提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
昨日は2話投稿してるので
話数に注意してくださいー!
血溜まりの中に倒れる武蔵。
腹を貫かれ…大量に血を流す。
辛うじて息をしている…が、それも段々と弱くなっている。
誰でもわかる
助からないと。
敵すら勝ったと思う。
100人いれば100人が助からないと言うだろう…。
いや…
99人が助からないと言うだろう。
たった1人を除いて…。
なら…その1人は?
奴か?
いや、救はこの100人の中には居ない。
なら
このような状況で助かると言うバカはどこにいる?
そのバカは…里仲 麗 …提督だ。
どうやらバカは感染るらしい。
死なせないッ!!!
私にとって怖いのは…私が死ぬ事じゃない
私の前から…救君が居なくなる事。
私の毎日から彼女達が消えてしまう事。
彼女達の笑顔が見られなくなってしまう事。
彼女達と共に夢を叶えることが出来なくなる事。
その方が嫌だ!!
走る
走る
ひた走る
足がもつれて転ぶ。
「あうっ!!」
痛い…
こんな時…
救君が来てくれたら……
きっとこんな状況をどうにかしてくれるに違いない。
来て欲しい
助けて欲しい
じゃない!!
いつだって誰かに頼ってばかりじゃダメだ!
やり切って…乗り切って
また笑顔で皆と過ごすんだ!
救君なら…きっとこうする。
"誰よりも彼女達の近くへ行くはず"だ
そして"こう言う"はずだ
「武蔵ーーーー!!起きろーー!!!」
「ま」
「け」
「る」
「な」
「あ」
「ぁ」
「ぁ」
立て!!!!
「あの子に負けないでッ!あなたは…お前は!!!!」
あの世へと続く微睡の中で声を聞いた。
懐かしくて優しくて大好きなあの声。
幾度となく私を支えてくれた
あぁ…
と、応えなければ……ならない
が…
すまない。
腹を貫かれて…
もう、体は動きそうにないんだ。
すまない…。
このまま…眠りに…。
思い出す走馬灯。
『提督、俺がもし沈んだら…どうする?』
ーーこれは…昔の私か?
『寂しいこと言わないで…?』
ー寂しい思いをさせてしまうな…
『提督、私がもし…沈んだらどうする?』
ーー今の私か?
真面目に聞いた質問に提督は笑顔で答えた。
ーー以前までの彼女なら、きっと寂しいよ!そんなこと言わないで!なんて言ってただろう…。
しかし、今は……
『ーううん、武蔵は沈まないよ。沈ませない…だってあなたは…ーーーー』
ーー提督が次に言うことがわかる…
だろ?
ハッとする。
そうだ。
私は…負けられないんだ、寝てられないんだ。
私が死ぬのは…平和な世で……皆の腕の中で…だ。
負けるか
負けるものか
負けてたまるかぁぁああぁ!!!
ただ…体に穴が空いただけだ!
血をたくさん流しただけだ!!
麗が流して来た涙や…傷
皆で流して来た涙や受けた傷に比べたら…!
私がこのまま倒れて沈む理由になぞ…なり得るものかッ!!
ぬるり
と、立ち上がった武蔵。
息も絶え絶え…死にそうな顔。
震える足と体。
「武蔵!!」
「……闇の中で」
「?」
「ひどくうるさい声が聞こえてな…寝てられなかった。」
「ひどい!!」
「その声はな…暖かくて…安心できて…でも、か弱くて…それでも力強い優しい声なんだ」
「あぁ…そうだ、私はここのエースだからな。期待には応えなくてはな」
限界の中で武蔵はニヤリとしながら言う。
「例え…ここで散ろうと……提督を敗将にはしない」
「……相棒!私と最後まで…一緒に戦ってくれるか?」
「もちろん!その為にここに来たの」
「…ふっ……愚問だったな」
麗は感じた…なんだかムズムズする。
だから
「……武蔵…」
「何だ?」
バシィン!!!
