提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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誰が決めた!

私がお前に勝てないと…誰が決めたッ!!








247話 想い願いの果てに ④ 誰が決めた!!

「……させないッ」

フーッ…フーッと肩で息をする清霜。

 

 

「清霜ッ!逃げろ!お前が叶う相手では…」

 

 

『そうだ!貴様が戦艦の私に…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に武蔵さんが居る。

見間違うくらいの…そっくりさ…

いや…違う…武蔵さんじゃない?

 

 

 

武蔵さんのような……私?

 

 

 

 

『そう、私は…清霜』

 

 

「何を言っている!?清霜は駆逐艦ー…」

 

『なら目の前の私は何?』

 

『私は…超弩級戦艦 清霜よ』

 

 

私は信じられなかった。

戦艦の私が目の前に居た。

 

分かる…自分では無い自分…。

 

 

「奴らは一体どんな事をしてお前を生み出したんだ」

 

『さあ?』

 

 

『でも…これは現実…』

『武蔵…貴様が無理と言った戦艦となった私…に勝てる?』

 

 

 

 

 

「清霜!行くぞ!」

 

「は、はい!」

 

 

戦闘が始まる。

 

 

 

 

ズドン!!

繰り出された砲撃。

 

その速さと威力は…私達にそれが現実だと叩きつけた。

 

その言葉は嘘ではなかった…と。

 

 

「なっ!?!?」

 

「本当に…戦艦級なの?」

 

『戦艦級じゃなくて戦艦なのよ』

 

 

 

「きゃぁあ!!」

吹き飛ばされる私。

 

「清霜ぉお!!」

 

 

 

 

『どう?理想を叶えた…()()()()()()()()()()()()姿()を見るのは?』

 

 

「…清霜……!!」

武蔵がカバーに入る。

 

『残念だけど…速さは駆逐艦並みよ?』

 

清霜に近付く偽清霜の攻撃から庇う武蔵。

その腹に拳が突き刺さった。

 

 

「がはっ!?」

 

『もうアンタなんか要らない。そして清霜…アンタも要らない』

『私が清霜…本物の清霜になるのッ』

 

 

 

『あぁ…気持ちいいわあ…この強さ…』

ドゴッ…

武蔵を掴んで殴る偽清霜。

 

『本当…雑魚の頃とは違うわ』

 

「このッ!!」

武蔵の反撃を受け止めて更に殴る。

 

「がはっ」

 

『よくも無理って言ってくれたね』

ドゴッ

 

『雑魚のくせに』

バキッ

 

『エラソーにさ』

ガスッ!ゲシッ

 

『アンタなんか…壊してやるわ』

バキィ!!

 

 

『それが私の意思…清霜が思い続けていた事』

 

 

「嘘よッ!!そんなの!」

清霜は否定する。

 

『嘘なもんですか…私はあなたよ?わかるわよ』

 

武蔵の髪を掴み上げ…ぐいっと顔を近寄らせて言う。

『ついでに言うと…武蔵でもあるから…アンタが何を思ってたかもわかるわ』

 

 

 

 

 

「やめて…」

聞きたく無い…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無駄な努力なんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

清霜は耳を塞いだ。

嫌だ!聞きたく無い!受け入れたくないッ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

努力すれば叶うと思っていた。

私もいつか…戦艦になれると信じていた。

 

 

 

 

 

 

偽清霜が私に近寄って来る。

 

 

 

そして

 

 

バキッ

殴った。

 

 

 

 

『現実を見られないお前が嫌いだ』

バキッ

 

『雑魚は…雑魚のまま大人しくしてりゃいいんだよッ!!』

ドゴォ!

 

ズドオオン!!

殴り飛ばされたところに砲撃される。

 

ぼろぼろになる艤装。

大破に追い込まれた私…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろっ!!」

武蔵は叫んだ。

 

『何だよ?』

偽清霜は武蔵を殴りに戻る。

 

 

 

 

「そこっ!」

武蔵は偽清霜にしがみついた。

 

 

「逃げろ!清霜ッ!!応援を呼べッ」

 

「で…でも…武蔵さん…」

 

『小賢しいんだよッ』

 

 

ドゴン…と鈍い音がした。

武蔵にボディーブローが深く突き刺さったのだ。

膝から崩れ落ちる武蔵

 

 

 

 

だがそれでも彼女は偽清霜に飛びついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…清霜……確かに私は…無駄だと思ったさ…不可能だと思ったさ…」

「最初に無茶ばかりするお前にな…」

 

「でも…お前は選んだ…駆逐艦として戦艦並みに活躍するようになると」

 

「私はお前の選択を…凄いことだと思った」

 

『……』

 

「己の夢を…思いを変えることがどれだけキツいことかは想像できる」

「ましてや、諦めろと言われているのだからな」

 

「それでも…お前は腐らずに…前を向いたんだ」

「一緒に修行しているが…私がお前に教えられている事も多いんだぞ」

 

