提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
想いの果てに起きる最初で最後の本当の奇跡。
とある男が死を境に…とある世界に転生したお話。
彼が、救い救われるお話。
「待って…今立つからッ!やめて!」
「…大丈夫、俺が絶対に守るから」
「指揮官ッ!!」
数日前の事だった。
鎮守府に地元の漁師さんが網にかかったと届けてくれたものがあった。
金谷の陸奥だった。
全体的に損傷が激しく…生きてるのが不思議な程だった。
彼女は言った。
「…お願い…仇を取って…敵であるあなたに頼むのは…違うけど…縋れるなら…鬼でも悪魔でも敵でも!!」
「奴はあんたを狙ってるわ…あんたに人生を狂わされたってね」
「あんたの知り合いなんでしょう?」
「…あなた…」
「不思議?わかってるわよ…金谷提督はクズだって…」
でも…と彼女は言う。
「例えクズの提督でもね?それなりに思い出も…好意も…あるのよ」
やはり…林…林 優か。
「私こう見えても…彼の事…ーすー………
「ふむ…死に損ないはここに居たか」
チュン…と言う音と共に彼女はぐったりと動かなくなった。
「なっ……」
目を上げた先には……
「久しぶりだねえ…神崎君」
奴が居た。
その後ろには大勢の艦娘達がこちらを睨んでいた。
「兄貴ぃ!やっちまおうぜ!」
後ろから林が捲し立てていた。
待て…
何でお前は海の上に立っている?
それを平然と周りは何で見ていられる?
「…疑問かな?私が…いや…俺が立ってるのがよ」
ニタリと嗤う優は言う。
「全員を掌握できたからな」
…と。
「まあ…今日は挨拶だ。時期にここも…貴様の大切なものを全てを踏み潰す」
「変な残り虫が…好ましく無い行動をとると面倒だからね」
「とりあえず処分させて貰ったよ」
では…と奴は俺らに背を向けて歩いて行く。
コレほどの屈辱があろうか?
敵に背を向けられて…見送るしかできない今を。
やろうと思えば攻撃もできる。
しかし…こちらの戦闘態勢が整ってない。
今は…耐えるしか…
「あぁ…そうだ」
と、彼は言う。
「…そのゴミは…すまないがそちらで処分しておいてくれ」
「き…貴様ッ」
思わず…金陸奥の方を見る。
彼女は死んだ、もう動くことはない。
その彼女は…光となって消えた。
「あぁ…その必要はなかったか…クリーンなゴミでよかったな」
「貴様ぁぁ!!絶対許さん…ッ!!絶対に叩き潰してやるッ」
酷い憎悪を覚えた。
口からどんどんと言葉が溢れて来た。
ケラケラと笑いながら挨拶を済ませて奴は行く。
「もうすぐ奴が来る……皆準備はいいか?熾烈な戦いとなるだろう」
「でも…皆で生き残ろう!勝ち取ろう!」
「もう…これ以上奴らに好き勝手させて…犠牲となる艦娘や人をなくすんだ!!」
吹雪、赤城を遠海域に。
天龍と龍田を猛武鎮守府に
呉には桜三笠を
舞鶴に武蔵と清霜を
大本営付近には山城と時雨を
そして…残りのメンバーで奴を迎え撃つ。
「…大丈夫!やれるよ!」
通信から時雨の声が聞こえる。
「深海棲艦との戦いもあるんだ…人と人がこんな争いを続けてちゃダメだ!それに…提督を殺させなんてしない!提督の大切なものを奪わせたりしない!!」
度重なる襲撃や戦いを経て、鎮守府を取り戻して行く救達。
だが、国民は違う。
新、帝国海軍と旧海軍を明確に混同しない人は少ない。
故に言う。
「海軍は必要ない」
「結局奴らの好き勝手にされるだけ…と」
このまま行けば…俺達も敵の扱いを受けてしまう…
この機会に…やるしかない。
目の前に林が立っている。
「…ここが君の新しい家だろう?」
男は尋ねた。
海の上から。
海の上と言っても船ではない。
自力で海の上にいるのだ。
「…神崎よ……何故お前は生きている?」
「毎夜思い出すんだ…貴様に殴られた事をッ!」
「後悔しているんだ…一瞬で死なせてしまった事をッ!!」
「だからこの世界で殺す」
「艦娘も他のも含めて…そして最後に貴様を殺してやるッ」
「見てみろ!正義は脆く崩れ去り…かつてはこの国の守りの要とされた海軍ですら…この有様だ!」
「民意は問う!この世界に軍は必要か?」
「その声すら捩じ伏せたッ!今やこの国は…我らのものだッ」
