提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ!!

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186話 虚映す鏡の海域 ① それぞれの思い

彼女は諦めていた。

彼女は…こんな世界も滅んでしまえば楽なのに…と思った。

 

 

 

 

彼女は見た。

 

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ああ…あの人も抗うんだな…。

 

あの時と同じように…。

 

といっても…彼も結局は奴らの運命の駒にすぎない可哀想な人。

結局は…朽ち果てる運命なら…いっそのこと…。

 

 

 

 

彼女は目を閉じる。

彼女が居る鏡は……

 

 

 

何も見なければ…感じなければ…

期待することもなければ……傷付かずに、落胆せずに済む。

 

 

 

 

『…グ………リン…よろしくな』

 

 

頭の中に浮かぶのは…微かな記憶。

 

 

 

フッ…とニヤリと笑い彼女は静かに眠る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはとある鏡の海域。

KAN- SENのコピーと艦娘、またセイレーン所属であろう艦船も並べられている。

 

 

 

 

レッドアクシズの

赤ティルピッツと赤ビスマルクはそこに居た。

 

 

「ふむ…コレが…見たこともない奴もいるが…」

 

 

「指揮官……お前もここにいるのか?」

赤ビスマルクは空を見上げて言った。

 

 

 

 

彼女達はビスマルクとティルピッツ。

救の母港に所属していたKAN-SENである。

行方不明の仲間をを探していた所…気が付いたらここに居た…というものである、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…また奴らか……」

 

 

 

正体不明の艦船と敵性反応があると報告を受けた。

別鎮守府の艦娘も目撃されているらしく…

艦娘の保護と敵勢力の殲滅を申し付けられた。

 

 

「ありゃ…艦娘じゃねえと哨戒組は言ってたぞ…不気味な…何かだそうだ」

 

「先行組も帰ってこないらしい…神崎よ…。お前が前に言っていた敵なら俺達にら対応できん」

 

 

などと言われたら対応するしかない。

…少し嫌な気分になるが…奴らを止めないと…と思うとやるしかない。

 

 

「……」

桜信濃や三笠はじっと指揮官を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鏡面作戦は明日の早朝より開始する!」

 

主力メンバーは…

「榛名に旗艦を命ずる!不知火、吹雪、赤城、川内!千歳!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「また、加賀、夕立、長門、初月、翔鶴、大和も同じく出撃だ」

 

 

 

「三笠を主軸に、桜赤城、桜大鳳、ベルファスト、桜隼鷹、」

「後方にエンタープライズ、桜信濃で援護だ」

 

 

「また…卑劣で厳しい戦場になると予想される…」

 

 

 

「作戦開始まで各自徹底して準備を行うように!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解散後にアズレン組は集まってコソコソと話し合う。

 

 

「……またか…」

 

「ついに艦娘さん達にも影響が…」

 

「はい」

 

「……出来るだけオサナナジミや艦娘さん達にはご迷惑をお掛けしたくないですね」

 

「……」

 

「私達の世界の問題ですし…私達だけで…」

 

「そんな!せっかく指揮官様と会えたのに…置いていくんですか?」

桜赤城は皆を問い詰める。

 

 

「仕方ないだろう?私達だって…そんな事したくない、でも…」

三笠が言う。

 

 

「私達だけで行こう」

エンタープライズは言った。

 

 

 

 

離れてしまうのは寂しい。

しかし、あんな指揮官は見たくない。

 

なら…答えは一つしかない。

私達の世界の面倒ごとは…私達で解決すると言うことだ。

 

 

 

 

 

 

これは裏切り…背信行為だ。

もう…戻れない事も覚悟の上だ。

だが…それでも守りたいのだ…。

 

 

 

 

 

 

「皆……指揮官は寝ているだろう…別れ前に寝顔を見るなら見ておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

桜赤城は寝ている救の横に立つ。

 

 

 

 

 

私が指揮官様に会える確率は確率は1%とか言ってたかしら?

 

 

それでも…

 

 

 

 

 

あなたは…幾多の困難も…

確率という可能性も超えて私の手を取ってくれましたね。

 

あなたがくれた指輪……

一生以上の宝物…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様……お慕い申しております…」

ベルファストが言う。

 

「指揮官様…」

桜大鳳が…。

 

 

 

 

「愛しています」

桜赤城はしゃがみ込んで救の顔の側に近付き涙目で言う。

 

「例え生まれ変わっても……世界が変わっても…きっとあなた様を…」

 

 

「私は……ッ 愛す…る……でしょう」

溢れる想いは…良い思い出ばかりで…

今すぐ起きて欲しいと思う自分と…

やはりあなたを傷つけたくないと思う自分とがいて…。

 

 

 

 

「指揮官様」

ちゅっ…と彼女はキスをする。

 

別れのキスを…。

 

 

例え刺し違えても…奴らを……

このお方を…この世界を守らなくちゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ?皆揃ってどこに行くの?」

夜警の那珂ちゃんだ。

 

「作戦開始なので」

 

「朝からでしょ?」

むーー!と那珂ちゃんは言う。

 

「……極秘裏な任務なので…」

ベルファストが答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?……私達仲間だよね?今もこの先も…」

 

 

 

 

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

桜信濃が答える。コレは本心だ。

短い時間とは言え、苦楽を共にしたのだ。それが仲間でないなら何であろうか?

