提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
真希は知らない。
ひれ伏す側になった事はない。
男にも女にも…
その態度ですら問題にならなかった…何故なら強かったから。
しかし…桜は別だった。
コイツは…何か別の強さを持っている…だから近付かなかった。
麗は…歯牙にもかけなかったのに…
どんどんと頭角を出してきたのが気に食わなかった。
私が負けるなら…桜だろうと思っていた。
なのにどうだ?
目の前の雑魚と思っていた泣き虫は…
海に振り落とされた私と偽装の上に立っている麗…
気に食わねえ!!
テメェみたいな…カスに負けるわけにゃあいかねえンだよッ!
ザバン…と艤装に上がる。
びしょ濡れなところも…クソッ…
「テメェは絶対ェにぶっ殺すッ!!」
「させると思ってるの?」
響…いや…
死の先に…
その先の先に再び彼女と歩む事を願って
彼女に涙を流させないと誓った彼女は
ヴェールヌイとなって戦艦の前に立ちはだかる。
「なンだよ…その姿はァ?!」
「…響……?」
「いや……ヴェールヌイ…?」
「うん。響でいいよ」
「さあ…準備運動もできたし…やろうか!」
「……ぐ…舐めるな!」
宮山城が真希を降ろしてから襲い掛かる。
「駆逐艦如きが…戦艦にかてると思ってンじゃねェぞ!!」
「駆逐艦…ごとき?」
武蔵とリシュリューが笑う。
「…ははははは!!!」
「ごとき…だってよぉ!!」
「響と電のコンビネーションは…私でも勝てないんだからな」
「な?」
何故彼女達が残ったか?
弱いから足手纏いになってしまうから…時間稼ぎの為ではない。
武蔵は猛武鎮守府のなかでも最強の艦娘である。
ー…が、それは単騎での場合だ。
電と響…この2人のコンビネーションは…鎮守府の中でも最強だからだ。
その強さは比肩するものはなく、鎮守府最強である。
少しでも多く削るために
少しでも生き残ってもらう可能性を上げるために…
彼女達は残ったのだ。
「いくのです!響!」
「うん!行こう!」
単身で響がこちらに突っ込んでくる。
「…それで最強…?」
宮山城が照準を合わせる…。
もちろん避けることも想定して…。
ニヤリと響が笑いながら左に重心を傾ける。
「ほらね!!」
砲身を左に少しずらした……
その時…響が2人に分かれたように見えた。
いや違う。
電とか言うチビか!
電がピタリと響の後ろについていたのか!!
それが二手に分かれたのか!!
宮山城は目線を泳がせてしまった…
「そこだよッ!!」
「そこです!!」
2人が魚雷を放ちながら動きながら主砲を構える。
宮山城は電と響と2人の発射した魚雷と……処理しなくてはならない情報が一気に増えてしまった。
こうなればできる事は一つ…
防御姿勢でなるべく回避に徹する…。
が、判断を鈍った!
ズゴォン!!ドゴォン!!
「ぐおっ……」
……?威力が低い…?
「まさか!これは」
ズドドドン!!
背中を撃たれ…振り向こうとすると左側を撃たれ。
「ぐっ!?」
二つの目があろうとも…対角に居て別に動く2人を捉える事は出来ない。
「ぐぁあ!!」
なら…せめてどちらかでもぶち殺す!
腕の一つで足りるだろうか?しかし、そうなればコンビネーションは意味を成さない。やれる!やれる!!!
なら改ニですらない電から…
真正面に電を見据えて…拳を繰り出す宮山城。
それをスッと躱す電と響…。
「なぜまた
また判断が鈍った!!
その隙を突いて2人は拳を躱しながら顔面に膝を食らわせる!
「ぐっ!こ、このおおおお!!!」
ガクン
バランスを崩す宮山城。
響が後方から膝を蹴ったのだ。
「ちょうど良い…高さなのです」
電が回し蹴りを顔面にぶち込む。
ドゴォ!!
「…ぐっ…あっ!」
「「これで…」」
「返してもらうぞ!私達の家を!」
「返すのです!!やられた借りを!!」
2人が拳を構える。
「「終わりだぁぁぁあ!!!」」
その想いを顔面にぶち込んだ!!!!