「民の安全も金を払えば…従えば保証する!」
「そんなの…間違ってるだろう!お前の勝手が通っていいはずはない!」
「ふん!貴様は良く抵抗してくれている…しかし、もうその必要はないのだ」
「貴様についた奴らを除いて全員…私のナカマとなったからな…」
「俺の手の中には…全てある!データも力も…全てだ」
奴の後ろに居るのは……虚な目をした艦娘達。
「ありとあらゆるものが俺の味方だ!」
「お前…弟までも…?」
「ああ、そうさ!この気分を晴らす為…貴様をもう一度殺す為に!全てを踏み躙る為にッ!!」
「貴様が派兵した先にもちゃぁんと送ってある…」
「貴様の仲間も…裏切り者も全てッ!悉くこの国と共に沈めッ」
「…守り切れるか?貴様に…」
「…全員!戦闘態勢に入れッ!!」
救は全員に号令を出した。
「無力に崩される様を眺めるがいいさ!!」
「提督ッ!別海域吹雪さん達を含め…遠征先の部隊全員…戦闘に入りましたッ!」
大淀から連絡が入る。
「……ただ…」
「ただ?」
「相手は…全て同型艦、もしくは姉妹艦の模様です」
「ん〜?厳密には違うなァ?」
「お前達そのものであり…仲間そのものだぞぅ?」
「なに?」
「お前達が守ろうとするものは全て壊す。裏をかいて俺達に合わせて派兵したようだが…違うな…」
「俺達がお前の派兵に合わせて送り込んでやったのさ」
「もう1人の…自分が相手なんだからなぁ…」
「…全ては貴様を葬る為…」
「御蔵だろうと…鏡のナントカってのも…全てを利用した!」
「てことは…お前の味方ってのは…」
「いいだろう?従順な…駒は…」
林 優は自分本位な人間だった。
気に入らないものは排除してでも…のしあがる。
何故なら…自分の王国を作りたかったから。
綺麗な奴が居た。
セクハラとパワハラを続けていたら自殺しやがった。
そしたらソイツのお気に入りが俺を殴った。
格好がつかなくなった。
クソ上司に言われた…俺の出世はこれ以上無いと。
庇いきれない…と。
だからすぐに奴を追いかけた。
奴の安心し切った表情を見て…無性に腹が立った。
だから…押した。
奴は呆気なく死んだ。
俺は捕まった。
嫌だった。
プライドが許さなかった。
だから自殺した。
なら…訳の分からない世界に来た。
弟とやらが居て……。
だから決めた。
ここで俺の王国を作ろうと。
なのに…ムカつく奴が居た!俺より上に居た!許せねえ…。
だから決めた…
奴を惨たらしく殺そうと…。
だから敵に全て情報は売った。
深海棲艦とやらにも、真壁とやらにも…別の世界から来た顔色の悪い奴らにも…。
しかし、奴は全て乗り切った。
鎮守府を…海軍を奪えどもゴキブリ並みの生命力で俺の視界から消えてくれねえ…。
周りを扇動しても…余程気に入られてるのか…奴の敵にならねぇ…
何で奴の周りには人が集まるんだ?
腹が立つ。
弟や以前の上司、同僚すらも踏み台にした男。
艦娘や仲間を…データを元に改造し、傀儡と化させ……そして……
全ては…思い通りの世界を築く為。
行け…と命じられたカンムス達はこちらへとやって来る。
「…」
「提督…」
頭の中に誰かが話しかけてくる。
『これでお仕舞いにしよう…あいつらの好きにはさせない…させちゃいけない!』
目の前にはこの世界を…めちゃくちゃにした奴が居る。
先輩を死に追い込んだ奴が居る。
俺を…殺した奴が居るッ!!
皆を見る。
「皆が…かわいそうです!無理矢理改造されて…生み出されて!」
「やりましょう!平和な…海軍を取り戻しましょう!!」
「これ以上…不幸な艦娘達を生み出さないように」
出撃命令を下す。
1人は…己の野望の為に
1人は…この世界の為に
皆は…愛する提督の見る未来の為に
旧海軍と新帝国海軍の最後の戦いが始まった。
決戦はそこそこパートが続きます。
ちまちまと語られる部分も出てきます。
胸糞悪い表現や戦いもあります。
オリジナルの展開やその他が出ます。
色々とありますがこの話も最後までお付き合い頂けると幸いです。
なにとぞよろしくお願いします。
感想などありましたらぜひ!よろしくお願いします。
少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです。