提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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274話 その恋路は遠く儚くて、近く確かで… ② 姫ちゃんと1日夫婦

深海地中海棲姫ー

それが彼女の名前であり…深海棲姫であることがわかる。

 

 

建造で100時間とかいうデタラメな数字を叩き出した後にやって来た彼女は……元はル級と言う…お世辞にも強いと言えない存在だった。

 

 

 

 

 

私は恋した。

一目惚れってやつ…かな?

 

そこから…色々あって…今はここに居る。

 

 

 

深海棲艦ー

この世に仇なす存在…。

 

 

 

 

 

 

 

「……どう?」

 

「……上手になったね」

 

今何してるか?

テートクさんに朝ごはんを振る舞ってるのよ?

 

味…は、まだまだ間宮さん達には遠く及ばないけれども…それでも人に出せるくらいにはなったと思うの。

 

 

 

 

「……」

「美味しそーにたべてくれるのね?」

 

「おいしーんだもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと…ずっと好きでした」

 

「一目見た時から…指揮するあなたが…優しい眼差しを向けるあなたが…」

 

「ずっと夢見てた…その温かい眼差しを向けてもらえたら…って」

 

 

 

 

 

 

例え生まれ変わって…忘れたとしても…

    きっと思い出す…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これが…人並み…街並み…」

 

目の前には現実離れした光景。

行き交うも人…人人。

 

私が焦がれた(憎いと思った)海じゃない場所(地上)は…こんなにも美しかった。

 

 

 

 

「……目が回りそう…」

圧倒的な情報量は私の脳を混乱させるらしい。

初めて見た外の景色はあなたと見た景色…。

 

 

「…お?姉ちゃんもカンムスって奴か?」

 

「…深海棲姫よ…」

 

「ほーーん…良い奴も居るんだな」

 

「え?」

 

 

 

「神崎ちゃんと居るなら…良い奴に違ねえよ」

どこにそんな自信があるのか?

 

 

 

「…ね?外に出る心配いらないでしょ?」

 

「……でも…石を投げる人が居ないわけではないでしょ?少なからず深海棲艦(私達)と言う存在に嫌悪感や恨みを持つ人が居るかも知れない…」

 

「石が飛んできたら…俺が払うよ」

 

「あなたに当たったら…私許せないけれど…」

 

 

 

 

 

 

「これが…アクセサリーショップ…」

「私が作った貝殻のブローチより…素敵な物ばかり…」

 

「ありがとうございますお客様…」

突然店員が話しかけてきた。

 

「確かに職人の手作りで一つ一つ丁寧に作っております…世界にふたつとないものですが…」

「誰かを想い作ったものには私共では勝ち目はございません」

 

「あくまで…その方の代わりに思いを届けさせて頂く役割を頂戴しているだけなのです」

 

「ですから…神崎様からすれば…ここのアクセサリーを全て…と言われても、あなた様のお作りになられたブローチの足元にも及びませんよ」

 

 

「そう言われたら…買ってプレゼントしにくくなるじゃないか…」

 

「申し訳ありません」

と、笑う店員さん。

 

「姫ちゃん?何かいいのあった?」

 

「全部素敵…」

「でも…テートクさんが選んでくれたものが……いいな」

 

 

「なら…コレかな?」

と、彼が選んだのは真っ赤なルビーの薔薇のブローチ。

真っ赤に燃えるような恋…をモチーフにしたとか。

 

「テートクさん…選ぶの早い…」

なんて感心してると…

「…姫様?最初からコレをご予約されてましたから…」

コソリと教えてくれた…。

 

 

こら!と少し照れて赤くなるテートクさんに聞いた。

「似合ってる?」

 

「もちろんだよ」

彼は笑顔で答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

「化け物ッ!!」

そんな言葉と共に私に石が飛んできた。

 

大丈夫…痛くない…。

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

石は私に当たらなかった…。

 

 

 

彼は前に立った。

額から少しだけ血が滲んだ…。

 

「テートクさん…テートクさん…!?」

 

「……」

彼は愛する人に寄り添って周りを睨んだ。

 

「お前…頭おかしいんじゃないのか…?」

「そいつは…人間の敵だろ!!」

 

 

「違う…」

おかしいと思う奴も居るだろう…

 

 

「やっぱりお前…おかしいわ!!」

 

 

 

「だから何だッ!!」

彼は言う。

 

 

「……彼女は悪い奴じゃない…」

 

「皆の為に戦ってくれた事もある」

「その、彼女を侮辱するな!!」

 

 

 

「…なにを…お前は…」

 

「この子が悪さをしたのを見たのか?」

「この子が人が憎いと…誰かを手にかけたのを見たのか?」

 

「人間じゃねえ…だろ…」

 

「辛ければ涙も流す…嬉しけりゃ笑うぞ?」

「俺らよりよっぽど人らしいと思うが?」

 

彼は頭を下げる…。

 

「石を投げないで欲しい…」

「見た目や名前だけで判断しないで欲しい…」

「彼女の優しさを…お前達は知らないだろう?」

 

「命を投げ出してまで…守ってくれる方な優しい人なんだッ!俺の…かけがえのない人なんだ!」

 

鬼気迫る…と言うのはこういうことだろう。

 

誰一人として…それ以上に何も言わなかった…言えなかった。

 

 

男達は…優しい商店街連中に連れて行かれた…。

 

 

 

「テートクさん!?デコ…血が!!」

 

「ん…大丈夫。君には当たってない?」

 

「私なら当たっても平気なのに!なんで!!」

 

 

 

 

 

「守ると言っただろう?」

「それに…君に傷ついて…人を嫌いになって欲しくないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しかった…。

言葉にならずに涙となって流れ出る思いは…

私の口から出ることを許さなかった。

 

石を投げられる覚悟なんかしてた筈なのに…

あなたなら…そうすると分かるからこそ…余計に嬉しくて…。

 

 

 

顔を覆って泣く私をあなたはずっと抱き締めてくれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度…あなたにしっかりと伝えたい。

 

聞いてくれる…かなあ?

