彼は殴り続ける。
ただひたすらに…。
痛い。
ここで、神崎 救には特別な能力は無いと断言する。
転生したから…中に誰かが居るから…は、一切関係無く、彼は本当にこの世界に存在する人と同じ…ただの人間である。
艦娘のように砲撃も水上移動も出来ない。
ちょっとしたことで怪我をして…死ぬ。
現に今もそうだ。
殴る側の救の拳は血だらけである。
では何故…真壁は痛がるのか…?
深海の意識を奪い取った今の真壁では無く…
その目を、歩みを、生き方を…全てを。
「バカな…こんな…こんな事が」
効いてない…
そんな事はわかってらぁ。
違う。
殴る事に意味がある。
アレもコレも…全て!
ただ、この手に込めてぶん殴る。
「お前に処分された艦娘…実験材料にされた艦娘、兵士や提督…鬼怒や由良や金剛や…………あと大多数の俺の恨み…受け取れやぁぁ!!!」
遂に真壁だったものはその勢いで後ろに飛ばされた。
膝をつくソレ。
「あの人……私達の為に…あんなになっても?」
猛金剛が言う。
「そんな人だから…救君らしいな」
「提督…ありがとう」
「…私達の為に……こんなになってまで」
彼女達は涙を流す。
期待なんかしてなかったのに…いや、心のどこかで期待していた…
街に待ち焦がれた…自分達を救い出して手を取ってくれる人が目の前に居る。
自分達が守るべき…弱い筈の人はこんなにも強かった。
傷つきながらも前を向き、絶対に伸ばす手を止めない。
この提督の力になりたい。
この人を守りたい。
この人と共に歩んで行きたい。
「後は…私が…私達がやります!」
「鬼怒…私と一緒に戦ってくれる?」
「うん!もちろんよ!」
「金剛さんも…いい?」
「はい!もちろん!」
「金剛ーー!!やっちゃえ!!」
麗の声が頭に響いてくる。
「はい!!」
奴の目の前に立つ。
「私が…悔しかったのはアンタに何も出来なかった事…!」
「お姉ちゃんや皆んなに苦しい思いをさせた事…」
「お姉ちゃん達が皆の役に立ちたいと思った気持ちを踏みにじったアンタだけは許さない!!!」
鬼怒が言う!
「もう…皆は戻らないけど……あなたを倒して、せめてこの呪縛から皆を解放します!!」
由良が言う!!
「私はこの生き方しか知らなかったけど、全てだったけど…もう要らない!私にはもう彼女がいてくれるから!私を認めてくれる人がいるから!!」
金剛が言う!!!
何故こんなに眩しいのか…
何故コイツらは…こんなにも…?
「いけ!いけええええ!」
「その手は自由を…幸せを……全てを掴む為にあるッ!」
「足掻け!手を伸ばせ!後ろには私達が居る!」
「「「おおおおおお!!!」」」
3人で全てを込めてぶち込む。
鬼怒と由良が右側から!
猛金剛が左側から!!
何もかもを乗せて…全力で…!!
「ぐがぁぁあぁああ!こんなものでぇっ…」
真壁も両の腕で彼女達の拳を受ける。
力は奴の方が少し上か…?
「くっ…3人掛りでも…」
「くううっ!!」
「まだまだぁ!!」
押される……なんて力なの…このままじゃ…。
「小娘如きにいいいいい!!」
立ち上がればすぐさまに反撃出来るだろう。
奴が立とうとする。まずい!!
足が地面を擦りながら後退する…やばい!
その時…背中に何か暖かいものを感じた。
私達はそれが何かすぐに分かった。
「「「提督…」」」
「負けんな!俺が居る!」
「私も…居るから!!」
2人は彼女達の背中を押していた。
「はん!虫けらが2人増えたところで…何も変わらん!!お仲間ゴッコに負けるかぁぁあpjm(m」
馬鹿だ…人が1人増えたところで何の意味もない。お荷物が増えるだけだ…。
寧ろ、全ての要の提督が前線に出て…ましてや敵の主力の目の前にノコノコと現れるなぞ、普通には考えられない事だ。
だが、2人は来たのだ。
そうしたかったから。
そうしないといけないと思ったから。
此処で奴がこの状況から抜け出せばやられるのは確実。
やられれば深い傷を負うだろう。
艦娘と違って入渠では治らない。
だが、
大事な艦娘を…仲間を守るのにそんな理由は要らない。
支えたいから
約束したから
一緒に手を取って歩むと!!!
お前達が…命を懸けるなら…自分達も同じなんだ。
やっと同じ戦場で隣に立てたのだから。
艦娘は少し笑う。
まだ頑張れる!!
力を…貸してください!!
由良 改
金剛 改
更に力を込める!!!
