提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
執務室に艦娘達が集まった。
「ん?」
「あのね?僕達って記憶戻ってから…夫婦したでしょう?」
「うん」
「金剛さんとは…お泊まりしたよね?」血涙)
「は…はい」
「鳳翔さんは…提督との記憶が戻る前なんだよ」
「そうだな…しかし…順番が…」
「だから…はい!」
皆は休暇届を2枚出してきた。
「…もう一度…2人の時間を過ごして」
「お前達…?」
「鳳翔さん…て1番頑張ってる人だと思うの」
「だから…」
「お前達はそれでいいのか?」
「うん、私達からも…お願い」
あの日から…私の気持ちは、ずーっとあなたにあります。
どれだけ世が移り変わろうと…決して変わらない。
もっと呼んでください…私の名前を。
もっと呼ばせてください…あなたと。
もっと隣に…ずっと隣に居させて下さい。
この愛だけは…例え駆逐艦にも…巡洋艦にも正規空母にも、弩級戦艦にも…
決して負けはしませんから。
「〜♪〜〜♪」
「今日のメニューは何にしよ〜?」
「あの人〜のため〜〜に愛情込めて〜」
なんて歌いながら料理をしていると…
ガラッ!!!
「鳳翔!!!!」
とあの人がダイナミックエントリー。
「ひゃわっ!!」
「あ、あなた!?どうしたのですか?」
本当に驚きました。変な声出ちゃいました…。
息を切らしてハーハー言うあの人。
とりあえず水をお出しします。
「お腹空いたのですか?まだ何も…「休暇を取ろう!2人で」
「え?」
「もう一回…1日俺に君の時間をくれないか??」
「えと…時間…ですか?」
「いきなりのことで頭が…ついていかないのですが…」
提督は落ち着いて話をしてくれました。
事情を聞きました…。
皆さんが…気を回してくれた…のですね?
「いいのですか?」
「お願いしたい」
涙が出そうになる程嬉しい。
「…はい、喜んで!」
待ってましたとばかりに艦娘が入ってくる。
「聞いたか!?よっし!準備は!?」
「バッチリやで!ほい!鳳翔!」
「え!?コレ…龍驤ちゃん!?」
龍驤から荷物を受け取る鳳翔。
「ご主人様!」
同様に荷物を受け取る救。
「皆で…プレゼントするよ!2人の旅行!!」
「み…皆さん?順番がまだの人も…」
「そんなこと気にすんな!平等じゃないとあかんやろ!」
「そうそう、鳳翔さんも…あの時と今とじゃ違うでしょう?提督への気持ちが」
「演習に…戦闘に…皆のご飯に、皆の為に毎日頑張ってる鳳翔さんに特別休暇をプレゼントします!」
「少しだけお節介させてくださいよ!」
「ま……私も負けませんけどね?」
こそりと、鳳翔に誰かが耳打ちする。
「一泊二日の温泉旅行ですよ」
「え!?」
と、赤くなる鳳翔。
「そうと決まったら急げー!!」
「さあさあさあさあさあ!!」
半ば追い出されるように皆に船着場から船に乗せられる。
「「「「「行ってらっしゃい」」」」」
皆は笑顔で見送る。
心の底から…楽しんで欲しいから…。
軽空母として、後輩の指導にあたる鳳翔。
航空戦隊として戦場に出る鳳翔。
居酒屋鳳翔…皆の憩いの場や美味しい料理を提供してくれる鳳翔。
秘書艦として…提督を支える鳳翔。
鳳翔さんは頑張り屋さんだから…。
ほんの少しだけのお節介よ…。
船から降りて電車に乗る。
旅のしおり曰く、到着予定地はとある温泉旅館。
「えと……温泉の一泊2日旅行…?」
「あなたはいいのですか?私と…その…温泉旅行なんて」
「…鳳翔は?」
「わ、私はせひ、あなたと過ごしたいです」
「俺も…鳳翔と居たい」
嬉しい。
本当に嬉しい。
船と電車に揺られて…目的地まで着きました。
「思ったより早く着いたね」
「そうですね」
チェックインまでかなり時間があるので周辺を散策します。
人…多いな…。
手…繋ぎたいな…。
なんて思っていたら…。
「はぐれないように」
「あ…」
彼が…私の手を取ってくれた。
私も指を絡めます。
恋人繋ぎで…。
さすがは温泉街…。
色々なお店がありますね。
「何を見て……あ!!」
「あ!いや…たまたま!たまたまだ!!」
「あなたは…私が居るのに…ああ言うお店に興味があるのですね?」
提督の目の先には……ピンク街の路地が…
まあ…これも土地柄仕方ないのでしょうけど…少し意地悪しておきます!
