提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
あなたは運命を信じますか?
もしも…叶うなら…。
この願いが叶うなら…
あなたの側に…この命が尽きるまで…
死が2人を別つ…その時まで、お側にいても良いですか?
気が付いたら…私はそこに居た。
冷ややかな風が顔を撫でる。
ほぼ…水に浸かった体。
そう、私は海に浮かんでいる。
目をキョロキョロと動かしても何も見えない。
海しか見えない。
本当に静かな海…。
すっぽりと抜けたような記憶…でなく
自分は産まれたばかりだと理解している。
「…ぅ………ぁ…」
身体を動かそうとして見る。
うん
動く。
パシャリと…立ち上がる。
酷く体が重い。
視界はぼやけるし、思考は上手く定まらない。
頭の中にコールタールを詰め込まれたような気分だ…。
フラフラしながら何とか立ち上がる。
そう、体は覚えているようだ。
足を踏み出して…転ぶ。
「あうっ」
「…いたたた」
誰かが手を差し伸べてくれたような気がした…。
存在しないはずの記憶の中で…
「………1人…ですか」
まあ当然だろう。
なんせ…
……私は…
誰だろう…
何の為に…ここに居るの?
少しの間歩く練習をした。
体が覚えてるはずなのに…思うように動かない。
少ししてやっと動けるようになった。
「###」
一陣の風が私の身体を撫でた。
その風と共に…聞こえた"確かな声"…。
そう…私を呼んだ声。
「…て………く?」
何だ?
この言葉は?
今…頭に浮かんだ言葉。
懐かしいような…そうで無いような。
愛しいような……馴染むような…。
「提督殿?」
何故かすぐに分かった。
こっちだ……こっちに…提督が居る。
私の…私の守るべき運命の人が居るッ。
「島?」
かなり小さな島だった。
建物も何も無い…島。
その砂浜に…打ち上げられたであろう人が居た。
…私の
ロマンのかけらも……って!
そんなことを言ってる場合では無いですね。
重っ!?
でも私には…もう一つの腕みたいなものかあるから…。
何とか浜辺まで引きずった。
もしもし…
おーーい?
あれ?
…息してない!?
じ…人工呼吸…?!
え?!いいんですか?!生まれたばかりで…初キッス……。
ダメ!これは人命救助!人命救助!!
すぅーーー
すーーー
ゲホッ…ガハッ…
あ!よかった……です。
ほっとして…とりあえず…と
近くの川へ水を汲みに行く。
ふふん♪
助けてくれてありがとう…
君は…命の恩人だ…。
とか
結婚して欲しい…運命の人…とかなるのかなあ?
にへらと笑いながら川に着く。
が…
見てしまった。
水面に映る私は……
深海棲艦だった。
あ…
だめでした。
私は……あの人の敵なんだ。
水を運んで来たけれども…
この人は…私を見てなんと言うのだろうか…
「深海棲艦!?げほっ…マジか」
『お水…どうぞ…塩水で口の中とか凄いと思いますから…』
彼はキョトンとした…。
「……ん」
「…深海棲艦?君が助けてくれたのか?」
『あ……ハイ…そうですね』
彼の表情は少し崩れて…
「…ありがとう……」
と言ってくれた。
何故この人はお礼を言うのだろうか?
敵である私に……この人は…。
『あ、お水です…』
貝殻に入れた水を渡す。
グビグビと呑み干す彼。
「ありがとう…本当にありがとう」
一息つきながら話をする。
この人は…西波島の提督さんらしい。
波にさらわれてここに流されたらしい。
艦娘も居たけれど…流れが早すぎて…とか
あきつ丸さんと最上さんて人達らしい。
その名前を聞いたとき…ズキンと頭が痛くなった。
「大丈夫?!」
と、心配してくれる提督。
『大丈夫です』
と、返す私。
「君は…?」
と、提督殿が聞きます。
でも…
『…よくわからないんです』
としか答えられなくて…。
そっか…と答えると提督殿。
『お魚獲れましたよ』
艤装の砲撃で獲れた魚を焼いて食べます。
人よりも力もあるので…
シェルター作りもなんのそのです。
初めて迎える夜は…少し怖くて……
自然と提督殿に近寄ってしまいます。
『すみません!何だか…心細くて…』
「ん…いいよ…おいで」
寒さも…平気になりました。
『あの…なんで平気なんですか?』
「ウチのね鎮守府にも深海棲艦の娘がいるのよ」
ほ、本当ですか!?
俄には信じ難いが…きっと嘘では無いだろう…。
『あのッ…」
「うん?」
『運命って…ありえますか?』
『私は…貴方に出会うために生まれてきたのだと思うんです』
「……」
『…って…馬鹿ですよね。私は敵なのに……』
「あると思うよ」
彼は言いました。
「君がそうだと思ってくれるなら…俺は運命に助けられた訳だし」
「…そうなら…俺はとても嬉しいし…君さえ良ければウチに来て欲しい」
『良いんですか?』
もちろん…と頷く提督殿。
こんなに嬉しいことはあるのだろうか?
こんなに嬉しい事が…うまれたばかりで味わえるものなのか?
生まれたばかりでも分かった。
私は人類の敵だと。
きっと…この感情は…異常なのだろう…
それもわかる…。
だけども…
私はこれも運命だと信じたい。
握手をしようとした…
その時だった。
『よくやったわね…さぁ…ソイツを殺しましょう』
私は誰でしょう?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
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