提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「…ふぅ」
一息つく間宮。
見上げるのは…
「甘味処 間宮」の看板である。
初めてこの店を任せてもらう時に提督…旦那様が作ってくれた看板。
食事処 伊良胡は前回の襲撃騒動で拡張建て直し。
そして、伊良胡ちゃんの名前が堂々と入った食堂になった。
彼女も立派にこなすようになり、私や鳳翔さんと3人で忙しいお店を手伝う形になった。
居酒屋 鳳翔は、店のサイズはそのままに建て直し。
そして…ついに私の店も…。
利用する人が増えたのでもう少し大きくなります。
私と…あの人のお店。
それを眺める伊良湖と救。
幾度となく待った「帰り」
ずっと祈りながら…無事に帰って来ますように…と。
林との決戦の時。
「伊良胡ちゃん…大丈夫。きっと大丈夫!心配しないで!」
間宮は不安そうに眺める伊良胡の肩に手を置いて励ました。
「ありがとうございます…間宮さん…」
でも私は知っている。
あなたが1番心配しているのを…。
涙目で貰った指輪を握りしめるように祈る姿を何度も見た。
帰ってきた提督さんを
誰よりも早く迎えに行きましたよね。
今回も激しい戦闘なのね…。
え?
「……提督?」
提督が皆の前に立って……砲撃を…
轟音と共に提督は猛火に消えました。
愕然とする鳳翔さんや明石さん。
「いや…いやっ!いやぁぁああ!!」
不安は間宮さんの限界を超えて涙と叫びとして彼女から流れ出た。
「嘘っ!嘘よッ!!」
駆け出そうとする間宮を止める伊良湖。
「間宮さん!どこに行くんですか!」
「あの人を助けに行くのよッ!離してッ!!」
「…ダメです!」
「何でよ!お願い…伊良湖ちゃん…」
「待つって決めたじゃないですか!!待ってお腹空かせて帰ってくる皆を1番に迎えるって!」
「でも…」
「心配するなと言ったのは間宮さんですよ?なら…信じましょう?あの人があんな事で死ぬはずない…と」
「でも…アレじゃあ…きっとあの人は…し」
「!!!」
私は間宮さんの口を塞いだ。
「それ以上はダメです!どれだけ絶望の淵に立っていても…どれだけ困難な場所に居ても…信じるんです!」
「私達にできることは…それなんです!」
あなたに言わせない…
言わせちゃダメだ!!
それだけは口に出しちゃダメなんだ。
「……あ…」
鳳翔さんも涙を拭って指を指す。
そこには…
「あれは…」
あの姿は…。
「…本当に…何?あれ…」
まるで私達と…同じ…
「明石さん?!」
「い、いえ…私は何も作ってないです」
「あれは……」
『思いの形ですよ』
誰かがそう囁いた。
お願い!どうか無事で居て…!
その時…羽黒ちゃんが叫んだ。
「行けええ!提督ううう」
羽黒ちゃんから…何かが……
私も無我夢中で旦那様の事を祈った。
体から何か出て行った。
あの人と繋がった気がした。
夢…
艦娘なのだから皆と戦いたい。
提督は…私達の夢…陰で支える事を叶えてくれた。
これ以上に幸せな事は無い…
無い筈なのに!
私は思ってしまう。
艤装を背負ってあの人の為に戦いたい!守りたい!と。
叶わない…
決して叶わない夢
の筈なのに。
私はあなたの隣で…
あなたに力を貸して…
あなたが微笑んでくれた気がした。
提督は叶えた。
皆と一緒に…いや、皆の為に戦う夢を。
提督は叶えてくれた。
私を一緒に戦場に立たせてくれた。
目には見えない初めて…の共闘。
その夢は虹の光となってあなたに力を貸して…
敵を打ち破った。
「間宮さん…鳳翔さん…今のは……」
「……本当に…あの人ったら…」
帰ってくる…!
