提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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261話 @@と1日夫婦 ② その名前を呼んでくれるあなた

「艦隊計画の影響が強いのでしょう」

明石はそう言った。

心の傷までは入渠でも治せませんから…と。

 

 

彼女の心は闇から光へと進んだ。

いわばダークサイドから抜け出したのだ。

 

 

だからと言って彼女がやらされた事が消える訳ではない。

確かに記憶に眠るもの

手にかけた記憶や感触は消えないのだ。

それは少しずつ…光が強くなる程に…どんどんと影を広げて行く。

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁッ!ふぅーッ!ふう…」

夜中に飛び起きる。

大丈夫…大丈夫と優しく抱き締めてくれる妹…。

 

「ご…ごめん…起こしたね」

 

どんどんとやつれる@@。

 

「お姉ちゃん…私が居るよ…」

 

「うん…うん…」

 

 

 

 

 

 

   ひとり

妹も居るはずなのに…

夢の中ではひとり…。

 

 

 

どうしよう…

 

そして…

ある日の夢は違った…。

 

誰が居る!ひとりじゃない!

 

 

 

 

 

 

なんでまだ生きてる?

 

 

 

え…

あなたは…

あなた達は…私が…

 

 

 

そう、お前が手を掛けた奴達だ。

 

なぜお前は生きている?

罪から目を逸らして…生きている?

 

 

そんな!私は…

 

 

なんとも思わないのか?

お前の足下を見てみろ…

 

 

 

言われて下を見る…。

 

 

ヒッ…

そこには…たくさんの死に顔があった。

それは手を伸ばして私の方に恨言を吐く。

 

一緒に死のうよ

ずるいよ…自分だけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁあッ!!」

飛び起きた。

 

「お姉ちゃん!?」

妹が抱き締めてくれる。

でも寒い…

もうダメだ…私は…私は…

もう限界だ…

 

 

「行かなくちゃ…」

 

「え?」

 

「皆が待ってる…逝かなくちゃ」

 

「ダメだよ!お姉ちゃんッ!!」

 

 

 

「誰かッ!!誰かぁあ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼怒が来た。

 

 

「寝てるとこごめんなさい!お願い…提督…お姉ちゃんを助けて」

 

「少しずつ魘されるようになって…それで…」

「もう私の声も届かないッ!提督しか居ない!」

 

 

「き、鬼怒!?」

 

「大好きな提督の声しか聞こえない!」

 

あなたの声なら届くと言う鬼怒。

自責の念が大きくなって…このままじゃお姉ちゃんが潰されて連れて行かれちゃうと涙する妹に…

救ははっきりと言う。

 

 

 

 

「…任せろ鬼怒」

「俺はお前達の手を取ると言っただろう?」

 

「由良は?」

 

「今は明石さんが眠らせた…でももう…このままじゃ…」

 

 

 

「わかった」

俺は机からゴソゴソとあるものを取り出して部屋に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

酷くうなされてるようだった。

 

 

「バイタルは…低下してますね」

と、明石が言う。

 

心は体に出る。

このままじゃ…廃人同然になります…と。

そんなことさせてたまるか。

 

 

 

「お姉ちゃん…助かる?」

鬼怒が涙ぐんで聞いてくる。

 

 

そっと頬に触れる。

 

「…何度でも…何度でも引っ張り上げるさ」

「…お前が重いなら…一緒に下に行って…押し上げるさ」

 

 

 

 

自責の念…

操られ…思いのままにされていた。

仲間を殺すのも何もかも…道具として利用されていた。

彼女の意思ではないが、彼女を蝕むのには十分すぎる理由だったのだ。

私が生き残って幸せになっているという事を思うには…。

 

そして…逝かなくちゃ…という言葉の意味も…。

 

 

きっと最初は小さな悪魔だったのだろう…。

鎮守府が崩壊する夢…打ち捨てられる夢…俺が死ぬ夢。

 

その夢自体ただの悪夢だ。

でも心は結びつけてしまう。

また私が生き残ってしまったとー…。

楽観的に仕方ないと割り切れない程の過去は彼女の心を鋼鉄の荊で雁字搦めにして…冷たく傷痕を残す。

 

だから…ひとりなのだ

ひとりで背負おうとしてるのだ。

 

違う…

俺は…お前の手を取ったんだ…

 

 

 

俺は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前もこっちに来いよ…

それが責任だろう?

 

 

嫌…私は…

みんなと…

 

 

 

殺された痛み…

私達が生きられた時間…

お前に奪われた時間…!!

 

貴様はわかってる筈だッ!!

逝こう…

 

 

手を出してくる……亡霊達。

 

 

私は…

そうだね…私のせいだもん…仕方ない…よね

と手を伸ばした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

自分の名前も思い出せないお前には…ここしかない

 

 

 

そうだ…私はもう…誰の名前も思い出せない…

手にかけたあなた達も…自分も大切な人も…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「@@」

名前を呼んでる?

誰?

 

「ゆ…@」

 

 

 

え…

 

 

 

「ゆら」

 

 

 

 

 

「由良…」

わ、私の名前?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッと私の手を掴んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さんが。

 

 

 

 

 

 

「由良…俺が呼ぶ、思い出させる」

「その罪も…俺が背負おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

……なに?

