提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
シリアスが多い?
いいえ?
日常ですよ?
4部はできるだけほのぼの日常編ですよ?
ここは……
あれ…?
誰も居ない…
私は…えと…
目が覚めたら…シンと静まり返った部屋だった。
どうしたのー?お寝坊さん?
と、笑いかけてくれる妹。
寝過ごしちゃった…なんて笑いながら呟いた。
おかしい…。
姉妹以外に人の気配も無く…
静まり返った館内。
誰か居ないかな?とドアを開けて部屋から外を覗く。
誰も居ない。
考えても仕方ないかと考えて…妹に話し掛けようと振り返った。
ゾッとした。
さっきまでの部屋は無く…妹も居らずの寂れた部屋だった。
家具もそんなに無く、机と椅子とがポツンとあって…
埃だらけなベッドがあるだけの寂しい部屋。
どうした…?え?
何で?
皆は?
恐る恐る歩く。
廊下は…
色んな子とすれ違った。
皆…にこやかに話しかけてくれて…
でも誰も居ない…。
割れた窓ガラスが…冷たい風を運んでいた。
食堂……
皆で楽しくご飯を食べたところ…。
###さんが…毎日たくさん美味しい料理を作ってくれた…。
甘味処##
美味しいあんみつ…があったはず
##さんはいつも微笑ましそうに食べる私や…##さんを見ていた。
娯楽室
皆で語りながら色々やった…。
夜遅くまで遊んで…こらって怒られたっけ…
お風呂…
傷ついた時も…疲れた時もすぐに疲れも飛んだ。
ゆっくり浸かりながら話すのが好きだった。
部屋を覗く度に見える皆の姿も…
瞬きをした後には寂れた廃墟に戻ってしまう…
自然と足が向かう先があった…
執務室……
##さんが居て…
眼鏡の##さんと…######さんが…
ガチャリと開けた先には…
嘘のように綺麗な執務室…
かんざ……##さん!
ん?どうした?
…##さんが居た。
他の2人や妹も居た。
##さん…皆が居ないんです…知りませんか?
名前も…思い出せなくて…私…。
何か部屋もめちゃくちゃで…
よくわからなくて…
……そうか…
君は無事なんだな。
え?
どう言う意味ですか?
なあ@@…
前を向いて生きて欲しい…
え?何ですか?それ…
それじゃあ…まるで……皆が……
ハッとした…
そうだ…
そうだ…
あの時…攻撃を受けて……あの人は……
死んでしまったんだ
仲間も…
姉妹も…
何もかも
その瞬間…執務室は大きな穴の空いた部屋に戻った。
本も無惨に焼き飛ばされて…雨に曝されて読めるものはなく、机も半分以上が抉り取られて…
かすかに残ったカーペットや壁には血の跡…
足下には…彼の勲章が落ちていた。
そうだ…
敵の強襲を受けて…真っ先に執務室が爆発したんだ…。
提督は死んで…
皆も……
数名しか生き残らなくて…皆…
崩れ落ちる。
もう会えない
愛してもらえない
触れられない
抱き締めてもらえない
愛してると言ってもらえない
一緒に歩くことも
寝ることも
ご飯を食べることも
泣いた…とにかく泣いた。
顔を上げた…
誰かに呼ばれた気がして
すると…
「愛してる」
その一言だけ言って彼は消えた。
嫌だ…
行かないで!
1人にしないで!!
連れて行って!
と言ってもその言葉は…
大きく海が見えるように砲撃で開いた壁の穴に吸い込まれて行った。
いっそ死んでしまおう…
なら追いかけられるかな?
皆に会えるかなあ…?
艤装を自分に突きつける…
できない…ッ!
だって…私は生きなければならない。
それが残された者の進む道…
なのに…なのに…
それがこんなにも苦しいなんて…
私は…ッ
私はあ!!
泣けども叫べども
私に返事をくれる人は居なかった。
目が覚めた。
酷い光景だった、吐き気がものすごい。
そのまま吐きに行く。
口を濯いで見上げた鏡には…やつれた私の姿…。
涙が止まらなかった。
何で…?なんて考える前に走った。
はぁ
はぁ
息が切れる。
転んだ…
知らない
ただ走った。
誰も居ない…
何で?なんで居ないの?
ねえ!
ねえ!!
みつけたドアをぶち破った。
そこは執務室…。
……誰も居なかった…。
綺麗な部屋は…明かりだけがついていて…
涙が……
夢じゃないの…?
「あ…あぁ……ああああ!!」
「どうした?」
「おおう?!ドアがぁ!?」
後ろから声が聞こえた。
提督さんなんだろう…。
私は振り返る事なく言った。
「…うっ…ぐすっ…行かないで…」
「ひとりにッ…ぐす……しないで…」
「消えないでッ!!」
私は叫んだ。
「おい?どうした?」
例え私に殴られようとも…蹴られようとも…妹を守りながら…
それでも私の手を取ると言ってくれたあなた。
妹を暗闇から救い出して…私にすら手を取る!生きろ!来い!と言ってくれたあなた…
振り返ったら消えちゃうんでしょう?
見たら…また一言だけ告げて消えちゃうんでしょう?
消えちゃうなら…
愛してるなんて言わないで!
耐えられない…
心がある事が耐えられない。
あの時のように…無心の鉄になれたら……
そんなことなら心なんていらないのに!
でも…
忘れることなんかできない…
絶対に無理だ!!
だって…そうするには
愛しすぎて居るから…
なら…このままでいいから…振り返らないから…消えないで
私を独りにしないでッ!!
ぎゅっと…抱き締められた。
「どうした??悪い夢を見たのか?」
肩のところに顔がチラリと見えた…
「俺はここに居るぞ?」
「………」
「ん?」
バクンバクンと鼓動がバカデカく聴こえる。
やっぱりダメだ…
あなたを見られないなんて耐えられない。
振り返って…
ぎゅっと目を瞑る。
恐る恐る目を開けた…。
せめて最後なら…焼き付けよう。
愛してると…伝えよう。
見上げても彼は消えてなかった。
「て…提督さん…?」
「おう?」
優しい笑顔が…
私の心をいっぱいにした。
「うわぁぁぁん!!提督さん!提督さん!!提督さん!!!」
壊れそうなくらい抱き着いた。
バランスを崩して倒れた。
「うわ!?##?!どうした!?」
「置いていかないで!お願いッ!!提督さん!いかないで提督さんッ!!ひとりにしないで!私の提督さぁん!!!」
ぽたぽたと涙が彼に落ちて行く。
泣いた。
彼の胸で泣いた。
「……辛い夢を見たのか?」
こくこくと頷いた。
「俺が居なくなったのか?」
また頷いた。
「俺は居るぞ…」
よしよし…と、頭を撫でてくれた。
「居なくならないで…」
「…ひとりにしないで」
「約束するよ」
それでも彼女は泣き止まなかった。
「凄い音がしたけど………あれ?」
「神州丸…瑞鳳…」
「あらあら…大丈夫ですか?」
「…」
妹も心配そうに来た。
俺はその体勢のままずっと彼女の側にいた。
寒さも身を刺す…冬の事だった。
シリアスなのかなあ…?
さてこの子は誰でしょう?