提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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271話  その誇り…あなたと共に

近海域に深海棲姫が出るようになった…らしい。

 

しかも…毎回西波島の赤城が交戦中に乱入してくる…との事。

まあ最初は聞き間違いじゃね?なんて思ってたけど何回もそういう文句を言われると…ね?動くしかなくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何か?」

ご飯を食べながら首を傾げる赤城。

 

「………」

 

「あの…そんなに見つめられたら恥ずかしくてご飯が…」

 

「最近空母棲姫と戦った?」

赤城の頬を優しく揉みながら聞く

 

 

「…ひへ?」

 

まあそうだろうな…

最近は他の組と連携訓練が主で出撃も演習もなかったからな…。

 

 

 

 

 

故にウチの赤城は戦場に出ていない。

なら誰かが西波島の赤城を名乗っている…と考えるしかない。

 

 

 

 

真偽を確かめる為にはその空母棲姫と戦うしかない。

 

 

 

 

 

というわけで今に至る。

 

 

 

 

 

目の前には空母棲姫…?

何か少し違うような…

 

 

 

飛龍、蒼龍、浦風、愛宕と交戦の態勢を取るように支持する。

 

彼女は愛宕を見た瞬間に飛びかかってきた。

『…お前…じゃないッ』

 

「何よ!」

彼女を跳ね除けた愛宕が主砲を構える。

 

 

 

 

 

「待ってください!!」

 

赤城…?

「その棲姫は…私が仕留めますッ!!」

 

 

「君は?」

 

「…西波島所属の赤城です!!戦線に私も加えてください」

 

この子が…ウチの赤城を名乗る不届き者の赤城か…。

 

「……よし」

 

 

「ありがとうございます!…さあ…今日こそ決着をつけます」

 

 

 

 

 

『うわぁぁあ!!赤城いいい!!!』

 

「加賀あああ!!!」

 

 

熾烈な航空戦が繰り広げられる。

 

「ひいい!流石は一航戦…すごい」

飛龍達がポロリと溢す。

 

 

「浦風ッ!!」

 

「はいよ!」

浦風の主砲が空母棲姫を狙い撃つ!

 

その時、赤城が射線上に入る。

 

「くうううっ!!?」

浦風はとっさに砲身をずらした。

 

ズドンと言う音と共に…空母棲姫に着弾した!!

「いかん!!掠っただけになってしもた!」

 

 

 

棲姫がこちらをジロリと見た後に撤退をする。

数で不利だと悟ったから…か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとうございます。逃しましたが…こちらも何とか無事でした」

 

頭を下げてお礼を言った赤城に一言。

 

「確保」

 

「え?」

ガシッと掴まれる赤城(不明)

 

「…近くの落ち着ける所まで連行で」

 

「あの!?私戻らないと…鎮守府に」

焦る赤城。

まあそりゃそーだろうよ?

 

 

「大丈夫」

悪魔のような笑みを浮かべた艦隊がそう返事する。

 

「いや…あの…」

 

「大丈夫 」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫…俺達が西波島艦隊だから…」

 

 

 

 

 

「あ……」

赤城の顔がが青城になりました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キテクレルネ?」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの島で…

 

 

 

「………」

青城は動揺してるらしく、無言の俺達の前で正座して震えていた。

 

 

「……」

 

「…毎回俺達の名前使ってるらしいけど……なんで?」

 

「……」

 

「…未所属艦娘でしょ」

 

「…ッ!!」

 

 

「………」

じっと目を見つめる救に赤城はゾクリとした。

全てを見透かされているような感覚…。

 

 

「……」

カチカチと震える赤城に彼は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これは予想なんだけどさ」

「あの子…君の仲間なんだろ?」

 

 

「…だから…止めたかったんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話してよ……力になるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言は赤城に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでした」

赤城は土下座をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のかつての相棒…加賀です」

 

 

 

「…どういう事ですか?」

飛龍が問いかける。

 

 

 

 

赤城はポツリと話し始める。

 

私の居た鎮守府は…深海棲姫の侵攻で陥落した。

 

生き残った者は極小で、提督も皆死んだ。

生き残った者も戦場から離れてひっそりと暮らすようになった。

私も艤装解体の退役という事で一般人に戻った。

 

毎日の戦いが嘘に感じるほどに静かな日々だった。

 

 

だが、私は彼女の存在を知る事になる。

ある日、海辺を散歩している時に彼女は目の前に現れた。

 

憎しみや悲哀に満ちた目。

私は一目でわかった。

 

ああ…この人は加賀さんなんだと。

 

その時は別の鎮守府の警邏班が居たのですぐに彼女はにげたのだけれども…助けてくれた人達が、最近ここらを荒らし回る奴と聞いて

まだ彼女の戦いは終わってなかったんだと思ったの。

 

 

 

でも私は退役の身…。

もう一度艤装を装備するなんて出来ない。

だから買ったの…闇ルートで…。

ダメだってわかってる。

でも、私が終わらせてあげなくちゃ…私の相棒だもの。

 

 

 

 

 

それからずっと戦い続けてるの。

同じ空母だし…なかなか勝負もつかなくてね。

 

未所属だから雷撃処分の対象にもなって…

だから…警邏中の西波島の赤城と名乗ったの…ごめんなさい。

 

 

 

 

 

「……どうしたいの?」

 

 

 

「彼女を…安らかに眠らせてあげたいの……」

「お願いします!私を…少しの間だけで良いんです!あなたの艦隊メンバーに加えてくださいッ!何でもします!終わったら…この体をどう使ってくれても構いません!」

 

「どうか…どうか……」

 

「……」

 

 

 

 

目の前の男の人は私の肩に手をかけました。

少しだけ力を入れられて…仰反る形になりました。

 

「ちょ…!?提督!?」

飛龍や愛宕が止めようとしますが…

「黙ってろ」

とだけ彼は言いました。

 

スッと顔が近づいてきます。

 

 

あぁ…この人は"ソレ"を望んでいるんだ。

でも…良いわ

あなた方の名前を使ったのだから…そして何より…私の体を差し出しても…やり遂げたいから…。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシッ…

 

 

 

彼は私にデコピンをしたのです。

 

 

「え?…え?」

 

戸惑う私に彼はこう言いました。

 

 

「自分は大切にしてくれ」

「試すようで悪かったね。うん、君の目は本気の目だ」

 

 

 

イマイチ理解が追いつかない私に言いました。

 

 

「艦隊メンバーへの加入を認める」

 

 

と。

 

 

 

「え?私の事を犯すのでは?」

 

「んな事したら皆が深海化するわ!」

彼は初めて見せる焦り顔で言いました。

 

 

「不思議な人も居るんですね」

 

 

「…そういうもんだろ?」

 

 

「ふふっ…あなたみたいな人…嫌いじゃないですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…終わってからもウチで職員として色々やってくれるんだろ?」

 

「はい、提督さえ宜しければお世話になろうかと…」

 

 

と言う訳で作戦会議。

 

恐らく空母棲姫は次は手下を連れてくると予想。

 

 

 

 

なら蒼龍、飛龍と浦風で周辺の奴らを叩き、愛宕がサポート、赤城が加賀を叩くと言う結論になった。

 

「怒らないんですか?」

なんて質問を投げ掛けても、頑張るやつを見捨てたりしないと言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君がどうしても彼女を討ちたいんだろ?」

「ただ…射線上に入ったりしないでくれ…理由があるなら言ってくれ」

 

 

「…はい」

 

 

「その小刀は?」

赤城の腰にある小刀に目が行く。

 

 

「前の鎮守府の…ものなんです」

「みんな持ってたんですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!お話中のとこ悪いんやけど…来たよ」

沖を見ると加賀であろう棲姫が手下を連れてやって来たらしい。

 

 

 

 

「…作戦通りに」

と、指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多いんよ!コイツら!」

 

「飛龍は左!蒼龍は右から!」

「愛宕ッ!中央から行けるか!?」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

 

「赤城…行くぞ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

「二航戦!第一次攻撃隊…発艦します!!」

 

「いっけええ!!」

 

2人から繰り出される艦載機に続いて…

「ぱんぱかぱーん!愛宕…いきまーす!浦風ちゃんも行くわよお」

 

「はい!やったるけんね!」

 

 

 

 

 

 

「……赤城?」

 

「え…ええ!やります!」

 

「…無理すんなよ?」

 

 

「……お優しいのですね」

 

 

 

 

 

 

深呼吸…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つめ合う赤城と加賀…。

まるで時が止まったように…2人の間には時間が流れる。

 

 

「もう置いて行かないから…」

 

 

彼女を沈めるのは…私…

そう思って来た。

 

 

 

「……行きますッ!!赤城…第一次攻撃隊…発艦ッ!!!」

 

 

『う…うううッ!行けえええけ!!』

 

発艦される思い。

それは形を変えて相手へと向かう。

 

同様に棲姫…加賀であった者から放たれたものも彼女に向かう。

 

 

 

 

 

「…加賀さん…今日こそ…今日こそ!あなたを倒して(救って)みせる!」

 

 

『できるものかッ…沈めえええええ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何…あの戦いは……」

飛龍達が驚くのも不思議ではない…。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

放っては突撃して行く様は…まるで…

 

 

 

お互いの戦力(艦載機)を出し尽くした頃には2人は殴り合いを始める…。

 

 

「…」

なぜか俺にはそれが愛おしそうに殴り合うようにしか見えなかったのだ。

 

 

『沈め…!沈め!沈めえええ!!!』

 

「加賀さん!絶対に負けない!!」

 

 

髪を掴み叩き、殴り、蹴って…。

ただ、そこにつけ入る隙は全く無かった。

 

 

 

 

傷つきながらも攻撃をやめない2人。

 

 

 

 

 

だが…何故かやはり…

俺には加賀にも膨大な憎しみの中に…何か温かいものを感じた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アカギ…アカギイイイイイイイイ!!』

ビキビキと右手に力を込める棲姫。

そして赤城へと突っ込んで行く。

 

 

 

 

「加賀さん!…決着つけてあげるわ!!」

赤城が小刀を抜いて彼女に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい…と赤城が言った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加賀ぁぁあああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『赤城ぃいいいいいいいッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓も武装も投げ捨てて向かう。

目指す者へと。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グフッ……』

吐血する深海新空母棲姫

腹に小刀が刺さっている。

ブシュッ…と小刀を返して…傷口が広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナンデ…!』

 

 

 

 

 

『何で!?!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

『何でですか!?』

 

 

 

 

 

 

 

『……赤城さん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ガフッ…」

赤城が吐血する。

 

 

 

 

 

『何で…避けなかったのですか!?!?』

 

 

赤城の腹にも…彼女の右手が刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空母新棲姫…つまり加賀は()()()()()()()()

赤城が避けて私を討つ。

それで疲れ切ったこの戦いも終わるはずだった。

私はあなたの中で生き続ける予定だったのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

彼女の選択した答えは

 

 

 

 

––––相討ち–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと一緒に居たから…あなたの考える事くらい…わかるわ」

 

 

そう、赤城は分かっていた。加賀が避けない事を。

自分を討たせようとする事を…。

 

 

 

 

だからこそ…

彼女は共に行く事を決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ずっと一緒に居たあなたを1人で逝かせる訳無いでしょう?」

 

『アカギ…さん…その為だけに?…』

 

 

じわりじわりと流れ出た血は、海に染まり…波と共に消えて行く。

まるで何もなかったかのように広がって行く。

 

 

「…ごめんね……加賀さん」

赤城が加賀の顔に手をかける。

 

「ゴフッ…ガハッ…ずっと…ずっと寂しかったよね?」

 

 

 

棲姫は…加賀に戻っていた。

あの時と同じ…あのままの姿で…。

 

「…赤城さんこそ……苦しかったでしょう…ガフッ……ごめんなさい」

 

 

 

 

知っていた。

 

ずっとあなたに討たれたかった自分を…。

 

己の中の悪が…残りの少ない理性が言った。

 

赤城さんに討たれて眠りたい。

 

だから…どの艦隊相手でも負けるわけには行かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間が死んだ…酷く殺された。

提督はその彼女を愛していた、もちろん彼女も…

 

その後に鎮守府は攻め滅ぼされた。

提督も仲間も多く死んだ…

私も…憎しみの中で沈んだ…。

守りきれなかった事…愛する人が死んだ事…何もかもが憎かった。

 

 

目が覚めると…私は深海にいた。

 

 

受け入れ難い現実。

 

 

私は深海棲姫になっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憎しみが頭の中を掻き乱す中で…

微かに残った理性が仲間を求めた。

 

 

 

 

高雄に会った。

高雄はあの時と違い、ぼろぼろで私だと気付かずに『妹を知りませんか?』と聞いてきた。

 

 

ある時に赤城さんに出会った。

彼女は退役して一般人として暮らしていたのだろうか…

 

そのまま幸せになって欲しい半分…

憎いと思う心半分…。

 

 

 

 

 

 

 

が…

彼女は海に戻ってきた。

 

 

 

 

彼女は私だと気付いてくれた。

もう残りの少ない仲間が…

 

助けて!私を助けて!

 

 

その声は戦いの中にかき消された。

 

 

 

 

 

何度も何度も戦っては傷つき…でも死なず…

 

 

 

私が思うようになる…

彼女の手で眠りに落ちたいと。

 

 

 

轟沈後の奇妙な縁が私達の存在理由になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知っていた。

 

彼女は私に討たれたいのだと。

 

誇りある魂は…私に救いの手を求めてるのだと…

 

 

 

 

 

 

だが…

出会って戦う内に思いが芽生える。

 

これで終わってしまう…

 

手にかける事によって…姿が変わろうとも感じられたあなたを感じられなくなる。

 

負ける事によって…何も思えなくなる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一緒に逝きましょう?」

 

それは悩み…悩み抜いた末の答え。

 

彼女の艦娘として…存在をかけた最後の結論。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいんですか?」

 

在りし日の一航戦加賀(解き放たれた加賀)は泣きながら言う。

 

 

孤独と戦い、いつか行きたい思った海原じゃない場所…。

 

もう戻る事も出来ない昨日。

 

忘れたくても頭から離れない…皆の顔(輝く思い出)

 

在りし日にかけられた…愛する人からの言葉…。

 

 

頭の奥から湧いてくる憎しみの感情を抑え込んでも…押さえ込んでも…その声は止まなかった。

 

 

 

 

だから…ずっと…ずっと

この楔から解き放たれたかった…あなたの手で…

 

 

なのに…

あなたは私も行くと言う。

 

 

 

 

赤城は涙ながらに優しく返事する…。

 

「勿論…だって私達は……」

「2人で…ひとつの誇り高き一航戦だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その誇りと共に逝きましょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城さん……馬鹿ですよ…あなたは…」

泣きながら彼女は片割れに問いかける。

馬鹿ですよ…と。

嬉しくて…悲しくて仕方がないのに。

 

 

 

 

 

「…そうね……でも…案外…いい…ものよ」

彼女は片割れに応える。

案外いいものと。

それが…彼女の選択なのだから。

 

 

 

 

 

 

2人で泣き合う。

抱き締めて…冷たい体に体温を感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました…」

「私は…彼女と共に逝きます‥」

「心優しい提督さん…お約束を反故にしてしまい…申し訳ありません…」

 

 

 

 

「今から来て入渠するって選択肢は?」

彼は尋ねる。

極極小の可能性に賭けて…。

 

 

首を振る2人…に、そうか…と涙目で答える救。

 

 

 

「怒らないんですね?」

赤城はイタズラっぽく聞いてきた。

 

「悩んで出した結論なら…俺は何も言えない…生きて欲しいけども」

「だから悲しいけども見送るよ……」

 

「そんな気もしてたんだ…」

「でもダメだ…慣れねえや…」

 

やはり感じる無力感。

今まさに2人は死のうとしているのに…

幸せそうな顔をするから…

 

 

 

 

 

『泣いてくれて……優シイ…のね…あなたは…』

「ありがとう……でもいいの」

 

ズブズブと膝まで沈む2人。

 

 

なあ!!頼むよ!生きてくれよ!

そう言いたくても…できない。

どうにかする力も術もない。

 

それが堪らなく悔しくて…

 

 

「……提督さん?」

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で!そこまでして!」

つい出てしまう本音。

 

 

「だって私は…加賀だから」

「そう、そして…私は赤城だから」

 

 

 

 

 

2人は抱き合う。

彼女達に残された最後の最後の…時間を噛み締めるように。

 

「……行くのか?」

 

2人は…ええ、と答える。

それが… 答えなら…俺には何もできない。

 

 

 

 

 

 

 

だから伝える…

俺の中に確信があるから…

 

 

 

 

「……高雄も…探し物は見つかったぞ」

 

 

2人はまさか?と言う反応をする。

 

 

 

「高雄は…もう愛宕を探さなくてよくなったんですね?」

ああ…そうだと赤城に返す。

 

 

『お世話になりっぱなしですね…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城…約束守ってくれないんだろ?」

 

 

「…ごめんなさい」

 

 

「なら…約束してくれよ」

 

 

「?」

首を傾げる赤城…。

 

 

「生まれ変わったら…俺んとこ来てくれよ」

「あ!希望が通るなら…別艦娘でもいいぞ?海外艦でもな?」

 

 

 

 

「……」

『……』

 

 

「…2人一緒でも?高雄や愛宕も一緒でも?」

『いいのかしら?』

 

 

 

 

「もちろん…セットじゃ無いとダメだな」

 

 

 

 

 

 

「赤城さぁん…」

「加賀さあん…」

 

「泣かないのよ…2人とも…」

「あなたもヨ…提督さん」

 

 

 

 

 

「俺は…神崎 救!西波島の提督だ!」

「いつか…いつか!約束を守って来てくれることを願って……いや!君達が安らかに眠れる海をきっと……きっと……」

 

 

「「ありがとう…」」

 

 

 

 

2人は笑顔で海に沈み…

淡い光となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散り行く華こそ美しいと誰かが言った。

例えば桜…はその姿にすら心奪われる。

秋の紅葉はその散り際にも切なさを感じながらでも風情を感じる。

 

 

しかし…

 

死に際というのはどうだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今迄に経験した中でも苦い苦い体験だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーたくさん話したいこともありました…

 

ー私もたくさん聞きたいことが…

 

ー退役した後の話とか…

 

ーもう一度艤装を手にした時の気持ちとか…

 

 

 

 

 

 

 

 

…今の気持ちとか……

 

 

 

 

 

でも…ありがとうございます

 

 

え?

 

 

 

あなたと…一緒に逝けるから…

冷たくないのです。

 

 

 

あら…

私も…同じかな?

 

 

 

 

「「やっぱり私達は2人で一航戦なのね…」」

 

 

 

 

 

ありがとう…西波島の提督さん…

こんな私達に…あんな言葉まで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あら…?

 

 

 

 

 

愛宕…?

提督さん…?

 

高雄…あなたも?

 

 

 

ああ…見て…加賀さん…

皆…あんなに笑顔で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お帰りなさい?提督さん?飛龍に蒼龍」

「どうしたの?皆とも…暗い顔して」

 

ニコリと微笑みかけながら心配してくれる2人に重ねてしまうあの最期の顔。

 

 

 

我慢していた堰は壊れた。

違うと分かっていても…同じ赤城と加賀。

 

「……」

 

 

 

 

「あがぎさぁあん!!」

「ががざぁん」

 

飛龍、蒼龍は2人に飛びついた。

 

 

 

 

 

「あら?どうしたの?!」

 

「…何かあった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう……羨ましいわね」

 

「ええ…」

 

何で!?と聞き返す皆に2人はこう返す。

 

「好きな…1番隣に居たい相手と迎える最期なら…それはきっと幸せなのですよ」

 

「私が同じ立場でもそうするわ」

 

 

 

 

「でも……」

2人は…最愛の人の下へ行く。

 

そして…抱きしめる。

 

 

 

 

抱きしめられた最愛の人はポツリと漏らす。

「……あれで良かったのか?他に何か…出来る事はあったんじゃないか?」

 

2人は抱きしめる力をぎゅっと強めた。

 

 

 

「「ありがとう」」

「私達の為に涙を流してくれて」

「私達の為に生きてと言ってくれて」

「生まれ変わって…来いよと言ってくれて」

「見送ってくれて…!ありがとう!!」

 

「「本当にありがとう」」

 

どこの赤城か加賀かも知らないが…それでも彼女達はありがとうと言った。

涙が止まらない愛する者をずっと彼女達は抱き締めていた。

 

 

 

 

追いかけて…追われて

求め続けて…求め続けられた者。

その果ては決して側から見たら悲しい最期だろう。

でも…彼女達は幸せだったと言う。

 

それは…

彼女達の中にしかない…思いだから。

 

仲間と誇りと共に旅立った者へ彼の想いも届くだろうか…?

 

 

 

いや…届くだろう。

 

何せ彼女達は…死すれども誇り高い一航戦のだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りが690ですね!
うひょう!ありがとうございますううう!!





少し後味の悪い感じかな…と。
見方によりますけどね。








さてさて
少し休みをもらって次回は演習の後日談です。
MVPは誰だ?




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。



感想などお待ちしてます!ぜひ!!

西波島のMVPは?

  • 旗艦 金剛
  • 鉄拳 桜三笠
  • 砲撃 陸奥
  • 鉄壁… 吹雪
  • 不屈 蒼オークランド
  • 最恐 赤
  • 制空 桜加賀
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