提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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205話 最初の一歩

桜霧島と桜加賀が街へと行く。

 

 

「おい!お前達…神崎 救を見てないのか?隠してもいいことはないぞ?」

 

「本当に知りませんて…居たら言いますから…」

 

 

厄介だな…と思いながら歩く。

やはり、彼が行き慣れた街だからか…手配書も貼られており…

 

神崎 救

 

国防の立場に在りながら

敵と内通、味方の轟沈に携わる等の悪逆行為。

現在逃亡中につき……

 

 

 

「嘘っぱちだな…」

桜加賀はため息をつく。

 

 

 

 

「む?お前達!!」

と、声を掛けられる。

 

「何でしょう?」

平然を装い対応する。

 

「その男…知っているか?」

 

 

「……」

 

「ん?まさか仲間か?」

 

「…以前…海の上で怪物から助けて頂きまして…どこの誰かも分からなかったのですが…こちらで鎮守府で働かれてると聞きましてお礼に来たのですが……」

 

「あぁ…奴なら裏切り行為で指名手配中だ、残念だったな」

 

「どういうことですか?」

 

「手配書の通りだ。もし見かけたら言えよ」

 

兵士は去って行く。

まるで憲兵じゃないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたらも…救に助けられたのかい?」

彼女達に話しかけて来たのは松田だった。

 

 

「ええ…あなたは?」

 

「俺は松田…うーーん…奴の父親……のかわり?みたいなものかな」

 

「なるほど…神崎さんは…本当に裏切り者なのですか?」

 

「いや…あいつがそんなはずはない!何かの間違いだ…少なくともこの街のやつはあいつの味方だ…何も出来ねえが…くそっ」

 

「頼む…信じて欲しい、奴はいきなり仲間殺しや敵の誘引をしたりする奴じゃない!」

 

 

「あぁ…信じるさ」

「…それは私達もよく知っているからな…」

 

「そうだぞ。そういう人が居て少し安心した」

 

「あ、あんたらは…まさか?」

 

 

 

「あぁ…指揮官のKAN-SENだ」

 

「艦娘とは…違うのか?まあいい、アイツは生きてるんだよな?」

 

「生きてるとも」

 

「…どこにってのは聞かねえほうがいいな…まあ安心した」

「…辛かったろうな…アイツは」

松田は心底嬉しそうにしていた。

 

…軍関係以外でもこういう温かい人との関係があって良かったと思う桜霧島であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の聞き込み等の調査で分かったこと…。

 

 

今回のクーデター(対外的には反乱分子の排除)の指揮は林が主導である。

 

当初は反対派も居たが、今はほぼ9割が林の指揮下に着く。

噂によると、脅迫や拷問も辞さないらしい。

 

現在の海軍最高指揮官は林である。

 

憲兵すらも取り込み、もはや海軍の域を出かねない状況である。

 

 

神崎 救を含む旧海軍の追放者は

仲間殺しや国家転覆を目論むテロリストとして指名手配されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…たいそうな言われようだな?指揮官」

桜加賀が報告しながら笑いかける。

 

 

「泣けるわ…」

 

「引き続き頼む」

 

 

 

 

 

 

アズレン組の諜報活動と物資運搬で多少の進展があった時のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だあああ!!!軍隊が攻めてくるぞおおお!!!」

 

 

「何!?」

 

 

 

轟音。

砲撃はいとも容易く生活を吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

「なっ…」

「住民に攻撃…だと?」

 

 

 

 

軍人らしき人達と艦娘とが街へと攻撃を加える。

 

 

 

「桜加賀!桜霧島!!」

と、三笠が指示を出す。

 

この街…小々波の街は…人は指揮官にとって…かけがえの無いものだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だ!!」

 

 

「街が…攻撃されてる!!」

通信で連絡を受けた救達。

 

 

「何…!?」

「出撃準備!!!早く!親父達を助けないと!!」

 

 

こうなったら後先は考えられない。

全力で小々波街へと向かう。

 

 

何故街が攻撃されなくちゃいけない?

 

なぜ?

何故?!

 

 

 

 

 

 

 

遠くに逃げた弊害はここでやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!」

 

見るに耐えない状態だった

 

建物は破壊され、めちゃくちゃに荒らされ…

怪我をした人々でいっぱいだった。

 

 

「救…ちゃん」

「あんたは無事だったのかい?」

 

「おばちゃん…何が」

 

「…帝国海軍てのかい?アレが私らも反乱分子の1つだって…」

「アンタのとこの若いのが守ってくれたけどサ…3人じゃあ…」

 

桜加賀と桜霧島と桜三笠の姿がない。

 

「ごめんねぇ…私らの代わりに…連れてかれちまったよお」

「あの子ら…凄かったよ…」

「見てご覧…ここから後ろ…一切攻撃されてないだろう?あの子達が守ってくれたんだ」

 

 

 

 

ある所から後ろには一切の傷がなかった。

その手前には夥しい弾痕と血と……

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!」

子供が話しかけて来た。

 

「お姉ちゃん達を助けてあげてよお」

 

「僕達を庇って…怪我したんだあ」

「うえええん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!これ!」

島風が持ってきた一枚の紙切れ。

 

 

逆賊 神崎 救一派に告ぐ

 

これは正義の鉄槌であり、正義は我らに有り

 

預かり物を返して欲しくば…

鎮守府跡地へ来るべし

 

従わない場合、預かり物は永久に失せるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海軍とは何だ…?

