提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「榛名は…榛名は自分が許せないのです!!!」
横に座った榛名が泣きながら言う。
明日から始まる榛名との1日夫婦生活はそんな榛名の言葉から始まった。
帰ってきたダーリンさんは…
今迄に見たことのない表情で
触れば壊れてしまいそうな…
でも…
どんどんと怖い方へ向かって行きました。
夕張さんの言葉や皆の言葉で…ダーリンさんは…
また元に戻った…。
でも
私は…榛名は…何もできてません。
「お…榛名、いらっしゃい」
「ダーリンさん!!」
「…榛名は…!榛名は自分が許せません!!」
「事あるごとに…ピンチになるダーリンさんの側にはいつも榛名は居ません!榛名は…指輪を貰っていたのに…」
「このダーリンさんへの気持ちは…お姉様達にも霧島にも負けないのに!」
「榛名は自分が許せないんです!!」
「あんなにボロボロなダーリンさんに何も出来ませんでした!!」
「何が嫁ですか!」
「何が…ダーリンさんですか」
「榛名は…何のお役にも立ててないのに…」
「何が……うっ…うわぁぁあん」
榛名が泣いた。
なりふり構わず…泣いた。
「…榛名…ごめんな」
「少しでも……ひぐっ…目を離したら…ダーリンさんが…うっ…遠くに行っちゃいそうで…ぐすっ」
「そんなの嫌で…ぐすっ…怖くて…怖くて」
タオルを渡そうと立ち上がろうとして気づいた。
榛名は…俺の服の裾にしがみついて離れない。
「行かないでください…1人にしないでぇ」
「こんな重くてダメダメな艦娘は……いけないでしょうけど……私は」
「榛名は…ダーリンさんに…ずっとそばに居て欲しいんです…」
「どこにも行かないで!」
「榛名…」
確かにバーサーカーじみた行動もする。
しかし…
実は榛名はいつでも一生懸命俺の横に居ようとする。
秘書艦の日は頑張るアピールをしつつ
テキパキと仕事をこなして俺との暇な時間を少しでも作ろうとする。
その時のティータイムにら絶対にお菓子を作ってきて食べさせてくれる。
食堂では近くへ座ろうとするし
軽食はいりますかー?とほぼ毎日声を掛けてくれる。
欲しいー!って言うと
「榛名が愛情込めて作ります!」
と作ってくれる。
他の子が作ってると
「わかりましたー!またお腹が減ったら言ってください」
とほんの少し寂しそうにする。
少しでも疲れた感じの雰囲気を察すると
「お肩をマッサージしますよ!」
と言い…
何もない時でも
「何かお手伝いできる事はありますか?」
と言うんだ。
そのくせ
何かあった時は
「榛名は大丈夫です!」
と…弱いところを見せないのだ。
いつもどんな時でも、笑顔で少しでも俺を元気にしてくれようとする榛名が…
その榛名が…泣いている。
胸の内にある不安を…吐露している。
ダーリンさんと呼ぶ榛名が
泣いている。
「榛名…」
「…ごめんなさい…榛名はもう大丈「…榛名」
抱き締める…それ以外に思い浮かばなかった。
我ながら情け無い。
「ダーリンさん…?泣いてるので服が濡れます」
「そのくらい…いい。…お前の方が大切だから…もっとその…不安は俺に言ってくれよ」
「ダーリンさんの負担に…」
「いいじゃないか」
「我慢して潰れる榛名は見たくないな」
「それ「…好きな人には…甘えて欲しい」
「……夢に見るんです」
「ダーリンさんが…また遠くに行くんです。……榛名は頑張って、行かないで…と手を伸ばすんですけど…いつも…悲しい表情のダーリンに…いつも届かなくて…。その後に現れた…遠くに見えるダーリンさんは、私達が居なくても…笑顔で…」
「きっと、役に立たないから…離れちゃったんだなあ……ダーリンさんの幸せには榛名は無くてもいいんだって」
「それがいつか現実になりそうで怖いんです」
「榛名…」
榛名は…小さく…カタカタと震えていた。
「…どこにも行かないさ」
俺はそのまま…頭を撫でる。
「そんなのわからないじゃないですか!」
「……そうだなあ」
「でも…お前達が居なくならないか…俺も不安なんだ」
「あ…」
「毎日…出撃するお前達を見送るのが怖い。作戦途中に通信が入るのが怖い…この世界が夢だった…なんて毎朝目覚めるのが怖い」
明日とも言えぬ命…だからこそ
ただ…ひたすら願う。
1日も早い平和と…安らかな未来を
あの日見た…例え偽物のお前達でも…
ずっと心に影を作るくらい辛かった。
でも…決めたんだ。
強くなるって…何があってもお前達と…生き抜くと。
だから戦う…。
お前達と明日を生きるために。
ごめんな…そんな辛い思いをさせて…。
「よく…言ってくれたな、榛名」
「ダーリン…さん」
榛名の左手から…あるものを外す。
「あ…」
落ち着かない。
それが無いだけで…心が騒つく。
それが私とあなたを繋ぐ…約束の証だから。
それを…優しく磨いて
もう一度あるべきところへ
「…俺の幸せには…君が居ないとダメだ。君がいつも俺の為に何かをしようとしてくれているのが嬉しい。いつも感謝している…。ごめんな…そんな思いをさせて…そんな顔をさせて」
「榛名…誓うよ。俺はどこにも行かない。ずっと…ずっとこの命尽きるまで…お前達の側に居るよ」
榛名は…それでも…泣きながら言う。
「今日は…今だけは…榛名のそばにいるよ…と言ってください……」
「…ずっと…この命尽きるまで…榛名のそばに居るよ」
「ぐすっ……誓いますか?」
「お…!?あ…あぁ、誓うよ」
「なら…誓いのちゅーを……ぐすっ」
「可愛いなあ…お前は…」
ちゅっ…と交わした口付けは…涙の味がした。
「うわぉぁあん!!ダーリンざぁぁん!!」
むぎゅううう!!
彼女も1人の女の子なのだ。
世が世なら…今頃普通の生活を送ってるのかもしれない。
それは自分も一緒なのだが…
でも…こんな世の中じゃなかったら
きっと出会ってなかったのも事実…。
ならば
せめて…少しでも彼女達が流す涙を無くすのが俺の役割だ。
違え掛けた道は彼女達のお陰でまた同じ道に戻れたから。
「よしよし……」
「うう…うー…っ」.
暫くの間…ずっとこうして過ごしたのだった。
榛名は割と常識人枠です。
……環境によって常識とは変わるものですが……。
健気な子だと思ってくれたら…。
本当健気な子なんです。
180話ですねえ…
早いもんで……
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!!
感想などおまちしてますー!