 

「私に…?」

 

 

 

 

 

 

 

「決して諦めない事だ」

 

 

「お前は確かに現実を見た…それでも思い続けて必死で頑張っている」

「その必死さが私にも頑張ろうと思える力をくれる」

 

「皆と共に生きる明日を…諦めない事をッ」

 

 

 

『このッ…邪魔だッ』

ガスガスと武蔵を痛めつける偽清霜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…

今何も出来ない。

艤装も少しでも使えば完全に壊れるだろう…。

逃げたら…武蔵さんの言う通りにここから逃げれば助かるだろう…武蔵さんの命を犠牲に…。

 

 

仕方ないんだ

私じゃ…勝てないから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

違うだろう

 

 

 

 

 

何故私は戦艦に憧れた?

武蔵さんに憧れた?

 

 

強いから?

 

 

違う。

 

 

 

 

守れるだけの強さを持っていると思ったから。

 

 

 

でも…あの人と話してわかった。

 

 

提督は強い。

でもその強さは武力の強さじゃなかった。

強さにも色々とある事…。

 

『清霜…人生はな、所詮与えられたカードで勝負するしか無いんだ』

『だから俺はそのカードを最大限に使うんだ』

 

 

現状でできる最大限をやること。

戦艦には戦艦のできること。

 

駆逐艦には駆逐艦の(私には私の)出来ること…

 

 

駆逐艦だって戦艦を沈める時はあるんだぞ?

魚雷は戦艦には撃てないんだし…

 

 

 

 

 

 

 

私にできること…

私にできる最大限……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟を決めろ私…

 

私は…

私はやれる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「清霜…」

 

『残念だが…奴はもうダメだよ』

 

 

『さあ…死ね…武さー…ぬがぁ!?』

 

偽清霜の顔に砲撃が命中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……させないッ」

フーッ…フーッと肩で息をする清霜。

 

 

「清霜ッ!逃げろ!お前が叶う相手では…」

 

 

『そうだ!貴様が戦艦の私に…』

 

 

 

 

「…んですか…」

 

 

 

『ん?』

 

 

「誰が決めた」

 

 

『何?』

 

 

駆逐艦()戦艦(お前)に勝てないって誰が決めたぁッ!!」

 

 

 

「私は戦艦になりたい…戦艦級に強い駆逐艦になりたい!それは変わらないッ!その想いは変わらない…」

 

 

確かに勝ち目は薄いだろう。

私の必死の何回もの攻撃はお前の軽い一撃にすら値しないだろう…

 

でも!

 

「でも…ここで仲間を見捨てて生き残るなんて事は…私達の辞書にはないんだッ!」

 

「清霜…」

 

 

『そのボロボロの艤装でなにが出来る!?』

 

 

 

 

「艤装なら…あるッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清霜は…

武蔵の艤装を背負った。

 

 

 

 

 

「清霜!?」

 

『あら…バカもここまで来ると清々しいな…』

 

 

 

「何度も昔に背負ったんだ…このくらいッ!!」

 

 

しかし…清霜が背負ったのは戦艦と言えども超弩級戦艦の艤装ではなかった。

ガクガクと膝が震える。

 

 

 

悔しい…。

 

私には……

あんなに努力したのにッ……。

 

 

 

 

「清霜ッ!!」

武蔵が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおッ!!」

 

ズドンと放たれた砲撃の反動で清霜は後方に吹き飛ばされた。

 

「がっ!ぐっ……」

 

『どこを狙ってるんだ?笑えるな』

 

 

 

 

全身が裂けそうに痛い!

今にも倒れそうで…クソお…

 

 

 

 

 

 

 

何故…お前はそれでも…諦めない?

 

私は言い切った。

駆逐艦は戦艦にはなれない––と。

戦艦級の強さを持つことはできたとしても。

 

 

しかし彼女はとあるきっかけを機に考えを変えた。

『私は戦艦並みに活躍できる駆逐艦になります!』

 

 

 

その後の鍛錬も…きっとキツかっただろう。

しかしお前は一度たりとも根を上げなかった。

 

 

 

 

まさか…お前が私の前に立って守ろうとしてくれるとは…

まさか…お前が私の艤装を背負ってでも戦おうとするとは…

 

なんと情けないことか…

 

 

 

 

 

いや…違う。

 

 

その考えでは軽んじているだけだ…

 

 

()()()()()()()()()()

 

であるなら…私に出来ることは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハハハハハ!傑作ね!』

 

『もういいわ!終わらせてあげる!!』

 

 

 

 

もう一度構える清霜。

くそっ…震えて照準が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肩の力を抜け…清霜…」

私に手を添えてくれたのは…武蔵だった。

 

 

「武蔵さん…?」

 

 

「それが…超弩級戦艦…大和型の艤装だ」

「重いだろう?強いだろう?」

 