こうまでするのが…正義なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドス黒い感情が湧いてくる。

わかってる。そんなのはダメなのに…

 

殺意が止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん…俺のせいで…すみませんじゃ済まないでしょうが……本当にすみませんでした」

頭を下げる。

土下座だ。

 

 

俺のせいでこうなったんだ…。

 

 

 

「…生きてるから大丈夫だ」

 

「俺らは知ってるからよ!お前が悪くねえって事をよ!」

 

「建て直しゃあ…また住めるからよ!」

 

「逆に守ってもらったんだ…何も出来なくてすまねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなのは正義なんかじゃない!!!

 

 

「皆……すまん。俺は正義の味方でもない。こんなに悔しくて腹立たしくて…憎いのは初めてだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非情にならねばならない時は…

今なのか?

 

 

 

「指揮官…」

 

 

「TBちゃん」

 

「私にはこの世界のことはよく分かりませんが……あの方達が間違っている事はわかります」

 

「あなたの進む道が私達の進む道です。間違えた時は私達が元に殴ってでも戻します」

 

 

 

 

「……皆を集めてくれ」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は正義の味方でもなんでもない。だが!こんな事は間違ってる…。奴らの真意がどういうものかはわからんが…これ以上好き勝手を許す訳にはいかない!」

 

 

 

 

「踏み躙られた尊厳もプライドも、思い出も!仲間も!取り戻すッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西波島鎮守府を…3人を取り返すッ!!」

 

 

「作戦はあるの?」

桜エリザベスが言う。

 

「…裏から回るか……」

 

「…もう……今回は私に任せなさい?」

桜エリザベスが自慢げに言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

バキッ!

「ぐっ!」

 

 

「早く言うんだよ」

「奴が何処に居るかをさ!」

 

 

ドコッ!

「……」

桜加賀は恨めしそうに新堂を睨む。

 

 

「黙秘しちゃう?」

「うーん……君達さあ…何者なの?」

 

 

「…」

 

 

 

「黙ったままなんだね?」

「仕方ない…殴るのも飽きたしさ…君達可愛いし…楽しませて貰おうかな」

 

 

かちゃかちゃとズボンに手をかける男

新堂と呼ばれる男はにやにやと気味悪い笑みを浮かべながら3人に近付く。

 

 

「辞めておいた方が良いぞ」

「この身も心も指揮官のものだ…貴様らなんぞが好きにしていい…

 

 

バキッ…

「うるせえよ…」

桜加賀の顔面に蹴りが入る。

 

 

 

 

「黙って…やられろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新堂が桜加賀の袴に手を掛けた時だった。

 

 

 

 

 

 

「新堂殿ッ!!大変です!」

 

 

 

「何だ!!楽しみの手前なんだぞ!」

 

 

 

 

 

「そ、それが…神崎が…来ました!」

 

 

 

 

 

 

「1人で船着場から歩いてきますッ!!」

 

 

 

「なにいい?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「………」

 

 

救は艦から旧船着場に降り立った。

 

奪還作戦において彼が目的とするのは

まずは囚われた仲間と鎮守府を取り戻すこと

 

麗達は神無島母港を拠点としてもらう。

即ち、全ての攻撃や強襲を西波島で受けるつもりである。

 

 

 

 

 

 

 

「か…神崎…提督…なぜ来たのですか?」

 

戸惑う艦娘や兵士に救が答える。

 

 

 

「お前達は何故罪もない街やヒトを襲った?」

 

「…め、命令で…」

 

オドオドとしてきたはずの2人がニヤリと笑う。

「お前を殺せば将来が安泰するからだッ!!」

 

 

飛びかかる兵士に艤装をこちらに向ける帝筑摩。

 

 

「させるかッ!!」

 

川内達が2人を組み伏せる。

 

 

 

「くそ!!罠ですか!!」

 

「仲間を助けに来たのか!?馬鹿だな!今頃…3人とも犯されて狂ってるところだろうよ」

 

 

 

 

救は無視して進む。

 

本心は殺してやりたい気持ちでいっぱいではあるが黙って進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか!!…来いよ!もっと来いよ!」

望遠鏡で救の姿を確認した新堂がさけぶ。

 

 

 

 

 

ズンズンと突き進む救に誰1人として襲い掛かる者はいなかった。

 

気迫。

 

悍ましい程の殺気…。

 

 

 

彼女達は知らない。

 

優しい彼の姿しか聞いたことが無い。

 

 

 

故に知らない。

 

何故彼がここまで殺意を放ったまま歩くかを。

 

 

 

とは言え実の所そこまでの考えはない救。

 

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

 

『…堂々と行きなさいな』

と桜エリザベスが言う。

 

 

『ん?どゆこと?』

 

それ作戦なの?とジト目を?向けてる面々。

 

『作戦よ!!あなたの家でしょう?家主がコソコソと裏口から入る必要がどこにあるのかしら?』

『簡単よ…出来る限りの殺気を放ちながら歩きなさい。当然相手は「コイツはバカか?!」と襲いに来るわ』

 

『ダメじゃん!』

 

『最後まで聞きなさい!そこを隠れた私達が潰して行くの』

『襲えども襲えども指揮官は歩むのをやめない…それは恐怖になるわ』

 

『いい?どんな物からも私達があなたを絶対に守り切るわ…擦り傷1つとて負わせない…あなたが信じるなら……いえ、私達を信じて歩みなさい」

 

 

 

故に彼は歩む。

 

 

道すがらに襲い掛かられようとも…彼に触れることすら出来ない。

 

1発の弾丸とて、彼には届かない。

 

 

 

 

 

 

いつしか彼の歩む道を誰も邪魔しなくなった。

 

 

何故かはわからない

だが…心の底から何かが告げる。

 

 

ー奴に手を出してはいけないー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…ー

 

 

「……3人とも…遅くなった」

 

 

「指揮官…馬鹿者…待ってたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…返してもらうぞ……俺達の家を…」

 

 

彼は新堂の目の前に立った。

 

 

 

 

「…といってもここまで無傷で来たんだ。俺の勝ちみたいなもんだろ?」

 

「…はっ!馬鹿じゃねえの?」

「俺の部下は既にここを包囲してんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰一人として出てこない。

 

 

 

 

 

 

 

「…何…「わからないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の部下は全員…消したよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と同時に神崎の部下達が周りを取り囲む。

全員が冷徹な目をしている。

その目はジッと自分を捉えて離さない。

 

 

 

新堂はゾクリとした。

優男そうな奴としか印象が無かった奴だった。

林が何故奴を殺そうとするかはわからないが…とにかくわかる事は一つ…

俺達が奴を…

 

涙を流しながら雷撃処分の命令を下す優男を

俺達が…鉄血に変えてしまったのだ…と。

 

 

 

 

 

しかしこんな所で死んでたまるかと思う新堂は銃を桜霧島に突きつける。

「こ、これが見えねえのか!!」

 

「………」

 

 

 

 

「オラ…道をあけ「全員…奴に照準を合わせ…」

 

「!?!?」

 

 

バカな…何故だ?奴にとって女達はなによりも大切なものなんだろう!?

 

「ふっ…新堂とやら…目論見が外れたな?私達に人質としての価値はないそうだ」

「撃つがいい。誰かは死ぬかもしれないが…お前も確実に死ぬ」

 

 

 

彼女達も構えたまま動くつもりはない。

何より…下手すりゃあ「私ごと撃ちなさい」と言いかねない状況だ。

 

 

 

「お、おい!神崎!!お前…コイツらが何よりも大切なんじゃないのか!!」

 

「…大切だ」

 

「なら俺の言う通りにしたほうが賢いだろ!!」

 

「…だからお前がもし…彼女達を撃つなら確実に惨たらしく殺してやる。」

 

 

 

 

 

 

 

動けない。

新堂は詰んだのだ。

 

 

 

人質の意味は自分がその場で狙われない為にある。

 

 

人質とは盾ではない。

人質を取る側は…あくまで人質に命を守られているのだ。

しかし…それは人質を殺すまでの間であり、殺した瞬間に俺は終わる。

 

死にたくない気持ちが強い新堂は人質を殺さない。

かと言って救達も退く気は無く、隙間のない囲み方で新堂を包囲している。

 

 

奴の目は本気だ。

本気で俺を殺そうとしている。

 

 

 

 

何でだ?

 

奴が悪なんだろ?

 

林が言ったんだぞ?

 

待て…

俺は奴が涙を流しながら雷撃処分を下した事を知っている。

 

なのに何故…

 

奴が裏では仲間殺しを平然と行っていると信じた?

 

 

 

いや…その前に…

何故俺は…

嫌いな林に従ったんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「降参…する…命までは………」

 

 

 

 

 

 

 

彼の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 





もう少しなので…
もう少しだけ…


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

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