提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
奥さんらしいことをしなくては。
恋人らしく見られたい。
子供に見られたくない。
提督さんを困らせたくない。
電は強く思っていた。
だから
「…喋り方をレディらしくするといいわ!」
「…なので……わかったわ!」
「メイク…?ファッション…?電?あなたはそのままでも充分可愛いわよ?それに…あの人ならそんなの気にしないと思うけど…」
「そこを何とか…お願いします…」
「……わかったわ!任せなさい?」
「提督さん!電はコーヒーはブラックで飲むのです」
「え!?大丈夫なの?!」
「だ、大丈夫なのです!」
うう…苦いのです…でも…。
暁型の性なのか…?
いや…違うな。
俺の為か。
自分が子供に見られるのも嫌だろう。
それ以上に好きな俺といるのに…1日とはいえ夫婦として居るのだ。
隣に立っているように見られないのが嫌なのだろう。
「電…?」
「どうしたのです?」
「やめよう」
「…え?」
「もうやめよう」
「無理する事はないんだ」
「なにが…ですか?」
「口調も…振る舞いも…」
「…無理なんかしてないですよ!このファッションもお化粧も…いつも」
「この前、暁達と出る時は普通だったろう?」
「……ッ!!電は…ちゃんと夫婦に見られたいのです!子供扱いされて…提督さんも変な目で見られるのは嫌なのです!…なのに…提督さんまでそんな事を言うのですか?」
「電…そう言うわけじゃ…」
「提督さんなら分かってくれると思ったのに!!」
この場から走って逃げる電
の手を掴んで離さなかった。
「離してください!」
「嫌だ」
「何でですか!!」
「離したくないから…。それに電も本気出したら抜け出せるだろう?」
艦娘は艤装がなくても力は強い。
俺なんかひとたまりもないくらいに。
なのに電は…無理に俺を振り払おうとはしなかった。
何故か?
「そんな事したら提督さんが怪我しちゃうのです」
ぽろぽろと泣く電。
そう考えているのも分かっていた。
我ながら卑怯である…が、俺は離しちゃいけないと思った。
ふと…電の力が少し抜けたのを感じたので
彼女を抱き寄せて電の頬に両手を添える。
「電?背伸びなんかしなくていい、普段通りのお前でいいんだ」
「いや…普段通りのお前が好きだ」
「確かに…嬉しい。俺の為に慣れないファッションなり、化粧なりをしてくれて…大人の?口調まで頑張ってくれて」
「でもな?お前はお前のままでいいんだ」
「……」
「周りの目がなんだ、俺は気にしない」
「大切なのは俺達2人がどうあるか…じゃないか?」
「俺は今のままの電が好きだぞ」
「…ドジですよ?」
「可愛いじゃないか」
「たくさん壊しましたよ?」
「形あるものはいつかはそうなる」涙)
「提督の大切なものも」
「…その分他で思い出を作るさ」 血涙)
「体も…小さいです…他の人みたいではないのです」
「特に気にしてないぞ?」
「ぼんきゅっぼーんではないのです」
「手を繋いで隣を歩くのには関係ないな」
「こんなのでも愛してくれますか?」
「お前だから愛するんだ」
他の艦娘…特に軽巡以上の!!を見る度に溜息が出た。
何度か鳳翔さんのところで駆逐艦の集いで(ソフトドリンクで)飲み倒した。
初月とか…潮とか…あそこら辺の駆逐艦は…恐らく駆逐艦の皮を被った巡洋艦に違いない。
改ニさえ来れば…!と(ソフトドリンクを)飲み明かした。
ーお前だから愛するんだー
提督さんは…
いつも欲しい言葉を掛けてくれる。
「うっ…ぐずっ…」
「提督さぁあん!!」
電は飛びついてきた。
彼は優しく受け止める…。
例え涙やメイクで服が汚れようと…彼には些細な事。
服ひとつより…彼女達の笑顔の方が大切だから。
ひとしきり泣いた後に着替え等を済ませた。
電はメイクも落としたらしい。
着替え?
ATSに頼んだ!
〜広告〜
明石 輸送 サービス
Akashi Transport Service
え?!出先で着替えがない?!そんな時はお任せください!
工廠在庫10万点の商品があります!
小腹がすいた〜から
無敵のビームライフルまで!
どんな所へも!何でも!運びます!
是非ご利用ください!!
1万円以上で送料無料!
今ならポイント2倍キャンペーン中!
お申し込みはお電話かネットにて!
俺も着替えたさ!
