提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「……古ーい旧姓は…えとひいひい婆さんの時かな?里仲って言ったと思います」
「…あぁ…」
「おや?驚かないのですか?」
「…前に朱音って娘を名乗る子と会ったからなあ……」
「………あぁ……誰かわかりますが黙っときますね」
「てかさ、順応早く無い?君」
「血筋ですよ」
「澪って言います…よろしく、お爺ちゃん」
「そのお爺ちゃんってのやめてくんない?」
「なら…パパ?」
「もっとやめて?」
何故か子孫を名乗る奴らにイジられる。
確かに………あぁ…もしかしてアイツかな?ってのは何となく感じる。
「…まあ先祖代々では無いですけど…ウチらの中では有名人ですからね」
「ウチら…?」
「お爺ちゃん…子供どれだけ居ると思ってるの?」
「2人とか?」
「…………」
「え?無言やめて?」
え?何人居るの?子供…未来の俺よ…。
「…私はお爺ちゃんの事を伝えでしか聞いてないけど…」
「女たらしで」
「無鉄砲で…」
「目があったら妊娠させられて」
「よく居なくなって…」
「何回か死んで…」
「深海棲艦どころか艦娘とも殴り合って…」
「疑わしい話ですが人ながら艤装を展開して…」
「碌な伝わり方してないですね」
「やめて…」
泣きそう…ッ。
「馬鹿で…」
「お願いッ!もうやめてええええ」
泣いていい?俺、泣いていい!?
クスリと笑って彼女は言った。
「どんな時でも艦娘達と共に在った…」
「世界を跨いでも愛される提督だった…って」
その時だった。
ドアを勢いよく開けて入ってきた…おそらくかん娘が血相を変えて報告した。
「た、大変ですッ!!未確認の深海棲艦が…!」
「ただいま、交戦中ですが…」
「なんだって!?」
「見たこともない程に重武装で…苦戦してます!」
「まさか…」
「データ繋ぎますッ!!映像……出ます!」
そこには異形と化した空母…棲姫?が居た。
?なのは一部が他の棲姫から取り込んだような姿をしていたから…
「…なに……あいつ」
澪は初めて見るソレに震えすら覚えた。
それはこんごう達も同じようだった。
敢えて名付けるなら戦艦空母棲姫…だろうか?
どの攻撃も届かず蹂躙と言っても過言ではない戦況が映し出されていた。
「やっぱり…アイツは」
「生きていたの…」
「…アレは提督が最後の最後に斃した深海棲姫」
「鎮守府決戦で倒した筈なのに……」
艦娘が120年待てるなら…
奴等も同じである。
彼女達は救達にやられて傷付いた体を回復させていた。
だが…
察知した。
奴の存在を…。
自らを底に叩き落とした…眠らざるを得ない状態に追い込んだ奴を!
現代艦は…装備が強くない。
それに合わせてではないが…敵も昔程は強くない。
先人達の戦いで深海棲艦の勢力は一気に削られた。
だが…そこに旧型が現れたら?
現代からすれらデタラメな装備を搭載した奴が現れたら?
『貴様ァァア!!奴だッ!!奴を感じるッ!!』
『私をここまで追い詰めた…奴が…!殺してやる…ッ』
『殺してやるぞおおおお』
「やはりあの時の……空母…棲姫でしょう」
龍鳳が言った。
「なら…狙いは…俺だろうなあ…」
俺はその為に呼ばれたんだろう……
そうだろう?未来の俺よ…。
「お爺ちゃんッ!ダメだよ…」
澪は止めた。
「お爺ちゃんにはもう艦娘も…他の世界の娘も居ないんだよ!?」
今行くのはむざむざ、死にに行くのと同義だから。
「……龍鳳が居る」
彼は龍鳳の方を見た。
「1人で叶う相手じゃないよ!!」
「…それでもやらなきゃ…守るべきものも守れなくなる」
「行けるか?龍鳳」
「はい!」
龍鳳は力強く頷いた。
「それに…澪も立ちっぱなしではないだろう?」
澪は、ハァ…と大きく溜息をついて言う。
「…頑固ジジイ……」
「勿論!こんごう!出れる?」
「はい!!こんごう型!可能です!」
バッと敬礼して返事する4人。
「なら…お爺ちゃんの指揮に加わってもらうのでいい?」
「…はっ!」
「神崎提督…!平和の為…よろしくお願いします」
「最強の英雄…お爺ちゃんの指揮見せてもらうよ」
彼らが空母棲姫の暴れ回る海域に到着した時には…
交戦中の部隊の被害は甚大になりつつあった。
「大丈夫か!!お前等ッ!下がって手当を!」
「あ、あなたは!?」
「そんな事はいいから!」
「龍鳳ッ!!頼む!」
「はいっ!」
龍鳳が合図に合わせて発艦する。
『貴様…同じ感じだ…貴様が…あの時のおお!!!』
『殺すッ殺す!殺すっ!!!』
「…うわあ…凄い殺気…」
『小娘も…覚えてるぞ…纏めて地獄に送ってやるッ』
「きりしま!みょうこう!ちょうかい!行きますよ!」
こんごう達も同じく攻撃を開始する。
数こそ多いなれど、軽空母と護衛艦。
相手は戦艦空母となると結果は見えている。
『どけえええ!!』
「きゃぁあ!!」
弾き飛ばされる龍鳳。
だが…ここで倒れる訳には行かない!
彼を…死なせてたまるかッ!!
やっと会えたんだ…!!
行かせて…たまるか!
龍鳳は棲姫にしがみついて行手を阻んだ。
『邪魔だッ!!』
何度も何度も踏まれた。
それでも…譲れない。
「何で…あの人はそこまでできるの?」
こんごう達は不思議に思う。
提督1人の為にそこまで?
何で?どうして?
私にはわからない…。
でも…それほどの思いなのだろう。
「やめなさい!その足を退けなさいッ!!」
いくら叫ぼうとやめない。
砲撃も効きやしない…。
絶望感に支配されそうな時だった…。
[…忘れてるだけ…デース!!]
「え?」
グンッと体が勝手に動いた。
『なっ!』
ドゴォッ!!
こんごうは感じた。
自分の体が自分でないような気がした。
私の右腕は奴を殴り抜いていた。
『がっ!ぐっ!』
不意を突かれてぶっ飛ばされる棲姫。
『……アイツ…』
「龍鳳さん!立ってくださいッ!!」
「…ありがとう…」
救も彼女に合流しようとやってくる。
「提督…ダメ…逃げて」
「あなたが生きて…生き延びてくれたらそれでいい!!」
彼女はそう言った。