提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
私だけが持っているもの
段ボールだけの寂しい部屋から…ここまで築き上げてきた…。
あなたに選ばれたこと…
私は…誇りに思っていても良いですか?
「私は…」
『憎いだろう?』
「私はッ…」
『お前は…選ばれない…赤城にも…あの提督にも選ばれない負け犬だ』
『お前も誰も信用しちゃいねえのにな!』
ぐるぐると頭の中を奴の言葉が駆け回る。
私は…司令官の1番にはなれないの?
私は…金剛さんにも負けて…初期艦のはずなのに…
何で初期艦に選んだのだろう?
私は…
私は……
ある時に私がよくする行動がある。
不安な時に…
寂しい時に…
力が欲しい時に…
勇気が欲しい時に…
前に進みたい時に…
私は約束の指輪の左手をぎゅっと右手を添えて握る。
私の左手には…彼との
思い出す。
『頼りにしてますよ…!吹雪さん!』
『あなたなら…随伴艦を任せられるわ…』
『加賀さん…赤城さん!』
『明日をも知れぬ命だからこそ…今を精一杯生きるの…焦がれる明日を…大好きな人と過ごすために』
『あなたが私の司令官ですね!私は吹雪です!よろしくお願いしまひゅ!』
『噛みました…』
『あはは、力を抜こう!吹雪…よろしくな!』
段ボール数箱しかない寂しい部屋から始まった。
妖精さんと…大淀さんと…途中氏ら来た間宮さんに伊良胡さん。
そこから私達…
戦いではあなたと2人でがんばりました。
『あなたに一目惚れなんです!』
『お前は俺の中でも何があっても一番最初に出会った初期艦だ』
『何で私が初期艦だったんですか?』
『…可愛かったってのもあるし……あ、この子だなあって直感ってのもある』
『君と見る…何か明るい未来を見た気がするんだ』
『未来ですか?』
『今でも夢に見るんだ。隣に皆が居て、君が微笑みかけてくれる…明るい未来が…。晴れ渡る木漏れ日の中で…優しい皆の笑顔で…』
『だから…君にコレを改めて贈りたい』
司令官は私に指輪を……
そして…キス…を。
『司令官…!』
『ん?』
『わ、私は誇って良いですか?!あなたの初期艦となった事を!あなたに選んでもらえた事を…誇ってもいいですか!?』
『…君は誇ってくれるのか?』
『はいっ!!』
『私は…ずっと司令官を愛してますからッ!!』
『俺も愛してる』
『頼りにしてるぞ吹雪』
『私なんか…』
『私も…もっと強ければ良かったんです』
『そうか?』
『たくさん魚雷を積めて…空からの攻撃にももっと対応できたら…』
『お前はお前でいいんだ』
『お前は…いつだって在ろうとしてるじゃないか』
『旗艦として…随伴艦として…姉として…皆を守ろうと必死に頑張ってるじゃ無いか』
『誰が見ていなくとも…俺はずっと見ているぞ』
そうだ…
『仲間割れか?』
「……哀れね」
『何?』
「私達ってくせに…私達の事がわからないなんて…」
「私の随伴艦を…旗艦を舐めないで頂戴」
「私はッ…赤城さんの後輩で…随伴艦で…旗艦で…司令官の初期艦ですッ!!」
「吹雪さん…」
『ふん!強がるなッ!言い聞かせてるだけだ!!』
「何と言われようと私の誇りです!初期艦も随伴艦も任せると言ってくれたんだ!!それに初期艦は私だけっ…!それは…誰にも負けない誇りだッ」
「そんな武装なんかに…私は負けないッ!!」
「負けない…!私は負けないっ」
言い聞かせるように…
「お前達なんかに…負けるもんかッ!お前達なんか…お前達なんか!私達がやっつけちゃうんだからッ!!」
「私は誰も信用してないと言いましたね」
「確かに今のあなたは…私の理想の姿です」