ピシッとほんの少し奴の腕にヒビが入った。
「!!よし、いける!絶対にやれる!!!」
「馬鹿な!?人間が2人増えただけで!?!?」
真壁が狼狽える。
もちろん提督らにそれ程の力はない。
麗も救もただの人間だ。
改となったこともあるし…たまたまのタイミングだっただけであろう。
だが、艦娘にはそんな事は関係ない。
提督が来てくれた…だからやれるんだ。
それしかないのだから。
マズい!このままでは…
「ぬおおおおおお!貴様らなんぞにいいい!!」
更に踏ん張り力を出す真壁。
押し返される…!!
立ち上がろうとする…。
艦娘の背中を押しながら2人は思う、
あとちょっとだったのになぁ…。
よく頑張ったさ……
だってこんな奴が相手だ…体格も倍以上あるんだ。それ相手にここまでやったんだ。
全力で戦った。
負けるのは…仕方ない……。
そう、仕方ないんだ。
なんて思えるかッ!!
…と。
まだだっ!
まだやれる!!
彼らは叫んだ。
「お前らッ!!力を貸せーー!!!」
「お願いッ…皆ー!!!」
待ってましたとばかりに彼女達は彼らの元へと行く。
「此処は任せて!行って!!」
と、自らが深海棲艦との戦いを引き受け提督の元へ仲間を行かせる者もいた。
「提督よ!…ふむ…まだ足りないか?ならこの長門が共に支えよう!!!!」
隣に長門がやってきた…大和も…金剛も居る。
「ヘーイ!まっかせてー!」
「麗提督!!待ってたぞ…嬉しいぞ!その言葉!!」
猛武蔵が、長門が雷が。
彼女達は何も言われなくても来ただろう。
ただ、その言葉が…何よりも嬉しかった。
ある者は彼女達に手を添えて
ある者は共に拳を伸ばして
ある者は共に背中を押して
ある者は真壁を砲撃して
龍田が、鳳翔が、加賀が、大鳳が、阿賀野が、電が、ゴーヤが、吹雪が、響が、暁が、日向が、山城が、迅鯨が、白露が、霞が、夕立が、赤城が、矢矧が、金剛が、榛名が、不知火が、霧島が、姫ちゃんが、天龍が、大和が、武蔵が、如月が、羽黒が、足柄が、睦月が、桜赤城が、ベルファストが、大淀が、明石が、夕張が、鬼ちゃんが、陸奥が、時雨が、比叡が、雷が、扶桑が、島風が、鳥海が、加古が、川内が、那珂が、神通が、球磨が、鈴谷が……皆が!
大破だろうが中破だろうが…
今やらないでどうする!
此処で奴を沈めないでどうする!
此処でやらなきゃ…行かなきゃ
どっちにしろやられる。
行かずに沈むより
行って提督の隣で……
いや!
行って共に勝利を掴み取るんだ!!
この手はその為にあるッ!!!!
「お願い…勝って!負けないで!!!」
洗脳から解かれた艦娘も声を送る。
中には新しい提督を応援に共に押しに行く者も居た。
「「「「「負けるものかーーーー!!!」」」」」
「テメーはしつけーんだよおおお!」
天龍が真壁を砲撃する。
何人もそれに続く。
赤城が指揮を取る。
「足を獲ります!!!発艦します!!狙いは敵深海棲艦!!」
バラバラバラと的確に機銃掃射して行く。
足を狙い立たせまいとする。
ピシピシ…と少しヒビが広かった。
救が麗が叫ぶ。
「「行け…ぶちかませ…!!コレがお前達の…仲間の力だ」」
「「「いけええ!負けるもんかぁぁあ!!」」」
仲間の力って…こんなに暖かいの?
熱い!!心が…熱い!
まだ先へ…もっと前へ!
限界の…その先へ…!!!!
届け…
届け!!!!
由良 改ニ 発動
「妹だけに…良い格好はさせませんよ!私は…私は!鬼怒のお姉ちゃんですから!!」
「提督…私…を見てください!これが…私ですッ!!」
金剛 改ニ 発動
「これが…私?さっきよりも…あったかくて…力が溢れて……ありがとう提督…私ッまだ行けます!」
「「「良い加減…倒れろおおおおお!!!」」」
ビシィッ…と真壁の腕に更にヒビがはいる。
「な…体のヒビ…が?!嘘だ!嘘だッ!あり得ない!」
「こんなところで…!こんなところ……!!!」
「逝けよ…お前を待ってる奴が居るぞ」
その言葉に、真壁は後ろを振り返った。
そして見た。見てしまった。
「お、お前達…!何だ!やめろ!やめろおおおお!!!」
それは思い。
残された思い。
彼に潰された者達の思い。
形はなけれども…きっと真壁には見えたのだろう。
バキン…。
真壁の体のヒビは広がり…腕から体へ……
そして
バキャン…と
割れた。
「ぬがぁぁああ!!まだ…まだぁぁあ!!!」
攻撃が止んだ!?