服がね!うん!仕方ないね!顔面プリントアートみたいになってたからね。
今も絶賛抱きつかれてます。
「…電?」
と、俺は本物の指輪を彼女に差し出した。
「……同情じゃないのです?」
首を縦に振る。
「私でいいのです?」
「君に受け取って欲しい」
「…嬉しいのです!ありがとうございます」
「あぁ…また涙が…」
電はえへへ〜泣き笑いでとつけてもらった指輪を見ている。
そして
「…もう一つ欲しいのです」
「なに?」
「子供が…」
「うそん!?」
「嘘です…ちゅーして欲しいのです」
「ちゅーでは子供できないからね?」
「それくらい知ってるのです!!」ぷりぷり
電が背伸びをして、俺が屈んでキスをする。
どちらかが無理をする恋愛や夫婦生活…は、ありえない。
苦労も分かち合うからこそなのだ
だからコレが丁度いい。
「あら!!アンタ!そんな小さい子に手を出して!犯罪よ!!」
と、幸せな時間は引き裂かれた。
「大丈夫かい!?無理やりされたのかい!?今すぐ警察に…」
ご都合良く…厄介なのが来たか…?
また、電がしょげ…
いや、それはないだろう。
「違うのですッッ!!!!」
「私はこの人の…奥さんなのですッ!!電が小さいからと言って想像で物を言わないで下さいッ!!!」
電は堂々と言った。
「え、あっ…でも…」
しかし、訝しげに俺を見るご婦人さんに電は言った。
「私の旦那さんを…そんな目で見ないでください」
「とても失礼です!!」
「……あら…間違いならいいわ」
「謝ってください!」
「え?」
「提督さんは…どんな時も優しくて…無茶して……ヒヤヒヤするけど…私達の事を何よりも1番に考えてくれる人なのです!!」
「私の優しくて大切な…自慢の旦那さんに謝ってください!!」
また涙目で言う電。
「……ごめんなさい」
と、言うとそそくさと行くご婦人。
「ちゃんと謝れない人こそ…子供なのですよ」
と追い討ちをかける電。オーバーキル気味に。
「ありがとうな電」
きっと怖かったろう。
怖いと言うと語弊があるかな?
人が怖い訳ではない。
怒り慣れてないから、怒るのが怖かったのだろう。
それでも彼女は……
やはり俺の為に言ってくれたらしい。
「少しスッキリしたのです!」
ニコリと笑う電。
「電…」
思わず抱き締める。
ありがとう…と頭を撫でながら。
「ありがとう…本当にありがとう」
「えへへ…提督さんの匂いは…落ち着くのです」
その後のデートではずっと手を繋いでいた。
ただ…
パフェを食べに入った店で
「う……○学生なら…無料……なのです」
と、自尊心と葛藤していた電は面白かった。
「嫁なんでしょう?」って悪魔の囁きをしてみた所
「そうなのでした!!」と正気に戻っていたが…注文の時に店員さんに○学生さん今なら無料ですよ?と言われた時の、苦虫を噛み潰したような顔で言った「大人なのです…」は忘れられないだろう。
寝る間際に電に言われた。
「今日は一緒に寝ても良いですか?」
「ん、いいよ?」
「えへへ…嬉しいのです」
「やっぱり…提督さんの隣は落ち着くのです」
と、引っ付いてくる電。
電とか駆逐艦勢はあったかいのよねえ…。
「コレからも…ずっと隣に居させて欲しいのです」
「おう、ずっと居て…な」
「提督さん、大好きなのです!愛しています!」
「俺も…愛しー!?」
言葉を遮るように唇を奪われる。
「提督さんの驚いた顔…可愛いのです」
電は小悪魔のようにニコリと笑った。
明けの鎮守府…。
電は今日も頑張る。
時々左手を見てニヤリとしているようだが……。
「はわわ!!」
ドゴォオン……
「…陸奥…?…向こうに……楽園が…見える…」
「長門ッ!?行かないで!?長門オオオオ!ダメだッ帰ってこい!!!!」
「………」 シーン
「ちょっ!武蔵さん!?」
「武蔵が大破だと!?敵襲か!?!?」
ケッコンカッコカリしてから…パワーアップしたからか…被害の度合いが増えたらしい。
確実に中破以上削るようになったとか……。
今日も鎮守府は平和です。
電は…ドジっ子でもいいじゃない!
お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!!
好きなシリアスエピソード
-
1 鉄底海峡編
-
2 蒙武との演習編
-
3 紫陽花の咲いた日に
-
4 正義の在りどころ
-
5 誰が為に鐘は鳴る
-
6 西波島大決戦
-
7 焦がれる背中に
-
8 あなたと逢いたくて
-
9 青い海に燃える
-
10 星に手を伸ばす者へ
-
11 麗と武蔵 最強の名の下に