「でも…分かりますか?」
偽吹雪はハッとする。
「なんで…その姿でも…アレがないか…」
『やめろッ!!』
明らかに焦る偽吹雪。
そう…吹雪のコピーである彼女には分かるのだ。
なぜ…それがないのか。
「ふ、吹雪さん?」
吹雪は赤城の方を見て微笑む。
「何でその装備の中に…空母や軽巡の装備…艦載機が無いか…」
「それは…」
『言うなッ!やめろおおお!!』
「それは…赤城先輩達にしかできないと…信じてるから」
「私は…私の役割を知っているから」
赤城もハッとした。
確かに理想像である偽吹雪の偽装には発艦できる艤装はない。
確かにその攻撃ができれば便利だろう…。
だが、吹雪は思っていたのだ。
それは…何があっても赤城先輩達に任せたい…信じてるから…と。
対空、対潜、それに特化した装備。
そう…彼女の望んだ姿とは……
随伴艦として
旗艦として
皆を守り抜ける姿。
愛されたい
必要とされたい
でもそれ以上に…仲間の命を背負って行くに値する子になりたかった。
だから彼女はそれをカバーできるくらいに努力した。
「行きましょう!赤城先輩ッ!!」
「吹雪さん…私達って…」
またじわりと涙が浮かんできたが…グッと堪えた。
「ええ!行きましょう!吹雪さん!!」
『厄介な目だな…』
提督…私に…!私達に!!力を貸してくださいッ!!
吹雪 改ニ 高揚状態
赤城 改ニ 戊 高揚状態
吹雪さん…私のこの戊は…本当にあなたと共に夜も戦えるように願ったからなの。
赤城は無力を感じた。
夜には何も出来ないのが…。
彼女は思った。私も皆と一緒に…吹雪と一緒に戦いたいと。
その願いは…奇しくもあの運命の5分間の再現で至ったこの姿。
彼女はその真価をたった今理解したのだ。
彼女は手にした。
すべては…あなたと共に戦うためにで
願いの果てに辿り着いた…戊という状態。
夜戦が可能な赤城の姿に。
吹雪は劣等感を感じていた。
しかし、彼女は願っていた…思っていた。
負けたく無い…と。そして努力を重ねていた。
確かに基礎のステータスでは夕張や島風には及ばない。
しかし…彼女は辿り着いていた。
旗艦、随伴艦、初期艦としての経験の積み重ねで…
その努力の果てに
彼女の強さは…駆逐艦の中では誰もが認める鎮守府内でも1番だった。
「旗艦としての判断も指揮もピカイチだ」
「だって彼女は…提督の隣でずっと彼の指揮を見ていたから!」
足りないのは自信だった。
だが…彼女は仲間の声によってそれも超えて行く。
「赤城先輩!」
「…赤城って呼んで頂戴」
「え…」
「私も吹雪と呼ぶわ!」
先輩後輩じゃない…対等な…仲間。
「行きましょう!赤城ッ!!」
「ええ!!」
『今更仲良しこよしなんて…小癪なのよッ』
偽赤城が攻撃隊を発艦させる。
「赤城!攻撃隊…発艦して迎撃してください!あの数…行けますか?」
「…」
赤城はニコリと笑った。
あぁ…そうだ…
違うよね。
吹雪は短く一言だけ言った。
「
その声に彼女はとびきりのニヤリで応える。
「ええ!もちろん!」
「…任されちゃった。さあ!私が…相手よ!!」
赤城と偽赤城が発艦合戦に入る。
艦攻同士の航空戦…制空権を握る為。
まだ…いける。
無駄を…無くして…
もっと疾く、正確に!
どんどんと赤城の動きが鋭くなって来る。
次第に追いついて行く。
恐ろしい速さで次々と
『はん!私と張り合おうたって……』
しかし、偽赤城の余裕の表情はどんどんと曇ってくる。
バカな…そんな事が?
[なっ…私が…追いつかない?]
そう、偽赤城がいつの間にか追いかける側にかわっていたのだ。
あり得ない!私は!私は…色んな艦娘達を利用して作られたというのに?!