「うおっ!?」
麗が武蔵の背中を思い切り叩いた。
「な、なにを!?」
「気合い」
「なっ!?」
「私が最後まで戦うってのは…この戦いじゃないよ…平和になるその時まで……あなたは…こんなところでは死なない!だから…気合い!!」
「気合いって……あの提督に似てきてしまったなあ…麗…私は死にかけなのに……」
不可能なのだよ…麗
もう…感覚もないんだ……。
目も霞んで…お前の表情もよく見えない。
「死なない…死なせない!!!」
麗は強く言った。
なんの確証があるのか…死なせない…などと。
それでも…麗の言葉には力が宿った。
限界の武蔵にはもう見えていないだろう。
麗の体が…淡く光るのを…
棲姫はソレを見た。
「………?」
でも…体が軽くなった?
武蔵は気付かない。
彼女の体も淡く光っていることに…!
「待たせたな…」
「イエ?面白い…貴方達…最高…。ソノ最高を潰したイ!」
「死ぬ間際ノ…花火ノ様な…一瞬ダケ輝く命の炎…見セテ!!」
私の…輝く姿……
じっくりと見て行け!!!
「私の名は…武蔵!大和型弐番艦にして猛武鎮守府最強の戦艦だッ」
「……」
?
クイクイと顔を私の方へ向ける武蔵。
「え!?私も!?!?」
「当たり前だろう!!あの提督もやってたろ!?一緒に戦うんだ!やってくれ!!」
「えぇ…」
「すまない!もう一度…いいか!?」
「エ、エエ…イイケド…」
いいんですか……。
「私の名は…武蔵!大和型弐番艦にして猛武鎮守府最強の戦艦だッ」
「わ、わわわた、私は…「恥ずかしがらない!」
いやぁあ……
「私は里仲 麗!英雄の名を継ぐ猛武鎮守府の提督!!」
そして…
そして…!!
「そして…最強の武蔵が率いる艦隊の提督ッ!!」
…救君が居なくて良かった……。
最強…か…。
提督よ…お前がそう言って、願ってくれるなら…私は全力で応えよう!!
「全てを絞り出す……!!推して…参る!!いくぞおおおおお!!」
「いっけえええええ!!!!!」
武蔵は敵へと向かう。
足は鉛のように重く、体は鎖で繋がれたように重い
と、思っていた。
アレ?何だ?
体が…自分のようじゃない感覚……これは
ー麗にとっては…くっ殺不可避な恥ずかしい掛け合い。
しかし
艦娘と提督の絆…それは深ければ深い程、強ければ強い程に艦娘を強くする。
大本営でのあの時よりも…それを経てなお、強くなった鎮守府の絆。
負けないでと言う麗の気持ちに艦娘が応えた。
頼れ!と言う武蔵の気持ちに麗が応えた。
その思いが武蔵を体の奥の記憶の奥から全てを突き上げる。
武蔵は混乱していた。
世界がゆっくりと動いているような…
意識だけが先にいく感覚。
何だ?これは…。
暖かい…?
光…?
提督の暖かさ………?
麗から…光が………
彼女から出た光が私に流れ込んで来る?
それは、全身にまわり…私を満たす。
死の淵にて…それでも尚、敗将にすまいと…
提督の声に応えようとした艦娘。
彼女の強さを信じ…寄り添い
彼女を死なせまいと…願う提督。
確かに一度掛け違えた道にいた。
しかし、それでも…彼女達の絆は…
死の淵にて…それでもまだ更に強く輝いた。
私はそのまま光と共に……前へ…前へと
その輝きは…武蔵を包み込む。
泥だらけの過去も
消したい思い出も
続く茨の道も
楽しい今この時も
全ては…麗や皆の為に
誰か一つ欠けても…今の私は無い
どれか一つ順番が狂っても今の私は無い
そうだ…
私は…私達は空っぽな
ありがとう…
今こそ…
今こそ!!
