提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
思わず提督殿と深海棲姫の間に割って入る。
『…?何かしら…』
『ソイツをこっちによこしなさい…』
頭に何かが問いかける。
私は敵なんだ…
別の何かが問いかける。
私は…##なんだ!
『ダメです!この人は…私の運命の人…私の提督…』
『何言ってるの?深海棲艦でしょ…アナタ。艦娘にでもなったつもり?』
『…嫌な思想ね…。なら…その運命とやらから解放してあげるわ…』
「おい…お前……」
振り返り…彼に言う。
『大丈夫です!あなたは…テートク殿は私が守ります』
始まる深海棲艦同士の砲雷撃戦。
瞬く間に島は戦場と化す。
海風の匂いは…硝煙の匂いに変わり…
心地よいはずの海風は…炎の熱さに変わった。
守る側は不利である。
当たり前な話だが…。
慣れない戦闘の中で必死に運命の人を守ろうとする彼女。
傷だらけになろうとも…必死に抗う彼女。
『ううっ…負けない…やらせません!!」
必死で撃った砲撃が棲姫に直撃する。
ズガン!!
その攻撃は戦艦棲姫の片目を抉り取った。
『グッ…目が……貴様ァァア!!気の迷いだと…助けてやろうと思ったがもういい!その男ごと…死ねええええ!!!』
一斉掃射…。
ありとあらゆる攻撃が棲姫から繰り出される。
『あぐっ……ああ!負けるものですか』
「やめろ!お前がもたないッ!」
『そんなもの……そのくらいいいい!!!』
爆音。
それが聞こえたのは…小さな島の方からだった。
「も、最上殿ッ!!アレは…」
「うん、誰かが交戦してるっぽいね!行こう!」
そこに見えてきたのは…
深海棲艦同士の衝突だった。
何故?と思ったが…
片方が守ろうとしているのが提督だと分かった瞬間に私達のやるべき事は決まった。
「提督殿おおおお!」
「良かった!無事で!!遅くなってごめん!」
「提督殿を守ってくれてありがとうであります!…あきつ丸、最上、力をお貸しします!!」
ボロボロの彼女に語りかけるあきつ丸。
『あきつ丸…最上……』
ズキリと頭がいたんだが…そんなことはどうでも良い。
良かった…。私1人だと………もう限界だから……。
『…くっ…増えたか…』
チラリと自分に敵対した深海棲艦の彼女を見る。
退き際……かしら…。
正直負ける気はしないが…無事では済まないだろうし。
援軍が来られても生存率はグンと下がる。
こちらも援軍を呼んで決戦をしても良いが…
…疲弊したところをあのムカツク小僧どもに襲われても厄介だ…。
『……』
棲姫は足元を砲撃して煙幕を生み出した。
「なっ!!?」
「とりあえず提督殿を確保するであります」
提督の周囲に集まり警戒する彼女達…。
しかし、煙が晴れて見えたのは…何も無かったように静かな海と島だった。
「ありがとう…良かった…」
「遅くなって申し訳ありません!」
「で…彼女は…」
気になる点はそこだ。
何故、深海棲艦が提督殿を守ったのか?
「あれ?」
彼女を探して周りを見渡す救達。
「!!!!」
そこには…瀕死になったであろう彼女の姿があった。
「おい!!」
救が駆け寄る。
「大丈夫でありますか!?」
「…意識が…落ちかけてる…」
「2人とも!鎮守府まで運べないか!?」
『…無理…ですよ……わかりま…す…もう…ダメだっ…て』
「そんな……俺の為に………」
『死が2人…を……別つ…ま……思ったよ…早く……きてしま』
「しゃべるな…な…苦しいんだろう…」
「あ……あ」
名前…呼んで欲しかったなあ……自分の名前も分からないけれども……
私の名前…何だっけ…
深海棲艦じゃなくて…
きっとあったで あろ…う
私の
艦娘…と
しての
名前…。
運命の人に…あなたに呼んでもらいたかった名前
「……る」
え?
と、皆が提督の方を見る。
何故だかわかった。
自分でも説明出来ないが…
何故かこの娘が###と分かった。
咄嗟に口から出ていた。
その娘は…ハッと目を丸くして…
あぁ…そうだと言わんばかりに頷いた。
「神州丸……お前は……神州丸」
そうだ…何故忘れていた…。
こいつは…
君は……俺の神州丸じゃないか…
一緒に居た…神州丸じゃないか!
