提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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179話 虚を映す鏡の中で ③ 艦娘とKAN-SENと提督

アレから何日も過ぎた。

 

 

あれから…彼は笑わなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日々、執務に加えて身体を鍛えるためにトレーニングをし、

工廠に赴き、人間でも扱える対セイレーン用の武器の製作に注力している。

 

 

それほどまでに傷は深いのだろう…

 

 

 

ずっと真剣な表情をしている。

思い詰めた表情をしている。

 

 

 

 

 

バカ話をしなくなった。

 

ティータイムもしなくなった。

 

ご飯中も喋らなくなった。

 

 

 

 

部屋で1人で泣いている時があった。

 

 

 

 

弱音を言わなくなった。

 

 

 

 

 

前よりも…誰かが傷つく事を恐れて

より守りに入り…小破すら即入渠…と厳しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

フラフラとする彼が痛ましい。

 

 

 

 

 

 

しかし誰も彼に何も言えない。

 

鬼気迫る表情を見れば…誰も…何も。

 

言わなきゃいけないと分かっていても…。

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日だった。

 

 

 

 

 

「提督…もう…やめましょう?」

夕張が涙ぐみながら言った。両手を胸の前で握りしめ…震えながら言う。

 

 

 

 

 

 

「何故だ?」

 

「無茶…しすぎですよ…」

 

「これくらい平気さ!」

 

「……でもッこれ以上無理をしたら体が…」

 

 

 

 

 

「じゃないとお前達を守れない!!」

救は怒鳴った…。

 

 

「ぁ……」

 

夕張達は一歩後ずさる。

 

「……すまん…」

救はハッとして言う…。

 

 

が…夕張はまた前に出る。

 

「1人で背負い込まないで下さいッ!!」

 

夕張は言った。

 

 

どれほどに勇気が要るか…

どれほどに震えるか…

それでも彼女は言わねばならなかった。

 

 

「弱かったって…提督は私達を守ってくれてます!」

「あなたが…私達の帰る場所なんですから!」

 

 

「夕張…」

 

「戦うのは私達の仕事なんです!!!」

 

「提督は……笑って…怒って…泣いて……私達を迎えて…それで…それで…いつもの愛情を向けてくれたらそれでいいんです!」

 

「一緒に戦うってのは…あなたまで前線で武器を手に取って戦うことじゃないんです!あなたの心は私達が背負って連れて行きますから!」

 

 

 

 

「でも…俺は…もう…あんな思いを」

 

 

 

「私達も一緒に強くなりますから!」

 

 

「……!」

 

「あなたも…あなたの大切なものも守れるように…これ以上あなたに辛い思いをさせないように…強くなりますから!」

 

 

「これ以上…自分を責めて…自分をすり減らさないで下さい!!」

 

 

 

 

 

 

副元帥とか言うめちゃくちゃな役職についてから…

余計に忙しくなった彼…。

 

鎮守府でも所謂

外相、通商、その他を引き受け

住民との交流、全てを担い

大本営からの仕事も増えた。

誰よりも艦娘達の近くで一緒に戦い

誰よりも…彼女達を…守ろうとする

 

なのに…

 

休まずに働いて

トレーニングして

研究開発をして…

 

 

 

 

心の傷は深いのだろう

消えないのだろう

夢でうなされる程に

 

何かをやってないとダメなんだろう

 

 

 

でも…

私達が居るんです

 

言いましたよね

あなた1人くらい背負えるんだって

 

なら

あなたの悲しみも…背負います

 

 

 

 

あなたが悲しいなら

私達も悲しいのです

 

戦争だから仕方ないなんて言いません!

 

忘れろなんて言いません

思い出すななんて言いません

 

 

でも

 

これ以上辛い思いをしない為に

皆で強くなりましょう?

 

 

あなたまで…遠くへ…遠くへと離れて行きそうで…

 

 

怖いんです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手に残る感覚も

唇に残る感覚も

頭に残る映像も

心に残る感情も

 

 

全てを乗り越えて…

強くなるんです。

強くなるしかないんです!!

 

超えて行かなきゃ…ダメなんです!!

 

でもそれは…

あなた1人だけで…なんかじゃないんです!!

 

 

 

 

 

 

 

「見てください!」

 

「周りの艦娘の悲しそうな表情を…」

「皆…私と同じ気持ちなんです!」

 

「頼ってくださいよ!私達を…」

 

「折れそうなら…折れてもいいんです!私達が繋ぎ止めますから!」

 

「不安なら甘えていいんです!私達が受け止めますから!」

 

ボロボロ涙を流しながら…ぎゅっと目を閉じて叫ぶ夕張。

 

 

 

「その…苦い敗北も…辛い思いでも…」

 

「私達も一緒に背負いますからッ!お願いします!!元の提督に戻ってください!ふざけて笑って…皆の拠り所で…バカで…真っ直ぐで優しくて、カッコよくて、大好きな提督さんに戻ってください…」

 

 

 

 

