提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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197話 碧い航路の果てへと ② Surigao in the fog

「厄介な霧ね」

 

「……索敵状況は!?」

 

「艦載機は出せないわね…目視しか…」

 

 

 

「ん?アレは……」

 

 

時雨が言う。

「敵機発見!!」

 

 

目の前にはセイレーンの艦船が2隻コチラヘ向かっていた

 

 

「ひー!やっぱり大きいね!」

と、夕立が言う。

「そうだねえ…すごい…」

と、吹雪が答える。

 

「呑気なこと言ってる場合じゃないよ!」

 

 

「大井と吹雪と日向は左側の艦船話を!」

「私と時雨とベルファストで右側を!他は全方位警戒!」

と、武蔵が指示を出す。

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 

「任せろ…!!主砲展開!吹雪と大井は魚雷を!」

 

 

「「はい!」」

 

 

艦船からの砲撃を躱しながら魚雷を放つ。

 

バゴンと水面下から音が聞こえて艦船が大きく傾きかける。

 

「そこだッ!!」

ドォン!!と日向の主砲から砲撃が放たれる。

 

艦船は側面から大きく被弾して火煙を上げながら倒れて行く。

 

 

 

 

 

「……」

扶桑はそれを見て少し悔しがる。

 

"伊勢や日向には負けたくない"

それが彼女達の強い思いだった。

 

何故だかはわからない。

それでも、負けたくない気持ちが強かった。

 

 

 

 

 

「ふむ…さすがは日向!私も負けてられないな!」

と、武蔵が主砲を放つ。

さすがは大和型の主砲。

艦船を一撃で大破、轟沈に追い込んだ。

 

「あらあら、私の出番がありませんでしたね」

 

 

 

 

 

 

扶桑は思う。

これだけの強さがあれば…あの海峡も越えられたのではないだろうか…。

 

山城達西村艦隊のスリガオ海峡での彼女達…厳密にはその艦隊の最期を知る人は少なくないだろう。

 

今の私達なら…あるいは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、先頭に居る最上から報告が上がる。

 

「霧…抜けます!!」

 

 

 

「艦載機…発艦準備!」

扶桑が指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れた霧の中で…待ち構えていたのは……

敵の大群だった。

 

 

 

 

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『名付けるなら…そうだなぁ…ここはスリガオと同じかなあ…』

 

テスターβはその一画に罠を張っていた。

 

 

 

『西村艦隊の諸君……今回もここを越えて辿り着けることなく…沈め!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あの時と…同じ…光景…ッ」

 

 

扶桑…山城は震え始めた。

脳裏に甦る…かつての記憶。

 

 

 

期待された超弩級戦艦。

だが…その期待に応える事なく…スリガオ海峡を越える事なく…。

 

ここはスリガオ海峡ではない。

だが、目の前に映る…景色は敵味方を含めてあまりにも……。

 

 

 

 

「不幸…だわ……」

思わず口から出ていた言葉…

 

 

「扶桑ッ!!」

時雨が扶桑の肩を掴む。

 

 

 

「大丈夫だよ!!きっと今の僕達ならやれる!!」

時雨は真っ直ぐとこちらを見て言う。

 

「時雨…」

 

「そうね!やりましょう!」

 

 

 

 

 

とはいえ、多勢に無勢。

 

 

『まずは…お前から!!』

 

 

 

 

「最上ッ!!」

 

日向の声に最上が反応する。

寸前の所で敵の砲撃を躱す。

「くっ!」

 

「このぉ!!」

敵に砲口を向ける…。

 

 

 

 

 

 

 

『タスケ…テ……』

 

 

 

 

 

 

 

「み…三隈…」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬止まった最上。

妹の姿を見てしまった彼女は止まるのだ。

 

「そいつは…違う!!最上ッ!!」

 

 

 

一瞬…だが、その時間は…全てが崩れるのに十分な時間だった。

 

 

三隈がニヤリと笑い砲撃をする。

三隈だけじゃない、他からもどんどんと飛んでくる。

 

「きゃぁぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

最上は燃え上がる炎の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「…最上が…!最上!最上!!…嘘よ…また…繰り返すの…?」

 

 