「はぁぁぁあああッ!!」
『小賢しいッ!!』
偽吹雪が吹雪へと砲撃する…
が、その悉くを吹雪は撃ち落とす。
例え赤城を狙おうとも…その軌道もずらされる。
『くっ…艤装はこちらの方が強いのに?!』
「撃ち落とせないなら…当てて軌道を変えてやれば私にも赤城にも当たらないッ!」
それどころか偽赤城に牽制の射撃を行う事すらやっている。
『偽吹雪ッ!!何とかしなさいッ』
『ばかな…その計算もすぐにできると言うのか!?』
「今だッ!!」
吹雪は一気に距離を詰めた!
『くそッ!舐めるなッ!!』
偽吹雪は構えた。
「私と同じってなら…コレはきっと考えないでしょう!」
猛スピードで突っ込む吹雪は急ブレーキからの急旋回を行った。
足の艤装が波を飛沫に変えて偽吹雪へと見舞う。
『ぐっ!?目がっ』
一瞬、偽吹雪はのけぞった。
彼女はそれを見逃さない!!
「そこおおお!!」
「夕立ちゃん直伝の…蹴りだぁぁ!!」
急旋回の勢いを利用して回し蹴りを腹に見舞う。
『ごふっ!?』
後ろへと飛ばされる偽吹雪。
しかし、すぐに体勢を立て直した。
『この–––––––!?』
前を向いた時に目に映ったのは……
ガツン!!
それが何か分かる前に顔面に衝撃が走った。
吹雪は片腕の艤装を投げつけたのだ!
『がっ!?–––艤装だと!?』
ボタボタと鼻血を流しながら…困惑した。
「まだまだァァァァァァ!!!」
更に、蹴り、蹴り、蹴り蹴りッ!!
『ぐっ!がっ!があっ!』
押される偽吹雪。
有り得ない!私が…私がっ!?
ドン…と何かが背中に当たった。
『なっ?』
偽赤城だった。
何と偽吹雪は吹雪の猛攻で偽赤城の立つ位置まで押されていたのだ。
『『邪魔だっ!』』
と、言い合いになるが
偽吹雪はハッと気付く。
吹雪が居ない–––
偽赤城はゾッとする。
まさか–––
それは…今の間にどれだけの差が生まれただろう?
ばっと上を見上げる
『やられ…た』
『何が!!』
イラつく偽吹雪も同じく見上げる。
そこには…上方から囲むように張り巡らされた攻撃隊の数々。
『…綺麗に…やるじゃない』
目の前の吹雪が艤装を構えてこちらを向いている。
『…ケッ…自信に満ちた顔しやがって…すげえわ…お前』
「てえええええええ!!!」
吹雪の号令と共に…攻撃は開始された。
大轟音
きっと遠くでも見えただろう。
きっと遠くでも聞こえただろう。
凄まじい程の熱量が2人に降り注いだ。
ズドオオオオオオン!!
ズドォォオォオオオオオン!!
『……負けた』
『……』
「…はぁッ……はぁっ」
「…」
『少しは…自信ついたか?』
偽吹雪が問う。
「え?」
吹雪は戸惑う。
『言ったろう?私は…お前なんだ。…幾多の艦娘達を基に…お前達の魂のデータを基に作られたコピーの吹雪…』
『お前がどう足掻いても至れない…夢の果ての姿…』
『そこの赤城もそうだ…』
『スペックは私達の方が遥かに上だったのよ?でも負けた』
「まだ少し…」
と、彼女は答えた…。
「なら、足りない分は私達が補います」
と、赤城が答えた。
『素敵ね…私達にはない…本物の……』
『そうか……良いなあ…』
『……行け……お前達の愛する…人……が』
待ってるから
2人は少し笑ったような顔で…消えた。
「吹雪…行きましょう」
「赤城……はい!行きましょう!」
見送った彼女達は…向かう。
西波島へと。
やっつけちゃうんだからは
ずっと使いたかったセリフ。
そんな吹雪も格闘デビュー…。
え?艤装の使い方が違う?
投擲武器じゃない?
せ、戦略ですよ…!
少しでもアツいと思って頂けたなら幸いです。
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