提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
『出来まセン…』
『私は…彼を…ダーリンを…愛していマス」
「バカめ!偽物の記憶なんだぞ!?それに流されたか!!」
ぽろぽろと涙を流す金剛。
『うっ…それでも…ひぐっ…それでも……私には…ダーリンを撃つことはできまセン……ううっ』
だって…私は
金剛だから…
金剛は泣いていた。
頭の中で必死に抗っていた。
己の出自も…記憶も全てが偽物だと気付かされた。
愛する者を殺せと命じられた。
それは即ち…
神崎 救の艦娘としての金剛の終わりを意味し
セイレーンによって艦これの金剛の情報と記憶を元に造られた敵…KAN_SENの金剛…としての意味というものを理解したからだ。
しかし彼女は涙を拭う。
そして…彼女はテスターへと攻撃する。
セイレーンは驚いた。
予想外な事が起きたからだ。
駒という支配からの脱却…。
赤城の自我の残りよりも…もっと深い…!!
面白い…その可能性は面白い!!
そうだ…もっと見せてくれ!!
「なら…諸共…死ねえええ!!!」
ついにテスターが攻撃を開始した。
『させません!!』
金剛は艤装を
艦船に弾幕が撃ち込まれる…。
「ダーリン…大丈夫デスからね?」
絶対に守ります…カラ!
「コレで少しは…ダーリンを逃がす時間稼ぎで耐えら………」
ドシュ……
「甘かったね」
ひとつの凶弾は…金剛の胸を貫いた。
「………う…………そ」
ドサッ…と倒れる金剛。
「金剛ッ!!!!」
彼女の元へ駆け寄る救。
近寄るセイレーン。
「来るなッ」
パァン…と銃を発砲する救。
「ぐぎゃぁぁああ!!目がッ!!!」
悶えるテスター。
しかし…声とは裏腹にニヤける様子は救には見えない。
「お…おい……金剛?大丈夫か!?すぐに…」
「…偽物なのに…金剛と……呼んでくれるんデス……ね」
「そんなこと!今はそれより!!」
「泣かないで…だーりん…」
「偽物が……死ぬだけだから…」
「でも…お前は…!!」
『優しイのデスね』
『愛していマス』
この想いは本物…
偽物の記憶だとしても…
忘れないで…
あなたと過ごした…
思い出…方…幸せ………かな?
ううん
でも…あなたを
って
るのは…
私だ……けの思い…
本物の金剛……
無い…
私……けの…
あぁ…
あなた…の
…
…優し…さ
ずっ
たかっ
なあ
宝…
勝っ…た
…愛……て…
ちゅっ…と触れられた唇は…
冷たくて
まるで氷のように…
氷に入ったヒビのように俺の心に傷を残す
パキィン…と
彼女がキューブに…なって行く…
そのキューブは…ピシピシと…
音を立てて…
割れた。
砕け割れ…足元に散らばった。
「嘘だろ…なあ…」
「おい…」
「泣くな!指揮官よ!また作ってやるぞ?」
「まあ…それは金剛では無いがなあ?まさか…貴様側につくとは…想定外だが…それも面白かった!!欠陥品は欠陥品らしく処分しないとな?」
「もう黙れ…」
最期の言葉…
俺にははっきりと聞こえた…。
思い出さない方が…わからないままだったなら…幸せだったのかな?
でも…
ううん
でも…ごめんなさい…本物の
ダーリンを守って散るのは私だけ…
今日だけの思い出は…本物の金剛にも無い…私だけの…
嫌な思い出になるけど…あなたの記憶に…残る…それだけは……唯一…残るであろう…私の宝物………あなたと私だけの……
あぁ
でも…
あなたの優しさに
ずっと触れて居たかったなあ…
ううん…
泣かないで…?
私は…今…とても幸せなの
だってそうでしょう?
この命をあなたのためだけに使えたのだから…
私は…勝ったんデス
セイレーンに…
セイレーンの呪縛に…
愛してる…ダーリン。
お願い……金剛…ダーリンを……
そう言ったのだ
わかる
例えコピーだろうと
どうしても
こんなにも
辛いんだ
腹が立つんだ
不知火達や桜赤城…金剛も……
俺が死なせてしまった!!
憎い!!!