カチカチと震える扶桑。

 

 

「扶桑!山城!危ない!!」

伊勢と日向に助けられる2人。

 

被弾する伊勢と日向。

大丈夫か?とこちらの心配をしてくる。

 

「あなた達…」

ギリっと歯を食いしばる扶桑。

 

 

 

「負けたくないのよ!あなた達だけにはッ!!」

 

「扶桑!」

制止を無視して前へ出る。

 

 

 

 

 

「扶桑姉様!!ダメ!!」

そんな声は届かなかった。

 

認めさせたかった。

私達が…できることを。

不幸なんか…拭ってやると。

 

 

 

 

 

 

「直上おおおお!!」

 

 

誰かの声が聞こえた。

 

 

 

「うえ?」

 

 

 

 

 

あぁ……

そんな…

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様ぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

出過ぎた…。

 

 

 

 

 

 

薄れ行く意識の中見たのは…

 

 

 

 

膝をつく武蔵。

血だらけの不知火。

敵に掴まれた龍驤?

 

他の皆も…

 

 

 

 

 

 

 

ニヤニヤ笑う敵方の伊勢と日向が見えた気がした。

「くそおおおお!!!」

 

踏ん張って倒れながらそちらへ砲撃を行う。

 

顔面を掴まれて海へと叩きつけられる。

 

『無理ダ…お前ニハ…無理ダ!!』

 

 

「うわぁぁあ!!!!」

主砲を鏡日向の方へ向ける!

 

 

 

 

 

 

が…

 

 

 

 

 

遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が真っ暗になった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの…嫌なの……提督…て…」

 

 

 

 

 

 

 

 

超えられなかった海峡…

 

自分の運命…。

 

 

繰り返す…運命。

 

 

逃れられない…運命(さだめ)

 

 

 

 

 

 

「くっ……そ…」

 

「…私の索敵落ち度…」

 

「……提督…」

 

 

 

 

 

「…逃げて…時雨」

 

 

「皆…!!許さないッ!!うあああぁ!!」

「また僕だけが生き残るなんて……嫌だッ!!僕は逃げない!!」

 

時雨が応戦する。

 

 

 

 

 

白露が近付いてくる。

 

 

「…くっ!白露の姿まで……」

白露は攻撃せずに時雨に抱きついて来た。

 

「!?!?」

 

『ゴメン』

 

 

動けな……まさか!!!

 

 

 

時雨は白露ごと爆風で吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督が見えた。

 

 

魂の繋がり…

心の繋がり…

 

例え離れていても…心を連れているから…?

 

 

 

 

「ごめんなさい…」

 

 

と、謝る皆。

 

ねえ…超えられないの?

 

私達も…時代の駒でしかないの?

 

 

 

ねえ…提督…

 

教えて…

 

 

私達は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆」

提督が口を開く。

 

 

私はもう一度聞いた。

 

「ねえ…運命には…勝てないの…?」

 

 

「運命とは何だ?」

 

 

「決まっている事よ!…私達は結局…こうなる"サダメ"なの!」

 

 

提督は黙っている。

やはりそうなのね…

 

 

 

 

「俺もな…死んだ人間だ。運命とやらがそうなら…俺はお前達の前に居ない筈だ」

 

「でも…俺はここに居る!。今もお前達の目の前に居る」

 

世界を渡ると言う現実の世界でなら…有り得ない邂逅…。

 

それも…運命を超えた何かと言えるなら

 

そうであるならば…

 

 

 

 

 

俺達は…こんな運命なんか超えて行ける

 

こうなるのが運命?

 

違うッ!!

 

俺は1人じゃない!お前達が居る!!

 

お前達も1人じゃない!皆も俺も居る!!

 

 

 

 

 

「提督…?」

 

「扶桑…山城…」

 

 

 

「ここが…スリガオ海峡線だと言うのなら…今こそ超えるぞ!西村艦隊じゃあない…!俺達…西波島艦隊で越えるんだッ!!」

 

 

 

そうだ

 

 

かつての西村艦隊はもう無い。

 

 

私は…私達はー…

 

 

西波島の艦隊。

そう…私は……この艦隊の旗艦!