 

 

「なら…ちゃんと帰ってきてね…」

珍しく那珂ちゃんが緩く笑った。

 

 

はい!と、皆はできない約束をしてしまった。

ズキンと心が痛んだけど…これも決めた事だから

 

 

 

出撃ゲートから海へと出る。

 

 

 

振り返れば…思い出の詰まった鎮守府がそこにある。

私達の居た母港とは違った楽しいところ。

 

 

あんな優しい人達を苦しめて良いはずがない!

 

 

 

だから…

「皆さん…行きましょう」

桜信濃が皆を扇動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

出撃ゲートの先に彼は居た。

 

 

 

 

 

 

 

居ないはずの人が在った。

 

 

「指揮官…様!?」

 

 

 

 

 

その後ろに

ずらりと並ぶ出撃メンバー。

 

 

 

 

「なんで…?」

驚く桜赤城達。

 

 

 

 

 

「……そんなに俺らが信じらんない?」

 

 

「いえ!そういう訳では…」

 

「バレていました…か…」

 

「信濃様…三笠先輩…」

 

「指揮官様…何で……?」

 

 

 

「…俺もお前達と同じ立場なら…同じ事するかもしれないから」

「でも寂しいなあ…」

 

 

 

「…ッ!!」

 

「…言ったはずだ誰1人としても失わないと!それはお前達とて同じなんだ!!」

 

 

 

 

「那珂が聞いたろう?仲間なんだよね?と」

 

「ええ…」

 

「お前達は…はいと答えたのだろ?」

 

 

「はい」

 

 

「仲間とは…その程度のものか?」

 

 

「違いますッ!!」

「指揮官様ッ!!私は…私達は!皆様に傷ついて欲しくないのです!」

 

 

これも本心だ。

彼女達は見た。

傷ついた彼を。

傷心した彼を…荒れた彼を…。

 

 

 

 

 

しかし彼は…

いつもと変わらない指揮官がそこに居た。

 

 

 

彼はもう完全に前を向いているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は言う。

 

 

「ならばもう一度聞く!!お前達の指揮官は誰だッ!!!」

 

 

「………ッ」

 

「あなたです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が折れかけて…いや、折れた時にそっと寄り添ってくれたのはお前達だろう?……ならお前達の時に俺達は寄り添わせてくれないのか!?」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「桜隼鷹ッ!!」

 

「は、はい!!」

 

「お前の言うオサナナジミは…そんな頼りない奴なのか!?」

 

「い、いえ…オサナナジミは…いつでも…どんな時でも…私達の側から離れずいてくれるわ」

 

 

「桜信濃!三笠ッ!!」

 

「お前らが助けた指揮官とはその程度の人か?」

 

「「いえ…」」

 

 

 

 

 

 

 

「信濃……俺は誰だ?」

 

「……し、指揮官です」

信濃が答える。

 

そして…救は尋ねる。

「指揮官とは何する者ぞ」

 

 

 

「艦隊の…指揮を執る者です」

 

「お前達の居るところには俺も居る…言ったはずだ。俺の欲しい明日はお前達も居る明日なんだと」

 

 

 

 

ダメだと言いたいのに…

 

何故この人は…前を向いて…

桜赤城は桜信濃を見る。

 

 

 

 

 

 

 

ふうと息を吐く皆。

 

「我らの負けだな」

 

「………参りました…」

 

 

 

 

しゅんとするアズレン組。

 

 

 

 

 

 

「大和…」

 

 

「はい」

と、指示を出して大和の艤装から全員の頭にチョップして行く救。

 

 

 

「いっ"」

 

「だぁっ」

 

「あぅ!!」

 

「ぬぅ!」

「いたぁ」

 

「痛し」

 

「もっと♡」

 

 

「……俺の手も痛い」

「お前らが俺を思って苦渋の決断を下したと思うが…俺にとってもこの先苦い記憶になるんだぞ」

 

 

「…はい」

 

 

「…一緒に行ってもいいか?」

 

 

 

 

「…わかりました」

 

「はい!絶対に指揮官様は守ります!」

 

 

 

 

 

 

 

「しかして、何故…汝は妾達の行動に気付いたのです?」

 

「……愛かなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてましたよね?提督?」

 

「おい大和」

 

 

 

「え?起きてたのですか?」

焦る桜赤城。

 

「生まれ変わってもあなたを愛します…だよね?」

にやにやと艦娘が茶化してくる。

 

 

「あああああっ!!!」

「や、やっぱり…指揮官様達は鎮守府へ帰ってください!!」

 

「無理〜生まれ変わる前に…今、愛してもらうから〜」

 

「悪魔…悪夢よ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人精神的に大破している桜赤城を加えて、彼等は海を征く。

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

目の前には暗い海がった…。





さて…2回目の対セイレーン作戦です。

少しずつ…少しずつ
物語の奥に奥に迫ってくる……と思います。


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などありましたらお気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )!

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