 

 

 

「テートクさん?」

 

「ん?」

 

「もう一度…だけ私を待っててくれませんか?」

 

 

私はもう1度…ワガママを言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここだ…」

 

「…2人の思い出の場所」

 

そう…町外れの灯台の麓。

 

壁にはまだ彼の書いた言葉が掠れてても残って居て…

それが夢じゃないんだと教えてくれる。

 

 

 

 

 

 

「……もう一度聞いてください」

 

 

 

 

「一目見た時から…ずっと…ずーっと好きでした」

 

「たくさん文字も練習して…お手紙とブローチを作りました」

「…ル級としての私は…あなたの名前も知らないまま…散ったけれども…」

 

「あの時…一目でもあなたに会えて良かった!」

 

「待っててくれて…ありがとう!行けなくて…ごめんなさい」

 

「ずっとちゃんと言いたかった。思い出すのが遅くてごめんなさい」

 

 

 

 

 

「あの手紙もブローチも…ずっと待っててくれてありがとう」

 

 

「私を…庇ってくれて…ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度出会ってくれて(建造して呼んでくれて)…ありがとう」

 

 

 

 

「愛してると言ってくれて………あり…が…と…ぉぉ」

 

 

嗚咽と共に出てくる涙と言葉は…

波風にかき消されないようにしっかりと出したつもり…。

 

 

 

 

「愛してますッ!!」

 

 

 

 

ポツポツと涙が地面へと落ちて消えてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレを…君()に」

 

 

 

 

テートクさんが取り出したのは2つの指輪…

 

そのうちの一つを彼は私の前差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ル…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私から出てきたのは…かつての私(あの日のル級)

幻影…だろうか?

 

 

でもわかる…この子も私なんだ…って。

 

彼は私と私を見ながら言う…。

 

 

「……俺の為に…ありがとう」

「ずーっと待ってた」

 

「知らなくて…ごめんな…俺を…守ってくれて……

 

 

 

 

 

 

 

    ありがとう」

 

 

 

 

 

彼はそう言うと幻影(ル級)に指輪を渡す…。

彼女は嬉しそうに涙混じりで笑う。

 

 

 

 

 

彼が彼女を抱き締めようとした手は…すり抜けてしまった。

 

でも、彼女はニコリと笑う。

 

 

 

 

 

 

『ル!』

 

 

 

 

精一杯の言葉…

人が聞いたらルの一文字…一言だろう。

その言葉は伝わっただろうか?

でも私にはわかる…。

 

 

『ずっと好きです』

 

 

って伝えてるんだって…

 

 

 

 

 

彼はくしゃくしゃの方で頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が振り向いて笑う。

うん…

 

彼女は私の中に…スッと消えていった。

 

 

 

 

「……コレも……君に」

 

もう一つの指輪…。

 

指輪は一つで良いのに…。

それでも彼は私ににも…過去の私(ル級)にも…

 

「受け取ってくれるかな?」

 

 

 

 

 

 

「深海棲艦に指輪を渡すなんて…きっとバカなのよ…」

「…提督に恋する私もバカなんだけど…」

 

 

それでも…

それでも…

 

『バカで良い』

「しょうがないよ…お互いに愛してしまったんだから…」

 

 

「そうね…バカ同士でお似合い…ね」

 

 

左手に今迄夢見続けた指輪が入る。

 

 

 

そっと寄せられた唇は…どんなものよりも温かくて…。

 

 

 

 

 

 

私は泡にも海にも帰る事なく…ここにいる。

きっと卑怯だと言われるだろう。

きっとバカだと言われるだろう。

 

でもいい…。

 

だって…それ以上に愛してるから…。

 

 

 

 

「…深海棲姫に指輪渡すなんて聞いたことないけれど…」

 

「良いの!」

 

「…もしかしたらどこかで艦娘になってたりして」

 

「それはそれでありかも?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ろっかと帰る道から見た…。

 

夜の街並みは…冷たい海の底と違って…温かな光と音が溢れていた。

 

戦火の()でもなくて…喧騒(叫び声)でもなくて…

生活を彩る街灯や窓の光…そして人々や生活の音や声…

戦場とは違った生きている事を実感できる。

 

 

 

 

私には無縁な世界だったはずなのに…

 

私には遠い世界だったはずなのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは私の手を取ってそこ(行きたい場所)へと連れて行ってくれるんだもの…。

 

 

「はぐれないかな?」

 

「なら…力を込めて…君の手を掴んでるよ」

彼が手を握る力を少しだけ強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は冒頭部へ…

 

 

「…良かった…たくさん練習して良かった」

 

「文字もきっとたくさん練習したんだな」

 

「……うん」

 

「大好きな人の為だから…」

 

 

もうすぐ夫婦は終わる。

でも…もう少しだけ…お願い…

 

「もう少しだけ…最後のその時間が終わるまで…そばに居させて…皿洗いも何もかも後でやるから…」

 

彼はそっと私を抱き寄せてくれる…。

ちゅっ…と唇を合わせて…

 

 

その時間をずっと噛み締めた…。

 




うるっとしてくれたら嬉しいです。


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

感想などお待ちしています!


休みます(๑╹ω╹๑ )!

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