山城じゃなくて…伊勢でも…日向じゃなくて私が!!!

 

 

 

 

そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った瞬間に目の前が海の中だと言うことがわかった。

 

 

 

 

 

「扶桑ッ…手を…手をッ!」

 

 

海中に手を伸ばすのは…

ある意味姉妹であり仲間(負けたく無い相手)だった。

 

 

 

 

日向…。

皮肉なものね…

負けたく無いあなたに…手を差し伸べられるなんて…

 

 

 

 

そうだ

日向達に負けたく無いと言ったのは…

 

 

 

 

過去の悔しさ…

あなた達の方が完成された……艦だから

 

私達の…姉妹に当たるのに

私は羨ましい妬む事しかできなかった!

 

…山城にも正直妬いていた。

彼女はあの時の旗艦だった…当然…だけど

不幸しかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…

 

 

不幸って何?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せじゃあないか…

 

 

再びここで皆と集い…

背中を預けて戦えて…。

 

 

 

 

 

妹が居て…。

 

仲間が…ライバルが…。

 

 

大好きな人が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに恵まれた…幸せはあるか?

 

 

ーいや、無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

死の中に居ても必死に手を伸ばしてくれる人が居て…。

 

 

 

 

 

 

私はこんなにも…幸せ者じゃあないか

 

 

 

 

 

 

 

 

不幸だと嫌なことから目を背けて居たんだ…。

 

 

 

 

 

不幸なんて言葉で片付ける私が悔しい…

あなたのその手を取らない私が…嫌いッ!!

 

 

 

 

 

私は…あなた達と…ここを…過去を超えたい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑はその手を掴む。

 

 

「掴んだな…!!」

 

 

ぐん!と引き上げられる手は…暖かくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

山城も伊勢の手を掴んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えぇ」

 

 

 

 

「扶桑……山城…皆!!」

 

「…もう一度…行きましょう…!!皆さん!!」

 

「そうだね…」

 

 

「あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが

仲間を起こし、奮い立たせる。

 

 

 

 

 

 

 

『…扶桑…お前デハ私…イヤ、旗艦ノ山城ニスラ及バナイノニ…』

 

 

 

 

 

「舐めるなよ」

 

 

日向が鏡日向を睨む。

 

 

山城が言う。

「お姉様を…私達の旗艦…扶桑を私達を……舐めるなぁッ!!!」

 

 

 

 

 

 

『扶桑だと!?』

テスターβは驚いた。

 

 

奴らの旗艦は山城だったはず

 

 

 

 

生き残りは時雨だけだったはず…

 

いや!そもそも…

 

ここにくる奴らに…武蔵や不知火達は居なかったはず!、

 

まさか…

ズレている?

 

私達の想定…いや!決定していたはずの未来が…ズレているのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

待て…()()()()()()()()()()()()()()()()

 

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奴は…コイツらが全てを乗り越えると…

あえて…この艦隊でここへ…?

 

 

 

何と言う事だ。

 

 

 

 

 

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「……提督………力を貸してください」

 

 

「私は…もう不幸艦なんかじゃありません!」

 

「西波島艦隊…セイレーン作戦第3部隊」

 

 

 

 

「旗艦!私は…超弩級戦艦扶桑!今一度参ります!!皆さん…共に行きましょう!」

 

 

 

 

 

『これが…予想外(進化…)か!!』

 

 

 

海に浮かぶ皆の体が光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑 改ニ

 

山城 改ニ

 

最上 改ニ

 

伊勢 改ニ

 

日向 改ニ

 

時雨 改ニ

 

武蔵 改ニ

 

川内 改ニ

 

不知火 改ニ

 

吹雪 改ニ

 

武蔵 改ニ

 

榛名 改ニ

 

イク 改

 

大井 改ニ

 

龍驤 改ニ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アナタ達……』

鏡日向達が目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

「…負けないッ!!超えてみせるッ!!」

 

 

 

 

 

そう意気込んだ時だった…

 

 

 

 

 

……あれ?

 

目の前…の黒い光…

 

 

アレは……

 

 

 




彼女達に何があったのか?


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしてます!
よろしくお願いします!


明日で9月も毎日…完了です。

休むんだ…俺……

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