「私達じゃ…足りませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつからだろう…彼女達の笑顔を見なくなったのは…

 

 

いつからだろう…

日課のティータイムすらやらなくなったのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカだ…

 

憎いだけに囚われて…

 

もう何日になるか

笑う艦娘を見なかったのは…

鏡に映る自分の…目は…まるで別人で…

 

 

俺は誓ったはずだ

 

彼女達の笑顔の為に…ここに居ると。

 

 

 

悲しくて憎くて…見落としちゃいけないものまで見落としていた。

彼女達まで…失いたくない。

俺は…俺にはまだ…

 

 

 

 

「…皆ごめん」

 

「……どこかに自信があった。負けないっていう…。でも今回でわかった…こんな負け方もあるんだなって…。お前達とは違う存在だと心でわかっていても……辛かった。例えコピーだろうと…その存在に変わりはなかったんだ。俺がもっと上手くやれてたら…強ければアイツらが死ぬことはなかったんだって思って…。」

 

「…俺は何もできない…こんな無力な自分が憎い…もう…あんな思いはしたくない…させたくないって思ってた。なのに…大切なお前達を見ずに自分勝手に走ってた……すまない」

 

 

救は頭を下げた。

 

 

 

 

 

「頼む……俺に力を貸してくれ…俺にできることは何でもやる」

 

 

 

「……私達を見てください」

 

「え?」

夕張の声に顔を上げる。

 

 

そこには居た。

皆が居た。

 

見落としてたものが

大切なものが

そこにあった…。

 

 

 

 

「私達は…あなたと共に在ります。例え地獄のような戦火の中でも…苦境でも…どんな時でも」

 

「ですから…忘れないで下さい」

 

 

 

 

「ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……久しぶりに一緒にご飯食べませんか?」

 

「ああ…食べる」

 

 

 

 

 

 

 

「隣…前の席は私が…」

その一言を皮切りに始まる闘争。

しかし…心なしか笑顔で行われていた。

それすら懐かしく感じた。

 

 

 

和気藹々と食べるご飯は美味しかった。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕張」

 

「はい」

 

「ありがとう」

「本当にありがとう」

 

 

「……私だって…あなたのことを見てます」

 

「分かりますか?どれだけ私が嬉しいか」

 

「この手を……」

「この手を握ってくれたのは提督なんです」

 

 

「何を…「当たり前のことですか?」

 

「ベルファストさんも…この手を…油と煤だらけの手を握ってくれましたけど…」

「最初にそうしてくれたのはあなたですよ」

 

 

 

よろしくな…と握手をしてくれた。

 

私は…汚れますよ!と言った。

 

だから何だ?と返した。

提督は…そう言うものだろ?

椅子に座ってふんぞりかえるだけじゃない。

お前達と苦楽を共にするんだ。

だから…お前と同じ煤に塗れることが出来るなら…喜んで塗れるさ。

服が汚れたなら替えればいい。

手が汚れたなら洗えばいい。

そこに煩わしさも無い。

一緒に笑いながら手を洗おう

一緒に洗濯しよう。

 

 

でも…軍服が…と私はは言った。

 

 

 

軍服が汚れた?

だから何だ。

誇りは服で決まるものでは無い。

 

己の心が軍人として…そうあるからこそ誇りと言うものは生まれるんだ

 

綺麗な軍服よりもな…

戦場で傷んだ服…体の傷の方が誇りだろうよ。

 

もし…この服を見てだらしない!と言われたら…

それが皆と共に在るという事です…と言うさ

 

 

 

と言ってくれましたね。

 

 

 

「それで私は救われました」

 

「だから…今回は私が助ける番だったんです」

 

「ありがとう…夕張…」

 

「私も…提督のこと好きなんですからね?」

 

「ああ…俺もさ」

 

「えへへ…少しでも役に立てたなら良かったです」

 

そう言いながら夕張は部屋に帰っていった。

 

 

 

 

 

俺の心には…

今回の件で種が撒かれた。

不安とか…憎悪とか…敗北…色んな種だ。

 

この先も…同じように苦しむだろう…もしかしたら…また…

 

しかし前に進むしか無い…

もう…彼女達みたいな者を増やさない為に…。

奴らの企みを

 

 

叩く。

 

 

俺も強くなる…

皆と一緒に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……今回の件で甘味処間宮の売り上げがものすごいことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





最初の…ね。


大石と重ねると言うか…対比になってると言うか…
本当に少し違ったらそうなっていた可能性はあるんですよね。

何のきっかけでそうなるかはわかりませんし
今までに対峙してきた人達と同じ道を辿る可能性は十分に在る訳です。

この挫折と再スタートがどうなるか…

それが今後にどうなるか…はお楽しみ…で。


テスターがめちゃくちゃ嫌なキャラで言ってもらったら
思った以上に嫌なキャラ化しました。
何名かの方から…辛すぎる!あのキャラ…やべえとお声をいただきまして…嬉しい限りです。

チュートリアルというかデモ的な感じなので
こんな感じでちまちまやって行きますよ!



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