 

「俺がそれを背負おうと言ったんだ」

 

 

「…提督さん?」

嘘だ…嘘だ。

何で提督さんがここに!??

 

 

 

 

誰だお前は…!?

 

 

「神崎 救…。西波島鎮守府の提督で…由良の…」

 

 

「私の…?」

 

こいつの?

 

 

「人生を背負う…旦那だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何を言ってる?背負う?コイツの罪はコイツのものだ。

貴様にどうにかできるものではない。

 

 

「…提督さん!やめてください!危ないです!背負うなら私だけでいいんです!」

 

 

 

 

 

 

 

「それくらい…俺に乗せてみろ」

 

 

「え…」

 

 

 

「言った筈だ!手を取るって…お前1人に背負わせたりはしない!」

 

「俺が側にいる」

 

 

 

 

 

ぽたぽたと熱い何かが流れ出た。

 

 

「…甘えてみろ!俺が受け止める」

 

 

 

「……つ…」

 

「つ?」

 

「この暗闇から…つ…連れ出してください…私をひとりにしないでくださいッ!!私を…暗闇から(過去から)光の下に(あなたのところに)連れて行ってください!」

「助けてください!自分勝手な事は分かってます!でも…私は前を向きたいです!お願いします!一緒に…背負ってくれませんか」

 

 

 

 

馬鹿言うなッ!!

貴様には責任があるッ!!

私達を…手にかけた責任が!!

 

 

 

「…果たすさ!!」

彼は言った。

 

「精一杯平和な世を築いてみせる」

「その為に彼女は頑張っている…。決して!!お前達の死を…何も無駄な事になんてしない」

 

「俺は彼女を愛している…だから一緒に背負う」

 

「平和を取り戻して…再びお前達が安寧に眠れるように!」

 

 

 

 

なぜそもそもお前がここに居る?

どうやってきた!!

 

 

 

「コレ」

 

…指輪?

何だそれは…ふざけるな!

 

 

「ふざけてない」

ケッコン指輪…

それは更に艦娘との絆を深める指輪。

強化を目的としたアイテム。

 

より深い絆とは?

心と心で繋がる事。

指輪が2人を更なる場所へと導く。

 

 

 

指輪は光る。

眩しいほどに暖かく…

 

「誓おう…。俺は…由良の罪も一緒に背負おう」

「見ていてくれ…必ず平和を取り戻してみせる」

「道に逸れた時は…俺を連れて行ってくれて構わない」

 

「彼女は…前に進み出したんだ」

「都合が良いと思うだろう…でも見ていて欲しい」

 

「お前達の死を無駄にはしない…この由良と俺…そして皆で絶対に成し遂げてみせる」

 

 

 

「お前達も目指した…平和な明日を掴んで見せるッ!!」

 

 

 

 

 

提督さんは私の方を向く

 

「由良…お前の罪を…俺にも背負わせて欲しい」

「…この指輪はその証だ…俺がお前を愛して…一緒に歩んで行く証だ」

 

「提督さん…」

 

この手を出して良いのかな…

私は……それでもその言葉に縋りたい。

 

 

 

「約束する」

私を壊して…

 

「君の隣に居る」

私を連れ出して!!

 

「君を守ってみせる」

私をその温かな光で包んで!!

私もあなたを守るから…!今度こそ守り抜いてみせるから!

 

 

「はい」

 

 

由良は左手を震えながら差し出した。

救はその薬指に指輪を入れる。

 

そして……

「由良…愛してる」

と、彼女の名前を呼んで抱き寄せる。

 

「ん……」

初めてのキスは涙の味がした。

 

「わ、私も……愛しています」

 

 

 

「わ、私は!!きっとやってみせます!皆の分まで…私がッ…皆が夢見た平和な世界を…取り戻して…!!」

「皆が安心できるようにしてみせるから!!」

 

由良は叫んだ。

 

「挫けない…2人なら…みんなとならやれるからあ!!」

「お願い…見てて…それだけが罪滅ぼしになるとは言わない…でも…皆の事を忘れないから!皆の思いも何もかも背負って連れて行くから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…頼んだよ

 

と、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

パリン…と

その世界が破れた。

 

私の心の中の世界…

後悔と過去に押し潰されそうな私が生み出した世界。

 

本当は…前向きにねと皆が言ってくれてるのは知っている。

それでも思わずには居られなかった。

 

『私が生きているから…』と…。

 

 

でもその壁すらあの人は超えてきた…。

私の罪も一緒に背負うと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て…ていとくさん?鬼怒?」

 

「お姉ちゃん…良かった…」

 

「バイタル…持ち直しました…一安心です。お疲れ様です…提督」

 

 

提督はずっと私の左手を握って目を閉じていたという。

私の為にずっと…ずっと

そして…私をあの暗い所から引き上げてくれた…ううん

暗い場所に一緒に落ちて…押し上げてくれた…。

 

 

 

 

 

 

その日からうなされる事は無くなった…。

 

 

 

 

 

 

 

261話 由良と1日夫婦ー 

 

 

 

 





はい、由良でした。
ローソンコラボでもね活躍しましたね。

続きますよ!
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