無力な自分が憎い!!
何も出来ない自分が憎い!!
「ウフフ」
テスターが近付き…唇を奪ってくる。
「〜〜ッ!!!んむ!!」
「…ぷは……いいよ……人間…」
「この…」
「アハハ…振り解けないよね」
ぺろりと涙すら舐めてくる。
「私の物にならないか?ずっと…ずっと…愛してやるぞ」
…コイツは何を言って……。
「ハハハ…その表情だ!!
「さあ…ここからどうする?」
「黙れええ!!!!!クソおおおお!!!!」
渾身の力で振り解き銃で奴を撃つ。
カン!キィン!と音がする。
「効かないよ?人のモノなんか」
んなこたぁ知ってるよ!
でも…!!
鉄パイプで殴る。
「だから…効かないって」
でも
生きられたかも知れないのだ
彼女にも…奴らからの支配から抜け出せたのだから…
初めて
目の前で誰かが死んだ。
金剛じゃないとしても…
コピーだとしても…
それでも…
誰かが死んだ!!!
「あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」
銃を構える…。
「てめえらは…絶対に許さねえ…ぶっこr「ダメデース」
撃とうと構える銃に手が置かれる。
「!?」
「その先は…言っちゃダメデース。それに…ダーリンの手は…
「この手は…多くを救い…温める手なんデース」
「"戦いも…その言葉も"私達がやりマス」
「金…剛…桜赤城…?」
「はい…赤城…でございます…」
「桜赤城サン…ダーリンをお願いしマース」
「はい…この命に代えても」
桜赤城はぎゅっと俺を抱きしめる。
「ダーリン…ありがとう…私を…
彼女は笑顔を向ける。
笑顔…
しかし
心でわかる…
彼女は本気で怒っている
敵だ!
奴は敵だ!!
倒せ!!!
薙ぎ倒せ!!!!
許すな!!!!!
決して…許さないッ!!!!!!
私達に偽物であろうとダーリンの死に直面させた事…
ダーリンに銃を撃たせた事を
私たちを弄んだ事を
提督を傷つけた事を絶対に許さない
ここまで…誰かを憎いと
思ったことは無い
誰かをここまで殺してやりたいと
思ったことは無い!!
自分の中の全てが叫んでいる!!
[カケラ一つも…この世に残すなッ!!!]
と。
金剛や赤城も救達と同じ場面に立たされていた。
偽物の提督、仲間の死…
金剛や桜赤城は…それを乗り越えて…怒りと共にやって来た。
救の無事を見て安堵するはずが……その時見たのは…
コピーの自分を目の前で失ったダーリンだった。
そして…唇を奪い…楽しそうに笑うテスター。
ダーリンはその後に鉄の棒や銃を構え半狂乱になりながら敵を攻撃した。
その表情は今までのどの記憶を探っても出てこない表情だった。
許せない…
絶対に
絶対に…
「ああ…来ちゃったか……邪魔だなあ……死ねえ!!」
テスターが偽装の砲台を向けて…撃つ。
ガギン!!
…!?動かない…!?
砲台の隙間に……?!
それは1発の弾丸だった。
救が撃った弾丸が艤装の隙間に入り可動を邪魔していた。
もしそれを奇跡と呼ぶなら…
散る運命にあった
しかし…もしそれを必然と言うのなら…
散った金剛の……想いは…彼の手を通して放たれた弾丸として…本物の自分と愛する者を守ったのだ。
「バカな!!あの…人間の撃った弾丸が!?そんな事が!?」
あの偽物…創りモノは…ここに来て………くそ
「あの紛い物めえええええ!!!」
「もう…黙れえええええ!!!!」
ゴシャッ…
金剛の本気のストレートが顔面に突き刺さる。
「ぐ…r「終わらねえよ」
ゴシャリ…
左ストレート
「ぶへ…ッ」
ぽとり…と足元に弾丸が転がってくる…。
それを拾い上げてぎゅっと握りしめる。
「行け…!やれ!金剛ーー!!」
––もちろん…
右ストレート
「ガッ」
「ぶっ壊せ!!!そんな奴…ぶっ壊せえええええ!!!!」
––もちろんッ!!!!
左ストレート
消えろ!