「そんなことない!たまたまだって…。俺には鳳翔が居るから」
「…したいのなら……いいですよ?」
「え?」
「…さあ!!行きましょう?そろそろお昼にしましょう?」
「ちょ!鳳翔!?」
「ん〜♡美味しい〜」
満足そうな鳳翔の顔。
名物の牛タン味噌焼きを食べる。
「うん!うまい!」
「今度居酒屋でも出してみましょうか」
「そうだな!皆喜ぶぞー?俺も喜ぶそー」
「なら…ださなくちゃですね」
「あなた?」
「ん?」
「はい、あーん」
「は…恥ずかしいな…あーん」
もぐもぐ
「どうですか?」
「…数倍美味しく感じるよ」
「まあ//」
「新婚さんですか?仲が良いのですね」
と、店員さんが話し掛けてくる。
「はい!新婚旅行なんです」
照れ臭そうに…それでも嬉しそうに答える鳳翔。
「あら!綺麗な指輪ですね〜」
「はい…私の宝物なんです」
「……」
「良かったですね!旦那さん!」
「はい…本当に…」
「?あなた?どうかしましたか?」
「…いや!なんでもない」
宝物…か。
画面越しの…贈り物でも宝物と言ってくれるのか。
少しだけ自分の中で何かが、もやもやした。
また2人で歩く。
「お兄さん!やってかない?!」
商品は…ぬいぐるみ?置物?
「柴犬のぬいぐるみかわいいな」
射的…あぁ…スコアを競うのね?
うん?弓もあるのか?
鳳翔の方をチラッと見る。
「私…やってみてもいいですか?」
目が輝いてらっしゃる。
「おっ!奥さん!やるかい?弓は難しいよ?!」
「少しだけ経験がありますので…」
ニコリと微笑む鳳翔。
嘘つけッ!毎日構えてるだろうッ!!
とは言えなかった。
「ほー…やってみなよ」
こちらもニヤける店主。……俺、しーーらね!!
「あなた?アレ取ってみせますから!」
「おっ!期待してるよ!」
「……」
シン…と集中する鳳翔。
鳳翔の周りがピリピリする中でも鳳翔は微動だにしない。
そして…
シュッと放たれた矢は…的のど真ん中を射抜く。
「あー!当たりました♪」
などとわざとらしく言う彼女。
「ひゃーー!すげえ!真ん中だ!このぬいぐるみでいいのか?」
「はい!主人が欲しがったものなので」
「ほいよ!旦那さんは…幸せものだねえ!こんな美人な上にすげえ奥さんなんだからよ!」
「…はい。本当にもったいないくらいの…最高の嫁ですよ」
「……あなた…」
「あなた…どうかしたの?」
彼は答えない。
「…あなた?」
私は不安になって呼ぶ。
「鳳翔」
「指輪…貸してくれないか?」
「え…いいですけど…」
鳳翔から指輪を受け取る。
他の指輪と…どこも変わらない指輪。
もっと高い指輪を贈ることもできる。
もっと煌びやかな指輪を渡すこともできる。
なのに彼女は…彼女達は、画面の向こう側からのプレゼントを…宝物と言ってくれた。
俺は知っている。
皆…時折、指輪を眺めてその頬を緩ませてるのを。
俺は…鳳翔に背を向けてゴソゴソとする。
「あの…あなた?返してくださいね?」
「わかってるよ」
……
…
「鳳翔」
「はい」
彼は振り返り…
小さな箱を彼女の前に差し出す。
誰にでもわかる…。
指輪の入った箱。
もちろん中身はさっき預かったものだ。
決して新しいものではない。
新しい方が綺麗だろう…。
しかしそれでは意味がないのだ。
鳳翔にとっては…
「もう一度…しっかりと君に贈らせて欲しい」
「君が宝物と呼んでくれた…コレを」
そう。
俺の自己満足だ。
しかし…
画面の向こう側とは違う。
今は目の前にいるんだ。
だから…贈らせて欲しい。
この手で
直接君に。
「………」
鳳翔は口元に手を当てている。
目が潤んでいる。
「俺は…色々君に心配をかける。苦労をかける。…強い人間でもなければ…賢い人でもない」
「それでも…君と歩む明日のために精一杯頑張る」
「君を1人にはしない。きっと君を幸せにしてみせる」
「だから…改めて受け取って欲しい!直接、渡させて欲しい」
「俺と…ケッコンしてほしい」
「…は……い」
彼女はポロポロと涙を流す。
他の人が指輪を受け取るのを見て羨ましいと思っていた。
既にもらっている自分としては…そんな贅沢も言えないな…と思っていた。
そんな一泡の夢が…叶ったのだ。
彼女はすっと…左手を差し出した。
彼の温かい手が…彼女にそっと触れて…
左手の薬指に…また重さが戻ってきた。
「ありがとう……ございま…す」
彼女は彼に飛び付きます。
「良かった」
彼は言いました。
「あなた…もっと強く抱きしめて下さい」
「わかった」
彼は力強く抱き締めます。
彼女の華奢そうな体を…愛おしそうに…それでも強く。
「指輪だけ…ですか?」
と、私は目を閉じる。
「…鳳翔…愛してる」
あの人と唇が重なる…。
キスが終わると…私も言います。
「私も愛しています」
「そろそろ良い時間ですね」
そんなことをしてる間に…チェックインの時間になったので宿へと向かう。
鳳翔編…
全投稿では150話行ってました。
早いもんで……
やっぱり…ね
記憶戻ってからの…方がいいかなと…。
あまあいお話。
お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!