宮山城は…
馬鹿にした駆逐艦に一度すら触れる事なくたおされた。
「…馬鹿な…」
こんなはずはない!
有り得ない!!
「…全員…殺せ…!!自爆しようと…何だろうと!」
砲撃が電と響を狙う!
が…その砲弾は2人に届くことなく撃ち落とされた。
「……やりました!やりましたよ!麻耶!!」
「当たり前だ!任せろ!」
「静ちゃん…?」
「…静……テメェ…!!家族の命が惜しくねぇのか!!」
「僕は…ッ!守る為に軍人になりました!!」
「麗さんに言われて目が覚めました…僕も胸張って軍人だと言える人間になりたかった…!!その為に居るんです!!」
「あなたに屈したら…それは達成できないッ!」
「例えここで私が死のうと…僕は…やり切ったと言えるようになる為にここに私の意思で立つんだ!!」
「……」
囲まれた。
こんな奴にすら…アタシは…負けるのか?
クソッ……
軍人として…胸張って…か。
アタシは…邪魔なものは全部屠ってきた。
物凄い数の仲間と死体の上に今のアタシは在る。
……それが正しいと思ったのに
何だよ…奴が少しカッコよく見えちまったじゃねぇか…
チラリと山城を見る。
ハッと目を覚ました彼女は涙を浮かべながら立ち上がろうとする。
ガクガクと震える膝を叩いて立ち上がろうとする。
思えば…彼女もずっとアタシについてきてくれたなァ…。
「もういい…山城…」
ハッとした宮山城が真希を見る。
「…でも!!」
「……いい、アタシ達の負けだ」
馬鹿にした泣き虫に
舐めた駆逐艦に
利用していた陰キャに
ここまでされたんだ…負けでいい。
「……強えよ…オマエ達は…アタシに勝ったンだ…最強だぜ…」
「最強だとかそんなのはどうでもいいんです」
「守りたいものを守るだけの強さが在れば…それでいいんです」
「フッ…馬鹿だなァ……あぁ…馬鹿で良いって言ってたンだっけ…」
「うん、馬鹿でいいの」
「そうか…」
ニコリと笑った彼女の顔は…先程までの顔とは違っていた。
「静ちゃん…」
「ありがとうね」
「ぼ、僕は何もやってないよ!」
「ううん…あなたの言葉は…心は届いたよ」
「ありがとう…助けてくれて」
ありがとう…
僕は…裏切ったんですよ?
なのに…そんな言葉を…
あぁ…そうだ
感謝される人になりたかったんだ…
戦える…指揮できる力があるからこそ…正しく在らなければいけないんだ。僕はそれを忘れていたんだ…。
ぽろぽろと涙が流れる。
感謝をしなきゃいけないのはこちらなんだ。
なのに嬉しくて情けなくて涙が止まらないんだ。
彼女に抱き着いて泣いた。
優しく慰めてくれる麗ちゃんに誓った。
もう間違わないと。
「間違ってもいいんだよ…それを正すのも私達仲間の役割だよ」
「お帰りなさい…2人とも…」
ぽろぽろと泣きながら2人を迎える麗。
「…うん、ただいまあ」
「麗ちゃん…」
「ごめんね!寂しい思いをさせて…!!ごめんね」
「こっちも…心配かけてごめんね」
泣いた。
誰に見られようと構わない。
笑われようと…何だろうと構わない。
この喜びは…私達にしかわからないから
この涙は…私達はだけのものだから
「さあ…久しぶりに帰ろう」
うーーん…ぼろぼろだけど
やっと帰ってきた…
「ただいま…」
誰も居ない執務室に呟く麗。
お帰りなさいと何処からともなく聞こえた気がした。
振り返ると…皆が立っていた。
「「「「「おかえりなさい」」」」」」
「「「ただいま!」」」
帰る家を…
家族を失って…それでも彼女達は進み続けた。
よく出来た程の戦果。
家も家族も取り戻した。
2度と失ってたまるか…と、皆が思う。
彼女達はより強い絆で結ばれた。
彼女は今日の日を忘れないだろう。
久しぶりのマトモな戦闘シーン?
少しでも良いぜぇ…と思って頂けたなら嬉しいです!
感想など頂けると嬉しいです(๑╹ω╹๑ )