提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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閑話 届いたお菓子のお話

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ!赤い私…お願いがあるの!」

 

 

赤…と呼ばれた者は

オークランドの中に居るもう1人のオークランド。

厄災と呼ばれる程の戦闘力を持ち、1人で何人もの戦姫を相手取れるほどの者。

 

オークランドと入れ替わる事で顕現できるが…今はオークランドの中でその時を待っていた。

 

 

 

 

「…藪から棒だな?……いや待て、言わんとしている事はわかる…」

「だがダメだ」

 

 

「え!?何で!?」

 

オークランドは赤に頼もうとしたのだ。

彼の元に…作ったお菓子を届けて欲しいと。

 

赤なら出来る。

そう思ったから。

 

 

 

「私に利がないだろう?それにだ…都合良く呼び出されて遣われるのも癪だ…」

「全てを灰に帰して構わないのなら…やろう」

 

フン…と鼻で笑う赤。

 

ぐぬぬ…と歯を食いしばるオークランド。

 

 

 

だがこのオークランド…タダでは引かない。

 

「まあそうよね…アンタって奥手だもんね」

 

「は?」

 

「アンタも指揮官の事好いてるのに…何も出来ないもんね」

 

「お前…喧嘩を売っているのか?」

 

「だってそうでしょ?出来るのにやらないんだもの…」

 

「ぐっ」

 

「あいつも…中々悪くない…とか言いながらー?夜中に替わってお菓子作ったりしてたくせにー!?」

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

 

「そのお菓子…渡さなくて良いの?」

 

「……」

 

「…私は指揮官が大好き。だから一生懸命作ったよ!皆だってそう!あなたもでしょう?…私」

 

「悔しいけど…私にはそれを渡す力はないの…あなたにしか出来ない」

「だからお願い…」

 

「……ッ…ハァーッ」

「わかった…私の負けだ!オークランド。いいさ、行ってやるさ」

「ただし!奴には会わずに置いてくるだけだ」

 

「会えば…離したくなくなるからだよねぇ〜」

そこに現れたのは朝日だった。

 

「……お前か…」

 

「そうよ〜?私のお菓子も届けてねぇ〜?」

 

 

 

 

 

 

「結局…それなりの量になってしまったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが……指揮官の部屋か…」

 

「む?あそこに見えるのは…指揮官……か」

私室の窓からは皆に囲まれる指揮官の姿が見えた。

 

『あ!指揮官…私の帽子を被ってくれてる……嬉しい…』

 

「…泣くほどか…」

「会わなくて良いのか?お前は」

赤は意地悪な質問をする。

 

 

『うん、約束したから…会う時は…あの人が絶対のピンチの時だって』

『会ったら…離れたくなくなるから』

 

『だって…私を生み出して…誓ってくれた人だから』

 

壊れ行くソロモン基地であの人は私を助けてくれた。

沈むだけだった私を…生み出すことで助けてくれた。

そして誓ってくれた…楽しい毎日を私に…って。

 

戦力が揃えば私の役割はなくなるけれども…

それでも彼は私をずっと大切にしてくれた。

おかげで私はどんな辛い戦況も乗り越えて来れた。

 

 

 

 

「甘くて脳が腐りそうだな」

 

『羨ましいくせに…』

 

「うるさいっ!!置いて帰るぞ!!」

 

『ありがとうね!』

 

 

 

 

その時だった。

ガチャリとドアが開いた。

 

「…?物音がしたような気がしマース…」

 

「む!??コレは…」

 

 

「オー…敵デス?」

 

 

金剛は彼女の手元をみて何となく理解した。

 

 

「・…ダーリンは愛されてマスネ」

 

 

 

「…体には気をつけろと伝えてくれ」

「いや…内緒にしてくれ……」

 

 

「帰るデース?お茶出しマスヨ?」

「あの人に会っていかないのですか?」

 

 

「…約束したんだ」

「会う時は…奴がピンチの時…その時はどれだけ離れていてもきっと駆けつける…とな」

 

「今回はその約束の印を置きに来ただけだ」

そう言って赤はオークランドに代わる。

 

 

「不思議な人ねあなたは…あの帽子はあなたのですね?」

加賀が言う。

 

「わかるの?」

 

「直感よ…」

 

 

 

 

「うん、そうなんだ、アレは私の帽子…あの人は私にとってとっても…とーっても大切な人…私に生きる意味を…生まれた意味をくれた大切な人」

 

「…ならコレをあげるわ…」

 

「加賀!それハー!!」

 

「提督の写真よ…しかも…笑顔のね!!」

 

 

「良いの?」

 

「ええ…あの人がピンチにならないようにするのが私達だけど…」

 

「いつか…ちゃんと会える事を楽しみにしてマース」

 

 

 

 

 

 

『時間だッ』

と、赤はオークランドからかわる。

 

 

「…すまない…そろそろ時間なんだ。行かなくては…」

 

「またな…」

 

 

 

「ええ…また」

「いつでも…来てネー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言いながら帰る2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は見た。

あぁ…来たんだ…と。

 

 

急いで部屋に向かうが誰もいなかった。

 

 

そして部屋でお菓子を見つける。

 

手紙を添えられたそのお菓子は…少し前まで握られていたのか…少し暖かかった。

 

 

食べたお菓子は…甘かった。

 

 

 

だから言う。

塩っぱいよ…と。

 

それは味付けを間違えた訳ではない。

彼の涙の味。

 

甘くて…幸せで……ほろ苦い。

 

 

 

「ありがとう」

また会えるさと…言い聞かせて

彼は食べながら空へと呟いた。

 

 

 




ほんの少し切ないお話。

彼女達かもしかしたら…また来るかも…

ブルーオースのオークランドは健気。
ステマじゃないよ!
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