「おぶ…」
右ボディー
くたばれ
「ぐあ」
左ストレート
「…っ」
左手で奴を掴む
右拳で殴る
死ね…!!
「ぐへ……」
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る何度も…何度も!!
消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!消えてしまえッ!!!
「うおあああぁあああっ!!」
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る
何度も…何度も何度も何度も!!
死ねッ死ねッ死ねッ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!
「お前なんか…消えてしまえええええ!!!」
渾身の力で殴りぬく。
「……ヒューー…ヒューー…」
敵は虫の息なのに…それでも…まだ…足りない!憎い!
「……」
金剛はずっと敵を睨みつけている。
「おまe「喋るなァァァァァァァア!!!」
奴を地面へと殴りつける。
地面にめり込む仇。
ガポッ…と…顔面から手を引く。
許さないッ!!
「お前だけを…戦わせたりしないッ!!」
桜赤城に支えられた救が金剛の肩に手を置く。
「例え…替えのボディだろうと……塵ひとつこの世に残すなッ!!!」
金剛に手を添える…。
「イエスッ!!!!」
金剛がソレに向かい一斉掃射を行う!!
ドォン!!
「……!」
ドォン!ドォン!!!
「……!!」
「「「消えろ…消えてしまええええええええ!!!!」」」
そこには残骸しか残らなかった。
しかし…救は空を睨み言う。
「例え……どこにいても…貴様らは絶対に許さん」
「見てろ…絶対に潰してやる…ッ!替えがあるなら…無くなるまで!潰し続けてやるッ!!!」
セイレーン本体では無い。
今回のテスターも…他のセイレーンも…人格プログラムが無事であれば実行プログラム…所謂ボディを取り替えれば何度でも現れる。
しかし…いくら叫んでも…空は何も答えてはくれなかった。
救は膝から崩れ落ちる。
涙が溢れて…溢れて止まらない。
「手酷くやられたようじゃないか?」
「正直舐めていた…奴の可能性を…」
「神崎…救!!面白い!!あはは!!」
「ふむ…やはり…覚醒…が鍵か…」
「覚醒した者は駒として変質するみたいだな…」
「あの人間は…それに強く関わるみたいだな…」
「…だが……今回は奴にとっても…苦い経験となったろう」
「次の再現は……堂々とやろうじゃないか…」
執務室。
アレから鏡面海域は消え去り、無事に本隊と合流できたが…。
艦娘にとっても
その内容は受け入れ難く…。
特に救は……。
執務室に来たのは…金剛と桜赤城だった。
「…ダーリン…」
金剛が差し出したのは…
かつて…桜赤城だったモノ…金剛だったモノ…メンタルキューブのカケラ…。
「…たしかに……あのコンゴーは…コンゴーだけの誇りを胸に逝きマシタ……」
やはりダメだ…
例えどんな存在でも…お前達が目の前で消えたのは……
誰かを失う痛み…は
耐えられない程に辛い。
俺はあの時の弾丸とそのカケラを…瓶へと入れて握りしめた。
彼は俯いたまま…瓶を握りしめていた。
「お…俺がもっと上手くやれていたら……こんな思いはしなくて済んだのに……」
「俺が…俺に力があれば……あんな事にならなかったのに」
ポタポタと…流れ出る彼の
例え偽物と言えども…そこまで思ってくれる。
それは彼が彼である所以なのだろう。
……
「ダーリン…」
「指揮官様……」
2人はぎゅっと…彼を抱きしめる。
壊れそうなほどに強く。
私達は…ここに居るよ…と教えるように。
皆も何も言えない。
戦果だけで見れば…自陣の轟沈も0
相手のボディを壊したのだから…対して甚大なダメージを与えたはず…なのだ。
戦いには勝った…
しかし…彼はそうは思わない。
何故なら…彼女が死んだから。
例え…偽物だろうと何だろうと…
これは初めて彼が味わう敗北だった。
その傷は…深く彼に刻みつけられた。
その日からだった…彼の顔から笑顔が消えたのは…。
戦いに勝って勝負で負ける。
原作の設定との細かな違いはご了承ください!
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
感想等お待ちしてます!
投稿時間がバラけてるのはすみません!
統一しようとは思うのですが…
どの時間がいいか悩んでます すみません!