「迎えに行きましょう!」
きっと皆は傷だらけで帰ってくるのだろう。
治らない傷もあるのだろう。
でも彼は言う。
『これも思い出だ』って。
誇らしい傷なんだろう。
急いでご飯を温め直して…
自然と駆け足になる。
ガヤガヤと声が聞こえた。
私達はいつしか走っていた。
「ただいま」
傷だらけの愛しい人は笑う。
傷だらけの愛しい仲間に支えられて。
「「「「「ただいま!!」」」」」
傷だらけの愛しい仲間は笑う。
皆が笑顔で…いつもの言葉を言った。
「「「お帰りなさい」」」
私達もいつもの言葉で迎えた。
完成したお店でひと足早くプチご飯。
「お疲れ様」
「はい…旦那様も」
「良い店になったなあ…」
「あなたのおかげです」
「…頬の傷…残りそうですね?」
「うんー…まあ…いいよ」
「ありがとうございました」
間宮と伊良湖は深々と頭を下げた。
「一緒に戦わせてくれて…戦場に立たせてくれて」
「あなたの叶えた夢に乗せてくれて」
救はびっくりした表情から笑顔に変わって言う。
「こちらこそありがとう」
提督の起こした奇跡。
皆の為に戦うと言う奇跡。
守ること
そして…戦うこと。
撃ち出した攻撃は深海棲艦を圧倒した。
そして、林に向けて撃った最初で最後の主砲。
私達の想いを乗せて…。
伊良湖ちゃんが明日の仕込みの為に帰ります…と。
鳳翔さんもお店があるからと…
そんな訳で
2人きりになりました。
「はい…どうぞ」
「これは…」
「あら?意外でした?私も料理はしますからね?甘味だけじゃないんですよ?」
「里芋の煮転がし」
「……美味しい」
「私も失礼して……」
「ふふ、久しぶりに使いますね?夫婦皿」
お酒を交えて軽くご飯。
いつの間にか寝ていたらしい。
旦那様の肩に頭を預けて…
提督のコートを掛けてくれてるんですね?
なら、もう少しだから甘えましょう…
今だけは…あなたを……独り占め…
『提督?間宮さん泣きながら待ってたんですからね?』
『そばにいてあげて下さい。あなたを感じさせてあげて下さい』
『私の方もまた今度お願いしますね♪』
伊良湖の言葉を思い出しながら、ちびちびと酒を飲む。
風邪ひくぞ…と彼女を部屋に送る。
ベッドに寝かせて布団をかける。
可愛い寝顔だなあ。
部屋を出ようとすると袖を引っ張られた。
「……タダで帰っちゃうんですか?」
流れる沈黙。
自分の心臓の音すらうるさく感じるほどに。
「…」
そっとキスをする。
「おやすみ…」
やっぱり袖を引っ張られた。
「…やっぱりもう少しそばにいて下さい」
「間宮さん………あら?ベルファストさん?」
遅刻した間宮さんを起こしに来たら…間宮さんの部屋の前にベルファストさんが居ました。
「伊良湖様……見てください。2人の幸せそうな寝顔を……」
部屋を覗く伊良湖。
間宮さんが抱き着いて幸せそうに眠ってました。
「…本当に幸せそうですね」
「ズルイですね」
「全くをもって」
ニヤリと笑う悪魔。
きっとココこそが地獄の一丁目。
閻魔すら「うわっ…引くわあ」と言うだろうか。
でも…やるんだよね。普通に。
「「提督さぁん!!2人で抱き合って寝てないで起きて下さぁぁあいい!!」」
響く大声
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響く悲鳴。
起きる2人。
わぁい、現状証拠しかねえや!!
提督は朝一から追いかけっこに勤しんでいた。
「まてーー!!ずるいぞーー!!」
「あらあら…」
と、笑いながら楽しそうに見守る間宮。
「間宮さんも…ズルイですー!」
「え?!え!?」
今日は2人で逃げていた。
遠巻きに見ていたこの光景に混じられるなんて…
そんな日が来るなんて…
間宮は嬉しそうに微笑みながら救の手を取って言った。
「行きましょう!」
伊良湖ってこんなキャラだっけ?
最後にはギャグを挟まないと…ね。
お留守番組のお話でした。
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