私は…今までの私を超えて行くッ!!
武蔵は
そして
武蔵は……いや、武蔵達は
限界の先の限界を…ぶち抜いた!!!
武蔵 改 発動
いや…まだ先へ!!!
武蔵 改ニ 発動
いや…更に…まだ限界の先へ!!
武蔵 改ニ 超 高揚状態
武蔵が
信じられない光景だった。
死に際の…線香花火なんてものじゃなかった…。
流れ星のような…閃光…。
「ナッ…!?」
「うおおおおおおッ」
棲姫には閃光が見えた。
いや閃光の跡しか見えなかった。
さっきまで、ほんの一瞬前まで遠くにいたはずの武蔵が
違う!
違う!!
「このまま…吹き飛べえええええ!!!」
「アグ…グァあああああ!!!」
棲姫はドン!と言う音の壁と共に後方へと殴り飛ばされる。
ドッ ドッと言う音と共に海に叩きつけられながら遥か彼方まで吹き飛ばされた。
「ガッ……?……?」
何が起こった?
仰向けに海に浮かぶ…。砂浜が…遠い…太陽が嫌と言うほどに眩しい。
「ゴフ…何ダト…言ウノ?…あ…のチカラ…ハ……」
早く体勢を立て直さない…と?
待て
太陽が眩しく…ない。
まさか!!
「るぉおおおおおおお!!!!」
武蔵だ
背中に提督を乗せて飛んで来やがった。
「行こう…麗…共に!どこまでも!」
「うん!行こう!武蔵!!」
守るはずの提督…。
こんなにも…暖かくて…心強いのか。
最強の言葉なぞくれてやる。
現に私は負けたのだから…。
最強の言葉なぞなくても……私には皆が居る!!
皆を守る為に…私は
麗が温かい…と言ってくれたこの手で
お前の願いを…私達の願いを
叶えてみせる!!!!
「コレが…私達の…全身全霊!本気の…一撃だぁぁあああ!!!」
立て……立った!!
体が動かないッ!
ガード……!
体が諦めている…
恐怖している。
奴に、奴の提督に…。
だがッ!!
こんなにも心が震える!!
「アハ…」
武蔵の拳を腕でガードするーー
ズドオオオン!!
「ッ……mdt@m)w@ga」
最早、声にならない。
弩級戦艦の砲撃すら生ぬるく感じる一撃…!?
命尽きる前の一瞬の花火…?
飛んだ間違いだ
生命感溢れまくる火山だった。
ドバッ…と、足元から轟々と立ち登る水柱。
「ありがとう…戦艦仏棲姫!お前のおかげで…私は更に強く立ち上がれた……だから見せてやる…私達の全てを…鬼神と呼ばれた艦娘の力を!!」
「うおおおおぉおおおああぁぁああああ!!」
その拳はガードを突き破り棲姫の顔面に…頬に突き刺さる。
武蔵は腕を振り抜いた!!!!
ドパァアン!!
棲姫は海に叩きつけられ…反動で宙へと浮いた。
まるでおもちゃのように回転する棲姫。
回る景色の中で見えたのは…
拳を構える武蔵と真っ直ぐにこちらを見る提督の姿だった。
「私の…」
「いや、
武蔵の拳は回る私の腹に……
その熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い拳を叩き込んだ!!
熱い何かが流れ込んでくるようだった。
負けたーー
ーー完敗だ
私は…また遠くへと吹き飛ばされた!!!