俺がこの世界に来た時には…既に居なかった。
記憶からもすっぽりと抜けていたように…
あぁ…思い出しました…。
私は…あなたが来る前の…あの日…大石提督に…連帯責任を被って解体処分された…んだった。
そう
彼女は…救の着任前に大石によって最上達を庇って解体処分された神州丸だった。
彼女は救に会うことも叶わずに海の中を彷徨っていた。
なんの因果か…目覚めた時には深海棲艦になっていた。
しかし、彼女の魂は覚えていた。
自分の運命の人を…
自分の守るべき人を…。
彼女の魂は…堕ちることなく、高貴なままで戻ってきた。
…彼を守る為に。
「なっ…ほ、本当でありますか!?」
「神州丸……」
彼女はその名前を噛み締めるように繰り返す。
あぁ…
今わかった。
そうだ…私は…神州丸…。
陸軍所属の…私は……
『今度は…助けてくれて…ありがとう…最上…さん』
「…あの時はごめん!私…私はっ!何で気づかなかったの!!忘れちゃってたの!ごめん!」
『…いいのです…こうして…会えたのだから…』
『あきつ丸…一緒に…戦え…て…』
「ここに居るでありますよ!」
『…うん…わかります』
.
『提督殿…』
「何だ?」
少しでも…この世界…で…お側で戦えて…本官は…幸せです。
聞いてもいいですか?
あなたは運命を信じますか?
もしも…叶うなら…。
この願いが叶うなら…
また…もう一度…あなたの神州丸としてあなたに会えるのなら…
あなたの側に…この命が尽きるまで…
死が2人を別つ…最後の…最期の…その時まで…あなたのお側にいても良いですか?
私の手を握るその人は…優しく頷いてくれた。
「…ごめんな…寂しい思いをさせた……俺は…待ってる」
「…また君に会う運命を信じている」
『…はい…運命…ですから……それ…は……楽し………み』
役目を終えた彼女は彼女は光になって消えた。
互いに最後に思い出す…皮肉な話ではあるが…
彼女は満足だった。
何故なら…最愛の人を守ることができたから。
あきつ丸の方を見る。
彼女の事を少し重ねて思い出す。
彼女もまた…同じく自分の前で消えた艦娘だった。
だが…彼女もまた、帰ってきたのだ。
約束を果たして帰ってきたのだ。
だから待てる…幾らでも…。
そして帰ってきたら…思いっきり抱きしめて言おう。
「ありがとう」と。
帰りの足は…少し重くて。
あきつ丸にとっても、最上にとっても、複雑な帰路だった。
「うぅ…忘れちゃってて…ごめんね」
「俺も…何でだろう…」
「おっと!」
突然の向かい風にバランスを崩すあきつ丸。
あきつ丸に乗る俺は…当然落ちかけるわけで…。
「危ないですよ」
その背中をスッと支えてくれる人が居た。
「最上殿ぉ〜すみませんんん」
と、あきつ丸が言う…
が、俺は何故か……感じた。
「……早かったな…」
その手の主は…言った。
「はい…。2度も溺れるのは…いけまけんから」
「それに…まだ運命は2人を別つ事はないようです」
「私はここだよー!」
と、最上が言う。
「え?」
目を丸くするあきつ丸。
「……しっかりしてくださいね。あきつ丸」
「あ…」
「あぁ…」
彼女達が抱き合って喜んだのは…言うまでも無いだろう。
「死が2人を別つまで…その最後の最期まで…お側に居させてくださいね」
ニコリと微笑む彼女。
「おう」
よろしくな…と言う彼。
「神州丸」
「はい」
「…やっと名前を呼べた」
「はい…提督殿」
「ありがとう」
彼は抱き締めて言う。
きっと泣いてるのだろう。
自分に悔しくて…でもそれ以上に嬉しくて!!
「はい!神州丸…あなたの神州丸…。ただ今…帰りました!再着任しむした!!」
「オーーウ…ライバルが戻ったデース…」
「何故忘れて居たのでショウ?」
「妖精さんの…かなあ」
寂しくないように…
また帰った時に思い出せるように…
現時点では何も分からないけど…
でも…これだけは言える。
私達はもう仲間を離さない。
「てか…運命の人…ですって……」
「あ!!アイツ!提督にキスしやがった!!」
「乗り込めッ!!」
「ズルイぞおおおおお!!!」
「え?!あ!?!」
「ええ!?み、皆さん!?」
ズルイぞおお!
私達もおおお!!
さらに賑やかになった鎮守府であった。
「また会えてよかったああああ!!!」
「また一緒に居られるうう!!」
2人を…死が別つまで…。
それは戦火の中での別れじゃありません。
静かで…幸せな木漏れ日の中で迎える…あなたとの別れ。
私の見る運命は…
皆と共にあなたの最期の笑顔の手を取って…
優しくて、暖かな光の中で見送る最期。
ええ…
きっと守ってみせます。
何度でも…何度でも…。
てな訳で神州丸の登場でした。
かなり遅くなったのですが…ごめんなさい神州丸。
戦闘シーンはかなり少ないシリアスでした。
試しにかなり少なくしてみたんですがどうでしょうか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
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