馬鹿め!!この程度…すぐに………再生…して
違う…。
まさか
「救君!」
「麗ちゃん」
2人が手を取り合う。
「「全員……用意!!!!」」
2人が並んで指示を出す。
全員がコチラに砲門を向けている…。
撃てない者は撃てる者を支え…共に手を取り。
「釣りはいらん!とっとけ!!」
「これで…終わりです」
「「撃てーーーー!!!!!!」」
轟音
轟音と共に放たれた攻撃は一切逸れる事なく…その男だった者へと向かう。
……誤算だな。
ここまでとは…
此処まで成り上がったと思ったのに…。
俺も……………ーーーーーーー。
サラサラと灰になる
その灰はヒュッと風に飛ばされ海へと還って行った。
「……やった」
「やったんだぁぁぁぁあ!!!!!」
うおおおお!!!
と歓声が上がる。
「救君ッッ!!!!!」
彼女は彼を抱き締める。
本当はずっと前からこうしたかった。
でも…
それ以上に横で一緒に戦えた、勝てた。
「生きててよかった!!死ななくてよかった!!!」
泣きながら言う。
「ありがとう…ごめんね?心配かけて」
彼もまた抱き締め返す。
生きてるよ…此処にいるぞと意味を込めて。
「ズルイ!私らも頑張ったさ!!」
「そーだそーだ!」
「いたたたた…大破であるけないなーーー撫で撫でしてほしーーなーーー」
「こらこら…」
「でも…良かった!」
「「「「提督…鬼怒……由良…お帰りなさい!!」」」」
「ただいま!」
「えと…私裏切ってたんだけど」
「私は…そもそも所属してなかったのですが」
「ヘーイ!2人ともッ」
「「はい!」」
ビクッとする2人。
「ただいまで…良いんデース。2人は私達と共に戦いました…。西波島鎮守府のメンバーなんデース!!」
「良いんですか…?」
「本当に?」
「そうでないと困りマース…具体的にはダーリンが泣きマース」
「そうだぞ!俺1人だけただいまとか寂しいわ!!」
と、2人の肩に手を置いて言う。
「ほら、3人で言うぞ」
2人はぐすっと言いながら言う。
「「「ただいま!!!!」」」
「「「「お帰りなさい!」」」」
「金剛…皆…他の解放された艦娘な皆もお疲れ様!!帰って休みましょう」
金剛が…武蔵が抱きついてくる。
「強っ!少し痛いよおー」
「我慢してくれッ!麗!生きてるぞ!」
「命懸けの中でやり切ったんだ!!」
「提督…ありがとうございます!私に生きる意味をくれて」
私も思いっきり抱き締め返す。
うん。
本当にありがとう…皆。
「私らもーー!!」
と、皆が雪崩れ込んでくる。
「押すな!」
「かわれーー!」
「あっちの皆を見ろ!」
「くーー!いいなぁ」
「僕らも…」
「提督ーー!!愛してるーー!!」
「抱きしめてーー!!」
「指輪ちょうだーい!」
「お嫁さんにしてーーーーー!!!!」
「ぬおおおっ!?」
「あのー…取り込み中のとこ悪いんだけど……」
と、誰かが声を掛けてきた。
「巌っさん!」
「誰がいわおっさんじゃい!!」
「元帥閣下!?」
「絶対忘れてたじゃろなあ…」
「真壁派の奴らは捕らえた。深海棲艦も一通り片付けた」
「…巌もだが……2人とも…よくやってくれた」
「「はっ!!ありがとうございます!!」」
「思いも歪めばこうなる…お前達には…今のまま、真っ直ぐな思いを持っていて欲しいものだと願うぞ」
「ここも滅茶苦茶じゃのーー…片付けは後日として…まあ、お前さん達を休ませないとな」
「皆の者ッ…ご苦労であった!!!!!此度の戦は勝利だ!!本当に良くやった!!!」
おおおおおお!!と声が上がる。
「ゆっくり休む事!以上!」」
「「「「「「はっ!」」」」」」
戦いは…終わったのだ。
台風大丈夫ですか?
雨風すごいっすね…。
そんな憂鬱な気分をどーにかできるシリアスパートになれば幸いでした。
パート10までの長いお付き合いありがとうございました。
次回はエピローグをお送りします。
はやく…はやく
いつも通りの真面目なほのぼの系日常話に戻らなくては……。
え?糖分不足?
え?ほのぼの系日常話ですよ!?
感想、コメントや評価等お待ちしています。
お気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )!