提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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残酷描写があります


207話 西波島鎮守府の再建と誰も知らない物語

元通り…なのか…

 

少し煤けた鎮守府の表札が不釣り合いに感じる。

 

 

 

帰ってきた…

数日とは言え…離れたのが長く感じる。

 

 

 

とりあえず間宮達にご飯を拵えてもらおう。

 

「…私達もいいの?救君」

 

「すまねえ…」

 

 

 

 

「指揮官…奴らはどうするんだ?」

 

「奴ら?」

 

そこには新堂達がぎこちなく居た。

 

 

「帰ってなかったの!?!?」

 

これは本気で言っている。

 

ええ…と皆がこちらを見る。

 

「いや!いや!俺はアレで終わりだったからさ!」

 

だが周りはそうはいかない。

自分勝手に俺は殺さなかったが…

自分の艦娘を沈められた皆はコイツらを許すかはわからない。

 

 

「…救君……」

 

「…麗ちゃん…」

 

「皆に土下座して回ったんだよ…この人達は…」

「街の復興でも何でもやるって…艤装も外して…殺すなら殺してくれって」

 

「…私達も憎いよ…何であなたはこの人達を同じ目に合わせないの?って思うよ…私たちにとって大切な時間を共にした家族なのにッ!!」

 

「でも…ここでこの人達を殺しても皆は帰ってこないから……」

 

 

 

巌や京極達も苦い顔をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのかわり…次は無いよ」

 

 

 

 

 

 

彼女なりの決断…

周りも艦娘もきっと爆発寸前だろう

でも…彼女達は選んだ。

 

憎しみを憎しみで返しても…

また繰り返されるだけだと彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

迫る追っ手。

突然の強襲は…味方のはずの人達だった。

 

 

ぼろぼろになりながらも逃げる私達。

 

 

 

 

分かる…このままじゃ…助からない。

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ…響ちゃん…』

電が言う。

 

『わかってる…』

響は答える。

 

 

 

 

2人は頷きあい…

武蔵にアイコンタクトを取る。

 

 

 

 

 

 

そして2人は立ち止まり…振り返る。

 

 

 

『え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麗ちゃん…!行ってなのです!!』

 

『武蔵さん…後はお願いします!』

 

押し迫る追っ手に対峙する2人

 

 

 

『だめよ!皆で行くの!!』

『武蔵ッ!!戻って!2人も!』

 

 

電は武蔵達に向けて発砲する…。

 

『危ないのですよ』

 

『……』

 

 

 

 

『お前達ッ!!!』

 

 

 

 

『カッコつけさせて下さい』

 

『そうなのです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麗ちゃんが生きてる限り…私達は負けてないのです』

 

『無駄死にじゃない…大きな一歩なんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きっと…また生まれ変わっても会えるのです』ぽろぽろ

 

『はらしょー…』

 

 

 

2人が笑う…

 

 

 

 

 

 

 

『すまないッ…』

 

『嫌よ!武蔵ッ!!命令よ!戻りなさいッ!!』

 

『聞けないッ!!!!!』

武蔵も泣きながら更にスピードを上げる。

 

 

『いやっ…いやぁぁぁぁあ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは誰も知らない物語

小さくとも…気高く…

仲間の為に命を散らせた2人の物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…行っちゃったのです

 

うん…

 

 

本当は…もっとあなたと一緒に居たかったよ

 

 

そうなのです

 

 

 

 

もっと…もっと

 

麗ちゃんの…ウエディング姿…見たかったな

 

 

もっとたくさんお話したかったな…

 

 

 

 

怖いなあ…

 

 

 

逃げたいなあ……

 

 

 

 

でも…

 

将来のあなたの笑顔を守るためなら…

私達は…ここで!!!

喜んであなたの為に行きましょう。

 

 

 

 

震える足を叩いて構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

『電…改…発動!!!』

 

『響…改ニ発動…』

 

 

 

 

 

見せた事もない改発動。

 

 

 

今ここで感じる、彼女との絆の深さ。

 

それが彼女達の背中をぐんと押した。

 

 

 

 

 

 

 

『させない…ここから先は…』

 

 

 

 

 

 

 

『『絶対に通さないッッ!!!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

『何だよアイツら…本当に電と響かよ…』

『ええい!奴らを駆逐艦と思うなッ!!』

 

 

 

 

『当然なのです…私達は…猛武の雷と響なのですッ!!』

 

『武蔵さん達だけが強い訳じゃないッ!!』

 

 

 

 

電の放つ魚雷が艦娘に当たる。

『うわぁぁぁぁッ!!』

 

 

 

 

 

激しい砲雷撃戦。

電が被弾する。

 

 

横をすり抜けようとする艦娘。

 

『うっ…この…行かせないのです!!!』

 

通り過ぎようとする艦娘にしがみつく。

 

揉み合いになる。

 

 

 

『離せッ!!』

ズドン…と腹を撃たれた。

 

 

『あ……』

 

 

 

 

 

 

 

『電!?』

 

 

『しつこい………がっ!?!?』

 

響が電にトドメを刺そうとする艦娘を吹き飛ばす。

 

 

 

『響…ちゃん』

 

『もう喋るな…!!』

 

 

 

 

『麗ちゃん……逃げ…ら…れた…かなあ』

 

 

 

 

 

 

 

 

『…私ね?響…ちゃんが…残ってくれ……て嬉しか……ったんだよ』

 

 

 

 

 

『喋るな…電……私達は姉妹だろう?当たり前じゃないか…』

『最後まで…最期まで一緒だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………』

電はニコリと笑いー……。

 

 

 

 

 

『…ッ!!!』

 

 

 

響は電の目を閉じさせ…

 

 

水中へと逝く彼女を見送る。

 

 

『電…先に休んでて…』

『借りるよ……艤装』

 

 

響は電の艤装を背負う。

 

 

 

『……旗艦は……アイツか』

 

響は全速力で駆け抜ける。

 

 

 

砲撃が飛んでくる。

 

 

 

 

 

痛い   知らん

 

 

 

苦しい   知らない

 

 

 

 

 

辛い   辛い

 

 

 

 

『うおおおおおお!!!』

 

例え腕が飛ぼうと何だろうと

魚雷を飛ばしながら、砲撃しながら走った。

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…

 

ガクンと膝から崩れる。

『足…』

 

 

ズドン…

右胸……

 

 

 

わかる…

もうだめだ…

 

 

ここが…私の……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだ…ッ…終われるかあぁぁぁぁあああッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『これでも…くらええええええええッ!!』

 

 

 

 

 

 

最期の力を振り絞って

電から受け取った魚雷を全力で投げた。

 

 

『!?!?』

相手は驚く。魚雷が自分めがけて投げられたから!

 

 

 

 

 

ズドォォン!!

 

魚雷が直撃した艦娘はそのまま後ろに倒れた。

 

 

 

 

『…ざま…み……ろ』

 

 

 

 

 

 

 

響は力尽きて海へと落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…後は…頼んだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈み行く響を電の手が掴む

 

お疲れ様、響ちゃん。

 

 

電もはらしょー…

 

 

 

私達…頑張ったよね?勝ったよね?

 

うん…勝ちなのです。

 

 

 

 

 

 

 

ほら…光が見えるのです。

 

 

アレは……

 

 

あぁ…

 

 

 

麗ちゃん…

 

 

その姿は……

 

見られて嬉しいよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒いね…

 

暗いな…

 

 

でも…2人なら…怖くないよ

 

 

 

 

きっとまた生まれ変わって…会いに行くから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も知ることは無い…

敵からも恐れられた駆逐艦

 

 

彼女達は決して相手を沈めることなく

6割以上の追手を大破に追い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううっ…うあぁ……大事な家族だったのにッ!!ごめんの一言で…ズルいよッ!!ズルすぎるよおおっ!!!」

「電!!響ぃ…」

 

 

「…麗ちゃん…ごめん」

 

「うううッ…わ、私にも…力が有れば…」

 

「…俺にもっと…」

 

 

「……私達にもっと力が有れば…よかったのかなあ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣かせて…今は……お願いッ…」

 

 

抱き締めることしか出来なかった。

それでいいと彼女は言った。

 

とにかく抱きしめてと彼女は言った。

 

 

麗はひたすらに泣いた。

ここ数日も気を張っていた事も有り、堰を切ったようにずっと泣き続けた。

 

 

 

「ありがどお…2人やみんなのだめに…手をあわせてくれて…ぐすっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって…彼女達は麗ちゃんを守ってくれたんだよ」

 

「うん」

 

 

 

どれだけ目を閉じようと目の奥に浮かぶのは彼女達の笑顔。

彼女達が命を終えた時…

「あ…」って分かるくらいに…大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらは許さない…でも!これ以上辛い思いをする人を増やしちゃいけないッ!!2人に顔向けできるように…私…」

 

「私も…戦う」

涙目からは止めどなく涙が溢れて止まらない。

だが…彼女は前を向く。

 

 

 

 

 

「俺もキミをずっと支えるから」

 

「私も…ずっとあなたを支える」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達は…あなた達を許せない…でも、電や響があなた達を攻撃したから私は生きていられる」

 

 

「…だから…もう…こんなことはしないで…守るべき人を…戦う相手を見誤らないで」

 

 

 

「…はい!本当にすみません…でした!」

頭を下げる新堂達。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ…」

麗は1人の艦娘に話しかけた。

 

「はい!!」

その艦娘は愛宕。

顔からきっと腹にかけてだろう。

痛々しい傷が残っていた。

 

 

 

 

 

「電も…響も強かったでしょ?」

 

 

 

「…はい…今まで戦った中で…1番…」

「とても…駆逐艦とは思えないくらいに……」

 

 

 

「でしょ?…私の自慢の皆んなだから」

「施設ができたら…入渠して治してね」

「そして…街の復興とか……たくさん手伝ってね」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は…ずっとそばに居て…」

 

「一緒に寝る?」

 

「うん…」

 

「麗ちゃんは強いね」

 

「そんな事ないよ…」

 

ぎゅっと彼女を抱きしめる。

「ん…落ち着く…」

忘れる事なんて出来ないだろう…

でも…あの子達の生きた証を…覚悟を私は絶対に忘れない。

ずっと背負って歩んで行く。

この人と…仲間と…。

 

 

見てて2人とも…

生まれ変わっても…私の所に来てね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……よかった』

 

『私達の勝ちだな』

 

 

 

 

『お願いするのです…西波島の提督さん』

 





閲覧ありがとうございます。
やはりこういう描写は…心が痛い…

彼女達に少しでもぐっときてもらえたら幸いです。

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