悔し…くない。
何だこの感情は……。
これは……
あの日見た鬼神の如き艦娘に勝つ。
それだけの為に生きてきた。
確かに勝った…
なのに、奴は這い上がってきた。
鬼神よりも輝く艦娘となって…
奴は…
カッコよく…強かった。
「フッ……完…ぱい…ダ。敵に負ケタノニ…こんなにも清々シイノだな」
「……」
次の瞬間棲姫は素っ頓狂な顔をする事になる。
「おいでよ」
「え?」
「ぬ?」
武蔵も素っ頓狂な顔だ。
「生まれ変わったらさ…艦娘になっておいでよ、ウチに」
「もっと楽しいからさ…」
「提督ッ?楽しい…だと!?」
「強い娘と戦いたかったんでしょ?最強を目指したんでしょ?」
「だって…あなた…一度も街も私も狙わなかったから」
「!?」
武蔵は振り返る。
そう、奴は出来たはずだった。
街を攻撃する事も麗を殺す事も…。
しかし、しなかった。
それは彼女が純粋に私と本気で戦いたかったからではないか?
「アハハハハハハ!!敵ニ気付かレルとは…私もマダマダ…」
「ありがとう…」
「エ?」
「私の…大切な相棒、武蔵を強いって認めてくれて…ありがとう」
そして麗は棲姫に近づき…手を取り言った。
「あなたの手は…きっと多くの人を救えるから」
「ね?武蔵」
「…そうだな」
お前は変わらないんだな…麗。
「………」
棲姫はフッと笑った気がした。
「…強かった。お前は本当に強かった……そうだな…提督の言うとおりだ。生まれ変わってやって来い。私より強い奴が居る鎮守府を紹介してやろう…そして」
「次は仲間として共に戦おう」
と、手を差し出した。
彼女はその手を……
取った。
「お前ヨリ強い奴…か…いいね……ソリャ」
「フッ…でも…バカだナ…敵に…そんなこと言うナンテ…。
デモ…そんな馬鹿は…嫌イじゃ…
ナ
イナ
ァ
…」
笑顔の中棲姫は光となって消えていった。
「救君みたいな事言っちゃった。……来てくれるかな?」
「前々からだろう?全く無茶をするようになった!」
「あぁ…きっと来てくれるさ」
2人でお茶しながらその話をした。
「そうか…」
「でも麗ちゃん」
「君は俺が褒めるまでもなく…立派で強い提督だよ」
「まだ…転んで足が痛いから…」
「お姫様抱っこ…必要だった?」
「うん!とても必要!!」
あなたに甘えるのだけは別腹なの!
何故救君が居たか?
大淀から連絡を受けてきてくれたらしいの
丁度、深海棲艦が現れたらしいの。
皆は…麗ちゃんのところへ!と言ったらしいけど
でも…武蔵が居るから大丈夫だ…お前らは…信じて待て…と言ってらしい。
だから…アイツらが帰ってくる為に全力でこの鎮守府を守ろう!
と艦娘を奮い立たせて近海の警備に当たってくれたらしい。
武蔵が改ニになった時…皆も光って改になったみたい。
皆が…驚いてたけど
「提督の暖かさが私を包んでくれた!」って言ってた。
それからどれだけ期間が経ったかな?
ある日…
「たのもーー!!」
門を叩く者がいたと報告を受けて麗と武蔵が向かう。
そして、こちらと目が合うと…ニコリと笑って言った。
「提督!武蔵!久しぶりだな!」
「む…お前は…」
「あなたは…」
わかる。
姿は違えど…少しとは言え拳を交えた2人にはわかる。
彼女はーーー
「私はーーー最強戦艦ーリシュリュー!」
あなた達との約束を果たしにきた!ーーーと。
麗と武蔵の更なる成長回
構想段階から武蔵をはマジで退場させるか悩んだのですが…アツいキャラを失いたくなかったので続投!
エフェクトを多用してアツい話にしたかったのですが…
熱量はあがったでしょうか?
手を伸ばすだけでなく
受け継ぐ というのも裏テーマなので
麗は猛武というものを受け継いでいます
あと、救の生き方、考え方も受け継いでいます。
少しでもお楽しみいただけたでしようか??
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!
コメントやメッセージありがとうございますううう!!
いつでもお待ちしています!!
あ…お盆休みください…