 

「それの中に…どれほどの物が詰まっているか…分かるだろう?」

「お前はそれを背負っているんだ…その小さな体と大きな心で」

 

「いいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は今…戦艦になったのだッ!!」

 

 

「お前は今…私と肩を並べる戦艦となったのだ!」

 

「見せつけてやろう!思い知らしめてやろう!私達の力を!」

 

 

「でも…力が…」

 

「私が支えるッ!!それが仲間だろう!」

「お前が守ってくれるんだろう?帰ろう…2人で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前ならできる…と言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹き飛……ばない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––ありがとう、清霜。

私はお前に教えられた…。

 

決して諦めることなく…腐る事なく

思い続け…努力したものが至る場所。

 

 

普通のものなら逃げるだろう––

この鎮守府のメンバーなら…敵に向かって行くだろう。

私を助けようとするだろう。

 

お前は…私の艤装(誇り)すら背負ってでも戦ってくれようとした––

 

 

 

 

 

「ありがとう…清霜」

 

 

「武蔵…さん」

 

私は驚いた。

あの武蔵さんが…涙を浮かべて私にお礼を…言っている。

私は何かできたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

清霜は願う。

力が欲しい。

戦艦に…なれずもと、今この時…大切な仲間を守れるだけの力が欲しいと。

 

 

 

 

 

 

 

清霜 改

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お願い…提督…私にもう少し力を…。

たった1発でいい!

この主砲(思い)アイツ(ワタシ)にぶつける力をッ!!

 

 

「提督ッ!!武蔵さん!私に…力を貸してええ!!!」

 

 

 

 

清霜の体が光る。

 

 

清霜 改 高揚状態

 

 

 

 

 

 

 

 

『何だそれ…』

 

 

 

奴は知らない。

その力の正体がわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞおお!清霜ォッ!!」

 

「ぶちかませえええええええ!!!」

 

 

 

 

 

「ぬおぉぉああああぁあッ」

 

 

私は背負っている!

彼女の誇りも思いも願いも…力も!

 

 

 

「私は…戦艦級の………」

 

今この時は…私は…!

 

「私は…ッ!戦艦 清霜だぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清霜は放つ。

師匠の艤装を借りて。

 

 

 

 

『なっ!?馬鹿なッ!!まともにコレを!?』

私が恐怖したのか?

たかが…駆逐艦如きに?

 

 

馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な

 

 

「その駆逐艦が…いや!戦艦となった駆逐艦が貴様を打ち倒すんだッ!!」

 

 

 

 

ズドオオオン!!!

 

大和型の主砲が炸裂する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやった…清霜…」

 

「武蔵さん!でもまだ!」

奴はまだ生きている!

 

 

「……いいや…」

武蔵は言う…穏やかな表情で。

奴も…きっと同じ気持ちだろう……と。

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

震えながら立ち上がろうとこちらを睨む偽清霜。

 

 

『馬鹿な……』

『……馬鹿な……何で……何で…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喜んでいる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死にそう…いや死に至る痛みなのに

何故?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと…穏やかな表情の武蔵が目に止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…そうか

 

 

 

私の中には…清霜だけでなく武蔵も居るからか…

 

 

夢を叶えた清霜と

見守って来た武蔵

 

 

だから嬉しいのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は私に抱きしめられた。

 

「…ありがとう……こんなこと言うのは変だけど…」

「少しは…誇れるかなあ?」

「諦めなかった私…を…」

 

 

『諦めが悪いんだよ…』

『でも…まぁ…』

 

 

 

 

 

ポン…と手を頭に置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

『頑張ったんじゃ無いか?………私』

 

『だって…駆逐艦が戦艦になって……戦艦に…自分に勝ったんだからな…』

 

 

 

絆…かあ…

羨ましいな……

 

 

 

 

 

 

 

 

『…武蔵さん』

 

 

「…何だ?」

 

 

『私は……強かったですか?』

 

 

「私達を見れば分かるだろう?」

「強かったさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は涙を流した。

 

そして…満面の笑みで言う。

 

 

『…なら満足です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うと彼女は…光となって消えた。

 

 

 

 

 

 

「…ありがとうございます。武蔵さん」

 

「いや…こちらこそ…ありがとう」

 

 

 

2人で抱き合って泣いた。

いろんな思いがあった。

でもそれ以上に…2人でもっと分かり合えたのが嬉しかった。

あなたが生きていた事が…守り切れた事が嬉しかったから。

 

 

抱き締められる力が少し痛いのが嬉しいから

あなたを抱き締められるのが嬉しいから

 

 

 

 

帰路につくまで…2人で泣いた。




武蔵と清霜編でした。

戦艦になりたい駆逐艦の話のある意味続きネタでした。



少しでもアツいと思って頂けたなら幸いです。

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溶接で目玉焼きになったので
お休みもらいますうう
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